Einsteinが質問の答えをサポートしているチャットウィンドウが表示されたサービスコンソール

ビジネスとアプリケーション開発のためのAIエージェント

AIエージェントは、私たちの日常生活の身近な存在になりつつあります。ここでは、その仕組みと、ビジネスとアプリケーション開発をどのように変革しているか見ていきましょう。

Christophe Coenraets

AIエージェントは、支援型および自律型のソフトウェアシステムです。ユーザーの入力や環境条件に基づいて、与えられたタスクや目標を達成するために推論し、計画し、アクションを実行します。まさにインテリジェントなデジタルアシスタントのような存在です。人間の専門家の集約された知識と経験を備え、すべての関連データにアクセスできます。

AIエージェントは、私たちの生活のあらゆる場面に存在し、ビジネスの運営方法や顧客とのやり取りの仕方を大きく変革します。たとえば、サービスエージェントは、あなたの会社で最も知識のあるテクニカルサポート担当者として機能し、すべてのリクエストを24時間年中無休で処理できます。マーケティングエージェントは、自動運転車と同様に、「センサー」(リアルタイムデータ)を利用して、変化するビジネス状況を検出し、先を見越して対応できます(価格設定の調整、キャンペーンの開始など)。

この記事では、AIエージェントの登場を促すAIイノベーションについて解説し、AIエージェントがビジネスを変革するだけでなく、ソフトウェアとソフトウェア開発をどのように再構築していくのか明らかにします。

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大規模な言語モデルを活用

AIエージェントは、大規模言語モデル(LLM)が登場したことで実現しました。LLMは、高い効果を発揮するAIエージェントを導入するために必要な2つの重要な機能をもたらします。

  • 深い言語理解:LLMは、複雑で微妙な言語を理解するのに優れています。これはチャットボット型のAIエージェントにとって重要な機能です。ユーザーのリクエストを深く理解し、自然言語を使用して応答を作成できます。
  • 推論と意思決定:LLMは、推論と意思決定も可能です。その結果にもとづいて、AIエージェントは計画を立て、目の前の問題を解決するために必要な手順を調整できます。

しかし、LLMだけではAIエージェントを導入するには不十分です。次のようにいくつかの制限があります。

  • 非公開のデータにアクセスできない:LLMは、トレーニングを受けていない非公開のデータにアクセスできません。たとえば、オープンな販売機会、オープンなサポートチケット、これまでのキャンペーン結果のリストを返すことはできません。
  • アクションを実行する組み込みの機能がない:たとえば、サポートチケットを発行したり、注文の配送先住所を変更したり、営業案件記録を更新したり、製品の価格を変更することはできません。

新たなソフトウェアパラダイム

AIエージェントは、LLMの強力な言語および推論機能と、非公開データへのアクセスやアクションの実行などのビジネス用途の現実的な要求の間のギャップを埋め、新たなソフトウェアパラダイムへの道を切り拓きます。

この新たなパラダイムでは、ソフトウェアはもはや独立したアプリケーションとしてではなく、特定の機能をカプセル化し、LLMの推論機能を使用してAIエージェントが調整できる詳細な構成要素の集合体として構築されます。Salesforceでは、こうした構成要素をアクションと呼び(「注文の検索」や「注文住所の変更」など)、トピックと呼ばれる機能領域(「注文管理」など)の下にまとめています。

つまり、AIエージェントは、LLMの言語と推論能力を使用して、特定のドメイン内の一連のアクションを調整するソフトウェアシステムと言えます。全体として、AIエージェントは次のように機能します。

  1. タスクを理解する:AIエージェントは、LLMの言語機能を使用して、与えられたタスクを深く理解します。
  2. 計画と実行を繰り返し行う:AIエージェントは、タスクの理解にもとづいて、利用可能なアクションを推論し、次に何をすべきか特定します。たとえば、アクションを実行したり、明確にするための質問などを行います。次に、AIエージェントは前のステップの結果に基づいて推論し、次に何をすべきか再び特定します。AIエージェントは、元のタスクを達成できたと納得するまで、この反復プロセスを繰り返します。
  3. 回答を提供する:AIエージェントは、入力に対する応答を生成します。
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究極のアプリケーション構成プラットフォーム

この新しいソフトウェアパラダイムでもっとも変革的と言える点は、AIエージェントが事前定義された要件なしで予期しないリクエストを処理できることです。何十、何百ものアクションを備えたAIエージェントを想像してください。予想しなかった方法も含めて、事実上無限の方法で応答を構成できるため、新たな問題をその場で解決できます。これは、アプリケーション構成の究極の形です。

たとえば、Salesforceでは、業界をリードするアプリケーション(Sales CloudService CloudMarketing CloudCommerce CloudIndustriesなど)を詳細なアクションに分割しているため、さまざまなトピックにわたる豊富な機能を備えたSalesforceのAgentforce エージェントをすぐに使用できます。Agentforce エージェントは、こうしたアクションをさまざまな方法で構成して調整できるため、ビジネス全体で統一されたシームレスな体験をユーザーに提供できます。さらに、開発者は、コード、API、Salesforceフロー、プロンプトテンプレートを用いたカスタムアクションにより、標準のAgentforce エージェントの機能を拡張できます。

アクションは、次の重要な機能でAIエージェントを強化します。

  1. 非公開の会社データにアクセスする:アクションにより、AIエージェントは顧客データと企業データにアクセスできます。AIエージェントにデータアクセスを許可する場合は、AIエージェントが権限のないユーザーにデータを開示しないように規制することが重要です。Agentforce エージェントを使用すると、データへのアクセスは権限と共有モデルによって管理されます。データへのアクセス元(従来のアプリケーションまたはAIエージェント)にかかわらず、同じ権限と共有モデルが適用されます。
  2. アクションの実行能力:アクションにより、AIエージェントはロジックを実行し、外部システムと統合できます。標準のAgentforceアクションには、営業、サービス、マーケティング、コマース、業種別に行動できる機能が組み込まれています。さらに、開発者は、コード、API、フロー、プロンプトテンプレートを使用して、Salesforceまたは外部システムに対して動作するカスタムアクションを構築できます。

さまざまなレベルの自律性

AIエージェントは、さまざまなレベルの自律性に対応します。以下はその一例です。

  • 支援型AIエージェント(Copilotと呼ばれることもあります)は、単独で動作するのではなく、人間と協力して能力を強化します。多くの場合、Copilotは、提案やアクションを洗練させるために、人間の入力やフィードバックを必要とします。
  • 自律型AIエージェントは、人間の直接の監督なしで独立して機能します。Agentforce AIエージェントは、他の自律型AIエージェントとは異なり、必要に応じてシームレスにタスクを人間に引き継ぐことができます。

AIエージェントの自律レベルにかかわらず、信頼性を確保し、ビジネスプラクティスを遵守し、データのセキュリティとプライバシーを確立し、幻覚、有害性、有害なコンテンツを防ぐには、適切なガードレールを確立することが重要です。

Agentforce AIエージェントは、多層的なアプローチでガードレールを適用します。

  • Einstein Trust LayerEinstein Trust Layerにより、AIエージェントは会社のデータを危険にさらすことなく、信頼できる方法でLLMを使用できます。セキュアゲートウェイ、データマスキング、有害性検出、監査証跡などを使用して、LLMのやり取りを制御します。
  • 指示:Agentforce AIエージェントを定義する際は、自然言語を使用して、何をすべきか、何を避けるべきかなど、明確な指示を提供し、動作のガードレールを効果的に設定できます。
  • 共有メタデータ:Salesforceメタデータは包括的なルールを定義します。このルールは、データが従来のアプリケーションやAIエージェントからアクセスされるかどうかにかかわらず適用されます。データのセキュリティとビジネスプラクティスの遵守を保証するための権限、共有モデル、検証ルール、ワークフローの自動化などが含まれます。
  • AIエージェント分析:この観測ツールは、AIエージェントとアクションのパフォーマンス、使いやすさ、信頼性に関するインサイトをもたらし、改善すべき分野を特定できるように支援します。
  • AIテストセンター:統合テストフレームワークであるAIテストセンターは、AIエージェント、プロンプトテンプレート、RAG(検索拡張生成)、モデルのユースケースのバッチテストをサポートしています。

営業とサービス向けのすぐに使えるAIエージェント

先日、Salesforceは営業およびサービス向けのAIエージェントを発表しました。

  • Agentforce Service Agentは、事前にプログラミングされたシナリオなしで、幅広いサービス問題を理解して対処できます。その結果、カスタマーサービスに革命をもたらし、カスタマーサービスの効率を大幅に高めることができます。
  • Agentforce SDR Agentは、インバウンドのリードに自然言語で自律的に対応することで、質問に答えたり、反論に対応したり、営業担当者の商談のスケジュール調整を行います。
  • Agentforce Sales Coach Agentは、営業担当者と自律的にロールプレイを行い、顧客発掘やプレゼンテーション、交渉のシミュレーションでバイヤー役を務めます。

これらのAIエージェントはすぐに使用できますが、Agentforceでは、AIエージェントのカスタマイズや拡張とともに、独自のAIエージェントを作成することも可能です。

AgentforceでAIエージェントを作成してカスタマイズ

Salesforce Agentforceは、AI、データ、アクションを活用した自律型AIエージェントで人間を結びつけます。信頼できるAIエージェントやその他の革新的なAIアプリケーションを作成、カスタマイズ、導入するために必要な機能とツールを提供し、適切なガードレールと監視を備えています。その主なコンポーネントについて詳しく見ていきましょう。

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メタデータ

Salesforceメタデータはユニバーサルルールを確立します。このルールは、データが従来のアプリケーションやAIエージェントからアクセスされるかどうかにかかわらず適用されます。これには、データのセキュリティとビジネスプラクティスの遵守を確保するための権限、共有モデル、検証ルール、ワークフローの自動化などが含まれます。メタデータにより、LLMはデータのコンテキストと意味の理解を深めて、より正確な回答に導くことができます。たとえば、LLMはメタデータを利用することで、CRMデータをより便利かつ実用的な方法(アドホックUI)でユーザーに提示できます。

Data Cloud

優れたAIを確立するには、高品質で統一されたデータが必要です。Salesforce Data Cloudは、Salesforceと外部の構造化データと非構造化データを含むすべてのデータをまとめて統合し、高品質で関連性のある実用的な情報でAIをグラウンディングします。200を超える標準コネクターとともに、カスタムコネクターを簡単に作成できるData Cloudは、比類のない接続性を提供します。

データを接続して統合し、調整することで、Data Cloudは、AIエージェント、アナリティクス、その他のアプリケーションでデータを大規模に有効活用し、貴重なインサイトとパーソナライズされた体験を提供します。サイロ化されたデータに制約される時代は、もはや過去のものです。従業員や顧客を問わず、あらゆるユーザーは、すべての関連データをまとめて理解できるつながりの深い体験を期待しています。

Einstein Trust Layer

Agentforce Service Agentを使用すると、会社のデータを危険にさらすことなく、既存のモデルを信頼できる方法で使用できます。その仕組みを説明しましょう。

  1. セキュアゲートウェイ:Agentforceは、さまざまなモデルプロバイダー間でセキュリティポリシーとプライバシーポリシーを一貫して適用するセキュアゲートウェイを介してモデルにアクセスします。
  2. データマスキングとコンプライアンス:個人を特定できる情報(PII)データを匿名化されたデータに置き換えてデータのプライバシーとコンプライアンスを確保するデータマスキングなど、リクエストがモデルプロバイダーに送信される前に、いくつかの手順を経由します。
  3. ゼロリテンション:データをさらに保護するために、Salesforceはモデルプロバイダーとゼロリテンション契約を交わしています。そのため、プロバイダーがSalesforceから送信されたデータを保持したり、さらに自社モデルをトレーニングすることはありません。
  4. マスキング解除、有害性検出、監査証跡:モデルから出力を受け取ると、マスキング解除、有害性検出、監査証跡ログなど、別の一連の手順が実行されます。マスキング解除は、プライバシー保護のために偽のデータに置き換えられた実際のデータを復元します。有害性検出は、出力に有害または不快なコンテンツが含まれていないかチェックします。監査証跡ログは、監査に備えてプロセス全体を記録します。

アクション

アクションにより、AIエージェントはロジックを実行し、外部システムと統合できます。標準のAgentforceアクションは、営業、サービス、マーケティング、コマース、業界に対して効果を発揮します。さらに、開発者は、カスタムコード、API、フロー、プロンプトテンプレートを使用して、Salesforceまたは外部システムに対して動作するカスタムアクションを構築できます。

トピック

トピックは、AIエージェントが理解、処理、応答するように設計された特定の分野を示すアクションの論理グループです。たとえば、注文管理、保証、価格設定、FAQなどがあります。

サービス担当者

Agentforce AIエージェントは、ユーザーや環境の入力を分析し、タスクを特定し、ソリューションを通じて推論し、それらを完了するためのアクションを調整できる自律的なソフトウェアシステムです。AIエージェントには、さまざまなレベルの自律性が存在します。支援型(一部自律型)AIエージェントは、人間と協力して目の前のタスクを実行します。自律型AIエージェントは、人間の直接の監督なしに独立して機能しますが、前述の堅牢なガードレールとともに、必要に応じてタスクを人間に引き継ぐ能力を備えています。

ツール

Agentforceは、AIエージェントや他のAIアプリケーションを構築するさまざまなローコードツールを提供します。

Prompt BuilderはSalesforceビルダーです。グラフィカルな環境で再利用可能なプロンプトテンプレートを作成し、レコードページデータ、Data Cloud、APIコール、フロー、Apexを通じて利用可能な動的データからグラウンディングできます。

Agent Builderは、AIエージェントとCopilotを設定できるもう1つのビジュアルビルダーです。AIエージェントが使用できるアクションを選択し、プレイグラウンド環境でAIエージェントを試すことができます。

まとめ:Agentforce AIエージェントがビジネスとアプリケーション開発をどのように変革しているか

AIエージェントは、私たちの生活のあらゆる場面で身近な存在になりつつあります。推論し、タスクを調整し、アクションを実行することで、パーソナライズされた体験を大規模に展開できます。LLMの言語と推論機能をソフトウェアの構成要素と組み合わせることで、LLMはビジネスの運営方法とソフトウェアの構築方法を変革しています。

Agentforce エージェントは、この変革を次のような独自の特徴でリードしています。

  • 信頼性:Agentforceは、従来のSalesforceアプリケーションと同じメタデータ、権限、共有モデルとEinstein Trust Layerを使用してデータを保護します。
  • パワフル:Agentforce エージェントは、業界をリードするSalesforceアプリケーションを利用して、営業、サービス、コマース、マーケティング、業界全体で変革的な体験を実現します。
  • 統一されたデータでグラウンディング:Agentforce エージェントは、Data Cloudによって有効化・統一されたすべての関連データでAIをグラウンディングすることで、より正確で関連性のある結果を導き出します。
  • ローコードツール:Agentforce エージェントは、Agent Builder、Prompt Builder、Model Builder、Flow Builderなどの一連のローコードツールを使用して、構築、カスタマイズ、テスト、管理できます。