殖産ベスト株式会社

不動産営業1名あたり平均4,000万円売上達成の裏側

徹底した無駄の排除で営業業務を効率化。不動産検討の今を見逃さない MA 活用

殖産ベスト株式会社(以下、殖産ベスト)は、トップダウンでSalesforceを導入・活用し、社員の無駄を排除することにより残業を限りなく減らすことに成功。

不動産検討の今を見逃さないマーケティングオートメーション (MA) Account Engagement の活用で、業界では放置されがちな休眠顧客の掘り起こしに成功。営業一人あたりの平均売上4,000万円を達成し、会社の売上も30%増へ。

 
 

1. トップダウンで無駄を排除、業務効率化により残業がほぼゼロに

殖産ベストは、東京・吉祥寺に本店を置く不動産業者です。都内に5店舗を構え、年間で約350物件の売買仲介を行っています。「ぜんぶ、住むつもりで。」をキャッチフレーズとし、物件をお客様目線で案内する営業担当者の接客が好評です。DXへの取り組みは早く、デジタルを生かして大きくビジネスを成長させています。

同社におけるDXの中心が、Salesforceの活用です。早くからデジタル化に取り組んできましたが、2017年6月にSales CloudAccount Engagement (旧 Pardot)を同時に採用し、半年の導入期間を経て稼働させたことで、DXが一気に加速しました。

取締役 古川 秋治氏は、「弊社の代表は、社長就任時に40歳程と若い経営者でした。デジタル化への理解があり、業界では早くから営業支援の仕組みなどを導入し、ペーパーレス化を進めようと取り組んできました」と話します。「ただ、営業の情報共有や進捗管理を売上につなげるところまでは至っていませんでした」。

Salesforce導入以前、他社の営業支援システム(以下SFA)を採用していたものの、各担当者のポケットで名刺情報が蓄積されたり、また、売上管理はExcelで、コミュニケーションツールは別のものを使用したりと顧客・社内の情報が複数システムに跨った形で管理されていました。当時、古川氏は営業統括を担当しており、売上管理が重要な仕事。毎日、店舗から送られてくるExcelをチェックし、状況判断しなければなりませんでした。その課題を解決したのがSales Cloudでした。採用のきっかけは、マーケティング部門からの熱い要望です。

マーケティング事業部 部長 山元 直輝氏は、「当時は、条件を絞ってメールを送ることもできなければ、マーケティング施策を実行する際に他のツールを介さないといけなかった。導入していたCRMはMAを提供していなく、CRMを変えたかったし、MAを整えたかった。より円滑に顧客にアプローチできる仕組みが欲しいと社内でプレゼンし、古川さんにその必要性を納得してもらいました」と話します。古川氏も、「熱いプレゼンでした。Salesforceの営業の方に来社してもらい、その際に私がストレスを感じているExcel業務の話をすると、“そのExcel、すべてなくなりますよ”と言われて、その場で採用を決めました。すぐに代表に報告すると、2秒でOKが出ました。当時もビジネスは好調で、“予算は潤沢にある。SaaSだからうまくいかなければやめればいい”という意思決定でした」。

Salesforceの稼働後、営業情報はすべてダッシュボードで可視化できるようになり、リアルタイムに全店舗の状況を把握できるようになりました。手入力を廃して事務作業を効率化させるため、物件データをオンライン不動産ポータルに登録するデータコンバートツールを使うなどの施策により、営業担当者の事務作業負担も大きく下がり、残業は大幅に削減。営業先から直帰する社員も多く、いまでは18時半に社員が会社に残っていることの方が珍しくなっています。

「不動産業界はブラックという色眼鏡で見られがちですが、Salesforceで業務を効率化したことで、残業が減ったにもかかわらず、売上は伸びました。営業担当者1人あたりの売上平均は4,000万円ほどで、これは、業界平均の2,400万円の1.6倍超という驚異的な数字です」(古川氏)

 
 
 

2. お客様の一生モノの買い物 “住宅” の購入タイミングを見逃さない仕組みへ

Salesforceの定着化がスムーズに進んだことにより、殖産ベストは充実した顧客データベースを手に入れることができました。以前のデータベースでは不可能だった顧客ターゲットの絞り込みや、条件検索が極めて容易になったのです。機は熟したと見て、MAの取り組みを本格化させます。

同社がこの領域に取り組みたかったのは、休眠顧客の積極的な掘り起こしでした。住宅という一生モノの買い物をする顧客と営業担当者は、密接な関係を築きます。担当顧客に気に入ってもらえそうな物件情報が手に入れば、いち早く知らせるなど、素早いフォローが必要です。顧客のニーズや人柄を把握し、もっともマッチする物件を紹介するために、営業担当者が常時抱える顧客数には自ずと上限が出てきます。

そのため、営業担当者は、いままさに家を買おうとしている顧客を優先して対応します。一方、物件の問い合わせをされたすべての方がすぐに家を買うわけではありません。数年後の購入を検討し、情報収集の段階で殖産ベストにコンタクトを取った顧客も数多く居ます。真剣に検討していたけれど、現時点での購入をあきらめた顧客も、将来の顧客として有望かもしれないからこそ、物件検討のタイミングを見逃さないことが重要な不動産業。これらの休眠顧客は、本来ナーチャリング対象なのですが、これまでの仕組みでは定期的なメールマガジンの配信などにとどまり、適切にフォローできていたかどうか不透明なところがありました。

山元氏は、「おすすめ物件があるときに、現場の管理職が顧客に一斉メールを不定期配信することはありました。反響があればわかるのですが、体感としてわかる程度で数字としての根拠はありませんでした。私の主業務はWebサイトからの集客で、データの台帳登録と集計にかなり時間を割かれる上に更新作業もあり、本格的な分析には至りませんでした。Sales CloudとAccount Engagementに期待したのは、一元化した顧客データを使って、ターゲティングを可能にし、さらに成果を分析できるようにすることでした」と話します。

Salesforceで顧客データを整えたことで、顧客の希望条件などさまざまな軸でナーチャリング対象顧客を抽出できるようになりました。顧客の状態・条件に応じてセグメントを分けて、Account Engagementを活用し週に5パターンのメールマガジンを発行。同じ物件を紹介するメールでも、文面も発信者も違うため、さまざまな角度から顧客に物件の良さを提案できます。

 
 
 
 

3. 営業担当者1人当たりの平均売上 業界平均の1.6倍超への道のり

カスタマー事業部 赤塚 結氏は、メールマガジンの作成と配信を1人で担当。さらに反響(メール起点の問い合わせなどのアクション)のあった顧客に対する電話やメールでのコンタクトを経て、営業担当者に引き渡すことが役割です。2021年度には反響数に対する成約数の割合は7%を超え、5,500万円の売上を達成。2022年度には1月現在で前年度比30%以上の成長となる7,500万円以上の売上に結びつけています。

「Account Engagementで見込み顧客のWeb上の活動が見られますから、メールの開封有無や発信したコンテンツに対するエンゲージメントの度合いを確認し、確度の高いコール対象を選別します。To Doを立てるまでのプロセスは、ほぼ自動化できています。細かなところでは、契約後に会社としてメッセージを届けたり、火災保険のご案内をするなどの取り組みもスタートさせました」(赤塚氏)

メール配信でも成果が出ています。活用前の2017年は、そもそも反響数は少なく、売上への貢献は1,000万円程度にすぎませんでした。しかしAccount Engagementを活用した2021年では、ほぼ自動化された仕組みにより反響数が2.6倍に増加、成約率も1.2倍に向上したことで、売上7,500万円を達成しました。顧客の情報に応じた絞り込み作業が楽になったためにメールを送りやすくなったことに加え、メールマーケティングで効果が出ることがわかり、現場が積極的になったという側面もあるようです。

さらに、SFAとMAが一つのプラットフォーム上にあることで蓄積された顧客データや送信したメールに対する反響数などのデータに対する分析が容易になり、よりデータドリブンで総合的なマーケティング施策への取り組みも始まっています。山元氏は、「これまでは、ご主人は仕事が忙しく、家探しのメインは専業の奥様であったため、家探しをする夫婦の女性側にターゲットを絞ってコンテンツ作りに取り組んできました。しかし、顧客データを基に男女比などを分析すると、最近は夫婦どちらも働いていて、家探しへの情熱も同等でローンもペアローンというお客様が増えてきています。コンセプトを作り変える時期になっているかもしれません」と話します。「こうした事実が、体感でなく、数字としてきっちり出る点も、次の戦略を考えるにあたって重要です」。

住宅やマンションの契約が成約した顧客とつながり続ける仕組みとしても、Salesforceが活用され始めています。顧客とより長期にわたる良い関係を続けていくことで、販売した住宅のリフォームや修繕、さらには売却・買い替えの際にもまず相談してもらえる存在になることを目指しています。

古川氏は、「リフォームや住宅買受なども手掛け、ワンストップでサービスを提供したいと考えています。そのために事業を拡張し、2023年3月には『殖産グループホールディングス』を設立し、お客様の期待に応えられるグループカンパニーを作っていきます。」と話します。同社では既にSalesforceの導入と定着化のノウハウを外販するために、ブリードイン株式会社を設立しており、不動産事業以外の事業としてホールディングスを支える事業の1つに育ってきました。「すべてのグループ会社にSalesforceを導入し、優れた管理体制で新しい事業体制を盤石なものにしたいと考えています。

 
 
 
 
※ 本事例は2023年2月時点の情報です
 

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