AI技術の注目度が高まっているなか、業務効率化を図るためにAI導入を検討している方も多いのではないでしょうか。
AIの導入によって、大量のデータを短時間で分析できるようになり、人間では思いつかないようなアイデアも提供してくれます。競合他社においても、AI導入で成果を上げていく可能性があり、後れをとらないためにもスピーディなAIの導入が必要です。
本記事では、AI導入によるメリット・デメリットや、具体的な導入ステップを詳しく解説します。各業界における事例も紹介していますので、AIを導入する際の参考にしてみてください。
中堅・中小企業向け
AI活用ガイド
自社にぴったりなAI活用シーンを見極める方法や、AI戦略を成功させるために必要な要素など、AI活用に向けたヒントが詰まっています。ぜひご覧ください。
目次
AI導入前に知っておくべき知識
AI(Artificial Intelligence)とは、人工的につくられた人間のような知能・技術、あるいは人間の思考と同じように動作するプログラムのことです。
AI導入によってできることや活用範囲は多岐にわたり、まずは導入前に以下の点について知識を深めておきましょう。
AI導入で実現できること
AIには、画像認識や言語処理、予測分析などさまざまな機能があり、以下のような活用が可能です。
AIの主な機能 | 活用例 |
---|---|
画像認識 | ・製造ラインにおける不良品検出 ・監視カメラによる顔認識 |
音声認識 | ・音声アシスタント(iPhoneのSiriなど) ・議事録の自動作成 |
言語処理 | ・チャットボットでの対応 ・カスタマーサポートでの自動応答 |
予測分析 | ・商品やサービスの需要・販売予測 ・金融市場での動向予測 |
生成 | 文章、音楽、画像、動画などの生成 |
予測分析機能の場合、社内のビッグデータを素早く分析し属性ごとの傾向やパターンを見つけ、精度の高い予測を導き出せます。
たとえば、自社商品の過去の売上データをもとに需要予測を立てることで、在庫数を考慮しながら生産ラインの稼働率を調整でき、需給バランスがとりやすくなります。
日本におけるAIの導入状況
総務省が公表している「通信利用動向調査報告書」によると、2023年(令和5年)におけるIoT・AIシステムを導入している企業は16.9%です。
2021年(令和3年)からの変化をみると、AIを導入している企業は増加傾向ですが、まだ導入に踏み切れていない企業があるのも現状です。その一方で、金融・保険業では34.7%の企業がAIを導入しており、業界によって導入率には差があります。
AI導入が進まない理由としては、システム開発を担うエンジニアや、問題の解決策を導き出すデータサイエンティストなど、AI人材の不足が考えられます。
企業がAIを導入する理由
企業がAIを導入する理由のひとつは、ChatGPTをはじめとしたAIが急速に進化し、生産性向上といったビジネスの観点から、あらゆる業界でのニーズが高まっていることです。
総務省の調査によれば、AIシステムの市場規模は2022年の約3,884億に対して、2027年には約1兆1,035億円まで拡大すると予測されています。この調査結果からも、AIを導入する企業が加速度的に増えていくことが予想され、競合他社に後れをとらないためにも、いち早くAI導入を進める必要があるのです。
また、レガシーシステム(過去の技術や仕組み)の更新の必要性が高まっている点も、企業がAIを導入する理由として挙げられます。
経済産業省のDXレポートによれば、既存システムでは全社的なデータ活用ができず、ブラックボックス化によるカスタマイズの難しさが課題として示されています。この課題が解決されなければ、以下の3つの理由から、2025年以降に毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)もあるのです。
- ビジネスモデルを柔軟かつ迅速に変更できない
- システムの維持管理費が高額になる
- 保守運用の人材不足による、システムトラブルやデータ損失のリスクが高まる
大きな経済損失を避けるためにも、AIなどのデジタル技術を活用したシステム刷新が求められています。
【参考元】
・令和5年 通信利用動向調査報告書(AIの動向)|総務省
・DXレポート|経済産業省
AI導入による4つのメリット
企業がAIを導入することで、以下4つのメリットを得られます。
- 自動化によって業務効率化につながる
- 大量のデータを短時間で分析できる
- サービスの品質向上で顧客満足度が高まる
- ヒューマンエラーの防止につながる
AIは単なる業務効率化だけではなく、精度の高いデータ分析を可能とし、自社サービスの品質向上にもつながるのです。
自動化によって業務効率化につながる
AIの導入によって、日常的に取り組んでいる単純作業やデータ処理・分析を自動化できるため、社員はより重要度の高い業務に集中できます。
たとえば、AIを搭載したチャットボットを活用すれば、顧客からの問い合わせ対応が自動化できるのと同時に、カスタマーサポート社員の負担軽減も実現できます。顧客対応の質を維持しながら、作業にかかる時間や人件費を削減でき、組織全体の生産性向上につながります。
また、リアルタイムでのデータ分析と意思決定が可能になるのもAI導入の効果です。
常に最新の分析データがあれば、効率よく市場変動や顧客ニーズを把握でき、経営戦略の方向性をスピーディに決められます。
大量のデータを短時間で分析できる
AIは、人間の手では解析しきれない大量のデータを短時間で処理し、条件に適ったデータの傾向や今後の予測を提供してくれます。マーケティング分野においては、顧客属性や過去の購買履歴をもとに行動パターン・趣味嗜好を分析することで、個々に最適化されたプロモーション活動の展開が可能です。
また、AIは複雑なデータセットを扱った分析もできるため、人間では思いつかないような視点の情報やアイデアの発見にもつながります。
デジタル化が進む現代において、企業は膨大なデータの収集に取り組んでいますが、このデータを効率的に分析・活用するためには、AIが欠かせない存在になりつつあります。
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サービスの品質向上で顧客満足度が高まる
AIチャットボットによるスムーズな顧客対応など、AIの活用によってサービスの品質が向上することで顧客満足度も高まります。
製造業においては、AIの画像認識を用いた検品システムが導入されており、不良品を発見する精度とスピードの向上につながっています。目視では見逃されがちな細かな欠陥を検出できれば、製品の品質を一定に保てるため、顧客からの信頼も得られやすくなるのです。
信頼性の高い製品・サービスは、そのモノでしか得られない「価値」を生み出し、顧客体験を通じてさらに満足度も高まっていきます。
ヒューマンエラーの防止につながる
AIの導入によって、人間が行っていたデータ入力・分析の誤りを最小限に抑えられ、業務の正確性を高められます。
人間の行動そのものに対しても、画像認識機能を活用すれば異常の検知が可能となり、トラブルにつながるヒューマンエラーを防止できます。たとえば、金融機関において取引データの処理にAIを活用すれば、不正取引などの資産損失リスクをリアルタイムに検知し、顧客の資産を安全に守ることが可能です。
医療においても、AIを用いた画像診断など医師の業務へのサポートによって、ヒューマンエラーによる医療ミスの防止につながります。
AIの導入によって生じるデメリットや課題
AIの導入には多数のメリットがある一方で、以下のようなデメリットや課題も存在します。
- トラブル時の責任の所在があいまいになる
- AI導入には一定のコストがかかる
費用対効果やリスク管理の重要性を理解したうえで、AI導入の計画を立てていきましょう。
トラブル時の責任の所在があいまいになる
AIの判断によってなんらかのトラブルが発生した場合、その責任の所在があいまいになってしまうケースがあります。
たとえば、AIが誤った判断をした際には、ソフトウェア上のエラーなのか、学習データの選定ミスなのかなど考えられる要因が複数存在します。
とくに外部のAIシステムを導入している場合は、開発側と自社側ともに責任の範囲が複雑になるため、明確なガイドラインを決めておかなければなりません。
AI導入には一定のコストがかかる
AIを導入するには、AIを構築するためのソフトウェア費用や、自社で開発・運用するための人材確保など、一定のコストがかかります。
経済産業省の「製造業向けAI導入ガイドブック」によれば、自社人材とAI構築用ツールでAI導入を進めた場合、以下のような費用になるとしています。
費用項目 | コスト(設計1ヵ月、検証2ヵ月の場合) |
---|---|
AI構築用ツール | 数百万円 |
自社人材の人件費 | 3.0人月(工数) |
諸経費(PCなど) | 約10万円 |
そのほか、システムの維持管理やアップデートを行うためのコストも必要となり、長期的な目線で費用を検討しなければなりません。
AIを導入する5つのステップ
ここからは、AIを導入するための具体的なステップを解説します。
- 解決したい課題を決める
- AIの活用範囲を検討する
- データをAIに学習させる
- AIをシステムに組み込んで試験運用する
- 試験運用後に本格的に導入する
各ステップにおけるポイントや注意点を把握して、スムーズにAIを導入できるように戦略的な計画を立てていきましょう。
1.解決したい課題を決める
AIを導入する際は、まず自社のビジネスにおける課題や問題点を明確にしておきましょう。
以下のような課題に対して、AIが持つ機能で解決できるかどうかを検討し、取り組むべき課題の優先順位を決めていきます。
- 顧客からの問い合わせが増加し、対応が追いついていない
- 適切な在庫管理ができておらず、在庫過多や在庫切れが発生している
- 生産プロセスで無駄が多く、コストが増加している
AI導入による成果を管理していくために、具体的な目標(KPIなど)も設定しておきましょう。
2.AIの活用範囲を検討する
続いては、取り組む課題に対して「AIがどの業務やプロセスに適用できるか」を検討するフェーズです。
たとえば「顧客からの問い合わせが増加し、対応が追いついていない」という課題に取り組む場合、以下のような活用方法が考えられます。
- AI搭載のチャットボットを導入し、問い合わせ対応の自動化を図る
- 問い合わせデータを分析し、ナレッジベース(知見をまとめたデータベース)を自動的に更新する
- メールの問い合わせ内容をAIで解析し、テンプレートを使用して自動返信する
AIの活用範囲を明確にすることで、組織内の関連部門との連携やコミュニケーションも円滑に行えます。
3.データをAIに学習させる
AIの活用範囲の決定後は、企業が持つ膨大なデータのなかから、AIの学習に必要なデータを抽出しましょう。
データの質と量が学習アルゴリズムの精度に影響するため、注意深くスクリーニングして学習用のデータセットを作成しなければなりません。学習データをAIに読み込ませたあとは、出力されたデータの正確性や適合性などの確認・評価を行います。
リアルタイムでのデータ更新や新しいパターンの認識にも対応できるよう、柔軟性を持った学習プロセスを確立しておくのも重要です。
4.AIをシステムに組み込んで試験運用する
続いては、学習済みのAIモデルを業務システムに組み込んで試験運用を行います。
このプロセスでの目的は「AIが実際の業務環境でどのように機能して、ビジネスにどのような価値を提供できるか」を実証することです。
試験運用中は定期的にパフォーマンスをモニタリングし、システム統合に伴うプログラミングなど技術的な調整を行いましょう。とくに初期段階では、予期せぬ問題が発生する場合もあるため、試験運用時に解決しておくことが重要です。
5.試験運用後に本格的に導入する
試験運用で得られたデータやフィードバックをもとに、本格運用に向けての最終的な調整や準備を進めます。
本格運用前には全体的なスケジュールを策定し、関連する部門との協力体制を構築しておかなければなりません。とくに、ITインフラの準備やセキュリティ対策の強化など、スムーズかつ安全に運用できる環境の構築が必要です。
AI導入による効果の継続的なモニタリングや、問題が発生した場合の早期対応ができるように、社内体制を整えておきましょう。
AI導入を成功へと導くためのポイント
AIの導入には専門的な知識や技術が求められるため、社内の人材だけでは実現できない可能性があります。そのため、外部の専門家やコンサルタントと協力し、導入から運用までのプロセスを支援してもらうことも視野に入れて検討しましょう。
また、すでにAIが組み込まれたツールを導入するのもひとつの手段です。Salesforceが提供しているサービスにもAI(Einstein)を搭載しており、マーケティングからセールス、カスタマーサービスまでの幅広い業務をサポートします。
生成AIを活用した取り組みも進めていますので、詳細は関連コンテンツを確認してみてください。
AIを導入している業界の事例
AIはさまざまな業界で導入が進められており、ここでは以下3つの業界をピックアップして事例を紹介します。
製造業 | 生成AIの導入で顧客対応時間を削減 |
小売業 | AIのデータ分析で顧客が好む製品をレコメンド |
不動産業 | サービス退会リスクの高い顧客をAIで抽出 |
AIの活用事例については別の記事でも詳しく解説しています。営業やコールセンターなど、社内部署における導入事例も紹介していますので、ぜひ関連コンテンツをご覧ください。
製造業|生成AIの導入で顧客対応時間を削減
富士通は、Salesforceのパートナー企業として問い合わせ対応を行っており、サービスの品質強化と業務効率化に取り組むため、生成AIを導入しています。
SalesforceのAI「Einstein」で以下の機能を追加し、検証を行いました。
サービス返信(Service Replies) | チャットでの問い合わせに関する返信内容をAIが自動生成する機能 |
会話サマリー(Conversation Summaries) | オペレーターと顧客の会話内容の要約をAIが生成する機能 |
この2つの機能を活用したことで、顧客との対応時間が89%減り、アフターコールワーク(対応後の記録作業)にかかる時間も86%の削減効果が得られています。
小売業|AIのデータ分析で顧客が好む製品をレコメンド
老舗スポーツブランドのRossignol社では、マウンテンスポーツやアクティビティの魅力を広めるため、AIのデータ分析による製品のレコメンドを行っています。
顧客一人ひとりとの関係構築に必要となるインサイトの理解を深めるため、SalesforceのAI「Einstein」やCRMを活用して以下の情報を分析しました。
- 顧客が好きなアクティビティやスポーツ
- 山の場所
- 天気予報
顧客分析によって、目的の異なる季節に合わせた製品のレコメンデーションが可能となり、カスタマージャーニーにもとづいたキャンペーン配信もできています。また、Einsteinを活用して送信時間を最適化し、キャンペーンのメールがよく読まれそうな時間帯に送信しています。
不動産業|サービス退会リスクの高い顧客をAIで抽出
不動産ポータルサイトを運営している株式会社LIFULLでは、物件を掲載している不動産業者のサービス退会リスクをAIで分析しています。
SalesforceのAI「Einstein」で解約に影響しそうな要素を50個抽出し、スクリーニングをかけながらモデルを作成しました。モデルの精度は数値としても確認できるため、データを入れ替えながらブラッシュアップを繰り返し実施しています。
退会リスクの高い顧客の抽出が可能となったことで、先手を打ってサポートできるフォローメールの送信プロセスも構築できました。
今後は、地域の最新状況やユーザー層の詳細情報を顧客である不動産業者に提供し、問い合わせを増やすための戦略を一緒に考える施策を検討しています。
自社が抱えている課題をAI導入で解決へと導こう
AI導入をスムーズに進めるためには、まず課題を抽出して、AIによって解決できるかどうかの検討が必要です。日本においてもAIの導入が日々進んでおり、業界内で生き残っていくためには、AIによるデータ分析や自動化が欠かせない戦略になりつつあります。
自社の業務システムへのAI導入には、システムの開発費用や専門知識を持った人材が必要ですが、AIを搭載したツールであればスピーディな導入が可能となります。ぜひSalesforceのサービスを通じてAIを体験してみてください。
SalesforceのAIが変える
これからの営業・マーケティング業務
SalesforceのAI「Einstein」が、営業やマーケティング活動にデータに基づくインサイトをもたらし、いつもの業務を変革する様子をご覧いただけます。