データドリブンとは、ビジネスにおいてデータを根拠としたアプローチを指します。取り扱うデータが増えた今、データドリブンな意思決定が求められていますが、企業のなかでどのように取り組めばよいかわからないケースも多いでしょう。
データドリブンな意思決定を促進するためには、データの収集から分析、可視化までをリアルタイムに行えるデータ基盤の構築が必要です。
本記事では、データドリブンの意味と注目される背景、成功に導くために必要なITツールを紹介します。企業を成長させるためにデータ活用や分析に注力したい企業さまは、参考にしてみてください。
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目次
データドリブンとは

データドリブン(Data-Driven)とは、ビジネスにおいてデータを根拠としたアプローチ全般です。「ドリブン」は、データに突き動かされるという意味で、データドリブンは「データ駆動型のアプローチ」を意味します。
たとえば、売上と顧客行動のデータを照合し、平日の午後にオンラインストアの購入が多いことがわかった場合、平日の午後に使えるクーポンを発行するといった意思決定で購買行動を促進できるはずです。
このように、データに突き動かされるように、あるいはデータ起点で意思決定を行うことが、データドリブンの本来の意味です。
単に「データに基づく意思決定」をデータドリブンと呼ぶケースもありますが、厳密には従来のデータ活用とデータドリブンは異なります。両者の違いを知ると、現代の企業に求められているデータドリブンな経営や意思決定の意味を深く理解できるでしょう。
データドリブンとデータ活用の違い
データドリブンと従来のデータ活用は、出発点が異なります。データドリブンの出発点はデータであるのに対し、従来のデータ活用では課題や目的が出発点です。
従来のデータ活用は、目的や課題に合わせてデータを収集・分析して意思決定を行います。たとえば、新商品の売上が低迷している原因を探るために顧客行動データを分析する場合、データではなく課題が出発点です。
一方、データドリブンは、日頃から収集しているデータの分析結果に沿って、戦略を考えたり意思決定を行ったりと、データが出発点となります。
このように、データドリブンと従来のデータ活用には厳密な違いがあるものの、ビジネスでは混同されることもあります。データドリブンを浸透させる際は、従来のデータ活用との両立が重要なため、無理に区別する必要はありません。
以下の記事では、課題起点型のデータ活用を成功させるポイントを解説しているので、参考にしてみてください。
データ活用で成功するには?メリットやデメリット、手順、事例を紹介
データドリブンの使い方
データドリブンという言葉は、次のように使います。
関連用語 | 意味 |
---|---|
データドリブンな意思決定 | データを根拠として客観的かつ論理的に判断すること |
データドリブン経営 | データを根拠に企業戦略や経営判断を行うこと |
データドリブン(な)組織 | データの収集や分析、データを根拠とした意思決定が根付いている組織 |
データドリブンマーケティング | データを根拠としたマーケティング戦略・施策の立案や意思決定を行うこと |
データドリブン営業 | データを根拠とした営業戦略・施策の立案や意思決定を行うこと |
いずれも、データが出発点であり、データを根拠とした意思決定が含まれます。
データドリブンが求められる背景

企業でデータドリブンが求められる背景には、次の3つの変化があります。
- デジタル技術の発達
- 消費行動の複雑化
- マーケティング手法の多様化
インターネットやICTの発達によって目まぐるしく変化する時代のなかで、企業を成長させるためには、データドリブンな組織の構築や経営が求められるのです。
デジタル技術の発達
インターネットやICT機器の発達に伴って、データの収集や分析が容易になった結果、企業が取り扱うデータ量が増えています。
【企業活動に活用しているデータの種類】

企業活動に活用しているデータの種類は、5年前と比較して増加傾向にあります。
競合と差別化して自社を成長させるためには、大量のデータを活用してリアルタイムに施策や業務に反映しなければなりません。そのためには、データ基盤を構築して、データドリブンな意思決定を浸透させることが重要です。
消費行動の複雑化
消費行動が複雑化および多様化が進み、企業がさまざまなニーズに対応しなければならなくなった結果、データドリブンの重要性が高まっています。
たとえば、ECショップの利用が当たり前となり、消費者は自宅にいながら商品やサービスを利用するようになりました。また、モノよりコトを重視する傾向が強まったことで顧客体験の向上が求められています。
多様化する消費行動やニーズに対応するためには、データから顧客ニーズを正しく分析し、適切な意思決定を行うデータドリブンマーケティングが必要です。
以下の記事では、昨今の消費行動の変化を詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
現代流消費行動パターンを考察 4つの面で変革されたショッピング
マーケティング手法の多様化
デジタル技術の発展と消費者行動の複雑化に伴って、マーケティング手法も多様化しています。
たとえば、広告ひとつとってもデジタル化しており、SNS広告や動画広告など多岐にわたります。顧客接点の多様化で、各チャネルの顧客層や行動の分析も必要となりました。
限られたリソースのなかで効率的に企業を成長させるためには、どのターゲット層にどのチャネルからアプローチするかを正しく分析しなければなりません。そのため、データドリブンが求められているのです。
データドリブンのメリット

企業にデータドリブンを浸透させるメリットは、大きく分けて3つです。
- 意思決定に再現性が生まれる
- 業務効率が向上する
- One to Oneマーケティングを実践できる
メリットを踏まえると、データドリブンの重要性をより深く理解できるでしょう。
意思決定に再現性が生まれる
データドリブンの最大のメリットは、意思決定の再現性が確保できることです。
従来は、個人の勘や経験に頼った意思決定が多く、属人的で一貫性に欠けることがありました。しかし、データドリブンな意思決定では、データによって明確な根拠が示されるため、だれが判断しても同じプロセス・ロジックに従って一貫した結論にたどり着くことが可能です。
担当者が変わっても同様の結果を得られる「再現性」が生まれることで、業務の属人化が解消されます。その結果、従業員のスキルが標準化され、人材育成の効率化にもつながるでしょう。
業務効率が向上する
データドリブンなPDCAを繰り返すことで、業務プロセスの最適化が迅速化され、業務効率の向上が促進されます。
データドリブンの促進によって、リアルタイムなデータ分析・可視化が実現すると、業務プロセスのボトルネックを迅速かつ効率的に特定できます。データ起点で改善策を講じることができれば、問題解決までの時間が短縮されるのです。
One to Oneマーケティングを実践できる
データドリブンマーケティングを実施すると顧客分析の精度が高まるため、個別のニーズを捉えて対応できるようになり、One to Oneマーケティングの実践が可能です。
たとえば、消費者ごとの購買履歴や行動データを分析し、パーソナライズされた商品やサービスを提供することで、他社との差別化を実現できるでしょう。
顧客一人ひとりのニーズに応えることで、顧客満足度の向上にもつながり、リピーターの増加やロイヤルティの強化も図れます。
データドリブンのデメリット

データドリブンを企業に定着させるためには、データ分析ができる人材の育成やデータ基盤の構築が必要です。
とくに、データ基盤がない状態ではじめる場合、データ収集から可視化までを行える適切なツールを導入しなければなりません。社内で定着を図るためには、従業員にとって使いやすいツールが求められます。
初期投資が必要となるため、費用対効果も踏まえて自社に合ったツールを導入し、データ基盤を構築しましょう。
データドリブンを実現する4つのステップ

1.データを収集する
まずは社内のあらゆるデータを収集し、一元管理する体制が必要です。データプラットフォームの統一や可視化・分析ツールを導入して、データ基盤を整えましょう。
たとえば、SalesforceのCRM・SFAである『Sales Cloud』は、顧客情報や注文状況、業務の進捗などあらゆるデータをクラウド上で管理できます。
『Sales Cloud』を使って以下のようなデータを収集・分析すれば、データドリブンな意思決定が促進されるはずです。
- 売上
- 売買履歴
- 顧客情報
- 製造の計画と実績
- 製造工程における状況
- 在庫
- Webサイトへのアクセス履歴
単にデータを収集するだけではなく、さまざまなデータを組み合わせることで新たな発想を得ることが可能です。そのため、「取得可能なデータはすべて取得する」といった心構えで臨みましょう。
関連記事:Sales Cloud(セールスクラウド)とは?主要な5機能を5分解説
2.データを可視化する
収集したデータを整理し可視化するのが次のステップです。
収集されたデータは分析に不要なデータを取り除き、整える必要があります。データの可視化はおもにBIツールが担当する領域です。
たとえば、SalesforceのBIツール『Tableau』は、AIによるがデータの可視化や分析を効率化します。
関連記事:Tableau(タブロー)とは何か。選ばれる3つの理由を5分解説
3.データを分析する
データの可視化後は、いよいよ分析のステップです。データをさまざまなアルゴリズムにかけることで傾向を抽出する「データサイエンス」と呼ばれるアプローチを行います。
分析に関しても専門のツールが必要ですが、BIツールに分析機能が備わっているケースも多くあります。
たとえば『Tableau』は、回帰モデリングや各種分析法による統計処理を自動で行い、「インサイト(消費者自身も気づいていない隠れたニーズ)」を発見可能です。これにより、分析業務が効率化されます。
4.アクションプランを策定・実行する
最終ステップでは、分析結果を基に戦略や施策を立案します。
ここで決定した戦略や施策を実行し、課題発見と改善を繰り返すことでデータドリブンな意思決定の精度を高めることが可能です。
データドリブンを成功に導くITツール

DMP(データマネジメントプラットフォーム)
DMP(データマネジメントプラットフォーム)は、データを収集・統合・分析して、企業活動に活用するためのプラットフォームです。
売上から購買履歴、市場データなどを一元管理して、リアルタイムに活用できる状態に整えることで、データドリブンな意思決定をサポートします。
『Data Cloud』は、AI搭載型のDMPです。Salesforceが提供するCRMやSFAだけではなく、さまざまな外部ツールと連携してあらゆるデータを統合し、分析基盤を構築することが可能です。
搭載されている生成AIによって、自社データをグラウンディングできるため、信頼性の高い生成結果を得られます。
詳しい機能は、デモ動画でご確認ください。
2分でわかるData Cloud

BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、企業のさまざまなデータを収集し集計や分析を行うツールです。
メリットは、リアルタイム分析とデータドリブンなビジネス判断を自動化できる点です。レポート、オンライン分析、データマイニングといった機能を保有しデータの可視化や分析を自動で行います。
『Tableau』は、直感的な操作でデータの可視化と分析ができるBIツールです。複雑なデータをグラフやダッシュボードで可視化することで、だれもが簡単にインサイトを発見できます。
リアルタイム分析やクラウド連携にも対応しており、データドリブンな意思決定をサポートします。
14日間無料でお使いいただけますので、ぜひ使用感をお確かめください。
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CRM(顧客管理システム)
CRM(顧客管理システム)は、顧客との関係性やコミュニケーションを管理するツールです。連絡先、購入履歴、メールなどでのやり取りや商談状況などを管理できます。
顧客との関係性を一元管理することで、顧客に対する理解をより深め、顧客生涯価値(LTV)と収益の向上につなげることが可能です。
『Salesforce』は、顧客情報の管理から営業活動の可視化まで行えるクラウド型CRMです。リアルタイムで顧客の行動データや商談状況を分析できるため、データドリブンな意思決定やアプローチをサポートできます。
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SFA(営業支援システム)
SFA(営業支援システム)は、営業支援ツールです。営業担当者の行動、商談の進捗状況といった営業業務の情報を蓄積、管理し、効率的に売上に結びつけます。
属人化しがちな営業の業務を仕組み化し、優秀な営業担当者のノウハウを共有できることや、営業業務の情報をリアルタイムで可視化し他部門の業務と連携を図れることがメリットです。
『Sales Cloud』は、営業活動を効率化し、データドリブンな営業戦略を支援するSFAです。顧客情報や商談データをリアルタイムで可視化することで、データドリブンな意思決定やアプローチをサポートします。
これにより、データを根拠とした営業プロセスの最適化と売上の最大化を図ることが可能です。
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MA(マーケティングオートメーション)ツール
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、マーケティングのプロセスを自動化・効率化するためのツールです。データ統合、行動分析、スコアリングの機能を有します。
マーケティングデータを分析することで、見込み顧客を効率的に管理できることや、多様化した顧客に対してOne to Oneマーケティングを実現できることが大きなメリットです。
『Marketing Cloud』は、顧客データを活用してデータドリブンマーケティング施策を実現するMAツールです。顧客の行動データや購買履歴を分析し、個別最適化されたメッセージやキャンペーンを適切なタイミングで配信できます。
データを根拠としたマーケティング施策を繰り返すことで、顧客エンゲージメントの向上とROIの最大化を図れます。
詳しい機能は、デモ動画でご確認ください。
Marketing Cloud 製品デモ動画

データドリブンを支えるITツールの選び方

目的を明確にする
まずは領域と目標を明確にしましょう。また、その結果を得るためにデータドリブンツールを利活用してどのような意思決定を行うかを定めます。
収集・分析すべき対象のデータを把握しましょう。反対にどのような分析結果を求めるのか不確定のままでは、ツールを導入しても思うような効果は得られません。
目的が明確にならない場合は、ツールのベンダーに相談するのも一つの手段です。実証実験(PoC)によって有効性を確かめるのもよいでしょう。
費用対効果を考慮する
データドリブンツールはオンプレミスやクラウドサービスなどの提供形態があります。
オンプレミスの場合は導入費用とランニングコスト、クラウドサービスの場合は従量課金によるコストが必要です。提供される各サービスでの費用比較とともに、目的の達成に対する費用対効果を算出して選定の基準としましょう。
オンプレミスとクラウドの違いについて詳しくはこちらで解説しています。
組織に適したツールか判断する
ビジネスにデータドリブンを取り入れる場合には、経営層から現場担当者まで会社全体における十分な理解と協力が必須です。
社内のIT環境、利用者のITリテラシー、ITスキルが伴わなければ、ツールを導入しても成果が出にくいでしょう。
IT環境の拡充、利用者のIT教育を進めるとともに、企業にマッチしたツールを選定していく必要があります。
AIの機能を確認する
膨大なデータを手作業で分析するのは現実的ではないため、即時分析・可視化が可能なAI搭載型のツールを選定する必要があります。
AI搭載型のツールといっても幅広いため、どのような機能があるかをチェックすることが大切です。
たとえば、Salesforce製品に搭載されているAI『Einstein』には、次のような機能があります。
- 予測スコアリング:顧客の行動データや過去の取引履歴を分析し、商談の成約確率やリードの質を予測する
- 自動化:AIチャットボットで、カスタマーサポート業務を自動化する
- パーソナライズ:顧客の嗜好や購買履歴を分析して、個別最適化されたマーケティングメッセージや商品提案を自動で生成する
このようなAIの機能が、自社の課題解決につながるかどうかを踏まえて、機能をチェックしてみてください。
データドリブンの成功事例

ここでは、ツールの導入によってデータ基盤を構築し、データドリブンな意思決定ができるようになった事例を2つ紹介します。
- 事例1.BIツールの導入でデータドリブンな意思決定を促進
- 事例2.だれもがデータドリブンな判断を行える文化を醸成
データドリブンの浸透が企業にどのような効果をもたらすかがわかります。
事例1.BIツールの導入でデータドリブンな意思決定を促進

旭川赤十字病院は、従来のエクセルベースの静的なデータ分析から『Tableau』の導入により動的に変革させました。
これにより、診療報酬改定や病棟再編のシミュレーションが迅速化され、経営方針や診療科ごとの戦略をデータドリブンに策定できるようになりました。
定例会議の資料作成業務では、年間30時間のリソース削減に成功。また、医事課のレセプトチェック業務も効率化され、月間20時間の作業が3時間以下に短縮されました。
BIツールの導入は業務効率化だけでなく、病院経営全体のデータドリブン化を支えています。
参考:BIによる即時分析と可視化でデータドリブンな病院経営を実現
事例2.だれもがデータドリブンな判断を行える文化を醸成

CCCMKホールディングス株式会社は、Tカードを軸としたデータベースマーケティングを行っています。従来は、エクセルベースの手動分析によって、膨大なデータ処理に時間がかかり、柔軟な分析対応が難しい状況でした。
そこで『Tableau』を導入したところ、7,000万人超の会員データや月間60億件のトランザクションデータをリアルタイムに可視化され、社内のあらゆる部門でデータドリブンな意思決定ができるようになったのです。
その結果、全社員がデータドリブンな判断を下せる文化が根付き、意思決定スピードと精度が飛躍的に向上しました。
参考:誰もがデータを見て判断する“データドリブン文化”を醸成
まとめ:データドリブンに変革して企業の成長を促進させよう

データドリブンが企業に浸透すると、効率的かつ迅速に意思決定を行えるようになります。これにより、戦略や施策、業務プロセスの改善スピードが速まり、顧客ニーズに沿ったアプローチや競合との差別化が図れるのです。
その結果、目まぐるしく変化し続ける現代でも、企業は継続的に成長できるようになります。
データドリブンな企業に変革させるためには、データ基盤の構築が必要です。DMPやBIツールなどを活用して、社内データを活用できる環境を構築しましょう。
Salesforceでは、データドリブンな意思決定を支えるツールをさまざま提供しています。ニーズに合わせてご提案しますので、ぜひお問い合わせください。
徹底解説「Salesforce流データドリブン経営の課題と解決法」
セールスフォースの戦略責任者がセールスフォースでの実際の取り組みと共に、データドリブン経営の課題とその解決方法を解説します。
