TM Forum DTW23『Ignite』開催
TM Forumは、1988年に通信運用管理システムの相互連携を促進させる狙いで設立された非営利の国際コンソーシアムです。現在、グローバル800社以上の企業がTM Forumのメンバーになっています。
Digital Tranformation World (DTW)はTM Forumのフラグシップ的な国際イベントで、名前を変えながらも過去十数年に渡って開催されてきました。2018年からDTWの名前で開催されており、昨年から会場をフランスのニースからデンマークのコペンハーゲンに移しています。
今年のTM Forum Digital Transformation World 2023(DTW23)は9月19‐21日の3日間で開催されました。今回の参加者は、初日の速報ベースになりますが、100以上の国から3,700人以上が参加しているそうです。昨年と比較して20%増となります。
DTW23ではメインテーマとして「Ignite」という言葉が設定されました。「Ignite」を直訳すると「火を付ける」といった意味になりますが、業界全体で高コスト/低利益の状態が続く中、今こそ変革を加速させなければいけない、という強い意志が込められたテーマ設定となっています。Opening Keynoteの中で、TM Forum CEOのNik Willetts氏から、「過去5年の業界全体での投資額が約1兆ドル以上に対し、リターンは1%程度」「我々に残された時間は3年」など、例年よりも強い言葉で厳しい現実を伝えていた点が印象的でした。
DTWでは、カンファレンス全体のサブテーマ(Tracks)が毎年設定されますが、今年は以下の5つが設定されました。セッションや展示、そしてカタリストプロジェクトもこのアジェンダに沿って企画されています。「AI at Scale」のセッションはどれも視聴者数が多く、通信業界でもAIへの関心が高い事が伺えました。
- Techco DNA
- Cloud Native Software
- Future Networks
- AI at Scale
- Platforms & Partners
Opening Headlinersの概要
TM Forum CEOのWilletts氏から、従来のTelcoの垂直統合型/サイロ化された事業形態ではもはや売上の維持も難しく、Simple、Modern、Automateの観点で早急なTechco変革が必要だ、という点が強調されました。Techcoへの変革においては、これまでの自社完結型のマインドではなく、パートナー連携を前提に考える事が重要な点にも触れられました。Generative AIを含むAIの高度化/実用化に向けては、通信基盤・蓄積されたデータ・法令遵守前提の信頼度の高い運営など、AIの進化に必要な要素を多く保有する通信業界がリードしていくべきだと熱論されました。パートナー連携/コラボレーションを推進する仕組みとして、TM Forum Innovation Hubをインドのムンバイに立ち上げたという発表もありました。
その後、M1、China Mobile、SingTel、BT、AWSがそれぞれKeynoteスピーチを実施しました。印象に残った主なポイントは以下の通りです。
- B2Cは引き続き既存収益を守りながら、成長が期待出来るB2B領域を強化する(M1、SingTel)
- 迅速な変革と早期実績の確保に向けて、パートナー連携をより強化していく(M1、SingTel)
- AIは引き続き重点戦略領域として取り組んでいく(China Mobilem,BT、AWS)
展示会場の様子
通信向けソリューションプロバイダーと併せて、パブリッククラウドプロバイダーがより広いブースを確保して情報発信を行っていました。展示会場には5つのアジェンダ毎にステージも用意されており、ブレークアウトセッションが実施され賑わっていました。Salesforceは、請求領域のソリューションプロバイダーのAria社のブースで、「Salesforce + Aria」の共同ソリューションのデモを紹介しました。併せて、Innovation Labエリアで3つのCatalystプロジェクトブースを設置しました。展示会場では、参加者同士の交流を推進するソーシャル・アクティビティにも力が入っており、コーヒーブレーク・ランチ・ハッピーアワーでは国や企業を超えて参加者同士の会話が弾んでいました。
『Running on ODA』認定企業が倍増
DTW23では、新たに『Running on ODA』を達成した5社(CityFibre、Deutsche Telekom、Orange、Telia、Telstra)が発表されました。『Running on ODA』に認定される為には、クラウド・ネイティブのOpen Digital Architecture(ODA)を導入する必要があり、6つのカテゴリー(ODA principles/rules、ODA skills、Open APIs、ODA components、agile governance、process models)において、それぞれ評価基準を満たさなければなりません。認定に向けての通信事業者側の準備は通常9−12ヶ月かかると言われています。これまでに認定されていた4社(Axiata、Jio、Telus、Vodafone)と合わせて、認定企業数が倍増して9社となりました。具体的な数は名言されませんでしたが、現在認定プロセスに含まれる企業数もそれなりの数があるようです。通信業界においても、クラウド・ネイティブは確実に進んでいます。
初日のセッションを振り返って
初日のセッションを振り返り一番記憶に残っているのは、パートナーシップの重要性が特に強調されていた点です。「成長」を取り戻す為、通信事業者の強みであるコネクティビティのアセットを活かしつつ、新たな収益機会を創出するパートナー連携を積極的に進めるべき、というメッセージが、Opening Keynoteを始め、多くの通信事業者のセッションの中で繰り返されました。実際に連携を進める通信事業者とソリューションプロバイダーが共同でセッションを実施したり、通信事業者が自社のパートナー連携の事例を紹介していたり、通信業界におけるエコシステムの構築は確実に進んでいると感じました。今後、先行企業の成功を受けて、より多くの通信事業者がパートナー連携を加速していく事になるのではないでしょうか。
本ブログでは初日の速報としてOpening Keynoteを中心にお伝えしましたが、続編としてDTW23全体を通して主要なセッションやカタリストプロジェクトについても紹介していきたいと思います。
顧客とのコミュニケーションを CRM で改善
Salesforceの通信業界向けCRMは、通信・メディア事業の業務で顧客情報の一元管理を実現します。通信管理システムの活用方法をご覧ください。
関連記事
- 【速報レポート】TM Forum DTW23
- 【レポート】TM Forum DTW23 Catalyst Projects Award
- 【レポート】TM Forum DTW23 セッション振り返り