「産業革命」と聞くと、18世紀末にイギリスで起きた技術革新を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし産業革命は第2次、第3次と続き、現在は第4次産業革命の真っ只中とされています。
かつての産業革命は、世界中の人々の暮らしや働き方に大きな影響を与えてきました。取り残された企業や人がどんな運命を辿るかは、歴史を見れば明らかです。そしてそれは、現在の第4次産業革命においても同じことが言えるでしょう。
ここでは、産業革命の歴史、第4次産業革命が経済に与えるメリット、我々の生活に与える影響について解説します。
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第4次産業革命とは何か
第4次産業革命とは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータを用いた技術革新のことです。
IoTは、あらゆる「モノ」がインターネットに接続されることで人々の生活にさまざまな利便性をもたらすことを意味します。接続した機器から集めたデータは、ビッグデータとして分析することで機器の故障や健康の不具合を予想したり、マーケティングに役立てたりすることが可能です。また、AIによりコンピューター自身が学習をして一定の判断を行うことで、より複雑な作業を自動化できるようになります。
これらの技術革新により、今までは大量生産かつ画一的に提供されてきたサービスが個々にカスタマイズされるようになります。また単純労働の自動化が進むため、AIでは実現できない、よりクリエイティブなことに人々がリソースを割けるようになります。
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産業革命の歴史
世界ではこれまでに4度の産業革命が起きており、その始まりは18世紀後半まで遡ります。それぞれの産業革命の歴史と、その時に起きた変化について見てみましょう。
第1次産業革命
第1次産業革命は18世紀後半のイギリスで起こりました。起きた変化の代表的な例は、紡績機の発明と蒸気機関の改良です。
当時のイギリスは植民地から輸入した綿花を綿織物に加工して海外へ輸出していましたが、紡績機により大量かつ効率的に綿織物が作れるようになりました。また、蒸気機関によって鉄道や蒸気船が開発され、輸出も容易になりました。
結果として、イギリスは他国よりも経済的にも政治的にも優位に立ち、世界の覇権国家となります。この産業革命の波は、ヨーロッパを中心として次々に世界へと伝播していきました。
第2次産業革命
19世紀後半に起こった第2次産業革命においては重工業の機械化が実現し、主要エネルギーは石炭から電力・石油へと移行しました。また、自動車や航空機、船などの大量生産が可能となったことから世界中で市場の獲得競争は激しさを増します。さらに、原料や労働力の確保、商品の市場として植民地拡大の動きが加速し、帝国主義へと繋がりました。この産業革命は、イギリスに代わってアメリカが世界の覇権国家となるきっかけにもなりました。
第3次産業革命
第3次産業革命は、20世紀半ばから20世紀後半と、つい最近までのことです。コンピューターの登場による革命である一方、運搬や溶接を行う産業用ロボットが生まれるなど、人間が行っていた単純作業が自動化され、産業構造における労働の在り方が大きく変化した時代でもありました。また、インターネットの普及も第3次産業革命の一つとして取り扱われます。
第4次産業革命
産業革命と機械化・自動化は非常に関連深いものですが、第4次産業革命では、これまで人間が担ってきた労働の一部がさらに自動化されています。またそれにより、労働コストが大幅に削減されるなどの経済的なメリットを企業にもたらしています。無人レジの導入や事務作業ツールの普及による労働コストの削減は、その最たるものだと言えるでしょう。
無人店舗や自動運転など、自動化による労働コストカットの流れは今後も続くものと思われ、一部の企業では今後のさらなる自動化を見越して早期退職者を募る動きも見られます。
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第4次産業革命が及ぼす影響
次に、第4次産業革命が及ぼす影響について以下5つの観点で見てみましょう。
経済活動
第4次産業革命でデジタル環境が整備されたことにより、家から出なくても経済活動を行えるケースが増えてきました。ネットショッピングを使えば自宅にいながら買い物ができますし、映画やドラマのサブスクリプションに加えて、オンラインジムやオンラインヨガなどのサービスも登場しています。今後もあらゆる分野でオンライン化が進み、自宅にいながら楽しめるようになるでしょう。また、オンライン診療も一部では進んでおり、医療や公共サービスも自宅にいながら受けられるようになります。
ライフスタイル
IoTは第4次産業革命を象徴するテクノロジーであり、私たちのライフスタイルを大きく変える可能性を秘めています。スマホを使い遠隔で照明の明るさを変更したり、冷暖房を付けたりする技術は、すでに広まりを見せつつあります。
IoT化されるのは家電だけではありません。たとえばベッドがIoT化されれば、寝るだけで睡眠のデータを取得・解析し、睡眠の質の向上や体の異常の早期発見に役立てることができます。車がIoT化され自動運転が実現すれば、自宅から離れた安価な駐車場を借り、必要に応じて自宅前まで自動運転で呼び出すようなことも可能です。
ビジネス
ビッグデータの活用も第4次産業革命を象徴する技術の一つです。たとえば広告の世界では、より正確に消費者の需要を把握し、消費者が今買いたいものを正確にレコメンドできるようになります。また、テレビCMや屋外広告ではターゲットの厳密な絞り込みはできませんでしたが、ビッグデータを活用することでよりパーソナライズされた広告を配信することができます。
雇用
第4次産業革命は労働者間の格差を拡大する可能性があります。低賃金の単純労働がAIの進化によって機械化されてしまうからです。一方、高いスキルが求められる仕事の需要は今後も存在し続けるでしょう。
また、必要な時だけリソースを集めプロジェクトが完了したらチームを解散するなど、流動的な雇用が可能になったり、どこにいても職場と同等またはそれ以上のパフォーマンスを発揮できるテレワークが普及します。テレワークは新型コロナウイルスの影響ですでに一般的となりつつありますが、この流れは今後も加速していくでしょう。「勤務地」という概念自体がなくなるかもしれません。
テクノロジー
ブロックチェーン、3Dプリンター、VRなどのテクノロジーも第4次産業革命により生まれた新たな技術です。こういったテクノロジーは、それ自体にも十分価値はありますが、医療や行政などと結びつくことでより良い世界を実現する手助けになります。
たとえば、ブロックチェーンを活用し通貨をデジタル化できれば脱税の防止に役立ちます。事実、中国では実験的に「デジタル人民元」の導入も行われています。医療の分野では、3Dプリンターを使った人工臓器、VRや5Gを活用した遠隔手術などで、病気やケガに苦しむ人たちの支えとなることもできます。
日本の現状と今後の課題
産業革命は私たちの生活にさまざまな恩恵をもたらしますが、一方では産業革命によって職を失う人がいます。そして、職を失った人と国との間には軋轢が生まれます。第1次産業革命の時、仕事を失った労働者による打ちこわし運動「ラッダイト運動」が起こったことは有名です。
しかし、日本の出生率は低下を続けており、自動化が進んでも労働者は余らないのではないかという考え方も存在します。日本は少子高齢化社会という一見不利な状況をうまく活かし、他国よりも有利に第4次産業革命を進めていける可能性を秘めているのです。
まとめ
ここまで、第4次産業革命が私たちや社会にもたらすメリットや課題について解説してきました。
第4次産業革命により、遠い未来のものだったはずの技術が現在進行形で実現されるようになってきました。あなたの身のまわりでもきっと、日々新たなテクノロジーの活用が行われているはずです。そうした最新のテクノロジーと向き合い、メリットを享受するためにも、世の中の動きにしっかりとアンテナを張り、技術に振り回されない知識とリテラシーを持つことが必要となります。
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