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その施策は『車輪の再発明』かも? 意外と知られていないデジタルマーケティングの『勝ちパターン』(後編)

「効果が立証された『勝ちパターン』が存在するにも関わらず、多くのマーケターは自分の手で正解を見つけようとします」と語るのは、株式会社WACULで取締役CIOを務める垣内 勇威氏。前後編で効果的なデジタルマーケティング施策について伺います。

「効果が立証された『勝ちパターン』が存在するにも関わらず、多くのマーケターは自分の手で正解を見つけようとします」と語るのは、株式会社WACULで取締役CIOを務める垣内 勇威氏。前後編で効果的なデジタルマーケティング施策について伺います。

前回は「デジタルマーケティングの施策にはすでに『勝ちパターン』が存在する」と語る垣内 勇威氏と、同氏が取締役CIOを務める株式会社WACULについて、ご紹介しました。今回はその『勝ちパターン』の具体的な内容について説明していきましょう。実際に多くのマーケターが『車輪の再発明』をしていることが、はっきりと理解できるはずです。

その例として垣内氏が最初に挙げるのが、人材紹介会社のWebサイトの構成です。人材紹介会社のWebサイトの構成は、大きく分けて2種類存在すると垣内氏は説明します。

ひとつは『会員登録型』。これはトップページに印象的なビジュアルとキャッチコピー、そして『会員登録』ページに遷移するボタンだけを配置するというものです。他のページへのリンクは一切排除され、実にシンプルな構成になっています。

もうひとつは『求人検索型』であり、トップページに検索窓が配置されています。動線は『求人検索』が中心となっており、職種や勤務地、キーワード等で求人内容を検索できます。

それではこの2つの構成のうち、CV率が高いのはどちらなのでしょうか。

CV率が高くなるのは『会員登録型』しかし6割以上は『求人検索型』を採用

ユーザーにとっての情報量が多く、検索の利便性も高い『求人検索型』のほうがCV率は良いはずだと答えるマーケターは多いはずです。しかし実際には『会員登録型』の方が、CV率は高くなると垣内氏は説明します。

「実際のCV率はサイト毎に異なりますが、一般に『会員登録型』の方がCV率が高くなることは10年以上前からわかっており、『求人検索型』の3倍以上になることも少なくありません。しかし2019年4月時点で当社が調べた結果では、主要な人材紹介会社のうち6割以上が『求人検索型』を採用しているという状況でした」。

なぜ『会員登録型』の方がCV率が高くなるのでしょうか。その理由として垣内氏は「人材紹介会社のマーケターが考える以上に、応募したいと思える求人を自力で見つけられないユーザーが多いから」だと指摘します。そのため自分で検索を行うよりも、まずはエージェントに会って相談したい、と言うニーズが高いのです。そしてこのアプローチを行いやすくすることで、人材紹介会社にとっても無駄なプロセスを排除でき、効率的に求人紹介が行えるのだと言います。

このような『勝ちパターン』が存在するのにも関わらず、現在でも多くの会社が『求人検索型』を選んでいるという事実は、驚くべきことだと言えるでしょう。前編で指摘した『車輪の再発明』が、デジタルマーケティングの世界でいかに一般的なことなのかが、この一例だけでも伺い知ることができます。

『勝ちパターン』を知ることで誰でも80点を取ることが可能に

「このような『勝ちパターン』を知っていれば、無駄な試行錯誤や失敗を回避しやすくなり、誰でも低コストで合格点の80点を取ることが可能です。すべてのWebサイトが80点になれば、ユーザも探している情報にスムーズにたどり着けるはずです。WACULが目指しているのは、まさにこのような世界なのです」(垣内氏)。

もちろん垣内氏は、単なる経験則として『勝ちパターン』を語っているわけではありません。そこには膨大なデータによる裏付けが存在します。WACULではビジネスモデルやサイトのタイプ別に主要なKPIを定義し、それらを比較することで、結果の差を生み出している要因をAIで特定しています。そのうえで成果を出している会社の特徴を抽出し、ベストプラクティスとして一般化しているのです。

ここで取り上げた人材紹介会社のケースはBtoCビジネスの事例ですが、BtoBのデジタルマーケティングでも同じような『勝ちパターン』が存在します。もちろんBtoBにも様々な業態が存在しますが、ここではその代表として『法人向けソリューション』を取り上げてみましょう。

この業態は、商材に関する顧客の知識量が少ない、という特徴のあるグループです。顧客は独力で商材を選ぶことが難しく、自分が抱えている課題の認識が曖昧なケースも少なくありません。そのためWebサイトで丁寧に説明されても理解しにくく、Webサイトでお問い合わせを受けて、その後に営業担当者が直接説明したほうが効果的です。

また顧客の企業規模は問わない、という特徴を持つものとしています。その場合、大企業に特化した商材に比べて営業活動の手間がかかりやすいため、これをどのように効率化していくかも重要な課題になります。

膨質の高いアポを大量獲得するためにWebサイトで優先すべきこと

このような業態におけるマーケティング部門の最終目標は、『質の高いアポを大量に獲得する』ことにあります。ではそこで、デジタルマーケティングはどのような役割を果たすべきなのでしょうか。それは『根性のテレアポ』『粘りの定期訪問』といった、手間はかかるものの比較的単純な業務から営業担当者を解放し、『顧客との関係性を築いて契約』することに専念してもらうことだと言えます。

Webサイトはこのうち『根性のテレアポ』の入り口として、重要な役割を果たすことになります。ではここで質問です。このWebサイトは、自社商材の理解を目的とすべきでしょうか。それとも商材への理解は後回してCV数獲得を優先すべきでしょうか。

ここまでお読みになった方ならすでにおわかりだと思いますが、正解は『サービス理解よりもCV数を優先すべき』です。法人向けソリューションのように、理解に時間がかかる商材を理解してもらうことは困難なのです。Webサイトを閲覧するユーザーの目には、自分の興味のある情報しか入っていかず、そこで理解してもらえるのは『10秒で伝わるトーク』に限られます。そのためこのWebサイトでは、まずはお問い合わせや資料請求など、CVをしてもらい、商材に関する詳しい説明は営業担当者が口頭で補うべきなのです。

「それでは質の高いリードが獲得できない」という不安もあるかもしれませんが、リードの質を高めるための手法を別途組み合わせることで、この問題も解決します。その方法となるのが質問フォームや商談獲得のための電話です。ここでユーザーの情報を取得することで、『ユーザーに選んでもらう』のではなく、企業自らが『ユーザーを選ぶ』ことが可能になります。

CV数を稼ぐWebサイトの構成方法他にも数多くある『勝ちパターン』

このようなWebサイトを実現するには、ファーストビューでフォームに直行できる仕掛けが必要です。それも可能であれば、フォームへのリンクを配置するのではなく、フォームそのものをトップページに露出すべきです。またページをスクロールさせないことも重要です。縦長に情報を配置することでCV率が低下することは、AIアナリストの分析結果から、すでに定量的にわかっているのです。

この他にもWebサイト制作上の『勝ちパターン』がいくつか存在します。またWebサイトの構成だけではなく、CVポイントの設定方法、理想の集客を実現するためのブログ制作方法、商談につながりやすいメルマガ配信方法などにも、それぞれ『勝ちパターン』があります。

これらをまとめたeBookも公開しています。BtoBデジタルマーケティングの『勝ちパターン』を知りたい方は、ぜひこちらのeBookをご参照ください。

また、今回取材にご協力いただいた垣内氏の書籍「デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?」が今月10日に発売されました。今まで垣内氏が培ってきた知見をもとに、「車輪の再発明」に終止符を打つべく、「やるべきこと」「やるべきでないこと」が具体的に記されています。デジタル活用に悩む方は必読の一冊ですので、ebookと併せてお読みください。

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