KPIマネジメントとは、KPIの設定はもちろん、最終的な目標であるKGIを達成できるようにKPIやKPIに対する進捗状況を管理・改善することです。KPIを設定したうえで事業を行っていても、日々の業務に追われるあまり、KPIの進捗をチェックできていないというケースもあるでしょう。
KPIの設定そのものがゴールになってしまうと、KGIの達成につながらない恐れがあります。したがって、継続的にKPIを追い、改善を繰り返すKPIマネジメントが必要です。
本記事では、KPIマネジメントの概要とメリット、設定の手順を解説します。KPIを正しく運用し、KGIを達成したい方は最後までご覧ください。
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短時間でよく分かるKPIの考え方
企業が市場で成功し続けるためには、自社の強みを理解し、適切なKPIを設定することが重要です。この動画では、KPI設定の重要なポイントについて説明します。
目次
KPIマネジメントとは
KPIマネジメントとは、KPIの設定をはじめ、進捗や達成状況などプロセスを管理することです。
たとえば、KPIを振り返る際「今回はKPIの達成ができなかった」というように、評価のみ行っていてはKGIを達成できないでしょう。なぜ達成できなかったのか、そもそも正しくKPIを設定できていたのかなどを振り返り、プロセス改善しなければなりません。
定期的にKPIマネジメントを行い、必要であれば現状と目標のギャップを埋めるために改善を繰り返すことで、KGIの達成に近づくことが可能です。
KGI・KSF:KPIの関係
KPIマネジメントにおいて、KGI・KSF・KPIの意味と関係を正しく理解しておく必要があります。
それぞれの意味と関係性は以下のとおりです。
名称 | 意味 | 関係 | ポイント |
---|---|---|---|
KGI(Key Goal Indicator: 重要目標達成指標) | 最終的な目標数値 | 最終的なゴールを数値であらわしたもの | 定量的に測定できる数値で示す |
KSF(Key Success Factor: 重要成功要因) | 最重要プロセス | KGIの達成に必要なプロセス | 指標ではなく条件を設定する |
KPI(Key Performance Indicator: 重要業績評価指標) | 最重要プロセスの目標数値 | KSFを数値であらわしたもの | KSFと連動した指標を設定する |
KGI・KSF・KPIは、相互に連動しており、KPIが目標に到達するとKGIも達成できる関係性になっています。ただし、KPIはKSFの指標であるため、KSFを適切に設定できていないと、KPIを達成できたとしてもKGIを達成できない恐れがあります。
そのため、KSFの設定においては、環境や顧客、競合分析からニーズや自社の課題を発見したうえで、実現可能性の高い要素を選定することが大切です。
以下の記事では、KGI・KSF・KPIの概要と設定方法を詳細に解説しているので、参考にしてください。
▶ KPIとは?KGIとの違い・設定方法・メリット・管理のコツを解説
KGIからKPIまでを設定するポイントは、以下の動画で解説しているので、あわせてご覧ください。
▶ 無料お役立ち動画【10分で学ぶシリーズ 〜マーケティングKPI実践編〜】を視聴する
【10分で学ぶ】
マーケティング成果に繋がるKPI設計の3つのポイント
マーケティング戦略において、KPIの設計は非常に重要です。本動画では、実際にKPIを設計する上で重要な3つのポイントを解説します。
KPIマネジメントが求められる背景
KPIマネジメントが求められる背景には、次の3つがあります。
- 社会・市場環境の複雑化への対応
- 多様な顧客ニーズへの対応
- 人材の多様化・不足への対応
社会や市場環境の変化は、顧客ニーズや企業の在り方にも影響を及ぼします。KPIマネジメントは、時代が変化するなかで、企業が成長し続けるために必要なプロセスであるといえます。
社会・市場環境の複雑化への対応
KPIマネジメントは、社会・市場環境の複雑化に対応しながら企業を成長させるために重要なプロセスです。
スマートフォンの普及やAIを含むIoTの発展により、社会や市場環境は変化しています。総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書」によると、2002年時点で57.8%だったインターネット利用率が、2022年には84.9%に上昇しており、10年間で急速に普及したことがわかります。
近年では、新型コロナウィルスの流行もあり、さまざまな要因が絡み合って、求められるビジネスモデルやサービスの提供形態が変化しているはずです。
企業として成長を続けるためには、社会や市場環境の変化を受け止め、柔軟に企業活動を変容させなければなりません。KPIマネジメントのなかで、定期的に自社の状況をチェックしながら、目標達成までのプロセスを修正していくことが大切です。
多様な顧客ニーズへの対応
KPIマネジメントは、多様な顧客ニーズに対応し、顧客体験や満足度を向上させるためにも重要です。
経済産業省が発表した「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」によると、物販系分野のBtoC-EC市場規模は、2022年時点で13兆9,997億円となっています。2017年時点では8兆6,008億円であるため、約1.7倍の成長です。
ECの需要が高まりオンライン消費が増える一方で、衣料品は試着してから買いたいという実店舗のニーズもあるでしょう。価格だけでなく「環境問題に配慮しているかどうか」といった観点で購入するというように、購買につながるポイントも多様化しています。
多様化する顧客ニーズに対応し、ターゲットの顧客体験や満足度を向上させるためには、KPIマネジメントを通じて、都度プロセスを修正しながら事業を回していかなければなりません。
人材の多様化・不足への対応
KPIマネジメントは、企業で働く人材の多様化や不足に対応するためにも重要です。
内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、生産年齢(15~64歳)は、2015年の7,734万人から5年間で7,509万人に減少しています。今後も減少傾向にあり、2030年には6,785万人と7,000万人を切る推計です。
人手不足の深刻化に対応するためには、女性や高齢者、外交人労働者などさまざまな人材の採用拡大や業務の効率化による生産性の向上が求められます。
KPIマネジメントを実施すると、効率的に事業のPDCAを回せるようになります。業務の無駄が削減され、少ない人材でも売上の向上を狙えるようになるのです。浮いたリソースを教育に宛てると、さまざまな人材を戦力として育成できるでしょう。
KPIマネジメントがもたらす4つのメリット
KPIマネジメントは、4つのメリットをもたらします。
- 目標と達成すべき指標が明確化される
- 統一性・一貫性をもって事業を回せる
- PDCAサイクルを回すスピードが上がる
- 部門・人材のモチベーションアップを期待できる
正しいKPIマネジメントでメリットを享受できれば、企業の成長も加速するはずです。
目標と達成すべき指標が明確化される
KGIに連動するKFSとKPIが明確化することで、見通しをもって業務にあたれるようになります。
KPIが明確でない場合、従業員は何をしたらKGIを達成できるかがわからなくなってしまいます。成果につながるかどうかもわからず、モチベーションや生産性が低下してしまうでしょう。
KPIを基に、個人目標まで落とし込めると、従業員は見通しをもって業務を遂行できるようになります。
統一性・一貫性をもって事業を回せる
組織全体で統一されたKPIに基づき評価と改善が行われると、一貫性をもって事業を回せるようになります。
KPIが評価基準と連動していれば、個人の業務を改善する際も、定量的指標を根拠にフィードバックを行えます。客観的な根拠を基にしたフィードバックはわかりやすいだけでなく、納得感を高めるでしょう。公平性も保てるため、不満も生まれにくくなります。
ただし、人事評価では、KPIだけではなくさまざまな要素を含めて総合的に評価する必要があります。数値だけに囚われないように気をつけましょう。
PDCAサイクルを回すスピードが上がる
KPIマネジメントによって、定期的KPIの評価・改善が行われると、事業のPDCAサイクルを回すスピードが上がります。
たとえば、年に1回期末のみKPIを評価していると、施策や業務を改善できるのは次期です。これに対し、KPIを毎月の目標に落とし込んだうえで定期的に評価できれば、改善できる回数も増え、目標の達成に近づきやすくなるでしょう。
変化スピードの速い社会・市場環境のなかで、顧客ニーズに応えながら商品やサービスを提供するためには、短期的なスパンで評価・改善を繰り返すことが大切です。
部門・人材のモチベーションアップを期待できる
KPIマネジメントによって、部門や従業員の業務がどれくらい売上目標の達成に貢献しているかが可視化されると、モチベーションアップにつながります。
従業員は、目指すべき方向とやるべき行動が定まっている状態で業務を遂行できます。KPIの達成状況から自分の強みや弱みが把握でき、パスワードを向上させるための改善点も明確になるでしょう。
自己成長やキャリアアップに道筋が見えるため、モチベーションアップにつながるのです。
KPIマネジメントの手順
ここでは、KPIマネジメントの手順を大まかに6つに分けて解説します。
- KGIを定め現状とのギャップを確認する
- ギャップを埋めるためにすべきKSFを決める
- KSFをKPIに落とし込む
- KPIとKGIの整合性・達成可能性を確認する
- あらかじめギャップ対策を立てておく
- 継続的に改善を行う
一般的に、KPIマネジメントは、各部門のマネージャーや管理者の役割ですが、部門ごとに話し合ったりメンバーと面談をしたりと、コミュニケーションをとりながら進めます。
まずは、KPIマネジメントの全体像を把握し、自分がやるべきことを明確にしておきましょう。
1.KGIを定め現状とのギャップを確認する
KPIを設定する際は、KGIからKSF、KSFからKPIというように落とし込んでいきます。
KGIは、売上や利益など具体的な数値を基に定量的な指標を設定するのが一般的です。企業の中期経営計画や四半期予想など、中長期的目標をベースに定めます。経営層が決めたKGIが降りてくる場合は、ギャップの確認からはじめましょう。
KGIを決定したら、現状の数値と比較しギャップを明確にします。単純に現在の数値と比較するだけでなく、景気変動や市場動向などの要因を加味してシミュレーションを行うと、より現実に即したギャップを算出できます。
2.ギャップを埋めるためにすべきKSFを決める
次に、ギャップを埋めるためのプロセスであるKSFを具体化していきます。
以下は、サブスクリプション型ソフトウェアを販売するA社のKGIとギャップです。
項目 | 内容 |
---|---|
KGI | 1年間で売上高1億円を達成する |
今期の売上高 | 5,000万円 |
ギャップ | 5,000万円 |
ギャップである5,000万円を埋めるためのプロセスとしては、以下が考えられます。
- 新規顧客の獲得数を増やす
- 既存顧客のアップセルを促進する
- 顧客の解約率を下げる
- 市場でのブランド認知度を向上させる
部門内でブレーンストーミング式にさまざまなアイデアを出し合うことで、幅広いKSFを集められます。
ただし、際限なく取り組めるわけではないため、いくつかに絞らなければなりません。実現可能性が高いか、予算内で実行できるかなどをポイントに、現実的なKSFを選定します。
3.KSFをKPIに落とし込む
KSFを絞りこんだら、KPIに落とし込んでいきます。
A社の場合、以下のようなKPIを設定できるでしょう。
KSF | KPI |
---|---|
新規顧客の獲得数を増やす | 月間20社の新規顧客を獲得する |
既存顧客のアップセルを促進する | 既存顧客の20%にアップセルを実現する |
顧客の解約率を下げる | 年間解約率を5%以下に抑える |
市場でのブランド認知度を向上させる | Webサイトの月間訪問者数を5000人以上にする |
例では、KSFに対してKPIがひとつとなっていますが、複数設定する場合もあります。
4.KPIとKGIの整合性・達成可能性を確認する
設定したKPIは、以下の観点で再度精査します。
- KPIを本当に運用できるか
- KPIの運用によってKGIを達成できるか
たとえば「Webサイトの月間訪問者数を5000人以上にする」と設定したものの、Webサイトを管理できる従業員がおらず放置されている状態では、1ヶ月目からKPIを達成できない可能性が高いはずです。
管理者のアサインからスタートするとなると、KPIを見直さなければならないでしょう。
また、KPIの達成状況を定期的にチェックできる環境が整っているかどうかも大切です。CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)を使って、リアルタイムに数値が可視化されていると、KPIマネジメントをスムーズに行えます。
5.あらかじめギャップ対策を立てておく
KPIマネジメントには軌道修正も含まれていますが、都度改善策を検討・実行という流れをとっていると、遅れが生じる恐れがあります。
そこで、あらかじめ想定されるギャップの対策を立てておくことで、検討プロセスを短縮し、すぐに対応できるようにしておきます。
たとえば、KPIの「月間20社の新規顧客を獲得する」を分割し、1週目は5社を目標にしていた場合のギャップ対策例は以下のとおりです。
半月で10件の新規顧客を獲得できていない場合は、土曜日のアポイントメントを設定する。
ただし、あらゆる想定に対しすべて対策を立てておくのは難しいため、KPIの達成可否に大きな影響を与えそうな要因にフォーカスして検討しましょう。
6.継続的に改善を行う
組織で合意がとれたらKPIを基に運用をはじめ、定期的に評価を行い、改善を繰り返します。
KPIマネジメントでは、数値管理だけでなく、各メンバーの目標達成状況も含めて経過観察を行います。フィードバックを繰り返すうちに、メンバーのKPIに対する意識が高まり、自分で考えて業務を改善できるようになるでしょう。
ギャップが発生したのであれば、用意していた対策を実行し、かじ取りを行います。原因を分析し、的確な施策に切り換えることも大切です。
KPIは達成しているにもかかわらず、KGIは達成できなかったという場合は、KPIの設定に問題があった可能性があります。その場合は、KPIの見直しタイミングで再検討しましょう。
KPIマネジメントに役立つツール
KPIマネジメントでは、KPIとして設定した指標が可視化され、リアルタイムに追える状態が理想的です。データを収集・分析を行い、ダッシュボードに表示してくれるツールがあれば、理想を実現できます。
たとえば、営業活動や商談の進捗を可視化・共有するSFA『Sales Cloud』には、以下のようにKPIを可視化するダッシュボードがあります。
直感的にKPIの達成状況を把握できるため、データの収集・分析を省略し、改善策の立案・実行に時間と労力を割けるでしょう。
既存のシステム基盤やツールのデータをまとめて、分析を行える『Data Cloud』やデータ分析に特化したプラズマテレビ『Tableau』なども、KPIマネジメントに役立つはずです。
各種製品の機能は以下の動画で紹介しているので、ぜひご覧ください。
ツールによるKPIマネジメントの成功事例
ここでは、ツールを使ってKPIマネジメントを効率化したことで成果につながった事例を2つ紹介します。
- 事例1.リアルタイムにKPIを確認できる環境を構築
- 事例2.マーケティング上のKPIを大幅に改善
事例1.リアルタイムにKPIを確認できる環境を構築
デジタルデータソリューション株式会社は、大切なデータの復旧を請け負う企業です。毎月届く2,000~3,000の復旧依頼は、複数のソフトやツールを活用して管理していました。
同社では、作業工程別に部門が分かれています。KPIの集計管理も部門ごとに行っており、経営層がKPIを把握するためには都度問い合わせが必要でした。その結果、リアルタイムでKPIの達成状況を把握できず、意思決定にロスが発生してしまっていたのです。
そこで、顧客や案件情報を一元管理でき、かつ問い合わせ対応を効率化できる『Service Cloud』を導入。蓄積した経営データを解析し、視覚的に把握できるツール『Einstein Analytics』を併用して、KPIを可視化しました。
売上だけでなく、問い合わせ件数、納品待ちの在庫数など、定量的データがダッシュボードでリアルタイムに確認できる状態です。
ツールを導入した結果、出張先からもKPIの達成状況を確認できるようになり、改善策の立案・実行までをスムーズに行えるようになりました。従来発生していた現場の集計管理業務も削減され、効率化にもつながっています。
(本事例は2017年9月時点の情報です)
参考:顧客対応改善と正確なKPI把握のため急務だったデータの統一的な管理
事例2.KPIの把握・改善を効率化で効果を実感
株式会社SUPER STUDIOは、統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供する企業です。同社は、カスタマーサポートの問い合わせ対応を効率化するべく、もともと営業部門で活用していた『Service Cloud』を導入しました。
全社の情報を一元化した結果、問い合わせ対応の効率化と品質の向上だけでなく、各種KPIの把握を迅速に行えるようになったのです。従来は、メールによる問い合わせに対する初回返信までの時間や受電率などのKPIをスプレッドシートで管理しており、手作業で入力・集計を行うため、負担がありました。
現在は、ダッシュボードを見るだけでリアルタイムにKPIの達成状況を把握できるため、業務負担を削減できています。改善策の検討に時間を割けるようになり、問題の認知から翌週には対策を打てるというように、迅速にPDCAを回せるようになりました。
参考:セールス・カスタマーサクセスの連携強化で、売上に貢献する新たなカスタマーサポートへ
まとめ:KPIマネジメントを実行しKGIを達成しよう
最終的な目標であるKGIを達成し、企業を成長させるためには、KSFやKPIを設定し、日々の業務に落とし込む必要があります。
設定しただけではKGIの達成につながらないため、定期的にKPIを評価し、改善を繰り返すKPIマネジメントが大切です。
KPIマネジメントを効率的かつ効果的に実施するためには、KPIの達成状況をリアルタイムに把握できる状態が望ましいでしょう。そこで役立つのが、CRMやSFAなどのツールです。
Salesforceでは、グラフや分布図などで直感的にKPIの達成状況を把握できるダッシュボードを構築できる製品を多数そろえています。
データの統合に特化した『Data Cloud』や可視化・分析を得意とする『Tableau』。顧客からの問い合わせ対応を効率化する『Service Cloud』や営業活動を可視化できる『Sales Cloud』など、業務の特性にあわせてお選びいただけます。
どの製品が自社に合っているかわからないという場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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