富士通株式会社

「OneCRM」でパイプラインのグローバル標準化と顧客接点強化へ

Salesforceを戦略的顧客基盤に。マーケティングから営業までをワンプラットフォームでカバー

全社DXプロジェクトである「Fujitsu Transformation(フジトラ)」を推進すると共に、新事業ブランド「Fujitsu Uvance」も打ち出し、IT企業から「DX企業」へと変貌しつつある富士通株式会社。ビジネスモデルのシフトに伴い、営業のあり方も大きく変化することが求められています。

その実現に向け「OneCRM」プロジェクトを開始。Salesforceを基盤としてマーケティングとインサイドセールス、営業を一気通貫で連携させた新たなパイプラインマネジメントを構築し、グローバルに展開しています。これによって目指しているのは、グローバルでのパイプラインマネジメントの標準化と、顧客ニーズに基づいた接点の強化。今後は「Customer 360」をベースに多様な部門が連携して顧客に向き合う体制を確立していく計画です。

 
 

1. 「DX企業」へのシフトで必要になった新たな営業の仕組み

従来型の「IT企業」から、顧客や社会の課題をイノベーションで解決する「DX企業」へ。このような変革に向け、全社的な取り組みを進めているのが富士通株式会社です。

2020年7月にはデジタル時代の競争力強化を目的に、製品やサービス、ビジネスモデルに加えて、業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革する全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ)」を始動。時田社長 兼 CDXOと、福田CIO 兼 CDXO補佐のリーダーシップのもと、「OneFujitsuプログラム」を展開し、部門・グループ・リージョンを横断した富士通グループの変革を推進しています。また2021年10月には、新事業ブランド「Fujitsu Uvance」も発表。世界的に最重要課題であるサステナビリティの実現に貢献するため、7つの重点分野で社会課題を解決していくという宣言を行うと共に、その枠組を明確化しています。

2018年から社内の仕事のやり方は大きく変わりつつあったと振り返るのは、CEO室 CDPO Divisionでシニアディレクターを務める喜多 昌之氏です。その変化について、次のように説明します。

「大きく2つの変化が始まっていました。1つは雇用制度のあり方です。すでに2017年から働き方改革を進めてきましたが、2020年には日本企業で一般的だったメンバーシップ型からジョブ型へと幹部社員の人事制度を刷新。その後、一般社員へも展開され、仕事のやり方やキャリアパスも変わっていきました。また営業活動や提案の進め方も、製造業的な御用聞き営業から、お客様の課題解決を提案するオファリング型へと変化していきました。

DX企業としての役割を果たすためには、営業のやり方を変えていくのは当然の流れと話す喜多氏。そのための仕組みを整備するため、2018年にはSales Cloudを導入しています。しかし当初は思うようなプロセスが実現できなかったと振り返ります。

「このときは従来のパイプライン管理の仕組みをSalesforceに置き換えて国内で構築したに過ぎず、営業部門内に閉じた活動でした。また各国・リージョン毎にパイプラインマネジメントのステージ定義が異なっており、グローバルを統合しての商談マネジメントもまだできていませんでした」。

そこで富士通は、すべての顧客接点部門の連携・協業を視野に入れたグローバルプロジェクトに着手。「OneFujitsuプログラム」の一環として、2021年4月に「OneCRM」の実現に向けた取り組みをスタートします。

「OneFujitsuプログラムとは、主要業務の全てを『グローバル1機能1システム』として標準化させることを目指した経営プロジェクトであり、OneERP+とOneCRMを中心に複数のプロジェクトで構成されています」と説明する喜多氏。OneCRMは、グローバルでのパイプラインマネジメントの標準化と、顧客接点の強化を目指しているのだと言います。

「CRM領域でのグローバル標準化で成功しているのはほとんど海外企業ですが、それらの事例からベストプラクティスを抽出して日本企業に当てはめても、なかなかうまくいきません。そこで日本企業に最適なベストプラクティスを生み出すため、社内実践の意味も込めてOneCRMに取り組んでいます」。

 
 
 
 

2. グローバルスタンダードな基盤としてSalesforceを採用

その基盤として改めて採用されたのがSalesforceでした。その理由について喜多氏は「マーケティングから営業に至るまでのエンドツーエンドの仕組みを、グローバルスタンダードな基盤で実現したかったから」だと説明します。またSalesforceが提唱する「Customer 360」も、複数部門が連携した顧客対応の基礎となる考え方として、高く評価したと言います。

グローバルマーケティング本部 グローバルGTM統括部 マーケティングエクスペリエンスデザイン部 部長の矢岡 明倫氏も、Salesforceの採用理由について、次のように述べています。

「MA領域では他の選択肢もあり、実際に他社製品を使っているリージョンもありました。しかし営業システムとしてSales Cloudを継続利用するのであれば、それと連携しやすいのは間違いなくAccount Engagement (旧 Pardot) です。マーケティングと営業を連携した仕組みをグローバルで展開するのであれば、全てをSalesforceで統一すべきだと考えました」

2021年4月にスタートしたOneCRMの第1フェーズは、2022年4月に本格稼働を開始。全世界のマーケティングから営業までのパイプラインが、Account EngagementとSales Cloud上で統合可能となりました。これはまず日本国内、アジア、オセアニアで実装され、その後の第2フェーズとしてヨーロッパ、アメリカで実装し、世界の全リージョンで実装。2022年12月に米国、2023年2月に欧州へと展開されており、2023年4月には全世界への展開が完了する予定になっています。そして、現在(2023年1月)では、31カ国、主要5部門でおおよそ20,000名がOneCRMを利用しています。

「マーケティングと営業のワンプラットフォーム化で特に重視したのは、リード管理をグローバルかつエンドツーエンドで統一することでした」と語る矢岡氏。マーケティングの活動内容をマーケティング部門の中だけでクローズするのではなく、そこで見つけ出したリードを一気通貫で営業に渡し、売上に貢献することが重要なのだと言います。「そのために、パイプライン全体を見渡した上で、どこに梃入れするかを見極める必要がありました。要件定義もシステムだけではなく、オペレーションや人も視野に入れ、マーケティングから営業まで納得した上で、プロセスを回せるように配慮しています」。

 
 
 

これと並行して、顧客接点強化に向けた取り組みも推進。その一環として立ち上げられたのが、インサイドセールス部門です。

「これから求められる営業スタイルでは、お客様が気づく前に潜在的な課題を吸い上げ、それに合わせた提案をすることが重要になります」と語るのは、グローバルマーケティング本部 デジタルセールス統括部 統括部長 友廣 啓爾氏。そのためには、顧客の声を幅広く捉えることができるマーケティングと、営業との間の架け橋になる存在が不可欠であり、それがインサイドセールスなのだと語ります。「一般的には営業のサポート役といったイメージを抱きがちですが、富士通のインサイドセールスはそうではありません。マーケティング活動で吸い上げた潜在的なニーズを明確化して営業に渡す、営業のバディ的な役割を果たすものなのです」。

 
 

3. 各国の売上見込/実績の収集を1日で、売上予測精度も大幅に向上

「OneCRMはまだ定着化を進めている段階であり、その成果が生まれるのはこれからです」と喜多氏。しかし現時点ですでに実現しているメリットもあると言います。その1つが、売上見込と実績の集計・可視化に必要な時間が、大幅に短縮されたことです。

「各国からデータを集めるために、以前は1か月程度の時間がかかっていました。しかしいまではワンプラットフォームで情報を管理しているため、ほぼリアルタイムで可視化できるようになっています。データ可視化の次はデータ精度の向上に向き合います。将来的にはAIによる予測を活用し、再現性のある成功パターンの確立まで実現したいと考えています」(喜多氏)。

加えて、「エンドツーエンドで同じデータが引き継がれるようになったことで、マーケティングとインサイドセールス、営業が同じ土壌の上で話ができるようになりつつあることも、大きな変化です」と指摘するのは友廣氏。Account EngagementはOneCRMを実現する上で、ベストな選択だったと述べています。

今後のチャレンジは、Salesforceの採用時でも高く評価した「Customer 360」の世界を実現していくことだと喜多氏。OneCRMをマーケティングと営業だけの所有物にするのではなく、フィールドサービスやコンタクトセンター、品質保証など、多様な部門と連携して顧客に向き合うための基盤にしていきたいと語ります。

「まずは我々自身が『Customer 360』を実践することで、日本のエンタープライズ企業でのベストプラクティスを確立したいと考えています。これによってお客様への対応力を高め、急速に変化する市場やお客様ニーズに合わせたビジネス価値を生み出すこと。それが、富士通がお客様と創り上げるサステナビリティ・トランスフォーメーションの1シーンになるでしょう」。

 
 
 
 
※ 本事例は2023年1月時点の情報です
 

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