日清食品グループは2023年4月、「ChatGPT」の活用を開始し、そのスピードに多くの企業が関心を示しました。その背景には、経営トップの強い意志とIT部門の迅速な対応がありました。「非IT企業であっても今後はデジタルテクノロジーの活用が不可欠という認識が経営陣にある」と語るのは日清食品ホールディングスで執行役員CIO(グループ情報責任者)を務める成田敏博氏。AIを含むデジタル変革の取り組みと、その推進を支える組織づくりについて詳しく話を聞きました。
IT最新事情 第3版
世界4,000人のITリーダーから得た調査結果から、AI・自動化・セキュリティなど最新のトレンドを探ります。
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ITベンダーからの非テックカンパニーへの転身
──成田さんは、アクセンチュアからキャリアをスタートし、その後DeNAとメルカリを経て、なぜ日清食品ホールディングスに入社したのですか。
前々職の頃から、業種・業界関係なく各企業の IT 担当者がそれぞれの会社で何をやっているのかを知ることが、自社の進化・成長のヒントになるのではと考え、さまざまな企業の方との情報交換を始めたんですね。集めた情報は私だけのナレッジとしてではなく、社内にフィードバックをして、視野を広げてもらう取り組みをやっていました。
非IT企業の方々とも話す機会が増えて、もしかしたらこれまでテクノロジーを売ったり、テクノロジーを活用したりするサービス企業に籍を置いてきたけれど、非IT企業に身を置いたら今とは違う社会への貢献の仕方ができるかもしれないと考え、いつか非 IT 企業に籍を置く機会を持ちたいと思うようになりました。
日清食品グループには、メルカリ時代に熱心に誘っていただいたこともありましたし、日清食品グループは「デジタルやITを最大限活用していかなければグローバルカンパニーとして生き残っていけない」という経営陣の明確な意志と熱量がありました。
実際に入社前、経営陣との短時間の対話の中でもITへの高い関心を直に感じることができたので、「チャレンジできる余地が広いのではないか」と入社を決意しました。それが今から5年ほど前のことです。
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日清食品ホールディングス株式会社 執行役員 CIO グループ情報責任者
1999年、新卒でアクセンチュアに入社。 公共サービス本部にて業務プロセス改革、基幹業務システム構築などに従事。 2012年、ディー・エヌ・エーに入社。グローバル基幹業務システム構築プロジェクトに参画後、IT戦略部長として全社システム企画・構築・運用全般を統括。 その後、メルカリ IT戦略室長を経て、2019年12月に日清食品ホールディングスに入社。2022年4月より現職。
入社してから2か月ほどでコロナ禍となりましたが、テクノロジーを使って経営や事業を変えられるという入社時の期待は、その通りでした。その背景には、経営陣からの「積極的にテクノロジーを活用していく企業になりたい」という強い後押しがありました。
──多くの企業では、DXを進めたいけれども社風やカルチャー、既存の商慣習に阻まれるケースも多いと思いますが。それは大企業であればあるほど多いと聞きます。
そのようなことは感じていません。この5年間、「こういったことが必要ではないか」「こういったことをやるべきだ」と提案した時に、「本当に必要性があるのか」「ROIをどう考えるのか」と否定的な反応をされたことはほぼありません。むしろ、「必要だと思うのであれば、どんどん進めていってほしい」「急いでやるべきだ」と経営トップからメッセージをいただいたくらいです。トップの強い意志と快く任せてくれる環境がありましたから、改革にあたっての抵抗を感じたことはありません。
5年間の軌跡と見つけた注力分野
──その環境で、成田さんが5年間進めてきたことを教えてください。
入社当初に具体的な指示はなく、「広く社内を見て、テクノロジーを活用して良くできるところを探して進めてください」ということだけでした。
その当時、私が気になったポイントは大きく2つ。1つは「ペーパーレス化」、もう1つは「データ活用基盤の整備」です。
入社して数か月後にコロナ禍になったので、優先順位が高かったのはペーパーレス化でした。日清食品グループはデジタル基盤の整備が進んでいる印象がありましたが、以前からの紙と判子による業務プロセスは根付いたままだったのです。
コロナ禍での在宅勤務が始まり、現場からペーパーレス化を進めてほしいと要望もありましたから弊害なくスピーディにローコードツールなどを活用し、迅速にシステムを構築できました。
次は、基幹業務システム(ERPシステム)の方向性を検討しました。大規模な更新プロジェクトも選択肢にありましたが、私たちは総合的に判断して既存システムを生かしながら改良する決断を下しました。
そして2022年、基幹業務システムの大規模更新に代わる形で設定したのが、2030年を見据えた重点デジタル施策です。
2030年を見据えた重点デジタル施策
- サイバーセキュリティ
- グローバルITガバナンス
- 業務部門のデジタル活用支援
- 先進ネットワーク/モバイルデバイスの活用
- データドリブン経営に寄与する基盤整備
自分なりの仮説を持って注力すべきことを考えた結果、5つの施策を見出しました。これを旗印として戦略や組織を作ってきましたが、不変の5か条というわけではありません。一度宣言したとしても、いつでも変更可能なものとして位置付けています。
日清食品グループには「日清10則」という行動規範があり、その中に「迷ったら突き進め。間違ったらすぐに戻れ。」という考え方があります。確証がなくても、この方向だと思えば進められる。ただし、間違いに気づいたらすぐに軌道修正できる。この行動規範に沿って、様々な施策を進めています。まずやってみろという企業文化は、本当にありがたいです。
5つの施策は既に取り組んでいたものの、十分ではない領域でした。2030年に向けて推進していくためには、リソースと体制の強化が必要だと提案しました。
中でも、当時の日清食品グループにとって最も優先度が高かったのはサイバーセキュリティでした。
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──詳しくお聞かせください。
これまでセキュリティリスクは、個人情報を多く持つ企業のほうが高いとされていました。私が以前所属していたネット企業や金融系企業は従来からセキュリティリスクが高く、そのため対策も進んでいました。一方、食品メーカーである私たちは、扱う個人情報が限られていたため、セキュリティリスクは比較的低いと考えられていました。
しかし、ウクライナ侵攻前後から状況が大きく変化し、どのような業種・規模の組織であってもセキュリティリスクにさらされる時代となりました。同じ業界でもセキュリティ被害が発生した事案もあり、日清食品グループの経営トップからも「セキュリティ対策の現状はどうなっているのか」「経営リスクとして非常に大きくなるのではないか」と懸念が示されるなど、問題意識が高まっていました。
そこで約1年前まで、私自身もかなりの時間を割いてセキュリティ対策を進めてきました。セキュリティ対策には専門的なスキルを持つ人材の確保が大きな課題となるため、採用市場にも少ない専門人材をいかに引きつけ、専門組織を作っていくかに注力しました。現在では、サイバーセキュリティ戦略を担う組織が確立し、高い専門性を持つメンバーが日々働いてくれています。
デジタル推進を実現させた組織づくり
──進捗をご自身でどのように評価されていますか。
5つの施策を推進するための組織が、ようやく軌道に乗ってきたと感じています。
以前は私自身が多くの意思決定を行い、現場の施策推進にも関わっていました。しかし、特に今年度からはそれを意識して減らしています。
現場をリードする新しいマネージャーたちが育ち、彼らが意思決定を行い、施策を推進している。そういった体制を私が支援することで組織が回るようになってきています。この点には合格点をつけられるのではないかと思います。
最近では、現場のリーダーたちの意見が一致している場合は、たとえ私の考えと違っていても、そちらを優先するようにしています。彼らを信頼し、任せていいんだという確信が持てるようになったからです。
──成田さんが管轄する組織の規模はどれくらいですか。
現在、約80名の体制となっています。1年前から約20名の増員となりました。この人員増強は、社内でも驚かれることが多いのですが、必要性が認められ、この規模が承認されています。
──組織構造について、詳しくお聞かせください。
5つの施策と完全に一致しているわけではありませんが、各施策を推進していく上で、組織図に明確に示すことにしました。これにより、IT部門の社員はもちろん、社内の他部門の方々、さらには社外の方々に対しても、日清食品グループのIT部門が何に注力しているのかが一目でわかるようになっています。
特に採用面では効果が表れています。例えば、サイバーセキュリティ戦略室という専門組織があることで、セキュリティの専門家に対して明確なポジションを提示できます。これはデータサイエンスやデジタル化推進などの分野でも同様です。
ただ、当初からこのような効果を狙って戦略的に組織設計をしたというよりは、実際に運営していく中で効率的だと気づき、結果的に現在の形になったというのが実情です。
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信頼できる生成AIを実現するために準備すべき6つの戦略
信頼は生成AIによるビジネス変革のための要です。信頼を礎にすることで始めて、生成AIの可能性を自由にビジネスに活用できるようになります。
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生成AI導入の舞台裏
──生成AI活用についての取り組みについて教えてください。
日清食品グループにおいて生成AI活用を加速させた原動力は、紛れもなくトップの意思でした。
2023年の入社式の数日前、私が安藤宏基CEOにChatGPTをお見せした際、最初に「日清食品グループは今後どのような課題に向き合うべきか」という質問をGPT-4に投げかけました。すると、7つの課題を提示してきたのです。
CEOはその回答を見て、自身の考えと合致している点に驚き、「どうしてこんなことができるのか」と強い関心を示しました。7つの課題のうちの1つについて掘り下げていく中で一部正確でない回答や的外れな内容もあったのですが、それを見て「これが現時点での限界なのだな」と冷静に分析しました。それでも、質問に対して概ね的確な回答を返してくるAIを見て、「これは本当に恐ろしい時代になった」という感想を抱いていました。
その衝撃を受け、入社式で新入社員に対して発信したメッセージは「皆さんは、私が新入社員だった頃と比べて、AIを活用することで4倍も5倍も早いスピードで成長できる」というものでした。その数日の間に相当触り込んだことが話を聞いているだけでよくわかるほどでした。
今でも、CEOは日々ChatGPTと会話しているようです。「結構叱られるんだよ」と言っていたので、率直な反応が聞けるよい壁打ち相手になっているかもしれないですね。
──AIの可能性について、成田さんご自身はいつ頃から感じていらっしゃいましたか。
私自身は、GPT-4がリリースされた2023年3月14日の数ヶ月前からGPT-3.5に触れていました。その時点でもすごいとは感じましたが、ビジネスへの即時的な影響は確信が持てていませんでした。しかし、GPT-4で回答の質が格段に向上したことを実感し、「これは活用しない手はない」と強く感じました。
──生成AI導入については、どのような計画を立てられたのでしょうか。
できる限り早いタイミングで従業員が使える環境を整備すべきだと考えていました。実は、ある企業が私たちより2ヶ月先行してChatGPTを社内展開したという記事を目にして、一つの気づきがありました。
ChatGPTは2022年11月に公開されたばかりです。そこから2月に社内システムを展開できたということは、仕組み自体はそれほど複雑ではないはずだと。実際、当社のエンジニア1人が、わずか2週間で開発してくれました。
入社式のCEOの熱意を見て動き出しているので、プロジェクト開始時に、ゴールデンウィーク前にリリースするという目標を設定しました。プロジェクトメンバーからは「そんなことできるんですか」という声もありましたが、それよりも後になってしまうとインパクトが薄れてしまう。だからこそ、ゴールデンウィーク前に第一段階を完了させ、休暇明けから次のフェーズに進むべきだと考えました。
結果的に4月25日のリリースとなりましたが、これは技術的な準備ができてから経営会議での承認を得るまででかかった時間で、環境整備自体はそれほど切迫したスケジュールではありませんでした。
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──社内での生成AI導入後の反応はいかがでしたか。
ChatGPTが話題になっていた時期だったこともあり、社内での反響は大きかったのですが、予想と現実には差がありました。最初は好奇心から触る人が多かったものの、日常業務に戻ると以前と同じような状態で、実際に活用している人は1割にも満たない状況でした。
これは私たちに限らず、生成AIを導入する企業が必ず直面する課題だと思っています。活用推進チームがコミュニティの形成や社内チャットでの情報発信、社内報での取り組み紹介など、さまざまな施策を実施しましたが、なかなか利用の裾野が広がりませんでした。
そこで、利用率向上に本格的に取り組むことにしました。最初は、全員がプロンプトを書けるようになれば利用が進むと考え、プロンプトエンジニアリング研修などを実施しましたが、これは期待通りの効果が得られませんでした。
そこで方針を転換し、まず営業組織、次にマーケティング組織、経営企画組織というように、部門ごとに段階的にアプローチを始めました。
具体的には、各部門で生成AIが活用できる業務をリストアップし、それぞれの業務に対して最適化されたプロンプトを開発し、共有する仕組みを作りました。これによって、ユーザーは0からプロンプトを書く必要がなく洗練された定型文を利用できるようになり、部門によっては利用率が50-60%まで上昇しました。この方法を幅広く展開した結果、2024年8月には全社の利用率が5割を超えるまでになりました。
──具体的な導入の成果についてお聞かせください。
昨年度末の段階で、利用部門での工数削減効果を積算したところ、約3万2000時間という数字が出ています。ただし、これは変動していく数字だと考えています。
具体例として、IT部門の問い合わせ窓口での活用があります。以前は問い合わせに対してオペレーターが一から回答を考えていましたが、現在は過去の問い合わせ履歴をAIに学習させ、回答案を自動生成しています。もちろん、AIのハルシネーション(誤った情報生成)の可能性があるため、オペレーターが内容を確認して必要に応じて修正を行っています。この取り組みにより、工数削減率は32%となり、3人で行っていた業務が2人で対応可能になった例もあります。
ただし、私たちが注目しているのは単なる時間短縮だけではありません。AIの活用により、これまでとは異なる質のアウトプットが可能になるのではないかと考えています。時間やコストの削減を超えて、人間がやるよりもAIを活用した方が質の高いアウトプットを生み出せる可能性があると期待しています。
──生成AIの導入でやりやすかった点、やりにくかった点を教えてください。
やりやすかった点は、経営トップからの強力な後押しです。CEO自身が全社朝礼などで積極的な活用を呼びかけてくださり、「まずやってみる」という姿勢を支持してくれました。
一方、やりにくかった点は、生産性向上が期待できるツールであっても、全員が積極的に使うわけではないという現実です。でもプロジェクトメンバーたちは、うまくいかない時期があっても、先進的な取り組みをしているという意識を持って楽しみながら取り組んでくれました。これは非常にありがたかったですね。
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──AIを組織に浸透させるために重要なポイントは何でしょうか。
まず、組織のトップが考え方や方向性を繰り返し示していくことが重要です。これがあるかないかで、組織の向かう方向は大きく変わってきます。
同時に、ボトムアップのアプローチも重要です。全体を一度に変えようとするのではなく、特定の部門に集中的にアプローチし、スモールサクセスを作り、それを他部門に見えるようにしていく。例えば、ある部門での数か月間の変化を見せることで、当初消極的だった部門も関心を示すようになります。これはペーパーレス化の時も同じでした。
このトップダウンとボトムアップの両方のアプローチを組み合わせることで、組織は確実に変わっていきます。現在も、両方の観点から新しい施策を検討し、良い取り組みは社内広報と連携して発信するようにしています。
──KPIの設定についてはどのようにお考えですか。
実は、我々は明確なKPIを設定していません。当初は、非IT企業で利用率50%超えは現実的ではないと考えていました。しかし、予想外にも内部監査部門などで高い利用率を記録しています。彼らは監査の観点や手順の検討にAIを活用していて、その効果を実感しています。
KPIを厳密に設定すると、例えば利用率が27%から28%に上がった、といった数値にとらわれ過ぎてしまい、推進側のフラストレーションになりかねません。むしろ、現場に入り込んでAI活用の機会を見出し、それを実践している人々を支援していく方が効果的だと考えています。
特に重要なのは、組織内で影響力のあるリーダーがAI活用にポジティブな姿勢を示すことです。例えば、当社で最も活用している新規事業推進部のリーダーは、AIに対して現実的な期待値を持ちながら積極的に活用し、チーム内でもその活用方法を共有しています。このように、活用の意義を理解したリーダーの存在が、組織全体の変化を促す重要な要因となっています。
──今後のAI活用についての展望を教えてください。
これまでは、社内の情報をあまり参照させない範囲でAIを活用するケースが多かったのですが、今後は社内にあるナレッジやデータをAIに読み込ませ、それによって様々な施策を進めていくことが重要だと考えています。
具体的な例をいくつか挙げますと、まず社内の問い合わせ対応です。過去の問い合わせ履歴を基に、新しい問い合わせに対する回答案を作成します。これはお客様相談室でも同様の活用が可能です。
また、工場での対応も重要な領域です。工場で想定外の事態が発生した際、これまでは徹底的な原因追究と再発防止策の検討を行い、それを過去のナレッジとして蓄積してきました。今後は、何か異常が発生した時に、このデータベースから想定される原因と再発防止策を即座に提示し、それを基に調査を開始することができます。
さらに、製品開発でも活用の可能性があります。例えば、ベテラン社員が持つ味覚や食感に関するノウハウ、原材料の配合に関する知見をデータベース化し、新しい商品開発時にAIが原材料案を提案するといったことが考えられます。
現在、我々は社内のあらゆるシステムの情報を一元的に集約するデータベースの構築を進めています。これは5つの施策の一つである「データドリブン経営を支える基盤整備」の一環です。例えば、カップヌードルの売上の月次比較や季節性の分析をテキストベースのレポートとして自動生成することを目指しています。
ただし、現状のGPT-4ではまだハルシネーション(誤った情報生成)の課題があります。データの客観的な読み取りや大まかなサマリーについては信頼性が高いものの、より詳細な推論や予測については精度に課題があります。これは今後モデルが進化することで改善されていくと考えており、3年後、5年後には様々なデータベースを常時監視し、定期的なレポート生成や異常検知のアラートなども可能になるでしょう。
ハルシネーションについては、当面付き合い続けなければならない課題ですが、「ハルシネーションがあるから使えない」ではなく、「ハルシネーションがあっても価値を生み出せる業務プロセスをどう設計するか」が、我々IT部門の担当者としての腕の見せどころだと考えています。
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日清食品が描くこれからのIT戦略
──AIを中心にますますテクロジー活用が企業の成長に影響する時代、パートナーとなるITベンダーの選び方も重要になってきますが、何を基準に選んでいますか。
ベンダー選定で重要なのは、ユーザー企業それぞれの課題を深く理解し、その解決に向けた提案ができるかどうかです。単に「自社のサービスでこういうことができます」という説明だけでなく、ユーザー企業の課題と掛け合わせて、具体的な解決策を提示できる担当者がいることが重要です。そういった方々と一緒に仕事をしていきたいと考えています。
──最後に、これもCIOにとって重要な意思決定になると感じる「内製化と外注のバランス」。これについてどうお考えですか。20年前と比べてどのように変化していますか。
状況は完全に変わってきていますね。以前はベンダー側とユーザー企業側に大きな情報格差がありましたが、今はそれがほとんどありません。むしろユーザー企業の担当者のほうが詳しい場合もあります。例えば、SNSで海外の情報もフォローしていれば、どんなベンダーよりも新しい情報を得ることができます。
この状況を踏まえると、ユーザー企業側の内製化は避けられない流れだと考えています。なぜなら、完全に外注していると、状況が変化した際に素早い対応ができないからです。当社の「迷ったら突き進め。間違ったらすぐ戻れ。」という精神を実践するためにも、内製化は重要です。
ただ、全てを内製化するわけではありません。ノウハウや人員が不足している部分は、外部リソースを積極的に活用します。その際、ベンダーには「基本的に内製でやりたいが、現時点では分からない部分があるので支援してほしい。そして、そのプロセスをしっかりと共有し、ノウハウが私たちに残るようにしてほしい」とお願いしています。最近は多くのベンダーがこの考えを理解してくれています。
IT最新事情 第3版
世界4,000人のITリーダーから得た調査結果から、AI・自動化・セキュリティなど最新のトレンドを探ります。
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企画:池上雄太
執筆:高野いづみ
撮影:遥南 碧
取材・編集:木村剛士