生成AIが仕事に変化をもたらしている今、、変化に柔軟に対応し、自分のニーズをAIに的確に伝える言語化能力が求められています。
THE GUILD代表取締役でnote株式会社CXOなどを務めるUI/UXの第一人者でAIにも精通する深津貴之さんにAIの活用術を聞くインタビューの後編では、言語化能力を身につける方法や、AIを業務に導入する価値についてお話を伺いました。
言語化能力を高める術は「数をこなす」
——前編では、AIを使いこなすためには言語化が重要というお話を伺いました。この能力はどうやって高めればいいでしょうか?
言語をたくさん使うのが一番だと思います。普段あまり走らない人がいきなり走るのは大変ですよね。ですが、走る回数を増やしたり、走る距離を伸ばしたりすることで徐々に走れるようになります。
同じように、言語化する力も数をこなすことで身につけられるものです。まずは言語化する習慣をつけることが大切です。
——とはいえ、言語化に自信がないと感じている人も多いです。
生成AIに「私は言語化能力が弱いので、向上できるように、アドバイスしてください」などの指示を出してみるのもいいと思います。結局、どんな場合も問いを立てることが大切だと感じています。
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ツール選定や導入コストの考え方は?
——生成AIにもさまざまなサービスがありますが、その中から自社で導入するものを選ぶときの考え方も教えてください。
一番シンプルな考え方は、自社ですでに導入しているツールと連携しやすいものを選ぶことだと思います。
たとえばGoogle WorkSpaceを使っているならGemini、Microsoft 365を使っているならCopilotから検討するのはよいスタート地点です。とはいえ、AIの導入は、これまで徒歩で移動していたところに車を入れるようなものなので、あまり難しく考えず、導入しやすいものから試してみることが大切だと思います。
——すでに業務で生成AIを活用している企業もあれば、コスト面で導入に二の足を踏んでいる企業も多いと思います。安くはない金額を払ってでも生成AIを導入する理由はどこにあるのでしょうか?
僕は導入しない理由がよくわかりません。ChatGPTは月20ドル、3000円程度です。時給3000円の人材が、月に1時間時間を節約できるならば、生成AIを使うべきです。そう考えると、平均的なデスクワーカーは全員使ったほうがいいと思います。
——特に中高年層では、AIを導入することで、業務フローを変えることに抵抗を示す人も存在しそうです。
トップダウンで進めることが一番スムーズだと思います。しかし、トップに立つ人が抵抗を示す場合は大変です。
新しいものを導入することに抵抗する人たちは、テクノロジーの導入での成功体験を持っていないことが多いです。PCやインターネット、スマホに乗り遅れてしまった結果です。その人たちの意識を変えるよりは、世代交代を目指すほうが良いかもしれません。
次はAIがエージェントになる時代へ
——iPhoneにApple Intelligenceが搭載されたり、AndroidスマホのアシスタントとしてGeminiが使えるようになったりと、スマホへの生成AIの搭載が進んでいます。これはどんな変化をもたらすとお考えですか?
スマホに生成AIが搭載されると、これまでAIを使っていない人にも自然と触れる機会が増え、普及のスピードは加速するでしょう。困ったときにAIに質問して解決することが当たり前になると思います。
——アプリの作り方なども変わるのでしょうか?
生成AIからアプリを開いて操作することが一般化すれば、UIが大きく変わる可能性があります。ノーUI、全自動UIの時代が来るかもしれません。例えば、画面上のボタンやメニューを使わず、AIとの自然な対話や意図の先読みによって操作が行われるようなことですね。
アプリ開発者は、その前提でユーザーフレンドリーなアプリ制作に取り組む必要が出てくると思います。
——スマホに搭載されたAIがユーザーをサポートする時代が進むと、そもそも要望を言語化する必要性もなくなってくるのでしょうか?
そうですね。「つまりこういうことでしょ」というユーザーの要望をAIが理解し、自動的に対応してくれるエージェントのようになると考えられます。
その先には、イヤホンやスマートウォッチから取得した身体のデータや位置情報を含めたユーザーの情報をすべて活用し、AIが先に最適な提案をしてくれる時代が訪れるでしょう。
さらにカメラが使えるようになれば、自分が見ているものと同じ景色をAIも認識できるため、“背後霊”のようにAIが常にそばにいて、相談したり指示を受けたりしながら生活するようになるかもしれません。
——AIを提供する企業に自分のデータを渡すことに抵抗を感じるユーザーもいると思います。
データを渡すことのメリットとデメリットを天秤にかけて判断することになるでしょうが、メリットのほうが勝る可能性が高いと考えます。
たとえば、「個人情報と生体情報を提供しているユーザーは、緊急時に救急車が迅速に駆けつけることができたり、病気の予兆も未然に検知できたりする」といった環境が整えば、人の寿命にも大きな影響を与えることになります。そうなると、データを渡してAIを使う判断をせざるを得なくなるでしょうね。
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——生成AIをとりまく状況はこれからどう変化していきますか?
これまではチャット型のAIというわかりやすい形が主流でしたが、これからは少しずつ、目に見えない形で仕事の中に溶け込んでいくと考えています。たとえば、AIがカレンダーの予定を確認して、その日やるべきことを教えてくれる。そういった人間が命令をしなくてもサポートしてくれるAIです。自動型の機能が業務のなかにどんどん取り入れられることで、気づかないうちにAIをすごく使いこなす企業と、全然使えていない企業に分かれてくるのではないでしょうか。
まとめ
生成AIは、これまで徒歩で移動していたところに登場した車のような存在です。導入コストは決して高いものではなく、もはや導入を躊躇する理由はないといえます。
今後はスマホへのAI搭載などが進むことで、ほとんどの人が日常的に利用する存在になるでしょう。企業においては、生成AIを使いこなす企業と使えないままの企業の差が広がる可能性もあります。
現在は、「生成AIを使うことでメリットを得られる、周囲と差別化できる」という段階ではなく、「使わないと取り残される」という段階にきているのかもしれません。
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