「Alexa、私の荷物はどこ?」Amazonで購入した商品の注文状況を確認するのは、こう尋ねるだけで済むほど簡単です。そしてこれが、あらゆる企業のカスタマーエンゲージメントの基準になろうとしています。実際、73%もの顧客が、ある企業ですばらしい体験をすると、他の企業への期待も高まると回答しています。
それでは現代の企業にとって、カスタマーエンゲージメントとは実際のところ何を意味するのでしょうか?その疑問に答えるために、全世界8,000を超える消費者と法人購入者を対象にした調査を実施し、その結果をまとめたのが『コネクテッドカスタマーの最新事情』レポート第3版です。
この調査では、次のようなカスタマーエンゲージメントの主要トレンドが明らかになりました。
- 顧客の満足度は、購入した製品やサービスの品質だけでなく、その会社のエンゲージメントの質によっても左右される
顧客は、企業が顧客の体験を向上させるために新しいテクノロジーを使用することを受け入れるようになってきた
- パーソナライズ、タイミング、つながりの3つが、優れたカスタマーエンゲージメントの基盤である
倫理と信頼が、商談や顧客ロイヤリティを獲得するための鍵となる
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カスタマーエンゲージメントとは何か、どのように変化しているのか?
私たちは、カスタマーエンゲージメントを「ブランドがすべてのタッチポイントにわたって顧客とつながり、時間とともに関係を構築していく手段」と定義していますが、これは今、変革のさなかにあります。実際、顧客の54%が、企業は 顧客とのかかわり方を根本的に変えるべきだと考えています。
新しいテクノロジーの登場により、先進企業がまったく新しい(より優れた)方法で顧客とかかわることが可能になっているのです。
それでは、現在顧客が期待していることについて、私たちは把握しているでしょうか?
- 顧客は企業に、自分のニーズをこちらから要求する「前に」知っておいてもらいたいと思っています。
つまり、パーソナライズした提案をしてもらったり、起こりうる問題を避けるためにあらかじめ手を打ってもらいたいということです。 - 顧客は時間と場所を選びたいと考えています。
優れた企業は、顧客とのやりとりに顧客が好むチャネルやデバイスを使います。それはオンライン、電話、スマートフォンのアプリ、または音声アシスタントかもしれません。いずれであっても、自社にとって最も便利な手段を選ぶのではありません。 - 顧客は貴社の組織の構造には関心がありません。
基本的に顧客は、マーケティング担当者と話をしたら、次の日にはカスタマーサービス部門でもその情報を知っていて、自分へのサポートに役立ててくれることを期待します。つまり企業にとっては、 顧客の包括的な単一ビューを構築し、全部門で共有することが決定的に重要なのです。
このように質の高い新たなデジタルカスタマーエクスペリエンスに慣れてしまうと、当然のこととして、取引をするあらゆる相手に同じ基準を期待するようになります。
そして、企業がこの基準を満たすことが非常に重要なのです。「今の時代は、顧客が大きな力を持っています」とSalesforceの業種別ソリューション担当EVPである Neeracha Taychakhoonavudhは言います。「ソーシャルプラットフォーム上の消費者コミュニティでは、誰もが自分の意見を表明します。熱烈な支持者の声を利用できるときの見返りは絶大ですが、逆に不満を持たれたときは声高に非難されます。そのため、どの業界に属する企業であっても、成功を実現するためには、顧客について知り、そのニーズを理解することが重要です」
たとえば小売業で Amazonがサービス水準を上げる たびに、銀行業、医療、ホスピタリティなど、ほかのどの業界でもサービス水準が上がります。 “「企業は二極化しています」とコンサルティング会社The Team Wの主任行動科学者であり、最高経営責任者でもある Susan Weinschenk博士は言います。「私たちが利用している企業や製品のうち、完璧でシームレスな体験を提供するものが水準を引き上げてきました。実際こうしたものは、あまりに簡単でシームレスなため、感心することすら忘れるほどです。しかしそのために、これと同等のすばらしい体験を提供していない企業や製品がいっそう目立ってしまっているのです」”
調査によれば、顧客の84%が、企業の提供する体験はその製品やサービスと同様に重要であるとしています。 昨年の調査では80%でしたが、これを上回る値です。つまり、提供できるカスタマーエクスペリエンスの質が、将来の成功を占う強力な主要指標となりつつあるのです。
「多くの企業は、もはや路上販売や同様の製品を扱うブランドが競争相手ではなくなっていることに気付く必要があります」ライターで、カスタマーエクスペリエンス のエキスパートである Dan Gingiss氏は言います。「顧客が他社から得ている体験こそが、競争相手なのです。先進的なブランドにとっては、顧客がほかの人に話したくなるような優れた体験を生み出す機会になります。またここからは、カスタマーエクスペリエンスの専門家がインスピレーションを得るために、さまざまな企業や業界の体験を幅広くチェックしていなければならないということもうかがえます」
新しいテクノロジーはカスタマーエンゲージメントをどのように変えているのか?
第4次産業革命は、AI(人工知能)、モノのインターネット(IoT)など、強力なテクノロジーの数々を私たちの生活にもたらしました。
これらのテクノロジーと、顧客の期待が変化したことの間には、明確な関連があるようです。企業がこうした新しいテクノロジーをより優れた体験の創出に活かすことを期待する顧客は、実に75%にのぼりました。
コネクテッドデバイスやスマートテクノロジーが家庭にも職場にも普及したことで、ブランドとのかかわり方に対する顧客の期待が変わりつつあることは明らかなようです。さらに、新しいテクノロジーの一例であるスマートスピーカーの導入が 年40%の勢いで拡大していること、米国の成人の4分の1以上がこの種のスピーカーを所有していることを考え合わせれば、このことが企業に大きな影響を持たないはずがありません。
顧客の大半は、テクノロジーによってどれほど優れた体験が生み出されるのかに大きな期待をかけているようです。顧客の59%が、企業とのかかわり方を AIが変革する と予測しています。
Siri、Alexa、Google Assistantなどの音声アシスタントの人気の高まりは、AIが日常生活の一部になりつつあることを示す典型的な例です。特に職場における 音声アシスタントの役割 は存在感を増しており、63%の人が、音声アシスタントはたとえばスマートフォンと同様の大きな役割を日常生活で果たすだろうと考えています。
その一方で、スマートサーモスタットからフィットネストラッカーに至るまで、コネクテッドデバイスはすでに日常の隅々にまで行き渡っているといっても過言ではありません。こういったアイテムを少なくとも1つ所有している回答者は、全体の4分の3以上(76%)にのぼりました。
「利便性や簡便性は優れたエンゲージメントの柱ですが、AIはそれを大きく推し進める可能性があります」と、PwCのグローバルCXOである David Clarke氏は言います。 「顧客の全情報がぱっと表示され、顧客に合わせて調整されたスマートなスクリプトをスタッフが利用できるとしたら、データを探す時間が減る分、関係構築に時間を割くことができます。その結果、どれほど優れたサービスを顧客に提供できると思いますか?これを可能にする土台の大部分は、こういったテクノロジーやコネクテッドデバイスの導入なのです」
効果的なカスタマーエンゲージメントをどう促進するか?
こういった進展すべてを考慮に入れたうえで、企業はどのようにしてカスタマーエンゲージメントを改善できるでしょうか?調査では、成功の鍵となるのが、パーソナライズ、リアルタイム、つながりの3つを備えた体験の提供であることがわかっています。これら3つの要素は、効果的なカスタマーエンゲージメント戦略を立てるには不可欠なものです。
体験のパーソナライズ
多くの顧客(73%)は、企業が自分のニーズや期待を把握していてほしいと考えています。 パーソナライズ は当然のことであり、マーケターはすでに、それが カスタマージャーニー全体に大きな影響を持つことを認識しています。顧客は、企業の存在を初めて知ってから購入を決定するまでの間(たとえば、バスの側面に貼られた広告を見てから、Eコマースサイトで[購入]をクリックするまでの間)を通して、自分に合わせて調整された体験を求めているのです。また、このようなカスタマイズされた体験が、カスタマーサービスからのコンシェルジュのようなエンゲージメントと組み合わせて提供されることも期待しています。 さらに、「パーソナライズされた」体験とは具体的に何を意味するのかを考えれば、ハードルは急速に上がっていきます。なんと62%もの顧客が、自らのアクションや行動に適合させた体験を提供することを企業に望んでいます。まるで気の利く同僚が、多忙な1週間を過ごしたことを知っていて好きなコーヒーを持ってきてくれるようなものです。たとえばある企業のB2B顧客になったら、オンボーディングキャンペーンに参加できるかもしれません。そこまでいかなくても、すでに購入した商品の広告が表示されなくなるといった対応が考えられます。
このような期待はどの世代にも当てはまりますが、特に ミレニアル/Z世代、 X世代ではそれが顕著です。しかし、企業がこういった期待に応えていると回答した顧客は47%にとどまり、改善の余地が大きいことを示しています。
体験をつなげる
複数の部門とやり取りする際にも一貫した対応を期待する顧客は80%近くにのぼります。つまり、効果的なエンゲージメントを実現するには、「つなげる」ことも必要なのです。たとえば、社内の誰もが顧客情報をすばやく見つけられれば、適切に対応するのも簡単になり、顧客にあれこれ質問しなくてもすみます。
しかし、この点においても企業は期待の高まりに応えることができていません。約60%の顧客が、1つの企業というよりもサイロ化された各部署とばらばらにやり取りしているような印象を一般に持っています。
もちろん、このレベルのつながりを確保することは難しい注文です。64%の顧客が、単一の取引の開始から完了までに複数のデバイスを使用しています。それだけではありません。平均的な企業では 900の異なるアプリケーションを使用していますが、そのうち接続されているのはわずか29%です。
リアルタイムの体験
71%の顧客が、企業に対しリアルタイムのコミュニケーションを求めるようになっています。すぐに要求を満たしたいという心理が購入の仕方に影響を与えており、10人のうち6人近くが、配送がより迅速で安ければ他社に乗り換えるとしています。同様の「自分で何とかしようとする」考え方はカスタマーサービスにも広がっており、単純な問題については自分で解決したいと考える人は68%にのぼります。つまり、人は「待つこと」に我慢できなくなってきており、企業は顧客とのリアルタイムで双方向の対話を構築することが求められているのです。
「信頼」はカスタマーエンゲージメントにどう影響するか?
現代の顧客の考え方を理解するうえで、「信頼」も重要な要素です。信頼はカスタマーエンゲージメントを強化するものです。顧客は自分への接し方が開かれていて透明性が高く、公正なものではないと考えた場合、その組織への興味を失います。73%の顧客が、 企業への信頼 は1年前よりも重要になっていると回答しています。
エンゲージメント戦略が 顧客データに依存する現代では、このトピックは企業にとって、より大きな意味を持つようになっています。つまり、顧客が期待するつながった体験を提供するには、企業は顧客の個別のニーズや期待、習慣について多くを知る必要があります。体験を向上させるために、関連する個人情報が使用されることを不快に感じる顧客は、ごく少数でした。しかし多くの人(63%)は、企業が顧客データをどう使っているかについて透明性が確保されているとは考えておらず、多くの企業が責任を果たしていないことを示しています。
信頼はカスタマーエンゲージメントを築くことにも壊すことにもなり、企業の収益に影響を及ぼします。プライバシーに関する懸念から購入を中止した経験のある顧客は、ほぼ半数(48%)を占めました。
「価値」を顧客にどう訴えるか?
回答者の77%が、企業の価値観、倫理、ビジネス慣行について以前よりも意識するようになり、それによって顧客として期待することも変わったと答えました。価値観がカスタマーエンゲージメントを促進するようになっているのです。顧客は企業から購入するかどうかを決めるとき、その企業が何を支持しているかを考慮します。たとえば、 平等性を重視しない企業からは購入しないと回答した顧客は、半数以上(55%)にのぼりました。
今日の顧客は企業に対し、株主だけではない幅広いステークホルダーについて、さらに社会に与える影響全体までを考慮することを期待しています。その背景には、企業は地域においても(企業が属するコミュニティへの還元)、世界的にも(より良い未来の実現)果たすべき重要な役割を担っているという一般的な考え方があります。
調査によると、顧客の76%が、企業には事業を行っているコミュニティに還元する責任があると考えています。世界規模の問題という点では、78%の顧客が企業には気候変動への対策を講じる責任があると考えています。
カスタマーエンゲージメントをどう測定するか?
顧客のエンゲージメントレベルを特定するのは、もちろん簡単ではありません。先週貴社のWebサイトを10回訪れた顧客は、店舗で営業担当者と15分間話をした顧客よりもエンゲージメントレベルが高いでしょうか?最近5回購入した新規顧客は、年に1度しか購入しない長年の顧客よりもエンゲージメントレベルが高いでしょうか?これらの質問に対するあなたの回答は、ある顧客がオンラインアンケートに回答したり、貴社ブランドを他の人に勧めたりすると変わりますか?
カスタマーエンゲージメントの測定や、成功している企業のベストプラクティスについて、Salesforceが行った別の調査から明らかになった知見をまとめたものを以下にご紹介します。
マーケターの場合:
「適切なメッセージを適切なチャネルに、適切なタイミングで」のスローガンは変わらないとしても、複雑すぎて現実には難しいものです。平均的な顧客はさまざまな状況でさまざまなデバイスを使用し、数多くの異なるチャネルを移動します。その結果、リアルタイムのエンゲージメントはマーケターの最優先事項であり、最大の課題でもあります。多くの人が、一般的なWebトラフィックやデジタルエンゲージメント率に加え、モバイルやソーシャルに関する分析を行うことで、メディア間で最適化を行う際の精度を高めようとしています。 マーケターの43% は、顧客の生涯価値も追跡します。これは、企業が顧客と効果的につながり、顧客が望む体験を提供しているかどうかを評価する究極の測定基準です。
「顧客の生涯価値を測定することは優れた出発点となります。このことが、企業にとっては既存顧客への投資を増やす理由になるでしょう」とGingiss氏は言います。「『底の抜けたバケツ』であるのもかまわず顧客獲得に浪費する無限ループを続けるのとは対照的です」
営業の場合:
前に進む営業担当者にとって、ノルマの達成は不可欠ですが、その方法は変わりつつあります。今日の営業チームの多くは、1つの取引や新規顧客に重点を置くのではなく、既存顧客との関係育成に多くの価値があることに気付いています。そのため 営業チームの58% が顧客維持率を追跡するようになっており、さらに27%が2年以内の実行を予定しています。
カスタマーサービスの場合:
顧客満足度は依然として至高の究極目標であり、最も追跡されるカスタマーサービスのKPIです。しかし、データの量が増加し、それを分析する機能も進歩したことで、エンゲージメントをより精緻に測定できるようになりました。たとえば、 サービスチームの51% は初回コンタクトでの解決率(FCR)を追跡し、44%が顧客努力指標を追跡しています。36%はケース分類のブレも追跡しています。これは、最初に回避できた顧客の問題の数を測定するものです。
部署の枠を越えたチームの連携も、カスタマーエンゲージメントの測定の成功には欠かせません。「連携を高める手段として、私が実際に見て優れていると思ったのは、たとえば顧客中心の目標を各チームで、さらに会社全体で設定する方法です」と、Vinli社のグローバルカスタマーサクセス担当のバイスプレジデント、Jason Noble氏は言います。「また、顧客からのフィードバックを「民主化」するのも1つのやり方でしょう。良い対応、悪い対応、ひどい対応の例を壁などに貼り出すのです。部署の枠を越えた作業グループを編成し、製品の所有者や責任者を持ち回りで担当するのもよいでしょう。最後に、常に自分自身が顧客であろうとすることです。顧客の立場で製品やサービスを使用し、カスタマーエクスペリエンスがどのようなものかを知ることです」
インフォグラフィック:現代のつながった顧客へのエンゲージメントを維持する
今日の顧客は、これまでにないほど大きな力を持っています。それまでのやり取りを考慮してカスタマイズされたエンゲージメントがすべての業界の基準となり、顧客は自身の体験をより強くコントロールするようになりました。
この傾向は今後も企業に対し、顧客とのかかわり方やつながり方の再考を促していくでしょう。カスタマーエクスペリエンス全体を通して、パーソナライズ、リアルタイム、一貫性という要素を備えたコミュニケーションを推進することで、企業は顧客との新しいかかわり方を見つけることができます。同時に、顧客のデータを尊重し、体験の向上のために有効に活用する企業は、顧客からの信頼を高め、結果的にロイヤリティの構築につながっていきます。
この新しいタイプのカスタマーエンゲージメントの詳細については、『コネクテッドカスタマーの最新事情』レポートの全文を今すぐダウンロードしてご覧ください。