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バーチャルとリアルが融合する6G時代に必須の価値、それは「信頼」

ディープフェイクやビッグデータのプライバシー保護問題など、「信頼」をめぐる新たな課題が取り沙汰されています。しかし、これはまだ序の口。10年後にも到来するBeyond 5G/6G時代には、企業は生き残りを賭け「信頼」に向き合うことになるでしょう。

ディープフェイクやビッグデータのプライバシー保護問題など、「信頼」をめぐる新たな課題が取り沙汰されています。しかし、これはまだ序の口。10年後にも到来するBeyond 5G/6G時代には、企業は生き残りを賭け「信頼」に向き合うことになるでしょう。

10年後のある日――。あなたは、少し前に引っ越した環境の良い地方都市の自宅で目を覚まします。寝ている間の心拍数や体温、脳波などを記録するウェアラブル端末に目をやり、通信記録をチェック。健康情報をモニタリングするオンラインサービスを利用していますが、そのサービス提供者の選定には気を使います。以前、サプリメントやヘルスケアサービスの広告が殺到したためです。サービスのスイッチングコストは昔よりずっと安くなり、乗り換えは簡単になりました。横ではスマートスピーカーが昨日のCO2 排出量を報告します。良かった、目標値を超えていない。フェアトレード商品とのポイント交換というインセンティブの付くSDGsへの貢献は、いつの間にか生活の一部になっています。

コーヒーと軽い朝食を取ったら、早朝ミーティングの予定があります。約束が待っています。バイヤーはアジアの現地に、デザイナーは米国にいますが、各人の自動通訳付きのホログラムがバイヤーのバーチャル店舗に集合。商品のディスプレイ方法を相談します。各人の足下に認証マークが点灯しているのでから、ニセ者が入り込んだりしてはいません。バイヤーから人権問題をないがしろにしている地域から材料を調達していないか厳しく問われましたが、あなたはブロックチェーンを活用した調達履歴を出して安心してもらいました。仕事が順調に片付いたら、午後は自宅近くの海岸に釣りに出掛けよう――。

図①:バーチャル店舗での会議のイメージ

今とは一線を画すような変革の時代へ

バーチャルとリアルが融合する時代の1シーンは、たとえば上記のようなものになるでしょうか。こんな短いトピックでも、重要なキーワードを読み取ることができます。それは社会や企業に実装されるべき「信頼」です。

私たちは遠くない将来へ向け、これまで慣れ親しんできた世界の延長線上とは一線を画す大変革を経験するはずです。そこでは、企業にとって今でも重要とされている「信頼」という価値に対する姿勢。これがますます問われていくのは必然の流れだろうと言えます。その理由を下記のような観点で記述する書くことにより、今後の「信頼」の有り様(よう)に至る気づきとマインドチェンジの重要性を提示してみたいと思います。

  1.   テクノロジー進化が様変わり
  2. 「信頼」を問われる課題が噴出
  3. 「信頼」がさまざまなカタチになる。

テクノロジーの進化が様変わり

日本では始まったばかりの第5世代移動通信システム(5G)も、わずか10年のうちに「Beyond 5G」とも言われる「6G」の時代へ移行します。振り返れば3G、4Gと、ほぼ10年ごとに移動体通信の進化は新しいステージをたどってきました。この間、携帯電話は進化したに違いありませんが、主には通信速度の向上に焦点が注がれてきたものだと言えるでしょう。ところがBeyond 5G/6Gは、これまでのような進化とは異なる性質のものと理解すべきです。

量子コンピュータの実用化が加わると、途方もなく膨大なデータが瞬時に処理され、それらが縦横無尽にリアルタイムで世界を駆けめぐる基盤が整うことになります。企業システムの管理者からすれば、あっという間に膨大な重要情報が移動するわけで、一瞬たりとも気を抜けません。見積もることの難しいリスク。気を抜けないのは個人も同じです。

また、あらゆる機械やサービスにAI(人工知能)が組み込まれ、私たちは目の前にいるのが人なのかAIなのかを気にせずにコミュニケーションを取る場面が増えるでしょう。AR(Augmented Reality:拡張現実)、VR(Virtual Reality:仮想現実)のような技術が、さらに拍車をかけます。人とAIやロボット、さらにCGが溶け合った社会が当たり前となっていくわけです。

そんな世界がわずか10年後にはやって来るのです。冒頭のトピックが決してSF(空想科学小説)でないことは、こうした技術革新の行方を想像すれば、納得が行くことと思います。

「信頼」を問われる課題が噴出

そうした世界で、いよいよ問われてくるのが真偽性の問題になります。AIが社会に溶け込み、自身のアバターやデジタルアーティフィシャルヒューマンと呼ばれる人間と見間違うロボットが身近にいるような世界では、目の前の真正性をいかに担保できるかが重要になります。「信頼」できる存在であると、個人であっても企業であってもその証(あかし)を立てなければ前へ進めなくなるでしょう。

AIによる判断は基本的にブラックボックスなので説明が困難と言われます。今でもこの問題をめぐって火の手の上がるケースがあちらこちらで見られています。しかし、企業は早晩、その説明責任をきちんと果たさざるを得なくなるでしょう。顧客からの信頼を損なわないために、AIがいかように判定しようとも、その説明責任に対し企業は真摯に向き合う必要があるのです。

もちろん問題はAIだけではありません。セキュリティ上の信頼性についても、私たちの生活に恩恵を与えるはずの量子コンピュータの発展は諸刃の剣となります。たとえば、広く使われているRSA暗号も、コンピュータの計算能力が悪用されれば信頼が揺らいでしまうことになりかねません。

それと、個人情報の取り扱いがいっそう注目されるのは間違いありません。ただし、個人情報の流出を防ぎますというような「信頼」の話だけでは済まなくまるでしょう。たとえば、「アルコール依存の人に、お酒のバナー広告をリコメンドする」といった企業は、顧客の足が遠のく可能性があります。個々のユーザーが喜んでデータを預けられる、時代の先を読んだ「信頼」の構築が必要とされるはずです。

「信頼」がさまざまなカタチになる

中国では、決裁アプリを基盤に個人信用評価システムが登場し、サービスとしてすでに成功を収めてい中国のアリババ集団傘下の企業が提供する「芝麻(ジーマ)信用」というサービスをご存知でしょうか。ます。どのようなサービスかというとここでは「信用スコア」を明確にし、それによってユーザーの享受できるサービスが変化しますするというものです。シェアリングサービスで借りたものを期日までにステーションに戻したか、ライドシェアサービスや飲食店の予約を無断でキャンセルをしていないか――などのユーザー情報を収集、信用度合いをスコア化します。このスコアが高ければ、空港の長い行列を回避できたり、不動産賃貸の敷金を免除されたりといったインセンティブが受けられる仕組みです。

また、東南アジアのタクシーの配車兼ライドシェアを手掛けるある企業「Grab」では、タクシードライバーの「信頼」を可視化し、社会課題の解消に寄与することで成功を収めています。

これらの例から伺えるのは、ビジネスの成功の種として「信頼」が具体的なカタチをともなうものへと変わっていく兆候です。「信頼」はその重要性を高めるのと同時に、こうした変化を遂げていくのではないでしょうか。変化をポジティブに捉え、より早くアクションすることによって「信頼」を守りの道具としてだけでなく、攻めのチャンスに活用していくこともできるのです。

一方、「信頼」を扱う新たなビジネスとして、ユーザーの失敗を消し信頼スコアを回復させるようなサービスや、外部の第三者組織が信頼を担保するエスクローサービスも出現する可能性があります。B to Bでも企業の「信頼スコア」による資金調達やサプライチェーンの形成が進んでいく可能性があります。こうした中で、企業は「信頼」を目に見える形で提示しなければならなくなります。

企業が体現していくべき「信頼」へ向けて、今から準備に取りかかるか、あるいはまだ時間があるとゆっくり構えるか――。遅くともBeyond 5G/6G までの10年後には、その明暗がはっきりと分かれてくるはずです。

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