Leading Through Change – いま、私たちができること。-
未曾有の状況に直面し、数カ月間で私たちの生活は大きく変わりました。ビジネスの現場でも、多くの企業がテレワークを導入しました。導入していない企業も、人と人との対面の機会を極力減らす努力をしています。
全く予期されていなかったビジネス環境の急変は営業部門を直撃し、営業担当者は、顧客と対面することが難しくなりました。先行きの不透明な経済状況で、多くの顧客は新規投資に消極的になっているのも事実です。この環境下で、営業担当者はどのように顧客とコミュニケーションを取っていくべきでしょうか。
各社の営業部門は、さまざまな施策に取り組み、成功体験と失敗体験を重ねています。そこで、今回読者の皆様に、セールスフォース・ドットコムの営業部門の実態を2回に分けてお伝えすることにしました。弊社の取り組みの中で、参考になることがあれば幸いです。初回となる今回は、インサイドセールス部門のマネージャー、鈴木 淳一がお伝えします。
■ 顧客の変化を感じ取り、調整する仕事
インサイドセールス部門は、電話やメールを使ってお客様とコミュニケーションを取り、検討意思のあるお客様をフィールドセールス部門へ引き継ぐことが使命です。単なるテレアポ(電話でアポイントメントを取る)部隊ではなく、お客様が初めて会話するセールスフォース・ドットコムの代表として、現場は強い責任感を持って業務をこなしています。ときには思った様な会話が出来ずに、心が折れそうになるメンバーも居ます。彼らをケアし、高いモチベーションを維持したチームを作り上げることは、私たちマネージャーの役割のひとつです。
インサイドセールス部門には、大きく3つの役割があります。まずは、商談と売上を最大化すること。直接売上を立てる仕事ではありませんが、確度の高いお客様をフィールドセールス部門にきちんと引き継ぐことで得られた売上が、メンバーの評価になります。最終的に契約へつながる貢献をしたこともインサイドセールスの評価指標の1つになります。
次に、人材育成。一般に、インサイドセールス部門は、製品やソリューションに詳しいベテランを起用する組織と若手の育成の場として活用する組織に二分されます。Salesforceは後者で、営業職として採用される多くのメンバーは、まずインサイドセールスで経験を積みます。数多くのお客様と会話することで多様なニーズに触れ、「お客様の課題を解決するためにSalesforceのソリューションをどう使えばよいか」と考えられる環境で、営業力を高めてもらうのです。
最後に、顧客の変化に対応できるハブとしての役割です。契約していただけるかどうか未知数の方々と会話をする仕事ですから、ピュアな市場のニーズが集まってきます。コロナの影響で、最も大切な役割だと気づかされたのが、まさにこの部分でした。
■ 人のモチベーションを維持
今回の危機で、インサイドセールス部門を直撃した変化は、商談化率の低下です。架電をするお客様のリストは、マーケティング部門が提供してくれます。平常時は、主にイベントやセミナーに参加していただいた方がリスト化されていて、「ある程度、商談発生が見込まれる方」が数多く含まれていました。
しかし、展示会は軒並み中止になり、セミナーやイベントもオンライン開催になりました。わざわざ時間を割いて、足を運んでいただく必要はなく、だれもが手軽に参加できます。お仕事の合間にに「ながら視聴」をしている方も居るでしょう。おかげさまでリストの件数は増えたのですが、その一方で興味レベルの浅い方、検討したくても状況的に前に進めない方も多数含まれる結果になりました。
そして全メンバーがテレワークで、周りに同僚が居ません。電話をかけても断られることが多いという条件は皆一緒なのですが、うまくいかない焦りや孤独感を感じてしまいがちです。彼らにモチベーションを保ってもらうために、マネージャーは色々な工夫をしています。まず、1対1のオンラインミーティングを適切なタイミングで行うようになりました。部門全体のオンラインミーティングの場に経営幹部に参加してもらう機会も設けました。社内SNSのChatterを使って業務以外のたわいもない話をマネジャーから振ってみるなど、リモートであっても「みんなで仕事をしている雰囲気」を醸し出す努力をしています。
■ 会社全体に貢献するために、部門の壁を越える
チームメンバーのケアはできても、本質的な問題は残ります。そこで、最初にお話ししたインサイドセールスの3つ目の役割の出番です。お客様が直面している状況は、私たちが最もよくわかっています。先行きが不透明ないま、すぐに決断してソリューションを導入してくれるお客様は極めて少数です。そこで、一部「売り込まないアプローチ」を採用することにしました。
インサイドセールスとしてお客様に対応する期間は、従来は平均30日間でしたが、それを約90日間に延長しました。そして、その間にお客様とオンラインでコミュニケーションを取る機会を何度か設けてもらい、可能な限りお客様の課題をヒアリングすることにしたのです。後半で植松から詳しく説明があると思いますが、「30分商談」を発案したのは、インサイドセールスです。30分間だけ時間をいただき、課題をヒアリングします。そのいただいた時間で、私たちから「いま、私たちができること」を提案させていただきます。その積み重ねによって、良質なコミュニケーションからお客様にあった適切なご案内ができます。
マーケティング部門にも、お客様の声をより積極的にフィードバックするようになりました。お客様がSalesforceに興味を持ったきっかけを聞く機会も多く、「こんな施策が効果的かもしれませんよ」と頻繁にフィードバックをしています。組織全体がより良くなるために、部門を超えて対話をします。セールスフォース・ドットコムにはそうした文化は最初からありましたが、今回の変化をきっかけにそれがさらに加速しました。仮に縦割り組織であったとしても、危機に際して積極的に他部門とポジティブな情報交換をすることは大切になるのではないでしょうか。
経営幹部を招いたオンラインミーティングの場で、会長から「この危機の矢面に立っているのは君たちだ」と鼓舞してもらいました。現場のメンバーは、まさに矢面に立って、新規のお客様と積極的にコミュニケーションを取り、そのニーズを正確につかみとろうとしています。厳しい時期ですが、いまはその役割を果たすべく、チーム一丸となって努力しています。セールスフォース・ドットコムではお客様の状況に合わせて深い共感と傾聴を意識しています。ですから、若い営業が電話をかけてきても、優しくお話してくださいね。
次回、フィールドセールス編では、テレワーク下の提案活動について詳しく紹介いたします。弊社の実践例から、1つでも皆様のヒントになれば何よりです。
Salesforceがお届けしている連載「Leading Through Change – いま、私たちができること。-」では、この難局に直面するビジネスリーダーの皆様に役立つヒントやリソースをお届けしています。最新の記事も是非ご覧ください。