売上分析は、売上データから現状の課題を把握して、売上を向上させるために必要な活動です。
しかし、目的を定めていなかったり、売上分析に活用できるフレームワークを知らなかったりすると、データの収集・加工が無駄になる恐れがあります。
この記事では、売上分析の基本的なやり方から、7種類のフレームワークまで詳しく解説します。
売上分析の効率を上げるツールや成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
10分で学ぶ
データ分析の始め方
売上の現状を把握する上で、重要となるのがデータ分析です。しかしやり方を誤ると課題を特定出来ず次の行動に繋がりません。
本動画では10分でデータ分析を始めるうえで考えるべきことをご紹介いたします。
目次
売上分析とは?
売上分析とは、売上データを多角的に分析して、自社が抱える課題の把握や将来の戦略立案に活用できる重要な情報分析の一種です。
主な売上分析の指標は、以下のとおりになります。
- 時系列(月次、年次、四半期など)
- 製品・サービス
- 顧客セグメント
- 地域
- 販売チャネル
- 営業担当者
- 店舗
- 部門
売上分析を効果的に行うためには、正確なデータの収集と適切な分析ツールの使用が重要です。
また、データを比較するだけでなく、具体的なアクションにつなげることで自社の成長や改善に役立つ洞察を得られます。
売上分析を行う目的
売上分析の最大の目的は、自社の現状を正確に把握して、効率的に売上を拡大することです。
さまざまな指標を用いた分析によって、現状と目標のギャップを把握することで効果的な対策を立案できます。
また、分析をもとにしたKPIの設定により、従業員のモチベーション向上や行動指針の明確化が可能です。
売上分析をもとに、企業全体が同じ方向を目指し、具体的な数値目標に向けて取り組むことで、効果的な売上向上が期待できます。
売上分析を行う3つのメリット
売上分析を行うメリットは、以下の3つです。
- 市場の動向が理解できる
- 収益性の高い商品や顧客を把握できる
- 適切な予算設定ができる
自社の業績向上に売上分析を役立てられるように、詳しく見ていきましょう。
市場の動向が理解できる
競合他社との比較や顧客ニーズの変化を売上分析によって読み解くと、市場の動向に対する理解が深まります。
たとえば、自社の売上成長率が業界平均を下回っている場合、競合他社の成功要因を応用することで、市場に適応して自社の売上改善に役立つ可能性があります。
また、製品・サービス別に売上分析を行うことで、顧客ニーズの変化を読み取って、新製品の開発や既存製品の改良のヒントを得ることも可能です。
適切な売上分析は、企業が市場の変化に適応して、競争力を強化するために重要な役割をはたします。
収益性の高い商品や顧客を把握できる
売上分析を行うことで、収益性の高い商品や顧客を客観的に可視化できます。
売上に貢献している製品・サービスを正確に数値で把握することは、経営資源の最適化に有効です。
たとえば、自社製品・サービスの売上に30代男性がもっとも貢献している場合、30代男性向けのマーケティング施策を強化することで、顧客獲得コストを抑えながら、売上を伸ばせる可能性があります。
売上分析は、企業の限られたリソースを有効に活用し、全体的な収益性の向上に効果的です。
適切な予算設定ができる
継続的に売上分析を行うことによって、過去のトレンドや季節変動を把握できるため、現実的に達成可能な予算設定ができます。
たとえば、過去の売上パターンのデータを蓄積し分析することで、適切な在庫水準を把握して、在庫関連の予算を効率的に設定可能です。
適切な予算設定は、企業の目標達成への道筋を明確にし、全社的な方向性の統一にも寄与します。
予算設定について興味がある方は、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。
売上分析の基本的なやり方
売上分析の基本的な進め方は、以下のとおりです。
- 目的を明確にする
- 売上データの収集・加工を行う
- 売上データを分析して可視化する
自社の競争力強化と持続的な成長を実現できるように、順番に詳しく解説します。
1.目的を明確にする
売上分析は膨大なデータを扱うため、結果を導き出すまで時間がかかる作業です。そのため、明確な目的がなければ非効率になる恐れがあります。
分析を効率よく進めるためには、以下の項目にそった目的の明確化が重要です。
- どの指標(顧客セグメントや製品・サービスなど)をもとに分析を行うのか
- なぜ分析するのか? (新商品の販売戦略を改善、顧客満足度を向上など)
- 分析結果をどう活かすのか? (価格を見直す、広告戦略を変えるなど)
目的を明確にすることで、分析の効率が上がり、より効果的な結果を得られます。
2.売上データの収集・加工を行う
次に、明確にした目的に合わせて必要なデータを収集します。
収集するデータの具体例は、以下のとおりです。
- 売上のデータ
- 顧客単価
- 人件費・経費
- 競合他社のデータ
- 公的機関が公表する調査データ
収集したデータは、形式や単位が不揃いであったり重複や欠損があったりと、そのまま分析できない場合がほとんどです。
正確な分析結果を得るために、あらかじめフォーマット変換やデータ統合などの加工を行っておきましょう。
3.売上データを分析して可視化する
目的に合わせた分析手法を用いて、収集・加工したデータをもとに売上分析を行います。
売上分析は膨大な量のデータを扱うため、システムやツールを導入することで、人為的ミスの防止や作業時間の短縮が可能です。
また、分析結果の数値はグラフや図表などで可視化すると、第三者でも分析結果を理解しやすくなるため、迅速な経営判断に役立ちます。
売上分析に効果的な7つのフレームワーク
売上分析に効果的なフレームワークは、以下の7種類です。
- ABC分析
- アソシエーション分析
- 要素分解分析
- クロス集計分析
- 重回帰分析
- セグメント分析
- RFM分析
自社の取り組みに合わせた分析手法は選べるように、それぞれ詳しく解説します。
1.ABC分析
ABC分析とは、売上高やコスト、在庫などの評価基準にそって「A・B・C」とランク付けし、優先度を決めて分類する手法です。
「売上の8割は全体の2割で生み出している」とするパレートの法則にもとづいており、売上に占める割合の高い商品・サービスの販売戦略から優先的に実行します。
具体的に用いられる場面は、以下のとおりです。
- 在庫管理
- 売れ筋商品の特定
- 得意先の管理
分析結果を機械的に適用するのではなく、業界特性や企業の戦略に応じて柔軟に解釈し、活用することが重要です。
2.アソシエーション分析
アソシエーション分析とは、大量のデータの中から自社にとって有益な情報を見つけだす「データマイニング」の一種です。
複数の項目が同時に発生する確率や関連性を分析し「もしAならばB」という仮説の立案に活用できます。
アソシエーション分析を仮説立案に活用した具体例は、以下のとおりです。
分析結果 | ビールを購入する顧客の60%がスナック菓子も購入している |
仮説 | ビールとスナック菓子の陳列を近づけると売上が伸びるのでは? |
アソシエーション分析を活用することで、顧客あたりの単価を上げるアップセルやクロスセルの戦略策定に役立ちます。
アップセルやクロスセルの違いや活用方法に興味がある方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
3.要素分解分析
要素分解分析とは、売上を複数の要素に分解して、各要素が売上減少や増加にどの程度影響しているかを探る手法です。
ある商品の売上が減少している例をもとに解説すると、以下のとおりになります。
1.売上の基本要素 | 売上=販売数量 × 販売単価 | |
2.販売数量を細分化 | 売上=市場規模 × 市場シェア × 販売単価 | |
3.各要素の分析 | 市場規模 | 前年よりも5%縮小している |
市場シェア | 前年よりも2%縮小している |
複数の要素に分解した分析によって、売上減少の要因が、市場規模の縮小と自社シェアの低下にあることが判明しました。
要素分解分析は、問題の根本原因を特定し、効果的な対策を立案するための有効です。
4.クロス集計分析
クロス集計分析とは、2つ以上の属性の組み合わせによってデータをグループ化し、表形式にまとめて分析する手法です。
たとえば、売上分析では、製品カテゴリーと地域別売上の関係性の分析に活用できます。
製品カテゴリー | A地域 | B地域 |
---|---|---|
家具 | 100万円 | 50万円 |
衣料品 | 50万円 | 100万円 |
データの傾向を視覚的に把握しやすいため、地域ごとの商品ラインナップの最適化や、地域特性に合わせたマーケティング戦略の立案に効果的です。
ただし、解釈が複雑になるため、扱うデータ量には注意しましょう。
5.重回帰分析
重回帰分析とは、ある成果に対する要素をもとに、各要素がどれくらいの影響を与えているかを分析する手法です。
重回帰分析では、成果を「目的変数」、要素を「説明変数」と呼びます。
たとえば、目的変数が「売上」の場合、主な説明変数は以下のとおりです。
- 顧客単価
- 販売数
- 顧客数
- 販売経路
- 地域
重回帰分析を行うと、各説明変数が目的変数に与える影響を数値化できます。
影響度の高い説明変数への着目によって、効率よく成果を上げることが可能です。
6.セグメント分析
セグメント分析とは、顧客や市場を特定の基準にもとづいて分類し、それぞれのグループの特徴や行動パターンを分析する手法です。
主に、以下のセグメントに分けて分析を行います。
セグメント | 要素 |
---|---|
地理的変数 | 国や都市、地域経済、人口、宗教など |
人口動態変数 | 性別、年齢、職業、家族構成など |
心理的変数 | 趣向、生活スタイル、価値観、宗教観など |
行動変数 | 購買状況、経路、購入頻度、購入日、時間帯など |
適切にセグメント分析を行うことは、顧客ニーズへの的確な対応や効率的なマーケティング活動につながります。
ただし、市場環境や顧客行動の変化に応じて、定期的なセグメントの見直しや分析が必要です。
セグメントのやり方について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
7.RFM分析
RFM分析とは、Recency(最新購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)の3つの指標をもとに顧客を分類する手法です。
RFM分析によって得られる効果は、以下のとおりになります。
- 顧客の価値や行動パターンを定量的に評価できる
- 効果的な顧客セグメンテーションを行える
- ターゲットを絞ったマーケティング戦略を立案できる
RFMの数値がすべて高い顧客は、自社商品への興味関心が高く、継続して購入してもらえる可能性が高いといえます。
しかし、RやFの数値が低い顧客は、自社の製品・サービスに満足していない可能性があるため、購買意欲を高める施策の検討が必要です。
RFM分析のやり方について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
売上分析に役立つツール
売上分析に役立つツールは、以下のとおりです。
- Excel(エクセル)
- SFA・CRM
自社の運用に合わせて選べるように、詳しく見ていきましょう。
Excel(エクセル)
Excelは操作に慣れている従業員も多いため、導入のハードルが低いツールです。
表や項目を自由に設定できるため、自社に合わせた集計ファイルを作成できる利点があります。
また、ピボットテーブルの使用によってデータ整理も可能です。関数を使いこなすことで、あらゆるデータの多角的な分析に対応できるでしょう。
しかし、膨大なデータ処理に適していなかったり高度な分析は属人化しやすかったりと、目的によっては不便に感じる場合もあります。
Excelを使用するメリット・デメリットについては、以下の記事も参考にしてみてください。
SFA・CRM
SFA・CRMとは、営業活動を支援するツールのことです。具体的には、以下のとおりになります。
- SFA:営業で扱われる多種多様な情報を記録・管理するツール
- CRM:顧客情報や行動履歴、顧客との関係性を管理するツール
決まったフォームにデータを入力していくため、データの管理がしやすく、入力する担当者の負担を軽減できます。
また、Ecxelのように関数を組む必要がなく、蓄積したデータをもとに高度なデータ分析やグラフの作成まで容易に可能です。
ただし、システムを運用するために、コストがかかる点を考慮する必要があります。
SFAやCRMの活用方法について興味がある方は、以下の関連コンテンツもあわせてご覧ください。
売上分析にSFA・CRMが適している理由
売上分析を実行して自社の活動に活用するためには、顧客情報や案件情報など営業に関連した情報の蓄積が必要です。
そのため、売上分析を行うツールには、SFAやCRMが適しているといえるでしょう。
SFAやCRMを使用して売上分析を行うメリットは、以下のとおりです。
- 営業活動の可視化によって売上分析が容易になる
- 営業担当者や部門ごとの実績を詳細に分析できる
- 商談のフェーズごとの進捗状況や成約率を分析できる
- 顧客セグメント別の売上傾向を把握しやすい
- マーケティングと売上の関連性を分析できる
単なる数字の把握だけではなく、売上分析にもとづいた戦略的な意思決定や顧客中心のビジネス展開を実現できます。
SFAやCRMの機能や操作感について興味がある方は、以下のデモ動画をあわせてご覧ください。
世界No.1のAI搭載型CRMのデモ動画
世界No.1のAI搭載型CRM「Sales Cloud」がどのようにしてより多くの契約を締結し、営業パフォーマンスを向上させるかデモ動画でご確認いただけます。
売上分析にSFA・CRMを活用した成功事例
実際にSalesforceを導入した企業における売上分析の事例を3つ紹介します。
事例をもとに自社で売上分析を行う際の参考にしてみてください。
営業活動の標準化や予実管理の精度向上を実現
会社名:三生医薬株式会社
事業内容:健康食品(サプリメント)や医薬品などの受託製造事業
三生医薬株式会社は、膨大なデータ集計作業による時間のロスと、予実管理の大きな誤差を改善するためにSalesforceを導入しています。
Salesforce導入後は、社内研修をとおして営業活動履歴の入力を標準化することで、予実管理の精度を高める仕組みを構築しました。また、膨大なデータの集計・分析をEinstein Analyticsによって自動化しています。
今後は、過去のWin-Loss分析や将来予測の実現によって、戦略的な営業活動と精度の高い売上予測が可能になると見込まれています。
営業担当者1人当たりの生産性を40%向上
GLナビゲーション株式会社は、個人に顧客情報や商談情報の管理をまかせていたため、売上分析に手を付けられていないといった課題を抱えていました。
Saleceforce導入後は、営業に関するデータを一元管理し、分析にもとづいた意思決定を行う営業スタイルへ変革しています。
これにより、営業担当者1人当たりの生産性は40%向上し、経験の浅い新卒の営業社員が全員売上1億円を達成するといった大きな成果をあげています。
システム定着化の壁を乗り越え3年間で売上2倍
株式会社みらいコンシェルジュでは、Salesforce導入当初になかなか活用が定着しないという課題がありました。
定着させるために行った施策は、以下のとおりです。
- 社内連絡手段をSalesforceに一本化
- プロセスビルダーやAppExchangeによる入力の自動化
- ブラウザログイン時のパスワード再入力の省略
- 情報集約の基盤としてSalesforceを活用
Salesforceの活用が定着したことで、蓄積されたデータを効果的に営業活動に活かせるようになりました。その結果、売上高が3年間で約2倍に成長し、同時にグループ会社も2社から4社へと拡大しています。
売上分析はAIを搭載した「Sales Cloud」でさらに効率化できる
売上分析はAI搭載ツールの導入によって、膨大なデータの集計や分析の自動化が可能です。
Salesforceの「Einstein AI」なら予測AIと生成AIによって、営業サイクル全体で売上分析の結果を有効活用できます。具体的な事例は、以下のとおりです。
- 関連する営業活動にもとづいた最優先案件の見極め
- 蓄積されたデータをもとにしたAIによる売上予測
- 顧客セグメント作成の自動化
また、AIによってデータ分析にもとづく意思決定が支援されるため、個人の知識やノウハウに頼ることなく、営業活動の標準化に貢献します。
Salesforceの「Einstein AI」については、以下の記事で詳しく解説しています。AIによる効率化や生産性向上に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
売上分析はツールを導入して効率よく実行しよう
売上分析は、売上データから現状の課題を把握して、売上を向上させるために必要な活動です。
過去と現在の売上を比較するだけでなく、マーケティング施策の策定や営業戦略の立案にも活用できます。
しかし、売上分析を適切に行うためには、膨大な量のデータ収集・分析が必要です。Excelでの管理には限界があるため、SFAやCRMの導入を検討しましょう。
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