デジタル化や通信技術の向上により、企業に蓄積されるデータ量が急激に増加しています。すべてのデータを分析し活用するには時間も費用もかかり、マーケターにかかる負担も膨大です。
そこで、この状況を解決する方法として注目されているのがマーケティングにおけるAIの活用です。
本記事ではAIマーケティングとは何か、AIを活用するメリット・デメリット、活用されている分野について解説します。マーケティングにAIを活用した企業の事例も紹介しますので、AIの導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
生成AIでマーケティングの何が変わる?
生成AIがマーケティングにもたらすメリット、セキュリティ懸念やスキル不足の理由、効果的な生成AI活用方法について、世界各国1,000人のマーケターを対象にした調査結果をもとに解説します。
目次
AIマーケティングとは
AIマーケティングとは、AIを利用し商品・サービスを効率的に売る仕組みを作ることです。たとえば、AIを使ってWeb上で顧客にあった広告を自動表示させる、顧客ニーズをリアルタイムで解析するなどです。
これらの対応は手作業でもおこなえるものの、適切に運用するためには膨大な手間、時間や費用がかかります。しかし、AIを利用すれば時間や費用を抑えつつ、膨大なデータの分析でき、一人ひとりの顧客に対する最適なアプローチを行うことができます。
近年のAI進化のペースは非常に早く、マーケティングに関するさまざまな分野に応用されています。マーケティング戦略を立案するにあたり、AIを搭載したツールの利用が不可欠になっているといえるでしょう。
マーケティングにAIを活用する3つのメリット
マーケティングにAIを活用するメリットは、以下の3つです。
- 迅速に大量のデータを処理し分析できる
- 一人ひとりに最適化されたアプローチをおこなえる
- 人材不足の解消と業務効率化が達成できる
AIマーケティングがもたらす効果について詳しく見ていきましょう。
1.迅速に大量のデータを処理し分析できる
マーケティングにAIを活用すれば、処理できる情報量が増加し、大量のデータを分析できます。
企業に蓄積されているデータ量はビッグデータ(巨大なデータ)と呼ばれるほど多く、人がすべての情報を処理し、分析するのは不可能です。仮に多くのデータを分析しようと無理すると、担当者に負担がかかり、人為的なミスが発生するおそれもあります。
しかし、AIであれば人為的なミスの発生リスクを抑えつつも瞬時にビッグデータを分析でき、より正確な分析結果を表示してくれます。的確に顧客のニーズをつかむには、正確な分析結果が不可欠です。
また、データ処理の時間が少なくなれば、マーケターはより創造性の高い仕事に時間をかけることができます。データ処理や分析はAIに任せ、対人営業やプレゼンテーションなど、人の気持ちに訴えかける必要があるような人間にしかできない高度な仕事を進めることで、より効果的な施策の実施が可能です。
2.一人ひとりに最適化されたアプローチをおこなえる
一人ひとりのお客様にパーソナライズされたアプローチをするには、各部署の顧客情報データの統合や一貫性のある施策の実施が不可欠です。しかし、これらの作業を実施するには多くの労力が必要であり、人件費もかかります。
また、仮にその工数が確保できたとしても、顧客の情報をすべて分析し、個々へのアプローチ方法を検討するのは時間がかかります。AIを利用すれば労働力や人件費を削減し、短期間でデータを分析し、施策を実施することができます。
短期間で効果を上げることができ、マーケティングROI(投資収益率)の向上にも役立ちます。
3.人材不足の解消と業務効率化が達成できる
AIで大量のデータを処理すれば、人材不足の解消と業務効率化の実現が可能です。
経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果〜 報告書概要版〜」では、2030年には最大で79万人の人材不足になると予測されています。
また、内閣府の「第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題」によると、人口が減る基準とされる人口置換水準を1980年代から切り続けており、少子化が加速していると公表されています。
DX人材やビッグデータを扱える人材はそのニーズの高まりに伴い慢性的に不足しているものの、このような問題があり人材不足が解消できていません。人手が足りない部分にAIを活用することで、不足する労働力を補い、効率良く業務を進められます。
マーケティングにAIを活用する3つのデメリット
マーケティングにAIを活用するデメリットは、以下の3つです。
- 思考プロセスのブラックボックス化が懸念される
- 分析や予測はデータの量・質に影響される
- 情報漏洩のリスクがある
AIを活用する際には、デメリットも理解しておきましょう。
1.思考プロセスのブラックボックス化が懸念される
AIの示した結果がどのようなプロセスで導き出されたのかわかりにくく、働き手の創造性や思考力を奪うケースもあります。
AIはさまざまなデータを分析し結果表示してくれます。そうすると、AIツールへの依存度が高くなり、結果だけ確認してマーケティングを検討する人も出てくるかもしれません。
思考プロセスと結果の両方が理解できないと、事業に反映するための施策の効果が下がるおそれもあります。AI搭載のツールを利用するとしても、なぜその結果が導き出されたのかを検証し、マーケティング戦略を立案することが大切です。
2.分析や予測はデータの量・質に影響される
AIが正確に分析できるか、結果を導き出せるかどうかは、データの量や質に影響されます。企業に蓄積されたデータ量が少ない、質が低い場合などは正確な分析ができません。
正確な結果を出すためには、データの量や質を確保しつつ、時間をかけてAIに学習させる必要があります。自社のビジネスでAIを活用しその効果を最大化させるには、自社にあるデータを利用してグラウンディングを行うことも重要です。
AIマーケティングツールを導入してもすぐに効果があらわれるとは限らないため、導入計画を立てて長期的な視点で運用しましょう。
グラウンディングに必要なデータの内容や、実施する重要性については以下の記事で詳しく解説しています。
3.情報漏洩のリスクがある
生成AIが個人情報や機密情報を抽出して結果を表示すると、悪意のある利用者に情報を悪用されるおそれがあります。
たとえば、自社の機密情報が含まれたプロンプトを利用すると、意図せずほかのユーザーが利用した際、その情報をもとにした回答が表示されるかもしれません。
実際、サムスン電子では社員がChatGPTに機密情報を入力してしまい、他の社員が質問した際にその内容が表示されたというトラブル事例もあります。
情報漏洩を防ぐには、機密情報や個人情報を入力する際のルールを明確化する、セキュリティ性能が高いAIマーケティングツールを導入するなどの方法が有効です。
マーケティングにAIが活用されている7つの分野
マーケティングにAIが活用できる分野は、以下の7つです。
- MA
- ターゲティング
- パーソナライズドマーケティング
- コピーライティング
- SEO
- SNSマーケティング
- インフルエンサーマーケティング
AIと親和性の高い分野は何か理解し、活用して得られる効果を最大限に引き出しましょう。
1.MA
MA(マーケティングオートメーション)とは、マーケティング活動の自動化を意味する概念、もしくはツールを指す言葉です。
マーケティングにAIが加われば、顧客データの分析やスコアリングが自動化できます。マーケティング施策の検討に必要な情報を自動化して入手できれば、業務の効率化につながります。
マーケティング戦略を検討する際には、データを収集し分析しなければなりません。これらの作業を実行するには、多くの時間や労力が必要です。資金や人材不足が課題の企業であれば、マーケティング施策の実施が難しいケースもあるでしょう。
また、MAによってAIの学習のPCDAが回れば、ベストプラクティス(最適な方法)の提案も可能です。
2.ターゲティング
ターゲティングとは、セグメンテーションし細分化した市場の中で、ターゲットを絞っていくことです。
ターゲティングを進めるには、市場の有効性・成長性や競合他社の位置づけなど多くの要素を考慮しなければなりません。
顧客の行動履歴や利用状況をAIで分析すれば、どの市場をターゲットとすればいいのか明確になります。自社の商品・サービスとの親和性が高い市場を発見できれば、マーケティングROIの効果が高くなります。
3.パーソナライズドマーケティング
パーソナライズドマーケティングとは、顧客の属性や行動履歴などに合わせて、一人ひとりに最適なサービスを提供する手法です。
Webの閲覧時に行動履歴にもとづいた広告を表示させる、購買意欲の高さによって送付するメールの内容を変えるなどです。たとえば、洋服のショッピングサイトを閲覧した後、まったく衣類と関係ないサイトの広告欄に服が出てくるのもパーソナライズドマーケティングの一種です。
一人ひとりに適切なアプローチをすることで、購買確率を上げられたり、顧客を育成したりできます。見込み顧客の創出ができるようになるため、安定した収益が見込めます。
4.コピーライティング
コピーライティングとは、顧客を惹きつけるために広告に記載する文章・技術です。顧客の購買意欲を高めるためには広告のキャッチコピーが重要であり、その文章をAIに生成してもらいます。
どのような文章が顧客の目を引くのか考えるのは難しく、高い表現力や豊かな発送が必要です。
AIを用いれば、過去に実施された広告の内容をもとにして文章を考えてくれます。データを分析した内容が適切に反映されるため、広告の効果を引き出す文章を生成してくれます。コピーライティングの有名な事例としては、株式会社ニトリの「お、ねだん以上」や東海旅客鉄道株式会社(JR東海)「そうだ 京都、行こう」などが挙げられます。
5.SEO
SEOとは検索エンジン最適化であり、WebサイトをGoogleやBingなどの検索エンジンで上位表示させるための手法です。
SEOにAIを活用すれば、内部対策(※1)も外部対策(※2)もおこなえます。
内部対策としては、常にWebページの監視・解析ができ、自動的のコンテンツの更新が可能です。一方、外部対策としては、Web集客の自動化や競合サイトの動向を監視・解析できます。
Webではリアルタイムの顧客行動履歴が残るため、多くの人にWebサイトを見てもらえれば、マーケティング施策の立案に役立つ情報を入手可能です。SalesforceのAIである「Einstein」も、顧客行動を分析しリードスコアリングを付け、各個人に最適なマーケティング手法を導き出します。
また、AIは24時間365日稼働するため、自動化により労働力を削減できたり瞬時にSEOに最適なコンテンツを生成することができ、人件費の抑制にもつながります。
※1:SEOの内部対策とは、Webサイトをスムーズに開けられるようデータ容量を調整するといった自社のWebサイトに実施する施策
※2:外部対策とは、被リンクを増やして外部からの流入を増加させるといった自社のWebサイト以外に施す施策
6.SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、InstagramやX(旧:Twitter)などのSNSを用い、商品・サービスを売るための仕組みを構築する手法です。
総務省の「情報通信白書令和5年版」によると、世界でSNSを利用している人は2022年で45億9,000万人もいると公表されています。2028年には60億3,000万人まで利用者は増加すると見込まれており、SNSの情報は企業の集客数アップに不可欠です。
SNSに書き込まれる内容はリアルタイムでの顧客ニーズをあらわしており、有用な情報が含まれます。書き込まれる情報量は膨大であるものの、AIを用いれば顧客セグメンテーションによる需要予測などが短時間で実行できます。
7.インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングは、大きな影響力をもつインフルエンサーに商品・サービスをプロモーションしてもらい、消費者の購買行動に影響を与える手法です。インフルエンサーによるプロモーションは、消費者目線に立ったものが多いうえに広告だと感じにくいため、顧客の心理に大きく影響して購買意欲を高められます。
商品・サービスのプロモーションに適したインフルエンサーを探すのは、簡単な作業ではありません。口コミで情報が拡散することもあり、不適切なインフルエンサーにプロモーションを依頼すると、逆効果になるおそれもあります。
自社商品に適切なインフルエンサーを探すには、AIインフルエンサー検索ツールを利用するのがおすすめです。ツールにはリアルタイムSNSデータが蓄積され、最適なインフルエンサーが誰か判断してくれます。
このようにAIを用いれば、自社の商品・サービスにあった適切なインフルエンサーを効率的に探索でき、より効果的なタイアップが可能です。
AI搭載の「Marketing Cloud」でマーケティングの効果が大幅に向上
適切なマーケティング手法を立案するのに、AIが大きな役割を果たす理由はいくつもあります。しかし、AIを搭載したマーケティングツールの数は多く、どれを採用したらよいのか判断できないという方もいるのではないでしょうか。マーケティングツールの導入に悩んでいる方には、Salesforceの「Marketing Cloud」がおすすめです。
Salesforceの「Marketing Cloud」は、AIを活用したクラウドベースのデジタルマーケティングプラットフォームです。CRM機能を有しており、各種データを統合して顧客の全体像が分析でき、分析結果にもとづいてAIがそれぞれの顧客に適したアプローチとそのタイミングを知らせてくれます。
AIを用いることでマーケティング活動を自動化でき、Marketing Cloudを採用した企業ではマーケティングROIが平均28%向上しています。マーケティングROIの向上は、マーケターの人件費や広告費用の削減とともに、投資した金額対する利益の増加が実現した証です。
デジタルマーケティングの効果を最大限に引き出したいと考えている人は、Marketing Cloudの無料トライアルから始めてみてください。
AI搭載の「Marketing Cloud」
製品デモ動画
顧客データをリアルタイムで統合し、個別にパーソナライズした体験を提供する方法や、PDCAを高速で回すための分析・マーケティングオートメーション(MA)について解説しています。
Marketing Cloudだからできる、一人ひとりに合わせたマーケティングの実現方法をぜひご覧ください。
マーケティングのAI活用事例3選
ここでは、マーケティングにAIを活用した事例を3つ紹介します。
- コンタクトセンターの効率化で20%以上のコストを削減
- 退会リスクの高い顧客に対して適切なアプローチを実行
- 生成AIを活用してサポート業務の80%以上を短縮
AIを活用した結果、具体的にどのような成果が上がったのか見ていきましょう。
1.コンタクトセンターの効率化で20%以上のコストを削減
AIを用いてコンタクトセンターのコストを20%も削減したのは、日本の大手家電量販店チェーンである株式会社ビックカメラです。
2022年6月に創業より掲げている「お客様喜ばせ業」を実現するために「DX宣言」を発表したものの、アウトソースしていたコンタクトセンターの予算の超過が課題のひとつでした。課題を解決すべく、「Service Cloud」をベースとして業務の見直しを図ります。
従来、顧客からメールが来たときには、振り分け担当者がオペレーターのスキルに合わせてアサインしていました。しかし、SalesforceのAIである「Einstein」を利用し、振り分けを自動化します。
また、電話対応ではアフターコールワークの簡素化に注力するため、音声データと自動でテキスト化したデータをケースに紐づけて残し、基本的に手入力しないことを徹底しました。この取り組みにより、20%以上のコスト削減に成功します。
2.退会リスクの高い顧客に対して適切なアプローチを実行
株式会社LIFULLは不動産ポータルサイトを運営する企業であり、退会リスクの高い顧客に対して適切なアプローチを実行し、退会阻止・売上向上を実現しました。
LIFULLが運営する「LIFULLHOME’S」は不動産を探すユーザーと不動産業者のマッチングサイトで、不動産業者はコンテンツの供給元でもあり大切な顧客です。顧客が退会すれば売上の減少につながってしまうため、解約につながりそうな要素を50個抽出し「Einstein」を使ってモデル作成に取り組みます。
Einsteinにはモデルの数値化、利用する選択肢の提案などの機能がり、これらを利用することでモデルのブラッシュアップに成功します。
結果、退会のおそれが高い顧客の洗い出しに成功し、退会阻止と同時に売上向上も達成しました。
3.生成AIを活用してサポート業務の80%以上を短縮
総合電機メーカーである富士通株式会社は、生成AIを活用してサポート業務の80%以上を短縮に成功しました。
富士通はサポートデスク(コンタクトセンター)を設置・運営し、業務の効率化に取り組んでいましたが、さらなる進化のため「Einstein」を導入し、サービス返信と会話サマリーの自動化を検証しました。
結果、サービス返信はオペレーターの平均処理時間が20分36秒から2分18秒となり、89%の削減効果を実現。また、会話サマリーは平均後処理時間が3分36秒から30秒となり、86%の削減効果が得られました。
どちらの業務も80%以上の削減効果を生み、サポートデスクの業務効率化に大きく貢献するという結果になったのです。
AIを活用したマーケティングで業務効率の改善や事業の拡大を実現しよう
マーケティングとAIを組み合わせることで、人力に頼らず企業に蓄積された膨大なデータを処理でき、人手不足の解消や業務効率化につながります。また、リアルタイムでデータが処理できるため、最新の情報をもとにしたマーケティング施策の検討が可能です。
このようにマーケティングとAIとの相性は良く、SEOやインフルエンサーマーケティング、コピーライティングなど多くの分野で活用されています。事業拡大や業務の改善には、マーケティングにAIを活用するのが必須ともいえる状況となっており、いかにAIをうまく利用するかが企業の成長のカギとなるでしょう。
Salesforceが提供するAIである「Einstein」は、CRMやSFA、MAなどの各種システム・ツールと連携し、業務の効率化やマーケティングROIの向上を実現します。どのAI搭載ツールが自社に適切なのか知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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