Salesforceのインサイドセールス部門で2年ほど、SDR(Sales Development Representative)を経験後、現在はBDRとして活躍する神田理子さん。人材企系業の営業職、SaaS商材のインサイドセールス職などを経験してきた神田さんは「営業職として成長したい」という思いを抱いてSalesforceに入社しました。そこで感じたのは「一人で勝たない、一人で負けない」という文化でした。
インサイドセールスは、SDRとBDRに大きく分けられる。SDRは、イベントやWebコンテンツなどを介して問い合わせなど反響があった見込み顧客に対して電話やメールを通じてアプローチし、商談化してAE(フィールドセールス、外勤営業)に引き継ぐ。対象は、従業員200人以下の中堅・中小業がメイン。
一方、BDR。電話やメールで見込み顧客にアプローチし商談化する役割はSDRと同じだが、戦略的に定めた対象企業に絞って提案活動を行う点が異なる。また、自身だけでなく、AEとタッグを組み二人三脚で提案内容や戦略を練ることも特徴だ。
外勤営業とタッグを組むインサイドセールス
──SDRからBDRに異動して半年ほどが経ちました。同じインサイドセールスですが、神田さんが肌で感じるBDRとSDRの違いは何ですか。
神田:フィールドセールスのAE (Account Executive、外勤営業)とタッグを組んで、商談化に向けたご提案内容を一緒に進めていくことです。
インサイドセールスは、大きくSDRとBDRに分けられますが、SDRがインバウンド対応に対し、BDRはアウトバウンド。私たちが戦略的に定めたターゲットに向けて、どのような成長戦略を描き、課題を抱えているかを分析し、AEとディスカッションして提案内容を作成。
まずは私たちBDRがアプローチし、商談化した後は、基本的にはAEにバトンタッチするのですが、必要に応じて商談の場に同席することもあります。こうしたAEと協業する点が異なりますね。
──リード(見込み顧客情報)をもとに不特定多数の企業にアプローチするSDRに対し、BDRは事前にターゲットを定めて、その対象企業にアプローチする点も異なりますね。
そうです。AEが担当する企業、社数が決まっていて、私たちBDRはそのAE数人のターゲット顧客を担当することになります。私は3人のAEが担当する合計600社ほどを任されています。担当するプロダクトも決まっていて、マーケティングオートメーションである「Marketing Cloud」やCDPである「DataCloud」といった領域を担っています。
──日々の仕事のやり方も違いますか。
1社に対する調査や分析、提案内容の作成には時間をかけています。私の担当領域でお話すると、対象はBtoCビジネスを展開している企業で、CMOやEC事業部のトップのような上位層のアポイント獲得がミッション。
企業や事業全体を俯瞰してみた戦略立案とマネジメントがメインの仕事の幹部のみなさまに興味を持ってもらうためには、お客様やその業界を深く知り、各お客様に最適な提案を作らなければなりません。しかも、私たちにいただける時間は多くはありませんので、短時間で魅力を感じてもらわなければならない。ですので、SDRの時よりも1社に対する事前準備には時間をかけています。
提案範囲は無限大。全方位でお客様に向き合える
──日々、お客様と会話する中で、Salesforceのソリューションやテクノロジーにはどのような強みがあると感じますか。
私が感じる最大の魅力は、包括性です。社員が数名の小規模な企業から、何万人もの社員がいる大企業まであらゆる規模に対応でき、しかもすべての業界に的確なご提案ができる。その範囲の広さは営業としてとても助かると言いますか、魅力です。
また、企業の営業組織や仕組みそのものを変革し、売上増加に直接貢献できるソリューションを提供できる点もSalesforceの強みでしょう。
私は前職で、バックオフィス系SaaSのインサイドセールスを担当していました。そのプロダクト自体は価値があり、お客様も喜んでいただきましたが、限られた業務に対する限られた価値しかご提供できないというジレンマがありました。たとえば、経費精算なら経費精算にかける時間を削減するという価値を提供できますが、あくまでその領域だけ。会社全体に大きな影響を与えることはできません。
Salesforceは、CRMを中心としたさまざまなテクノロジーソリューション群でお客様の売り上げを上げる、利益を上げるという経営の根幹といえる領域の提案ができます。お客様の会社全体に対する影響力が全く違います。
健全な競争と助け合う文化
──神田さんは、前職もインサイドセールスだったので、仕事にフィットするのも早かったのではないでしょうか。
いえ、そんなことはないんです。入社して半年くらい、全然成果が上がらなくて苦しい時期を過ごしました。同じインサイドセールスでもご提案できる内容の広さと深さが違いましたから。
軌道に乗るきっかけになったのは、上司の言葉でした。苦しい時、目標に対して何%達成しているとか、生産性をあと何%上げないとダメだとか、表面的な数字ばかりを気にしてしまっていたんですが、その上司に「インサイドセールスもお客様のために存在している」と指摘されたんです。
インサイドセールスは、AEのようにお客様に発注を決めていただく立場ではありません。一般的に言えば、営業職の醍醐味は、このクロージングだと感じる人も多いかもしれません。
ただ、お客様の状況や課題を掘り下げ、最適な提案を突き詰めて考えることに変わりはありません。当たり前ですが、この言葉で基本に立ち帰れたことでマインドセットが変わり、徐々に成果を上げることができたんです。
その時は、その上司だけでなく、同僚や先輩、別のチームのマネージャーも気にかけてくれました。入社直後でもあったので、とても心強かったですし救われました。
──サポートしてくれて目線を上げてくれるメンバーに恵まれたんですね。
そうした人が多いこともSalesforceの魅力です。Salesforceは、「競争」と「共創」が共存する組織のように感じています。
メンバーの向上心は強く、知的好奇心も旺盛で行動力もある。そんな優秀なメンバーと競争する側面は確かにあります。昇進したり、自分が経験したい仕事を任せられたりするためには、実績は当然必要ですから。
その一方で「互いを磨き合う、助け合う、チームで成長する」というカルチャーも併せ持っています。先ほど話したように、私がスランプだった時は直属の上司だけでなく、ライバルである同僚も気にかけてくれました。表面的な励ましではなく、本気で叱咤してくれたり、自分のノウハウを惜しげもなく教えてくれたりしました。
Salesforceの営業組織が大事にしている言葉があります。それは「Don’t win alone, Don’t lose alone(一人で勝つな、一人で負けるな)」。良いことも悪いことも一人ではなくチームで分かち合う。それが根付いていると思います。
──あまりにも理想的な話で、「本当に?」と感じてしまうのですが(笑)。
そうですよね(笑)。でも、本当です。私も個人主義のようなイメージをもっていたので、入社して印象が一気に変わりました。
──それを支えるカルチャーは何でしょうか。
あくまで私見ですが、年齢や役職、入社時期に問わず、みなさん、苦しい時やここが勝負という時に助けられた経験が少なからず一度はあるからだと思います。
だからこそ、メンバーが困っている時には助けようとか、自分の経験やナレッジをチームに還元しようという気持ちが生まれるんだと思います。人的なサポートだけでなく、すでに Salesforceを去った先輩方とはお話はできませんが、その当時の商談情報や事例、提案資料はしっかりと残してくれています。そうしたデータ、デジタルナレッジに助けられることもたくさんあります。後世にノウハウを提供しよう、ノウハウはオープンにして助け合おうという意識が以前から根付いているんだと思います。
インサイドセールスを極めたい
──神田さん自身のキャリアにおいて、Salesforceで働く魅力をどのように感じていますか。Salesforceだからこそ得られる経験を教えてください。
Salesforceで働く中で、特に成長した点は仮説構築力です。Salesforceのソリューションはお客様ごとに導入の目的や使い方が異なります。
そのため、「Salesforceを使えば業務効率が上がります」といった抽象度の高い提案ではなく、事前に「この会社はどんな課題を持っているのか」を考えて潜在的な課題を見つけ出し、自分なりの仮説を立てたうえで、お客様自身も気づいていなかった価値を提案することが大切です。
BDRとしてお客様と向き合う中でこうしたスキルを身につけることができていると日々実感しています。営業としてスキルアップができる環境が整っている点は、Salesforceで働くことの大きな魅力です。
また、SalesforceはAIを活用した最新ソリューションを扱っている点も魅力です。AIを自社で開発してお客様に提案できる企業はそう多くありません。この先進的な領域に踏み込み、知見を得られるのは営業として大きなやりがいを感じます。
──今後はSalesforceでどのようなキャリアを築いていきたいとお考えですか。また、その先の将来像があればお聞かせください。
短期的な目標として、今はインサイドセールスのマネージャーを目指しています。自分が成績を伸ばすだけではなく、自分自身でチームを育て、組織全体を底上げできる営業になりたいと考えています。
私は、お客様の生産性向上に貢献できるインサイドセールスという仕事がすごく好きです。日本にもっとインサイドセールスが広まってほしいと考えているので、将来的にはインサイドセールスを新たに立ち上げる企業の支援をするような仕事にも取り組んでみたいと思います。
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取材・編集:木村剛士
執筆:村上佳代、野垣映二(ベリーマン株式会社)
撮影:株式会社LOBO