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「自然戦略」が経営に効果的な理由と10のヒント

「自然戦略」が経営に効果的な理由と10のヒント
ネイチャーポジティブのムーブメントは、自然の損失を食い止め回復させることを世界や企業に呼びかけています

企業には自然を保護し再生させる責任があります。この分野のリーダーたちから、ビジネスの基盤を構築するための10のヒントを学びましょう。

自然との関係を保つことは、簡単なことではありません。

企業にとって、自然はリスクであると同時に機会でもあります。Salesforceでは、より広範なネイチャーポジティブ(自然戦略)のムーブメント(英語)の促進に取り組んでいます。

そこで、Wonderoomとのパートナーシップのもと、ビジネスと自然を統合する方法について企業が抱く難問にお答えするためのウェビナーシリーズ「Business + Nature」(英語)を開始しました。

ネイチャーポジティブのムーブメントは、自然の損失を食い止め、回復させるよう企業に呼びかけています。

問題は、多くの企業が何から始めればいいのかよくわかっていないことです。自然は複雑であり、サステナビリティの専門家は、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)のような新しいESGレポーティング規制を満たしながら、既存の環境コミットメントを進展させる方法に、苦労していると感じています。

Net Zero Cloudのようなテクノロジーは、規制遵守をサポートするだけでなく、ビジネス、人々、地球へのインパクトを推進する上で重要な役割を果たします。しかし、多くの企業は、自分たちのビジネスのために取るべきネイチャーポジティブのムーブメントを明確にできず模索しています。

ビジネスプロフェッショナルは、自然戦略の構築と実施について、世間にあふれている雑多な情報を取捨選択し、実践的なインサイトを得る必要があります。リーダーたちが自然に対する取り組みから得た経験や教訓を共有することで、このテーマに取り組む企業に刺激を与え、支援します。

ここでは、ビジネスに貢献し、かつ地球規模の影響をもたらすネイチャーポジティブ戦略を構築・実行するために役立つ、自然のエキスパートからの実用的な10のヒントを紹介します。

持続可能な未来を築くためのツール

サステナビリティを実現するための6つの優先事項にフォーカスし、気候変動への取り組みとネットゼロ実現に役立つリソースを紹介します。

ネイチャーポジティブ戦略とは何か

ネイチャーポジティブ戦略(自然戦略)とは、自然損失の阻止と回復に貢献するために企業が行う一連の行動のことです。

Salesforceにおけるネイチャーポジティブ戦略は、自然との関係を明確にし、人と気候に根差したネットゼロのネイチャーポジティブな未来へのコミットメントを実現するために、私たちがどのような役割を果たすのかを示す、発展的な戦略です。 

ネイチャーストラテジーハンドブック(英語)は、独立した文書として、事業戦略、気候変動戦略、またはサステナビリティ戦略に組み込むかどうかに関わらず、自然に対する戦略を策定する方法について段階的なガイドを提供します。

各企業の戦略は様々です。自然への明確なコミットメントや目標を掲げる企業もあれば、既存の方針やフレームワークに組み込む企業もあります。

最終的に、戦略は長期的なビジネスソリューションを実施するために必要な基盤です。

ネイチャーポジティブ戦略のメリット

企業は自然に依存すると同時に、自然に影響を与えています。このことは、これまで多くの企業が見過ごしてきたビジネスリスクと機会を生み出す可能性があります。
世界経済フォーラムの『グローバルリスクレポート』(英語)は、自然損失を継続的にリスクとして挙げています。しかし、ネイチャーポジティブ(英語)な政策を実施することで、2030年までに3億9500万人の雇用(英語)を創出し、年間10兆米ドル以上の新たなビジネス価値を生み出せることがわかっています。ネイチャーポジティブムーブメントは、企業が行動を起こし、自然戦略を策定することを奨励しています。

ネイチャーポジティブ戦略を構築するための10のヒント

これから紹介するヒントは、他の組織のインサイトを取り入れながら、独自のネイチャーポジティブ戦略を策定するのに役立ちます。

1. 問題を機会に変える

組織には、自然を保護し回復させる責任があります。自然戦略は、その方法を見つけるのに役立ちます。世界的に有名なある美容ブランド(英語)は、環境や社会的課題からビジネスの機会を生み出すことを目指しています。起こりうる問題を回避するのではなく、問題を理解し、それを新たな可能性に変える力としてビジネスに活用することをリーダーに奨励しています。

世界大手の化粧品会社(英語)も同様のアプローチをとっており、自然戦略により、製品に使用する1万7000種類の天然素材の責任ある調達と、サプライチェーン管理を意図的に行っています。また、製品の革新に集中する(英語)ことで、自然への害を減らし、メリットを増やしています。

2. 成長に向けて基盤となる戦略を立てる

スピーカーたちは、戦略とは地に足をつけるための杭であり、利害関係者の期待や規制を満たすために、時とともに進化し、変化しうるものであると話しています。

家具製品の設計、製造、供給を担うある国際企業は、単独の戦略としてネイチャーポジティブを捉えていません。彼らのアプローチは、気候変動戦略、サプライヤー行動規範、コミュニケーション戦略、人材戦略など、既存のビジネス機能に自然を統合するというものでした。

ネイチャーポジティブ戦略のビジネスケースの作り方

自然戦略を策定し、実施するには、経営陣の理解と協力が必要です(英語)。場合によっては、経営陣は賛同するかもしれませんし、すでに賛同している場合もあります。
Business for Nature社のCEOであるEva Zabey氏は、「リーダーシップはすでに関与していることが多いが、エネルギーと熱意から変革的な行動へと移行し、自然をビジネスの意思決定の中核に据える必要がある」と述べています。この変革には、経営陣だけでなく、取締役会、中間管理職、そしてステークホルダーも必要です。

3. 気候変動と自然を共に解決しなければならないことを明確にする 

この時点で、リーダーシップは気候危機についてよく理解しており、気候問題だけで十分だと感じているかもしれません。

しかし、自然は単なるビジネスアジェンダのひとつではなく、私たちの経済を支え、気候変動と密接に結びついていることをリーダーが理解することが重要です。自然と気候は、地球規模で共に解決が必要(英語)ですが、サプライチェーンへの関与や直接事業への投資など、企業として取り組む現実的な方法も必要です。

幸いなことに、あなたの会社はすでに自然のために行動を起こしているかもしれません。それは、ウォータースチュワードシップへの注力、森林破壊への取り組み、自然を基盤とした解決策(NbS)への投資、サプライヤーとの連携などを通じて行われているかもしれません。

気候と自然の双方に優先順位を置くことで、企業はあらゆるリスクと機会を考慮した意思決定を行うことができ、同時に効率的に業務を遂行できるようになります。

4. 事業全体のステークホルダーを巻き込む

自然への取り組みを企業に求める投資家は増えています。経営陣や社内の意思決定者が行動に移すための関心事を探ることが必要です。
彼らにとって自然はどのような存在か。それは、気候関連のリスクを管理するために、すでに行っている活動を支援・強化することかもしれません。あなたの役割は、希望を保ちつつ、緊急性を伝えることです。自然への投資やネイチャーポジティブムーブメントへの支援は、ビジネスと評判を高める機会(英語)として捉えることができます。

Net Zero Cloudを用いた組織横断ESGデータ管理

この動画ではマテリアリティ評価、気候変動ダッシュボード、DEIダッシュボードなどについて解説します。

行動を起こす準備はできている?森林と海洋が解決策を提供

生物多様性の危機は、今こそ投資を必要としており、多くの企業が今すぐ行動を起こしたいと考えています。生態学者たちは、生態系を保護・保全できれば、森林が大気中の余剰炭素(英語)の約3分の1を吸収できることを発見しました。しかし、健全な生態系は単なる気候変動対策ではありません。

生態学者Thomas Crowther氏が言うように、「自然の真の価値は人々と暮らしの繁栄」であり、炭素隔離はその付加的な恩恵に過ぎません。自然への投資のために、企業が今すぐできる「後悔しない」ための行動は数多くあります。

5. ビジネス・生物多様性・人々に利益をもたらす賢い投資を行う

自然を基盤とした解決策(NbS)への投資は、企業が気候変動へのコミットメント達成を支援しますが、企業が投資に対して全体的なアプローチをとることが絶対的に重要です。「脱炭素」のような狭い範囲や単一の成果だけを優先するのではなく、社会的側面(英語)を考慮する必要があります。

ある高級ホテルリゾート企業(英語)は、地域第一主義を掲げ、ホテル周辺地域に投資しています。こうした投資は、雇用の創出や激しい暴風雨に対する自然のバリアとしての役割を果たし、そこに住む従業員や地域社会に利益をもたらしています。従業員や施設を保護することで、この企業は自社の事業回復力、競争力を強化しています。

6. インパクトと投資を拡大するための協力

自然を基盤とした解決策(NbS)の可能性を確実に享受するために、社会は巨額の資金ギャップ(英語)を埋める必要があります。そのためには、組織が一丸となって大規模な投資を行うことが不可欠です。

組織は、慈善助成金、ベンチャーキャピタル、カーボンクレジットなど、自然への投資にさまざまな金融手段で自然に対し投資できます。こうした投資は森林生態系への投資に重点を置く1t.org(英語)のような連合体の一員として投資を行えば、さらに効果を高めることができます。また、自然の回復に焦点を当てたカーボンクレジットプロジェクトに資本を提供するファンドに参加する選択肢もあります。

透明性が信頼を築く

企業によっては、自然関連のリスクや機会を評価・管理しようとする最初の動機が、単に規制遵守(英語)の必要性によってもたらされている場合があります。たとえコンプライアンスが原動力であったとしても、自然への影響や依存関係、リスク、機会を評価し、開示するプロセス(英語)などから得られる真の価値がないわけではありません。気候変動と自然の両方にとって、Net Zero CloudのようなESG管理プラットフォームを持つことは、ステークホルダーの高まる要求に応えるために不可欠です。

7. 何が重要かを理解し、意思決定に役立てる

自然の損失を食い止め、回復させるためには集団的努力が必要ですが、時として企業がコントロールできることから切り離されているように感じられることがあります。

数十年の歴史を持つ再生可能エネルギー企業(英語)は、ネイチャーポジティブの活動を非現実的な願望ではなく、現実的なタスクに分解しました。重要性評価から始めることで、どのようなトピックに注力すべきかを理解するだけでなく、バリューチェーンのどこに取り組むべきかを見出すことができます。

8. 今ある情報から始め、そこから構築する

自然に関連する影響を査定しましょう。そして、今ある情報から始めることを恐れないでください。既存のネイチャーポジティブに積極的な目標がある場合でも、まだ目標を設定していない場合でも、ほとんどの企業は自社の事業フットプリントとバリューチェーンに関する情報(温室効果ガスのフットプリントを算出するために使用する情報と同じもの)を持っているはずです。

もちろん、こうしたデータは、より多くの企業が開示するにつれて、時間の経過とともに改善され、より強固なものになっていくでしょう。
テクノロジーもまた、企業が自然関連データを測定・管理する方法を変革するでしょう。そのため、Salesforce、ERM、NatureMetrics、Planetは、企業が緊急の生物多様性の課題に取り組み、自然への影響を測定、追跡、報告することを支援する初の取り組みであるNatureTech Alliance(英語)を発足させました。

企業だけではネイチャーポジティブな未来を創造できない

企業はネットゼロやネイチャーポジティブの目標を実現するために、世界中の生態系に関わっています。場合によっては、土地の管理者である地域コミュニティや先住民の権利や生活と対立することもあります(英語)。実際、彼らによって世界の生物多様性の80%が守られています(英語)。

Business + Natureで(英語)は、ボツワナ、メキシコ、ペルー、カナダからリーダーを招き、企業が自然戦略を実施する際に、地域コミュニティをよりよく支援し、パートナーとして協力する方法について議論を深めました。

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9. 土地に最も精通している先住民や地域社会の専門知識に耳を傾ける

先住民や地域コミュニティから学び、彼らの専門知識を高めましょう。企業は、自社の枠を超えて考える必要があります。単にサイロ化された業界で「通常のビジネス」を営むのではなく、すべての企業は学生や協力者、責任ある投資家、そしてグローバルファーストの考え方をもつ管理者として、長期的な視点で考えるべきです。

Acción Andina(英語)プロジェクトの共同設立者兼プレジデントであるTino Aucca氏が語ったように、私たちは「オープンな対話」をし、互いに学ばなければなりません。彼の組織は、アンデス山脈の環境とコミュニティに良い結果をもたらすために、古くから伝わる文化的慣習を復活させています。

これは、地元コミュニティから投資家まで、関係者がアンデスの人々の生活にとってこのプロジェクトが変革的な力を持つことを理解しているからこそ可能なのです。

10. 長期的に考える

パートナーシップを育み、強力な成果を実現するには時間がかります。投資の効果を1年以内に出すことを期待する場合がありますが、自然の生態系が成熟するには何年もかかります。

持続的な変革は、決められたスケジュールで行われるものではありません。企業は、コミュニティと共有する目標に向かって取り組めるように、期待をリセットする必要があります。そのためには、敬意を示し、信頼を築き、不平等なパワーダイナミクスが生じないように対等なパートナーシップを共同で構築することが必要です。

Sustain267 Podcast(英語)の司会者であり、気候正義の提唱者であるPato Kelesitse氏は、彼女のコミュニティと自然との関係を強調しました。

彼女は「私たちは土地から生計を立てて暮らしています。土地と自然の健全性が私たちの健康なのです」と述べています。企業は、人と自然との深く長いつながりを理解し、尊重することで、より良いパートナー関係を築くことができます。

私たちは土地から生計を立てて生きています。土地と自然の健全性が私たちの健康なのです

Pato Kelesitse氏

今こそネイチャーポジティブな未来を

ネイチャーポジティブな未来に向け、組織が戦略と運営を一致させるべき時が、かつてないほど明確かつ緊急に迫っています。

ネイチャーポジティブムーブメントは勢いを増していますが、実際に自然の損失を食い止め回復させるためには、あらゆる分野の企業が行動を起こす必要があります。ツールやガイダンスは存在しますが、それを実践するかどうかは企業次第です。

日本のステークホルダーの皆様へ(2024年)

Salesforceでは、すべてのステークホルダーに対する価値を高めることが、Salesforceの企業としての成功や、より公平なコミュニティ、より公正な社会、より健全な地球環境の実現につながると考えています。

※本記事は米国で公開された “Why a Nature Strategy Is Good for Business Strategy – 10 Tips” の抄訳版です。本ポストの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。

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