「企業の成長を加速させるため、AIを導入してデータを分析し、経営戦略やマーケティングに活用していきたい」と考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。
現在、膨大なデータを高度に分析し、企業や社会に有益な価値をもたらす「データサイエンス」が広く知られるようになりました。
その中でも、AIによってデータから導かれる予測は、企業の成長を促し、ビジネスシーンにおいて決して無視できない取り組みとなりつつあります。
本記事では、AIによるデータ活用の事例や、AIとビッグデータの関係性について詳しく解説します。
生成AI活用 最新トレンド 〜営業編〜
営業関係者1000人を対象に行なった調査をもとに、「生成AIは営業関係者の生産性と売上の向上にどのように貢献するのか」「営業関係者はなぜ信頼性とスキルや準備の不足を感じるのか」についてご紹介します。
目次
AIによるデータ活用とは?
AIによるデータ活用とは、人工知能(AI)の技術を用いて膨大なデータを収集・分析し、得られた情報から企業活動に活用することです。
従来の手法では困難だった大規模なデータを効率的に処理し、AIが人からの指示に基づいて、データの傾向やパターンを発見します。
AIの機械学習のひとつであるディープラーニングは、高度な分析が可能です。
ビジネスにおいてAIのデータ活用は、経営判断の決定をサポートしてくれる重要な手段になりつつあり、企業の競争力強化にもつながります。
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AIのデータ活用に欠かせないビッグデータとの関係性
AIのデータを有効活用するには、ビッグデータに関する知識を深めておかなければなりません。
ビッグデータは人間が手作業で分析・解析できる量のものではなく、AIによる自動化が活用の要です。
以下より、AIとビッグデータとの関係性について解説していきます。
ビッグデータの概要
ビッグデータとは、単純にデータの量が多いことだけを示すものではありません。
統一された定義はありませんが、現代のビジネスにおける文脈では一定の共通認識があります。
そのビッグデータという概念を成立させるのが「3つのV」と呼ばれるものです。
- Volume(データの容量)
- Variety(データの種類)
- Velocity(データを処理する速度)ス
3つVにデータの価値(Value)という考え方を加えて「4つのV」とすることもあります。
このような特徴を持つデータそのものと、それを使ったソリューションをビッグデータと呼ぶのです。
AIとビッグデータが必要とされる背景
AIによるビッグデータの活用は、ITシステムを取り入れて業務を行う企業にとって、新たな価値を生み出します。
以前は、データの有用性に気づいていたとしても技術的な制約により実現できない状況にありました。しかし今日では実現可能なレベルとなっており、さまざまな分野で活用が始まっています。
ビッグデータの利用が可能となった背景には、AIをはじめとするIT技術の加速度的な成長があります。
背景 | 内容 |
---|---|
デジタル化の普及 | ・コンピュータやスマートフォンが普及した ・デジタル化によりデータとして集めやすくなった |
インターネットの発展 | ・インターネット上で、データの送受信や集積、連携ができるようになった |
データベースの物理的限界の回避 | ・データの分散管理の手法が確立された ・大量のデータを保有できるようになった |
ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの成熟 | ・ビッグデータを解析・分析するツールが普及した ・ビッグデータを有効活用するハードルが下がった |
このような状況がすべて整ったことで、ビジネスに付加価値を生み出すための方法の一つとして、AIとビッグデータの活用が必要となったのです。
ビッグデータにAIを活用する効果
ビッグデータにAIを活用することで、主に2つのメリットを得られます。
1つ目は、過去と現在のデータを分析・解析し、将来を高い精度で予測できることです。
大規模なデータの集積を行いビッグデータにすれば、過去と現在の状況を分析できるようになります。
分析によって未来への予測につながり、生産性や投資収益率を向上させるための指標にもなります。
2つ目は、現在のサービスに新たな価値を付与させる機会を持てることです。
たとえば、ECサイトでの検索、購入時にユーザーへのおすすめ商品を表示する機能は、商品販売に「情報提供」という価値を付加しています。
また、全国の気象情報データをもとに、よりローカルなエリアに向けた天気予報が提供されるようになったことも、新たな価値を得たサービスだと言えます。
AIによるデータ活用の事例6選
AIによるデータ活用の分野は多岐にわたりますが、ここでは代表的な6つの事例を紹介します。
- 退会リスクの高い顧客を抽出
- 購買履歴データに基づくメール・広告配信
- リスナーの好みに合わせた楽曲をリコメンド
- 製品の需要予測
- 採用選考における面接の評価
- 自動運転や走行ルート判断
各事例を参考に、自社のビジネス戦略に「どのようにAIを取り入れていくか」を検討し、データ活用の新たなアイデアの発見に役立ててみてください。
退会リスクの高い顧客を抽出
株式会社LIFULLでは不動産ポータルサイトを運営しており、物件を掲載している不動産会社に対して、さまざまなアプローチで満足度向上を図っています。
同社は、日々蓄積される大量の業務データをAIに学習させ、顧客である不動産会社に向けた「地域のユーザー動向」のレポート作成に取り組みました。
また、Salesforce EinsteinのAIを受注予測にも活用し、解約に影響しそうな要素を50個抽出させて、スクリーニングをかけながらモデル作成も行っています。
退会リスクの高い顧客を抽出できたことで、営業担当者が先手を打ってサポートできる体制が整い、フォローメールを送るプロセスも構築しています。
購買履歴データに基づくメール・広告配信
食品の製造・販売を行うGeneral Mills社では、世界の消費者ニーズを広く満たすために「AI・データ・CRM(顧客管理システム)」を活用しています。
同社は自社運営のオンラインサイトから、顧客の膨大な購入・行動データを取得して次のような施策を行いました。
- 顧客一人ひとりに合ったおすすめ製品・レシピを提供(AI+自動化)
- 顧客のセグメンテーションの精度を向上(Marketing Cloud)
上記の取り組みによって、対話型クイズや無料サンプルといった関連コンテンツのメール・広告配信が可能となり、顧客エンゲージメントも向上しています。
リスナーの好みに合わせた楽曲をリコメンド
Spotifyは世界中で数千万曲もの楽曲を提供しており、ユーザーの好みに合わせて楽曲をリコメンドする機能でも高い評価を得ています。
広告配信においても、リスナーごとに最適な情報提供を目指していましたが、手作業が主流であったため、AIによるマッチングと業務効率化を図りました。
Salesforce EinsteinのAIによるデータ活用によって、ユーザーの好みや興味に基づいた広告配信が可能となり、クリックスルー率(反応率)が53%増加しました。
また、サービス購入の可能性が高い顧客を数値化し、営業担当者が優先的にアプローチする仕組みも構築しています。
カスタマーサービス最新事情
変化に対応するカスタマーサービスの「今」とは?
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製品の需要予測
製本機器の開発から販売まで行っている株式会社ホリゾンでは、需要予測の精度向上を図るため、AIによるデータ活用を実施しています。
従来の在庫管理の方法には、次のような課題がありました。
- 多品種かつ少量受注のため需要予測が困難だった
- 過剰在庫と欠品を減るよう、担当者自身で考えて在庫最適化をする必要があった
同社は「在庫量の削減」と「欠品の最小化」の両立を目指し、消耗品やアフターパーツの受注実績をAIに学習させて需要予測を行います。
現行方式とAIによる方式の予測量を比較した結果、75%の対象部品における需要予測の精度が改善されました。
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採用選考における面接の評価
2017年、通信事業大手のソフトバンクは、新卒採用のエントリーシート選考にIBMのAIワトソンを導入しました。
将来活躍する人材をエントリーシートの段階で、AIを活用して選考することにより、人事・採用の分野での効率化を図っています。
2020年には、面接にもAIシステムによる選考を導入したことも発表しました。
ほかにも、AIによってエンジニアの能力をスコア化したり、それを用いた転職サービスを展開したりと、さまざまな分野でAIを活用しています。
自動運転や走行ルート判断
自動運転には、画像による情報の認識と判断、地図作成に用いるデータの収集・解析の作業が必要であり、そこに活用されているのがAIです。
実証実験で得た膨大なデータをもとに、安全性を最大限に配慮した運転を自動で行います。
AIによって走行ルートの判断も可能となり、ドライバーの走行履歴やパターンを分析し、交通情報と合わせて最適なルートを提案してくれるのです。
また、リアルタイムの運転状況を集めたビッグデータは、渋滞や気象状況、道路状況などを知らせるMaas(Mobility as a Service)などにも活用されています。
AIによるデータ活用のメリット
AIによるデータ活用によって、次のようなメリットが得られます。
- 現状把握と予測の正確性が上がる
- 客観的データに基づく意思決定ができる
- 人手不足が解消される
AIは膨大なデータを正確かつ効率的に分析できるため、ヒューマンエラーの抑制と作業効率の向上にもつながります。それぞれ詳しく解説します。
現状把握と予測の正確性が上がる
AIの活用によって企業の業務状況や課題などの現状把握を正確に行えるようになります。
過去のデータをもとに情報の傾向を分析し、次のような将来の動向や予測も可能です。
- 製品やサービスの需要予測
- 顧客の購買・行動予測
- 市場やトレンドの動向予測
従来の人間による作業では主観的な考えが介入したり、情報の入力ミスが発生したりと、データの正確性を確保できない場合がありました。
AIによる精度の高い現状把握と予測ができれば、企業の経営力も向上し、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。
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客観的データに基づく意思決定ができる
AIは客観的なデータに基づいて分析・判断を行うため、より論理的で確実性の高い意思決定ができます。
従来の意思決定は、KKDと呼ばれる「経験・勘・度胸」を重視していたため、人の主観的な意見に左右されやすく、誤った判断をする場合がありました。
経験や勘が必要とされる分野もありますが、正確性が求められる分野においては、AIによる精度の高いデータ活用が有効です。
また、過去のデータからAIで潜在的なリスクを予測できれば、顕在化する前に対策が打てるため、損失の回避にもつながります。
人手不足が解消される
AIはデータの収集・分析などの作業を自動化できるため、これまで人の手で行っていた作業を削減でき、人手不足の解消につなげられます。
時間を要していた作業をAIに任せることで、人員を別の部署・業務に配置でき、経営戦略の立案のような創造性の高い仕事に注力できます。
人手不足の解消は、業務効率の向上やコスト削減に直結するため、企業を成長させるうえでも、AIによるデータ活用が欠かせません。
ビジネスにおけるAI・データ活用の課題とは?
作業の効率化やデータ分析など、AIは人間の仕事をサポートしてくれる欠かせない技術です。
しかし、データを活用する環境が整っていなかったり、データ分析の知識を持った人材がいなかったりと、課題が残っているケースも存在します。
ビッグデータの活用には環境整備が必要
ビッグデータを活用するには、まず環境整備が必要です。
大量のデータを格納して加工・分析するには、規模の大きなコンピュータとストレージを用意しなければなりません。
また、データは重要な機密情報であることも多く、高度なセキュリティ対策も必要です。
データのソースとなる既存システムについても、経済産業省のDXレポートで「2025年の崖」として問題視されています。
システムのレガシー化(旧型化)やブラックボックス化が発生しており、すぐにはビッグデータに応用できないという問題もあります。
データサイエンティストの人材枯渇
もうひとつの課題は、データを有効活用する「データサイエンティスト」の人材枯渇の問題です。
データ分析・解析を行うデータサイエンティストは、数学的素養やAI、データベースなどの専門知識が必要となる職種です。
データサイエンティストの育成には多くのコストと時間がかかるため、AIとビッグデータの活用を目指す企業においては、満足できるだけ人材が成長していません。
日本ではIT人材そのものが不足しており、労働人口の減少からも人材不足に拍車がかかっている傾向にあります。
AIによるデータ活用のポイント
ビジネスにおいてAIのデータを有効活用するには、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
- 組織としてデータ分析・活用に取り組む
- 事前にデータクレンジングを実施しておく
- 情報セキュリティの対策を強化する
- 「顧客の時代」と「スピード経営」に対応する
上記のポイントを把握しておくことで、データ活用の方向性が明確になり、社内のAIへの取り組みも活発化します。
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組織としてデータ分析・活用に取り組む
顧客情報や売上推移など、多様なデータを収集・蓄積している企業にとっては、組織全体でデータ分析・活用に取り組まなければなりません。
実際にデータをどのようにビジネスの現場で活用しているか、下記に当てはまるものをチェックしてみましょう。
- 必要なすべてのデータを集約するために手動の操作が必要
- 分析されずに取り残されているデータが大量にある
- スプレッドシートの更新に時間がかかりすぎる
- データを利用したい業務部門ではなく、分析専門の担当者が分析を行っている
これらの項目にひとつでも当てはまるなら、組織としてデータ分析活用に課題があると言えます。
つまり、データが誰にでも手軽に活用できる環境ではないことを表し、大量のデータが分析されずに「宝の持ち腐れ」の状態に陥っている可能性があります。
社内の誰もがアクセスでき、リアルタイムで意思決定に活用できるような環境が、正確かつ迅速な経営判断につながるのです。
事前にデータクレンジングを実施しておく
データクレンジングを事前に実施することで、AIが正確かつ信頼性の高いデータを活用できるようになります。
データクレンジングとは、不正確なデータや欠損・重複しているデータを特定し、修正や削除するプロセスのことです。
異なるデータベースからデータの統合・分析を行う際は、情報の一貫性を保つためにも、データクレンジングが必要です。
しかし、メールの文章やSNSの投稿といったテキストは、構造化されていないデータであるため、AIによる分析ができない可能性もあります。
データクレンジングを通して、AIが学習できる適切な形にすることが大切です。
情報セキュリティの対策を強化する
企業がAIのデータをもとに意思決定を行う際は、データの保護とセキュリティ対策を強化しておきましょう。
AIに使われるデータには、企業が保有する顧客情報や経営に関わるデータが含まれており、情報漏えいや悪意のあるアクセスを防ぐための対策が必要です。
総務省では次の3要素のバランスを考慮して、情報セキュリティ対策に取り組むべきだと示しています。
機密性 | 許可された人だけが情報にアクセスできるようにすること |
完全性 | 保有する情報が正確・完全である状態を保持すること |
可用性 | 許可された人が必要なときに、いつでも情報にアクセスできるようにすること |
まずは、情報・データ管理に関するセキュリティポリシーを策定し、データの暗号化やバックアップといった対策を行いましょう。
「顧客の時代」と「スピード経営」に対応する
従来の「勘」や「経験」のような曖昧な裏づけではなく、確かなデータサイエンスに基づいて、ビジネス上の意思決定を行うことが必要です。
組織として「データサイエンス力(りょく)」を手にするには、2つのポイントがあります。
- 顧客がマーケットの主導権を握る「顧客の時代」に対応すること
- 市場変化に対して迅速な意思決定を行う「スピード経営」を実現すること
組織としてデータ分析・活用の環境を整えることで、部署や役職を問わず誰もがデータサイエンスに基づいて業務を遂行できます。
AIやIoT、ビッグデータの時代、ビジネスの成功の鍵となるのはデータサイエンスです。
以下の資料では、組織としての環境整備に取り組み、業績を大きく伸ばした事例を紹介していますので、データサイエンスの入門編としてぜひご覧ください。
▶「IoT・ビッグデータの波に乗り遅れないためのデータサイエンス力」の資料をダウンロードする
AIのデータ活用に求められる能力
AIの技術が日々進歩している中、企業においては「AIを設計・運用する能力」や「生成AIを活用する能力」を持った人材の確保が求められています。
「自社にどのような人材が必要か」を判断するために、AIのデータ活用に必要な能力を把握しておきましょう。
AIを設計・運用する能力
2018年に総務省によって公開された「情報通信白書」によると、AI時代に求められる能力には、次のような点が重視されることが明らかになっています。
上記の結果から、AIに関わる業務に必要な能力は、次のようにまとめられます。
AIに関する業務 | 必要な能力 |
AIを設計・開発するとき | 企画発想力、創造力 |
アルゴリズムを設計・開発するとき | 論理的思考能力 |
AIを運用するとき | 対人関係能力、関係各所との調整力 |
組織としてAIのデータ活用を行うためには、専門的な技術や知識だけではなく、チーム間で連携を図りながら業務を行う能力も必要です。
生成AIを活用する能力
近年、生成AIの技術が進歩し続けており、その技術変化に対応するための人材確保が欠かせなくなっています。
経済産業省では、生成AIを活用する人材について、次のような能力を持っている必要があると考えています。
- マインド・スタンス(変化を敬遠せず学び続ける)
- デジタルリテラシー(倫理・知識の体系的理解など)
- プロンプトの習熟度
- 言語力・対話力
- 問いを立てる力
- 仮説を立てる力
- 検証する力
参考元:生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方|経済産業省
生成AIの活用では、独創的なコンテンツ制作が求められるため、精度の高い指示ができるプロンプトエンジニアの確保も必要です。
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> 生成AIとは?AIとの違いやデメリット、問題点を簡単にわかりやすく解説
▶「生成AI活用 最新トレンド〜営業編〜」 の資料をダウンロードする
まとめ:AIによるデータ活用のビジネス領域を広げよう
AIによるデータ活用の有用性や価値の認識は広がり続けており、実用レベルでの普及がますます進んでいる状況です。
また、分析・解析したデータを有効に利用し、DX実現への有効なアプローチとしてもAIの技術が期待されています。
AIとビッグデータを活用した分析・解析は、情報の可視化や傾向の抽出、将来の予測などの知見を手にすることにもつながります。
ビジネスでのリーダーシップを確立するためにも、積極的にAIのデータ活用を行っていきましょう。
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