企業のデジタルトランスフォーメーションを支え、革新に挑戦し続けている「Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)」。彼らの取り組みは、他の企業でも参考になる示唆に溢れているはずです。そこでこのシリーズでは、先駆者たちがどのような成果を上げているのか、そしてその成果に至るまでにいかなるチャレンジを進めてきたのかを紹介します。
導入したSFA/CRMの活用が進まず“宝の持ち腐れ”状態に
ビジネス環境が急速に変化し、顧客ニーズがますます多様化するなか、より生産性を高め、その時代に合ったサービスを提供することは、あらゆる企業にとっての重要なテーマであることは言うまでもありません。今日では、担当者のスキルに依存した属人的な営業スタイルを脱却し、SFAやCRMといったITの活用により、顧客や商談にかかわる情報、さらには様々なノウハウの共有、可視化によって、担当者の活動をフォローしていけるように組織をあげて改革を図っていくことが求められています。
もっとも、単にITの仕組みを導入したからといって、直ちに改革が実現するわけではありません。まずは、ツールに実装されるプロセスに則った営業活動の遂行を現場に定着させていくことが不可欠です。株式会社ビズリーチでは、もともと導入していたSFAを十分に活用するべく、まさにその取り組みを実践。この事例は、多くの企業にとって、きわめて有用なケーススタディとなるでしょう。
同社は、2009年の創業以来、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」をはじめ、「HR Tech(HR×テクノロジー)」領域でのサービス展開を通じて、未来の「働き方」や「経営」のあり方を創造しています。
ビズリーチでは、2011年頃にSFAとしてSalesforceを導入しました。ところが、導入はしたものの社員一人ひとりへの定着が思うように進まず、商談情報は各セールス社員が個別に管理し、チーム内での情報共有もリアルタイムに行えていませんでした。それぞれの社員が持つ情報をうまく活用することが出来ず、まさに“宝の持ち腐れ”の状態だったといいます。
「そうした状況では、受注予測と実績の間にズレが生じてしまうこともありました。しかるべき情報に基づいて、正確にフォーキャストを行うといったことについても、十分なマインドが現場に醸成されていないと言わざるを得ませんでした」とビズリーチ 事業戦略本部 BPR部 部長の祖川慎治氏は言います。
経営陣の強固な意識のもと活用定着化プロジェクトを推進
こうした状況を変える大きな転機となったのが、2013年の春に同社 キャリアカンパニー カンパニー長の多田洋祐氏が営業組織を統括する立場に就いたことでした。「着任後直ちに、今後の営業戦略とそれを支える組織の変革に向けた検討を開始。テリトリー制による営業体制の導入、インサイドセールス組織の立ち上げという2つの施策の実施を決定しました。一方、それに伴う営業プロセスの変革を断行するとともに、新たなプロセスの実践を支えるIT基盤について検討も進めました」と多田氏は振り返ります。
検討の中で、Salesforceが導入されていながら、その活用が進んでいないという事実が顕在化。その有用性が改めて評価され、2017年2月にはSalesforce定着化を掲げたプロジェクトが開始される運びとなりました。
その取り組みは、まさに経営陣の強固な意識を示すかたちで展開されました。例えば、パイプラインの進捗にかかわるフェーズ定義の変更もその1つ。同社では当時、商談スタートから受注に至るパイプラインを4つのフェーズで捉えていましたが、それをSalesforceの標準に沿うかたちで8つのフェーズに再定義しました。
「そこでは、アポイントの取得から提案、そして受注に至るまでの一連のプロセスをより細分化し、各フェーズで営業担当者が何をなすべきかを明確化。それこそ、ある日を境にこうしたプロセス変更を断行するという徹底ぶりで、スプレッドシートの利用などSalesforce以外での情報管理を全廃しました」と祖川氏は言います。
こうした取り組みの効果は即座に現れました。具体的には、2017年8月頃には、社内の最も大きな営業部門で、月当たりの商談成約率が約2倍に跳ね上がり、それに伴って大幅な売上増につながったといいます。それも、トップセールスたちの成約率のみが引き上げられたのではなく、部内の各担当者の成約率が軒並み向上しているとのことで、まさに組織としての営業力の強化が実現されているものと言えます。
「今やSalesforceは、我々の営業活動における『共通言語』。要するに、Salesforce上の情報や数字を基軸に、組織内のコミュニケーションが行われるというかたちが定着しているわけです。そうした意味で、当社の現在の営業活動はSalesforceを抜きには考えられません」と多田氏は強調します。
増大するリードをMAツールの活用で“ホットリード”に
さらにビズリーチでは、Salesforceの活用領域を拡大するという取り組みにも着手。BtoBマーケティング部門における、SalesforceのMAツールであるPardotの適用もそうした施策の1つです。同社では、インバウンドセールスの強化やテレビCMの積極展開などを背景に、獲得するリード数は大幅に増大しているものの、それをホットリードに転化しきれていないという課題を抱えていました。
「Pardotを導入することで、ホットなリードはもちろん、そうでないリードもしっかりとナーチャリングを行って、セールスにつなげていくというプロセスを確立し、加速させていこうと考えました」とビズリーチの津野晃氏は語ります。
取り組みの結果、同社ではPardot導入前に比べ、ホットリードへの転換率が3~4倍に上昇するという効果が得られているとのことです。なお、こうしたPardotを活用したMAにかかわる一連の施策を牽引し、ビジネス上の多大な成果につなげている津野氏の取り組みを、セールスフォース・ドットコムでは高く評価。Pardotを活用した「B2B Marketer」の先駆者の一人として、津野氏を表彰しています。
「セールスフォース・ドットコムは、自身の営業戦略においても高度な先進性を備えたパートナーであると認識しています。そのエッセンスが組み込まれたSalesforceには、今後もしっかりと投資を行い、そのもたらすメリットを享受していきたいと考えています」(多田氏)
「SFAやCRMを導入したものの、思うように成果が得られていない……」。企業の間で、そうした声をよく耳にするのというのも事実です。経営陣による明確な意志のもと、最適なツールの活用を真摯に検討し、現場のマインドを醸成しながら、確実に定着させていったビズリーチにおける取り組みは、そうした課題を抱える企業にとって、きわめて示唆に富んだものと言えるはずです。
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