国内FA(ファクトリーオートメーション)市場で圧倒的なシェアを持ち、顧客向け「FAサイト」が「BtoBサイトランキング2023総合ランキング」でトップになった三菱電機株式会社 FAシステム事業本部(2023年4月の組織変更により、現在は「インダストリー・モビリティBA戦略室 FAデジタルマーケティングセンター」)。
同社の大きな強みである代理店との積極的な情報共有などが評価され、「Account Engagement Award 2023」を受賞しました。なぜMAツールとして「Account Engagement」を選択し、どのような成果を生み出しているのでしょうか。インダストリー・モビリティBA戦略室FAデジタルマーケティングセンター センター長 中村 直美 様、河野 志紀 様、小山 皓平 様、坂野 綾子 様に話をお聞きしました。
2018年からデジタルマーケティングを開始
--「Account Engagement Award 2023」の受賞、おめでとうございます。まずは、FA事業本部の概要をご説明ください。
中村 直美 氏(以下、中村):
三菱電機は2023年4月から「ビジネスエリア(BA)制」を導入し、インフラBA、インダストリー・モビリティBA、ライフBA、ビジネスプラットフォームBAの「4BA体制」へと、組織を改変しています。
FA事業本部は、そのうちインダストリー・モビリティBAに属しています。その事業内容は、製造の自動化と品質・生産性の向上を実現する機器・装置・ソリューションを、グローバルに提供することです。つまり、モノづくりの現場で使用される製品によって、産業と技術革新の基盤構築に貢献しているのです。
--三菱電機のFAといえば、国内トップクラスのシェアを持っていますね。
中村:FAの主要カテゴリーの多くで、国内1~2位のシェアを獲得しています。ただし、それらのほとんどは工場で使われているため、一般の方が目にすることは少ないと思います。
サマリー
- 課題:全国を網羅する強力な代理店網が大きな強み。しかし、それ故に顧客からの距離ができてしまい、顧客ニーズの把握などが難しくなっていた。
- 解決策:デジタルマーケティングをスタートし、MAツールとして「Account Engagement」を導入した。これと同時に「Sales Cloud」も導入し、リードの流入から営業への送客までの管理を一元化。さらに「Experience Cloud」も導入し、代理店との見込み客情報の共有も実現した。
- 効果:顧客の行動履歴などからホットリードがすぐにわかるようになり、営業活動の幅が広がった。また、ホットリードは営業の判断で代理店にも渡されており、ここでも新たな顧客開拓に役立てられている。
--「Account Engagement」導入に至った背景を教えてください。
中村:当社の代理店網は、まず当社の製品しか扱わない一次代理店とその下に数多くの販売店があり、多層構造になっています。
このような代理店網を持っていることは当社の大きな強みなのですが、これがお客様からの距離を生み出していました。その結果、お客様のニーズがつかみきれない、お客様から見ても三菱電機の存在が遠い、という状況になっていたのです。
この頃は国内の競合企業も力を付けており、このままでは追いつかれてしまうという危機感がありました。そのため、お客様との接点の拡大とお客様情報の収集という、新たな両輪が必要だと判断。「FAデジタルマーケティングセンター」を設置することになったのです。
--その際、AccountEngagementを導入し、立上げ後10年以上経過している「FAサイト」をベースに、デジタルマーケティングを開始したのですね。
中村:そうです。当社は業界内で先行してWebサイトを立上げ、お客様に必要な技術情報をご提供しています。従って、FA業界でのFAサイトの知名度は高く、数多くのお客様の情報を有しています。お陰様で、2023年6月には、トライベック社が毎年公表している「BtoBサイトランキング」で1位のご評価をいただきました。
「MA未経験でも使いこなせそう」が採用理由
--取り組みの一環として、「Account Engagement」を導入したわけですね。
中村:デジマケに取り組むのであればMAツールは必須だと考え、まずはSalesforceを含む4社でコンペを行いました。この時に、様々な役割を担う部署のメンバーが集まって議論した結果、「Account Engagement」の採用が決まりました。
--採用のポイントは何でしたか。
中村:1つはコストです。4社のMAツールの中で、ライセンス費用と導入費用が最も安価でした。これに加えて、実際にレポートやダッシュボードを見せてもらった結果、「これならMA未経験の自分たちでも使いこなせそうだ」と感じたことも、大きな採用理由です。
自分たちでレポートやダッシュボードを作成できれば、社外に依存せずに柔軟な運用が可能になります。さらに、デジタルマーケティングで得たホットリードを営業に展開するには同じプラットフォームの方が良いと考え、営業のメンバーとも協議し「Sales Cloud」に決定。
--「Account Engagement」の採用を決めたのは2018年1月で、同年4月に利用が始まっています。その後、どのように活用を進めていきましたか。
河野 志紀 氏(以下、河野):
導入パートナーの支援のもとスモールスタートで利用を開始したのですが、最初に取り組んだのはお客様へのメール配信でした。その後も2年近くは、パートナーに伴走していただきながら利用機能を追加し、2020年1月から自走を開始しました。
--現在のシステム構成と情報の流れはどうなっていますか。
小山 皓平 氏(以下、小山):
情報の大きな入口になっているのは、多くのユーザ数を誇るFAサイトです。これとSalesforce(Account Engagement+Sales Cloud)を連携させ、会員情報とリードを紐づけた上で、Web上の行動履歴をSalesforceに記録しています。
ナーチャリングはリードに対して、まずメールを配信し、そこからWebに訪問して資料をダウンロードしたお客様に対し、アプローチを行っています。
「Account Engagement」から配信しているメールは、週に1本のニュースメールの他、業種や地域毎にセグメントを分けたセグメントメールもあります。
--見込み客に登録されたリードに対して、どのようにアプローチしていますか。
小山:見込み客の情報は、営業経由で代理店に渡し当社・代理店が情報連携を取りながらアプローチをしています。
--ナーチャリングスコアはどのように設定していますか。
河野:標準のスコアリング機能では、お客様がWebサイトにアクセスするたびにスコアを加算しています。しかし、これだけではWebアクセスの頻度が少なくなったリードでも高いスコアのまま維持されてしまうため、独自にスコアの変化値を評価する機能も加えています。
つまり、FAサイトへのアクセスが増えてスコアが上昇したリードは、最新のホットリードとみなすわけです。これは私達のスコアリングにおける大きな特徴になっていると思います。このようなホットリードが見つかった場合には、自動的に営業に通知がいくようにしています。
営業を強くする マーケティングオートメーション
Account Engagementの代表的な機能や、導入することにより具体的にどのようなメリットがあるのかを10分間でわかりやすくお伝えします。
一番のメリットは「お客様が見えるようになった」こと
--すでに4年以上お使いいただいていますが、「Account Engagement」で気に入っている点は何でしょうか。
坂野 綾子 氏(以下、坂野):
私は営業の方に使っていただくためのマニュアル作成などを行っているのですが、画面構成が統一されており、シンプルな操作が気に入っています。またメールテンプレートの作成も可能なので、決まった形のものを事前に用意しておくことで、HTMLメールを簡単に作れるのもいいと思います。
中村:レポートやダッシュボードの作成も簡単です。実際に営業担当者の中にも、自分で作成している人が少なくありません。なかにはかなりカラフルなものを作っている人もいます。
--「Account Engagement」によるメリットはいかがでしょうか?
中村:お客様が見えるようになったことが、一番のビジネスメリットです。ナーチャリングスコアの変動も全て把握でき、スコアが上がったホットリードを訪問することで、商談に至る打率も上がっているはずです。
これらの他に、新製品が出た時のメールキャンペーンを行うことで、お客様への周知スピードが飛躍的に高くなった、という効果も出ています。
グローバル営業の強化も推進
--最後に、今後の取り組みをお聞かせください。
中村:デジマケ開始時には、国内のお客様の可視化に加えて、もう1つ課題がありました。それはグローバルでのアカウント情報の統合管理です。今後はこれへの取り組みを加速していきます。
すでに「Sales Cloud」は海外の各拠点に導入しており、一部の拠点とはSalesforce上での情報共有を行っています。また情報収集やナーチャリングを強化するため、Account Engagementも順次導入しており、グローバルに展開しつつあります。
三菱電機は国内では圧倒的な強みを持っていますが、海外での営業力には限りがある上、当社以上の巨人も存在します。このような競合に対して、海外の限られた営業担当者や代理店で対抗していくには、Salesforceのような“飛び道具”を使って集中的に営業する必要があります。いまはそのための基盤を構築・展開する段階に入っているのです。
--その基盤ができあがれば、大きな競争力が得られそうですね。これからの取り組みにも注目していきたいと思います。本日はありがとうございました。
『Account Engagement Trailblazer Award 2023』受賞企業 記事一覧