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事例で分かるインサイドセールス Vol.1 Sansan株式会社編

事例で分かるインサイドセールス Vol.1 Sansan株式会社編

近年、有効な営業手法として注目を集める「インサイドセールス 」。 導入に成功している企業は、最大限に成果を出すためにどんな工夫をしているのか。インサイドセールスに積極的に取り組んでいる企業の事例講演をもとに、その役割や実践法を紐解きます。

インサイドセールスをご存知ですか?

インサイドセールスとは、ひと昔前の言葉で言えば「内勤営業」に近いのですが、インターネット上で比較検討してから購買を検討する現代では、企業規模やBtoB/BtoCを問わず有効な営業手法として、にわかに注目を集めています。具体的には、マーケティングと営業の間に立ち、マーケティングが取得した見込み客に対して、電話やメール、DMなどを駆使してアプローチし、見込み客を営業部門に引き継ぐ役割を担います。これにより、次のような営業活動の課題を解消できるとされています。

  • 「見込み客の温度感がバラバラ」→見込み客の興味をインサイドセールスが醸成してから、商談情報を営業に手渡す
  • 「見込み客をほったらかし」→顧客情報を無駄にせず、育成する役割をインサイドセールスが担う
  • 「営業のノウハウが属人化する」→新人をまずインサイドセールスとして育成し、製品や会社に対する知識を得てから、外勤営業にステップアップする

しかし、実際の導入・運用にあたっては、

  • 「KPIの壁」(どのようなKPIをたて、運用していくか)
  • 「データベースの壁」(各部署でバラバラに運用するDBをどうするか)
  • 「環境の壁」(インサイドセールスに適した環境をどう確保するか)
  • 「教育の壁」(どのように教育していくか)
  • 「パワーバランスの壁」(外勤営業やマーケティングとの役割分担をどうするか)
  • 「採用の壁」(インサイドセールスにおける人材採用をどうするか)
  • 「今後の壁」(導入・運用の定着後は、どのように展開していくべきなのか)

などの問題が立ちはだかります。

今回はセールスフォース・ドットコムが開催している「インサイドセールス分科会*1 」でのSansan株式会社講演、7社によるパネルディスカッションをもとに、インサイドセールスの実践法を2回に分けて、紐解きたいと思います。

*1インサイドセールス分科会とは?
セールスフォース・ドットコムが主催する「インサイドセールス」の勉強会。インサイドセールスをすでに導入している企業だけでなく、導入検討中の企業も参加可能。ご興味ある方はこちら

直面した壁をどう乗り越えた?Sansan株式会社様事例

インサイドセールス導入を行った、Sansanの一方井(いっかたい)辰典氏によるプレゼンテーション。Sansanが取り組んでいる「KPIの壁」「データベースの壁」「環境の壁」「教育の壁」「今後の壁」についてお話いただきました。

写真:Sansan株式会社 営業部 エンタープライズ第二グループ 一方井 辰典氏

1つ目の壁は、「KPIの壁」。2011年にインサイドセールスを導入した当初、Sansanではマーケティング、インサイドセールス、営業の各部門が次のようなKPIを設定していたそうです。

  • マーケティング:リード獲得件数
  • インサイドセールス:アポイント獲得件数
  • 営業:受注件数

一見すると、それぞれの役割に適ったKPIに思えます。しかし、当時の状況を一方井氏は次のように振り返りました。「たとえば、インサイドセールスで多くのアポイントを獲得しても、営業はクロージングに追われているため、新規のアポイントに対応できないという状況が生じていました。マーケティングとインサイドセールスも同様で、マーケティングが創出したリードにインサイドセールスが対応しきれないような状況に陥っていました」

次に一方井氏が取り上げたのが「データベースの壁」。インサイドセールスを導入した当時、マーケティング、インサイドセールス、営業のそれぞれで異なるデータベースが存在していたそうです。「それぞれのデータベースにある情報は紐付いていませんでした。さまざまな情報が線でつながらず、点のまま存在しているようなかたちです」

さらに、「環境の壁」にも悩まされており、大きく2つの課題に直面していたといいます。1つ目は、受電対応に追われて行動量を確保できないという課題。「インサイドセールスは常に電話と向き合っているので、社内では『電話はインサイドセールスがとるべきだ』といった雰囲気になっていたため、なかなか架電量を増やせませんでした」。2つ目は、常に電話と向き合うことで生じる「ストレス」。「インサイドセールスのメンバーは、基本的に1日中自席で電話を架電・受電し続けることになります。最初は気づかなくても、ずっと同じ場所で電話に向き合って仕事をするのはストレスが溜まるものです」

そして、「教育の壁」にも悩まされていたそうです。「インサイドセールスに限らず、人材を育て現場で活躍してもらうには、マニュアル化やノウハウ・ナレッジの共有が欠かせません。しかし、インサイドセールスはすごくスピードの速い世界です。そのため、マニュアルを作るのも一苦労で属人化しやすい状況でした」では、Sansanはこのような壁とどのように向き合い、乗り越えたのでしょうか?

4つの壁をどうやって乗り越えた?

1. KPIの壁

従来のKPIでは、各部門の部分最適にとどまり、全体最適を図ることが難しい状況にありました。そこで、Sansanでは自分たちの供給した案件の受注金額の合計値である受注貢献額をインサイドセールスの第一指標とすることにしました。「最終的な受注を念頭に置いた全体最適を目指しました。同様に、自分たちの共有した案件の案件化率もチェックしています」

2. データベースの壁

データベースの壁は、データベースを紐付けることで乗り越えました。「データベース間では、常にメールアドレスリンクで同期させています。さらに、Sansanの名刺情報も連携させて名寄せの精度を高めています」

さらに、壁を乗り越える上では「プロセスの可視化と責任所在の明確化」が重要だったそうです。「商談プロセスを明確にし、顧客がどのプロセスにいるのかをSalesforceで明確にした上で、各段階をどの部門が担当するのかをはっきりさせました」

3. 環境の壁

受電対応ばかりに追われているという課題は、自動応答装置の導入で解消しました。「代表電話で受電すると、まずは自動音声を流して、お電話いただいた方に用件を選択していただき、用件に合った部署につなぐようにしました。その結果、インサイドセールスの受電対応の負荷は1/3程度まで軽減されました」

一方で、「ストレスの軽減」という課題の解消にはIP電話が貢献しています。「パソコンやスマートフォンなどから架電・受電できるIP電話を導入したので、オープンスペースや自宅でも業務できるようになりました。また、架電数も記録されるので、より正確に行動量を把握できるようになりました」

4. 教育の壁

教育の壁は、マニュアルサイトが乗り越える糸口になったそうです。「もともと、インサイドセールスで必要となる情報を集めた社内向けのマニュアルサイトを運営していました。しかし、各メンバーが次々と情報を追加していたため、ほかのメンバー、特に新しいメンバーはどの情報を正とすべきかわからない状況でした。そこで、サイトリニューアルを機に、マネージャークラスだけが情報を更新できるかたちに変更し、正しい情報だけが公開されるようにしました」

一方井氏は、最後に「今後の壁」としてこれからの展望を語ってくれました。Sansanとして、今後特に注力していくのはデータベースだといいます。「インサイドセールスは、お客様からの情報をいかに事実と捉えて、その事実を深めて営業にパスするかが重要だと思います。お客様の事実をより多く集めて、メンバーがより感度高くその情報を使える環境を目指していきたいです」

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