Salesforceの認定資格保持者数が日本でのべ1万名を突破しました。認定資格は現在25種類あり、その最高峰に位置するのが「認定テクニカルアーキテクト(CTA)」です。世界で約240人、日本では13名というCTA保持者は、Salesforceの卓越したエキスパートとして大きな存在感を放っています。最高峰に上り詰めた先に広がる世界とは――。難関突破の秘策とは――。セールスフォース・ドットコムの河村嘉之の進行のもと、日本のCTA保持者5名がパネルディスカッションで熱く語り合いました。
モデレータ:
セールスフォース・ドットコム
河村 嘉之
パネリスト:
クラステア株式会社
代表取締役
太田 達志氏
株式会社テラスカイ
取締役 クラウドインテグレーション本部
本部長 今岡 純二氏
株式会社サンブリッジ
最高技術責任者
山城 勝氏
株式会社パソナテキーラ
CTO
佐藤 裕喜氏
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
グローバルマーケティング本部 課長代理
小林 清一郎氏
キャリアアップを図り、ビジネスをリードする CTAはそのための“武器”になる
河村:Salesforceの利用拡大にともない、人材市場での認定資格のニーズも高まりを見せています。本日はその最高峰であるCTAの保持者5名にお集りいただきました。まず皆さんの自己紹介とCTA取得の経緯を教えてください。
太田氏:クラウドベースのソリューションを開発する会社の代表を務めていますが、実質的にはフリーのコンサルタントに近い形で活動しています。事業の柱の1つが、Salesforceの設計・技術支援です。セールスフォース・ドットコムのグローバルでのパートナーであった当時の在籍企業が、日本法人でもCTA保持者の確保を目指していたため、チャレンジのために私が手を挙げました。
今岡氏:主にSalesforceの導入プロジェクトのアーキテクトとして活動しています。Salesforceのビジネスには2004年から従事し、2012年にCTAの試験が日本ではじめて行われるのを機に思い切ってチャレンジし、翌年2月の合格発表を受けて資格を取得しました。
山城氏:Salesforceの導入全般をサポートしています。会社としてCTA保持者を確保したいという狙いがあり、Salesforceのほとんどの認定資格を取得していた私に白羽の矢が立ちました。
佐藤氏:Salesforceをベースとしたシステム開発の技術責任者として活動しています。同時に若手の育成にも力を入れています。今の会社へ転職する際、CTA取得が入社条件だったので、私にとっては死活問題でした。
小林氏:主に製造業向けのシステム開発プロジェクトを担当しています。CTA取得を考えたのは、自らのキャリアアップと、一緒に仕事をするグループ会社からの期待に応えるためです。特に期待が大きかったのが、海外のグループ会社。私がCTAを取得した時は、こちらが恐縮してしまうぐらい、大喜びしてくれました。
自身の視野と可能性が広がり より大きな仕事にチャレンジできる
河村:CTAを取得することで、ビジネス上どのようなメリットがありますか。
佐藤氏:テクニカルアーキテクトにはシステム開発力だけでなく、業務理解を含めたデザイン力が必要です。CTAを取得したことで、システム全体を見る力が身に付いたのを実感します。
小林氏:私も同感です。システム全体を考え、どこにどのようにSalesforceを使うか。周辺知識も含めた幅広い視点から最適なシステムを提案する。CTAになればそういう力が身につきますし、周囲からの期待も大きくなります。その期待に応えていくことに醍醐味を感じています。
太田氏:CTA保持者にはSalesforceだけにとどまらない、周辺システムを含んだシステムデザイン・設計を行うスキルが求められていると考えています。プロジェクトを完遂し、アウトプットに責任を持つ。当然、大変さはともないますが、より大きな仕事に取り組めるようになります。チャレンジの機会が広がり、スキルアップやキャリアアップにもつながります。
今岡氏:当社には独自の優遇プログラムがあり、CTA取得者に対して、業界最大級のテクノロジーカンファレンス「Dreamforce」への隔年ごとの参加資格が与えられます。
小林氏:私も以前会社で「Dreamforce」に参加しました。そこでの海外のCTA取得者との交流は刺激になり、得るものも大きかったです。今も一緒のコミュニティで活動しており、そういったネットワークに加われたこともよかったことの1つです。
山城氏:収入や待遇面でも大きなメリットがあります。これは各社によって異なるでしょうが、CTAに対する評価は総じて非常に高い。収入アップやキャリアパスでプラスになることは間違いないでしょう。具体的な金額は申し上げられませんが、当社の場合も相応のインセンティブを提供しています。
要件を満たす最適なシステム作り その方法論と提案力が試験で問われる
河村:一方で国内のCTA保持者は本日お集まりいただいた5名を含むわずか13名しかいません。“狭き門”をパスした経験は、これからCTA取得を目指す人に非常に参考になると思います。まず試験内容について教えてください。
今岡氏:試験はレビューボードと言われる面接試験がメインです。まずシステム開発要件のシナリオを読み込み、どのように開発を行うかを決める。その内容をプレゼンし、面接官からのさまざまな質問に応えていくという形です。シナリオの読み込みからプレゼン、質疑応答まで休憩を挟んで全部で4時間以上にわたる長丁場です。
小林氏:そのシナリオの量が半端ではありません。全部で12ページぐらいあるのです。それを短時間で読み込み、理解しなければならない。
佐藤氏:面接官は3名いるのですが、さまざまな角度から鋭い質問が飛んできます。面接中はまさにプレッシャーとの闘いです。試験が終わった時は、疲労と解放感で頭の中が真っ白になりました。
河村:本日お集まりいただいた皆さんの中には、CTA試験の面接官として活動している方もいらっしゃいます。面接試験で大切なポイントを教えてください。
佐藤氏:評価する立場になってわかったのですが、質疑応答は提案の良いところを引き出し、加点するために行っています。質問が細かく、多岐にわたるため、粗探しのための“圧迫面接”のように感じるかもしれませんが、決してそうではありません。まずはこの点を理解してください。
山城氏:シナリオの要件を的確に把握し、それを実現するために最適な機能を活用する提案が大切です。そのためにSalesforceの機能を幅広く理解しておく必要があるでしょう。
太田氏:模擬的な試験とはいえ、お客様に対して提案を行っているという姿勢を忘れないこと。独りよがりな提案は禁物です。プロダクトの特性を引き出し、お客様の課題解決に貢献する。そういう姿勢を大切にしてください。普段から積極的にプレゼンに参加するなど提案力に磨きをかけると力がつくと思います。
今岡氏:何を伝えたいのか。面接官の質問には、ポイントを絞って簡潔・明瞭に答えることも大切です。
認定資格の更新料無償化、トレーニング資料の日本語化 チャレンジしやすい環境が整いつつある
河村:Salesforceとしては、より多くの方にCTAを取得していただきたい。そのためにさまざまな取り組みを進めています。たとえば、今夏から認定資格の更新料が無償化されます。現在英語版のみのCTAトレーニング資料の日本語化も進めています。またデザイナー資格以上の取得者を対象としたCTAコミュニティを年3回開催しています。CTA取得に向けて、このコミュニティも積極的に利用していただきたいと思っています。
小林氏:CTAコミュニティは、CTA保持者やその予備軍の方が多く参加されるので、非常に有意義です。私もレビューボード前に参加し、模擬的に面接試験を行っていただきました。これが非常に役立ち、おかげで合格を勝ち取ることができました。
太田氏:CTAコミュニティにはセールスフォース・ドットコムのR&D部門の方が参加されることもあります。研究開発する立場の人から新しい技術や機能について聞くことができるので、非常に参考になります。
河村:すでにいろいろなお話を伺っていますが、これからCTA取得を目指す人に向けて、改めてメッセージをお願いします。
太田氏:シナリオのボリュームが多い上、与えられる時間は限られます。答案用紙をすべて埋められなくてもいい。プレゼンの段階で質問が来たら、自分の頭で考え、自分の言葉で発言する。実戦的な力を養うことを心がけてください。
小林氏:Salesforceは試験に役立つさまざまな情報を公開しており、非常にオープンです。私の場合、オンサイトトレーニングなども活用していました。今後はトレーニング資料も日本語化されるそうなので、より学びやすくなり理解も進むでしょう。公開されている情報を有効に活用し、学力アップを図ってください。
佐藤氏:CTAに求められる要件は非常にレベルが高い。これをクリアすれば、どこに行っても活躍できます。これからCTA取得を目指す方は、システム開発に対する愛着と興味を忘れずに、果敢にチャレンジしてください。
Salesforce の最高峰資格『認定テクニカルアーキテクト』については下記リンクからご確認いただけます。