AIはビジネスや教育現場、医療など幅広いジャンルにて活用されており、多くの企業で導入されています。とくに、2023年にはChat GPTの登場により多くの企業がAIに注目した1年になりました。
とはいえ、「AIを導入したいけれど、どのように活用すればよいかわからない」「そもそもAIが何に使えるかがわからない」などという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AIの活用事例を業種別に分けて解説します。AIのメリット・デメリットについてもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
幅広い業界で活用されているAI(人工知能)とは?
AI(人工知能)は機械学習やディープラーニングといった技術を駆使し、人間のように学習・判断し、作業を行えるシステムの総称です。AIは以下のように多岐にて活用されています。
- 医療分野での疾病診断支援
- 製造業での生産の効率化
- 小売業での顧客行動分析
- 金融業界でのリスク管理
AIは膨大な量のデータを高速に処理し分析できます。人間では見落としがちなパターンを発見したり、予測が難しい将来のトレンドを予測したりすることが可能です。
より効率的な意思決定を行え、新たなビジネスチャンスを掴むきっかけが得られます。
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【業界別】AIの活用事例10選
AIを本格的に導入する前に、業界ごとの使い方や活用方法を知っておくことが大切です。自社でどのように活用できるかがわからないまま導入すると、達成したい効果が得られない可能性が高いためです。
ここでは、AIの活用事例を業界別で詳しく紹介します。
事例1:AIによるコンタクトセンターの効率化|小売業
株式会社ビックカメラは「DX宣言」を実現するために、Salesforceを活用したシステムの内製化を進めています。
同社はこれまでコンタクトセンターを外注していましたが、予算が超過しており業務改善が必要でした。
解決策として「Service Cloud」を導入し、AIが搭載された「Einstein」を導入し、電子メールの自動振り分けや電話対応後の業務の簡素化を試みます。
Einsteinを活用したことで、電子メールの自動振り分けが可能となり、アサインミスが1日1~2件程度で済むようになりました。
Service CloudとEinsteinの活用により、コンタクトセンターの効率化のにつながり、コストを20%以上削減できました。
事例2:AIが退会阻止と受注数増加に貢献|不動産
不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」を運営しているLIFULLは、大量の業務データにAIを適用し、退会阻止と売上向上に取り組んでいます。
同社はAI搭載のCRM「Salesforce Einstein」を導入し、必要なデータを揃えて退会予測分析を実施しました。解約に影響しそうな要素を抽出し、AIモデルを作成した結果、退会リスクの高い顧客を抽出できるようになりました。
モデルを作成したことで、退会リスクの高い顧客に対し、営業担当者が適切なサポートを提供できるようになっています。
また、受注確率予測にもSalesforce Einsteinを活用し、AIモデルを作成しました。AIモデルは受注実績データから契約企業の傾向を分析し、営業現場の感覚も取り入れて作成しています。
作成したAIモデルをブラッシュアップした結果、アポイント取得率や受注率の改善につながり、新規受注会員数が300%伸びました。
事例3:AI搭載のドライビングシミュレーターとテスト車両による実験|自動車
本田技研工業株式会社では、交通事故死者ゼロを目指す取り組みとして、ヒューマンエラーをゼロにする知能化運転支援技術の研究に取り組んでいます。
同社は研究の過程でAIが搭載されたドライビングシミュレーターを開発し、運転支援の実験を行うようにしました。
ドライバーの視線の動きや走行結果などから事故につながるリスクのレベルを推定して、状況に合わせて運転を支援します。
また、AIを搭載したテスト車両を用いた実験も実施しています。車のルーフにカメラを取り付けモニタリングし、AIシステムがリスクを推定して安全運転になるようにサポートするのです。このようなAI技術の研究をして、本田技研工業株式会社では、安全・安心な運転の実現を目指しています。
事例4:生成AIで医療文書の作成時間を削減|医療
東北大学病院と電機メーカーNECは生成AIおよび大規模言語モデル(LLM)を用いて、電子カルテから医療文書を作成する検証を行いました。
医師の業務負担軽減を目的としており、とくに記録・報告書作成や書類の整理に費やす時間の短縮を目指しています。
検証では、NECが開発した医療テキスト分析用のAIモデルが電子カルテの情報を時系列に整理し、LLMを用いて治療経過の要約文を自動生成しました。
検証の結果、医師が紹介状や退院サマリーなどの要約文を新規作成する際の作成時間が平均47%短縮されました。文章の表現や正確性についても高い評価を得ています。
事例5:製造物のデータから不具合の要因を発見|製造業
株式会社ヨシズミプレスは、金型製作から順送プレス加工までの一貫生産を行っている会社で、車の自動運転のセンサーに用いられる半導体レーザーの製造をしています。半導体レーザーの製造は高度な品質検査が求められますが、これまで検査担当者が顕微鏡で目視検査を行っており、膨大な時間を要していました。
そこで同社はAIによる画像検査の導入に取り組み、自社で整列機を製作して良品と不良品の画像をAIに学習させるトレーニングを行います。試行錯誤を重ねながら、約4~5ヶ月かけてAIによる検査システムを立ち上げました。
AIの導入により目視検査の総時間が月40%減少し、従業員の負担が軽減されました。
製造業における生成AIの活用と課題
世の中を席巻している生成AI。製造業ではどのような使われ方が期待されているのでしょうか。現場への意識調査を行い、そのリアルな期待と課題をまとめました。
事例6:ブドウ収集AIロボット|農業
農業でのAIの活用事例として、フランスのブドウ収穫ロボット「Wall-Ye V.I.N.」があります。Wall-Ye V.I.N.はブドウ園での労働力不足に対応するために生まれたAIロボットです。
人工知能とマッピング機能を駆使して、植物の特徴を認識し、ブドウの木を剪定します。1日に600本の選定が可能で、労働者不足に貢献しています。
剪定や不要な若い芽の除去を行いながら、土壌や果実、ブドウの木の健康状態に関するデータも収集可能です。GPSとジャイロスコープを搭載しており、盗難を防ぐためのセキュリティ機能も備えています。
事例7:生成AIによる学びを提供|教育
教育業界ではChatGPTのような生成AIを活用した教育が注目を集めています。一例として、AIを利用した英会話アプリがあり、学生が気軽に英語を学べるツールとして利用されています。
生成AIが搭載されたアプリによって、実践的な英会話ができるようになり、失敗をおそれることなく経験を積むことが可能です。
また、ChatGPTが家庭教師代わりにも活用されています。ChatGPTが問題を作成し、生徒が回答を打ち込むことで、答え合わせをしてくれます。間違いがあれば解説してくれ、生徒がわからなければ、よりわかりやすく解説もしてくれるのです。
自分のペースで勉強できるようになり、モチベーション向上にもつながっています。
事例8:アスリートに必要な食事トレーニングをサポート|スポーツ
オンキヨースポーツ株式会社では「food coach」というAI搭載の食事トレーニングアプリを開発しました。アプリは約10万件の食品や料理のデータベースを利用し、アスリートが摂取した食事の栄養価を正確に計算してくれます。
トレーニングや試合などの活動にもとづいて、個々のアスリートに最適な栄養摂取計画を提案してくれるのが魅力です。AI技術により、アスリートは自身のパフォーマンス向上に必要な栄養管理を効率的に行えます。
事例9:不正送金対策モニタリングシステムの導入|金融
住信SBIネット銀行は、自社開発のAI技術を活用して不正送金対策モニタリングシステムを高度化しました。不正取引を高精度で検知し、24時間365日体制で振込のモニタリングを行います。
AIの導入により、不正取引に関する判断の高速化と不正送金の検知が可能になり、金融犯罪の防止に大きく貢献しました。今回の取り組みによって、金融業界におけるAI技術の活用の先駆けとなり、ほかの金融機関への提供も視野に入れています。
事例10:ドライブスルーにAIチャットボットを導入|飲食業
アメリカのファストフード店「ウェンディーズ」は、Googleが開発したAIチャットボットをドライブスルーに導入し、顧客との対話を自然に行えるようにしました。AIチャットボットがよくある質問に答え、従業員と同様の応対ができるようにしています。
ドライブスルーにAIを導入することで、注文の効率化と顧客サービスの向上が可能です。飲食業界におけるAI技術の新たな活用モデルとして、注目が集まっています。
【BtoB向け】AIの活用事例4選
AIの技術は企業向けサービスでもよく活用されています。ここでは、BtoB向けのAIの活用事例をまとめます。
事例1:生成AIでコンタクトセンターの工数を8割軽減|富士通
Salesforceのリセールパートナーである富士通は、Salesforceの製品の問い合わせ対応に向けてサポートデスクを設置しています。同社ではカスタマーサービス向け生成AI「Einstein for Service」を導入し、サポートデスクの工数削減を検証しました。
検証したのは、以下の2つの機能です。
- サービス返信:チャットでの問い合わせの返信内容を自動作成して提案する機能
- 会話サマリー機能:オペレーターと顧客のやり取りを要約してテキスト化する機能
検証結果、サービス返信機能によりオペレーターの平均処理時間が89%、会話サマリー機能により平均後処理時間が86%削減されるという、期待値を大幅に上回る結果が得られました。
富士通のコンタクトセンターにおいて、生成AIの活用は、もはや選択肢ではなく必須のツールとなっています。
参考:【生成AIで約8割工数削減】富士通のSalesforceサポートデスクが挑む顧客体験と生産性の向上
事例2:定性データを含めた情報共有|株式会社マーケティングデザイン
広告代理店の株式会社マーケティングデザインは、Sales Cloud Einsteinに搭載されているAIで「どのような見込み客が商談につながりやすいか」を判断しています。
同社ではもともとSales CloudとPardotを導入して、顧客を増やすことに成功していましたが、人手不足で全員にアプローチできていない課題がありました。
そこでSales Cloud Einsteinを導入し、見込み客ごとに商談につながる可能性をスコアリングするようにしたのです。スコアから顧客リストを作成し、商談化率が高い見込み客に積極的にアプローチするようにしました。
結果、新入社員でもアポ率が10%以上となり、月間のアポ数も20倍に増加しました。
事例3:法人営業を自動化|SALES ROBOTICS株式会社
SALES ROBOTICS株式会社は、営業支援サービス「SALES BASE」を提供している企業です。Salesforceの製品を活用しており「SALES BASE」と連携させています。
同社はAIが搭載されたSales Cloud Einsteinを導入し、AIが出したスコアを営業担当者による「見込み確度」を補正するのに活用しています。営業担当者の見込みとEinsteinの評価に差があればミーティングで確認するようにし、安定的に成果を出せるような仕組みを作りました。
さらに売上予測もEinsteinに任せたところ、ある程度の範囲で予測値の絞り込みが可能となり、目標を達成しやすくなりました。
事例4:AIによる商談確度の分析により過去最高売上高を達成|株式会社淵本鋼機
株式会社淵本鋼機は、製造業向けの機械工具を扱う専門商社です。同社は価格競争の激化や顧客情報の共有不足、新規顧客開拓の課題などに直面し、生産性向上と収益性向上のために、Salesforceの導入に踏み切りました。
これまでSalesforceのSales Cloudと社内SNSChatterなどを導入し、生産性向上に成功しましたが、さらにAIが搭載されたEinstein Analyticsを導入し、既存顧客に対するアプローチを最適化します。
Einstein AnalyticsではAIによるスコアリングを用いて商談の確度を分析し、担当者の感覚に頼らない効果的な営業活動の具体化に取り組みました。結果、課題をひとつずつ解決していき、2018年、2019年と2年連続で過去最高の売上高を達成しました。
AIを活用するメリット
AIを導入すれば、事業における作業効率や新しいビジネスチャンスが得られます。活用するメリットをまとめると以下のとおりです。
- 業務効率化
- 新たな価値の創造
- 人件費や業務コストの削減
自社が導入することでどのような恩恵を受けられるか具体的に把握できます。ぜひ参考にしてみてください。
業務効率化
AIを使うことで、何度も繰り返す仕事や、時間がかかる情報の調べものなどが自動で完了します。顧客からの質問に対して、人工知能が自動で答えることも可能です。
疑問点に対して即座に対応すれば顧客満足度が高まり、従業員の負担も軽減します。他にも、データ入力や分析などの繰り返し作業をAIが担えば、従業員は別の業務に集中できるでしょう。
新たな価値の創造
AIを使うことで、今までにない価値ある新しい事業やサービスを始められます。データにもとづいて意思決定を支援し、顧客のニーズをより深く理解することで、新しい製品やサービスを提供することが可能です。
情報を分析して、これからお客様が何を欲しがるかを予測でき、新商品のアイデアを提示してくれます。AIによる予測分析を活用すれば、市場の変化に迅速に対応し、新たなビジネスチャンスを先取りできるでしょう。
人件費や業務コストの削減
AIを使うことで、人がする必要のある仕事が減り、簡単な仕事はAIがやってくれるようになります。自動化によりこれまで必要とされていた作業が減少すれば、人件費を大幅に減らせるでしょう。
AIを適切に利用すれば、ヒューマンエラーの発生率を低下させ、修正にかかるコストや時間を軽減できます。AIは24時間365日稼働でき、人件費をかけずにいつでも作業してもらえる点もメリットです。
AIを活用するデメリット
業務効率化や新たな価値を提供するAIですが、導入するデメリットも存在します。まとめると以下のとおりです。
- 初期投資が必要
- セキュリティ体制の構築が必要
- AIを運用できる人材の不足
導入する際はメリットだけでなくデメリットも考えてからにしましょう。それぞれ詳しく解説します。
初期投資が必要
導入するAIによっては多額の初期投資が必要です。とくに自社で開発する場合は、数百万円から数千万円の投資が必要になる場合があり、予算に余裕がないと難しいでしょう。
ただし、クラウド型のサービスを活用する場合は低価格で抑えられるものもあります。月数千円程度から利用できるサービスもあるので、予算を抑えたい方におすすめです。
セキュリティ体制の構築が必要
AIは膨大な量のデータを処理して学習するため、セキュリティ体制の構築が重要です。個人情報や機密情報を扱うので、情報漏えいや不正アクセスに対するリスクが高まります。
情報漏えいを防ぐためにも、セキュリティ対策が整備されたツールを導入しましょう。また、社内研修で情報の扱い方を共有して全社員が適切にデータを扱えるようにすることをおすすめします。
AIを運用できる人材の不足
AIツールの運用にはデータの分析やセキュリティ対策などで専門の人材が必要です。自社にAIを活用できる人材がいない場合は、採用や人材の育成が必要になります。
採用・育成にはコストがかかります。とくにAIの分析に詳しい人材は希少価値が高いため、多額の人件費が必要になることもあるでしょう。
AIを導入する際は人材の採用や雇用に発生する費用も考慮することも大切です。
中堅・中小企業向け
AI活用ガイド
AI (人工知能)の仕組みとビジネスでの活用方法を詳しく解説します。中堅・中小企業の飛躍的な成長を可能にするAIの力を理解いただけます。
AIの活用事例を知ってから導入を検討しよう
AIの導入を検討する際には、まずは実際にAIがどのように活用されているか、具体的な事例を知ることが重要です。成功事例や失敗事例を学ぶことで、Aメリットとリスクを理解しながら導入を検討できるようになります。
自社の目的を効率的に達成するためにも、AIを活用してみてはいかがでしょうか。
なお、SalesforceではAI機能が搭載されたCRMを提供しています。自動分析による費用対効果の向上が目指せるMarketing Cloudや、商談管理や売上予測に役立つSales Cloudもあります。
▶ AIを活用したCRMとは?従来型との違いや導入ポイントを解説
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