セールスフォース・ドットコムは創業以来、インサイドセールスを重視してきました。マーケティング部門や営業部門と連携しながら仕事を進め、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客へのアップセル/クロスセルにも役立つチームとして、長年の経験とノウハウを持っています。
ここ数年、インサイドセールスに注目が集まっています。新たにチームを立ち上げる企業も出てきていて、それぞれに知見を積み重ねているようです。こうして熟成が進んでくると、「他社がどんな施策で成果を挙げたのか。どんな課題を持っているのか、実際のところを聞いてみたい」という欲求が生まれてくるものです。
もちろん、セールスフォース・ドットコムも同様です。他社のやり方をヒントに、ブレイクスルーが生まれるかもしれません。そこで、他社のインサイドセールスの現場メンバーも含めた交流会を開催することにしました。集まったのは6社。Sansan株式会社、株式会社SmartHR、スマートキャンプ株式会社、freee株式会社、株式会社ROBOT PAYMENT、そして私たちセールスフォース・ドットコムから、約130人が和気藹々と語り合いました。
コロナ禍でオンライン開催になりましたが、大いに盛り上がったこの交流会から、主要なトピックと各社の課題や意見をお届けします。
量と質のどちらを希求すべきか
いわゆるアポ取りと、有効商談数のどちらを重視して業務を進めるかという課題です。今回の交流会では、6つのルームを用意したのですが、複数のルームで最も熱く語られたトピックでした。
スマートキャンプ:アポ取りと、有効商談数のどちらにもKPIが設定されています。現場としてはどちらかに寄せてくれた方が、目的がはっきりしてやりやすいのですが、難しいのでしょうか。
ROBOT PAYMENT:インサイドセールスがどこまでバント情報(Budget:予算、Authority:権限、Need:ニーズ、Timeline:注文時期)を取るべきかという問題にもつながりますね。しっかり固まっていない顧客の方が多いですし。
freee:アウトバウンドコールでバント情報を得るのは難しいですよね。ただ、問い合わせから入った人なら、BとNは取れることが多いです。「バントを全部取れて初めてエスカレーションする」という運用は現実的には無理ですから、この部分で調整をかけるといいかもしれません。
Sansan:将来は、担当者の強みごとに適切なリードを割り当てられるようになるかもしれませんね。“アポ取りの達人”や“コールドなお客様を暖めるスペシャリスト”などが出てきて、役割が分岐し、細分化していくかもしれません。ただ、その場合、スペシャリストに割り当てるリードの切り分けという問題は出てきそうです。
セールスフォース・ドットコム:より多くのお客様にカスタマーサクセスをお届けしたいと考えれば量に寄るでしょうし、お客様の目の前の課題を解決したいとなれば質に寄るでしょう。だから、どちらも大切なんですけれど、量を追い求めるとアポ取り部隊になってしまい、質を追いかけると営業にパスできる案件が減るというジレンマがあります。そのあたりをうまくコントロールしながらKPIをうまく変えて運用していくのが現段階の解でしょうか。
人材を育てるということ
今回参加した各社は、インサイドセールスを人材育成の場として使っています。新人はまずここで鍛えられ、それぞれのキャリア志向に合わせてさまざまな部署で活躍することになります。人材育成は主要なトピックのひとつで、インサイドセールスにおけるハイパフォーマーの定義も含めて議論が交わされました。
Sansan:弊社は2週間の研修期間があって、その後に現場に出ることになります。その後もTrailheadを使って製品の機能理解テストやロールプレイテストのほか、フィールドセールスの商談内容の共有などにより、常にスキルアップできるようにしています。
ROBOT PAYMENT:弊社は、製品知識はきちんと学んでもらった上で、アウトプットとインプットを繰り返してOJT型で育成しようとしています。
スマートキャンプ:弊社はオンラインコミュニケーション研修が中心です。イネーブルメント研修などもやって、すぐ実務に入ります。将来マーケティングやフィールドセールスなど他チームへ異動していく人材なので、様々なスキルをインサイドセールス時代に身につけられるような人材育成方法を模索している段階です。
SmartHR:弊社ではオンボーディングとイネーブルメントについての研修を実施しています。イネーブルメント専門の組織を作ろうとしているくらい力を入れていて、属人化からようやく脱却しようとしているところです。
セールスフォース・ドットコム:弊社では、商談を作るという役割とは別に、次の世代のエースを作るというミッションも持っているので、インサイドセールスを経たからこそ強い営業だと言われるように、フィールドセールスでも活躍してもらいたいです。実際にインサイドセールス出身のフィールドセールスはランキングでも常に上位をキープしている人がたくさんいます!
Sansan:育成の方向性としてモデルを得るために、ハイパフォーマーの分析をしてみたのですが、リッスンよりトークの方が多い傾向にあるのが意外でした。楽観的な性格の持ち主はトークが多くなる傾向にあり、一方で悲観的な性格だとリスクを意識しすぎてリッスンが多くなることもわかってきました。ただ、悲観的であることがダメなのかというとそうでもなく、性格に合わせた人材育成のモデルを作れないかなと考えています。
freee:ハイパフォーマーの定義も必要ですよね。すごく行動する人は良く見られがちですが、200%を数カ月連続で達成する人より、種をいっぱい持っていて適切なタイミングで摘み取れる人の方が俯瞰して見るとパフォーマンスが高いような気がします。
未来のインサイドセールス
インサイドセールスに力を入れている企業は、その成約における貢献度がかなり高いという実感を持っています。ナーチャリングや営業活動に加え、その守備範囲は年々拡大していきそうです。将来、インサイドセールスはどこへ向かっていくのでしょう。
セールスフォース・ドットコム:アポを取得した後、フィールドセールスが商談を行う前にインサイドセールスにて10分商談という詳細なヒアリングを行い、フィールドセールスにより確度の高い商談を提供する仕組みを作っています。
Sansan:その例はインサイドセールスとフィールドセールスの境界ですよね。マーケティングとインサイドセールスの境界でも同じような現象が起こっています。インサイドセールスが役に立つことがわかってきたので、よりプロセスが細分化されて、境界領域のプロセスをどうするべきかという議論が生まれてきました。
SmartHR:既存顧客向けのインサイドセールスも可能でしょう。いわゆるカスタマーサクセスもそうですし、アップセル/クロスセルをナーチャリングする体制を作れるかもしれません。ここもフィールドセールスとの境界をどう線引きするかは課題になってきそうです。
Sansan:インサイドセールスの守備範囲が拡大するのかもしれませんし、もしかすると新しいチームや部門が立ち上がるかもしれません。これからは、インサイドセールスという役割が大きな変革期を迎えると考えています。どんどん進化していますし、インサイドセールスは面白い業務領域です。これからどうなっていくのか、方向付けに加わる立場として本当に楽しみです。
セールスフォース・ドットコムは、今回の交流会でわかった“インサイドセールスあるある”や、現場が課題を感じているトピックなどをまとめたウェビナーを9月上旬に開催する予定です。また、同様の交流会を今後も実施していきたいと考えています。
このブログを読んでくださっている皆様と一緒に、インサイドセールスをさらに盛り上げていけたらと思っておりますので、ぜひご参加ください!