ビッグデータの分析・活用は企業の成長に直結する重要なポイントです。しかし、その効果をビジネスに結びつけるためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する人材の育成・確保が欠かせません。
DX推進には複合的な専門性を持つ人材が必要です。社内の人材育成にかけるリソースも大きくなります。この記事では、DX推進の成功に必要な人材と育成体制について解説します。
デジタルトランスフォーメーション(DX)で不足する人材
DX推進のためには、ITスキルはもちろん、高度なスキルを持った人材が求められます。しかし、そうした人材は慢性的に不足しているのが現状です。
ビッグデータの収集・分析可能な人材
IPAによると、今後ビッグデータの収集・分析・解析技術の重要度は現在の5倍以上の比率で重要になるそうです。これはビッグデータがいかに企業から注目を集める存在であるかを示す結果であり、ビッグデータを収集・分析できる人材のニーズが非常に高まっていると考えられます。
ビジネスをデザインできる人材
また同調査では、調査企業の40%超が「ビジネスをデザインできる人材」が今後不足すると回答しています。DXは新たな技術から今までにないビジネスモデルの想起が目的の一つとなるため、今後は既存のビジネスを遂行するだけでなく、新たなビジネスを創出する力を持った人材が求められるのです。
システム全体を思考できる人材
多くの企業は基幹システムのほかに、あらゆるシステムを同時活用しています。それぞれのデータ連携や、システムの相互利用は欠かせません。社内外のサービスと連携・協調して業務を進める必要があります。一つのシステムに特化するよりも組織全体のシステムを思考できる人材がより重要です。
参考:>>IPA(独立行政法人情報処理推進機)「組込みソフトウェア産業動向調査」
デジタル人材の育成や確保が難しい理由
デジタル人材には専門的な知見が必要なうえ、日々情報が更新されるため常に知識をアップロードしていかなければなりません。さらに「技術をベースに新たなビジネスモデルを考案し、価値を持たせて世に送り出す」ことも求められます。すべてのスキルを十分な水準で満たしている人材は限られます。また自社に不足している人材を外部から採用しても、専門性が多岐にわたるため、求める人材とのズレが生じる場合があります。長期の雇用維持が難しく期待どおりの活躍ができないケースも起こります。
自社にマッチした採用を目指すためには、あらかじめ「どのようなスキルを持った人材が必要なのか」を明確に洗い出し、育成方針を定め、中長期的に育成する方がよいでしょう。
デジタル人材の育成をするには
では、中長期的視点で人材を育成する場合、どのような手順で何に気をつければよいのでしょうか。
専門組織や専任の役職者を設置
システム部やマーケティング部など既存部署の担当者がDXの推進を兼任するのではなく、専門のチームを作る、専任の役職者を設置する方法が得策です。
DXでは技術的な分野、マーケティング分野、そのほかの分野を複合的に扱う必要があり、さまざまな部署とスムーズに連携する必要があります。DXに集中して取り組める環境を整えることが大切です。
経営トップがコミットする
DXの推進には、経営トップの強いコミット(意思表示)が必須です。これまでの業務の進め方を大きく見直すことや、人事制度の改革など変革がともないます。明確なビジョンを持たないまま強引に推し進めると現場の反発が大きくなり、失敗する可能性が高まります。たとえDXの専門部署を作ったとしても、その部署のみで社内全体に意識改革を促すことは難しいでしょう。
失敗を避けるためには、経営トップが明確な方針を示したうえで社員に将来的なビジョンを伝えることが欠かせません。全社が一丸となってゴールに向かう意識づけをおこなうためにも、経営トップがはっきりと方針を説明し、関係者に理解を求めることが必要です。
たとえば「RPAを使って業務改善するように」と指示しても、社員は、どのような成果が期待されているかを把握できません。曖昧な表現で伝えるのではなく、目的を明確化したうえで引き渡すことで、現場はスムーズにDX推進に取り組めるようになります。
まとめ
ここまで、デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功に必要な人材と育成について解説してきました。
DXの実現には高水準かつ広範囲にわたる専門性が求められるため、中長期的な人材育成が成功への近道です。
そのうえで、経営トップが不退転の決意でリーダーシップを発揮し、組織全体にDX推進の意識を浸透させること。それができれば、きっとあなたの組織もDX実現への道が開けるはずです。