ディープラーニングとは、AI技術における機械学習の一種です。コンピューターが自動で大量のデータを解析して、データの特徴を抽出できます。
しかし、さまざまな企業や産業で活用が進んではいるものの、仕組みや始め方を理解することが難しく感じる場合もあるでしょう。
本記事では、ディープラーニングの概要やAI・機械学習との違いについて解説します。活用事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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目次
ディープラーニングとは機械学習の一種

ディープラーニングとは、機械学習の一種で、膨大なデータから自動的に特徴を抽出して学習する能力をもつ技術です。
従来の機械学習と異なり、人間が学習してほしい特徴を指定する必要がなく、データから直接学習できる特徴があります。
たとえば、犬の画像を認識する場合、従来の機械学習では「耳の形・目の色・毛並み」など、人間が重要と考える特徴を指定する必要がありました。
しかし、ディープラーニングを用いると、大量の犬の画像を見ることによって、自動的に「犬らしさ」を学習できます。
このような自動的に特徴を見つけ出す能力は、複雑な判断が必要な場面でも効果を発揮します。道路状況の認識や医療画像の分析など、人間が特徴を明確に指定することが難しい課題にも対応可能です。
そのため、ディープラーニングは、車の自動運転や医療診断の支援など、さまざまな分野で応用され、生活環境に大きな変革をもたらしつつあります。
ディープラーニングと機械学習・AIの違い
ディープラーニングとよく混同される言葉に「人工知能(AI)」や「機械学習」があります。
それぞれの関係性は、以下のとおりです。
用語 | 詳細 |
---|---|
人工知能(AI) | コンピューターによって人間の知能を模倣する技術全般 |
機械学習 | 人工知能(AI)を実現させるための技術のひとつ |
ディープラーニング | 機械学習の学習方法のひとつ |
人工知能(AI)は人間の知能を機械で再現する広範な技術を指します。
機械学習は、人工知能(AI)の技術のひとつであり、データから学習し予測や判断を行う技術です。また、ディープラーニングは機械学習の一種で、より複雑な特徴を認識できます。
しかし、3つは同じ属性でありながら、定義する範囲と技術的な特徴が異なります。したがって、「AI=機械学習」や「AI=ディープラーニング」という等式は成り立ちません。
扱う問題によって各手法の向き不向きがあるため、AI技術を導入する際は、違いを考慮したうえで、目的や状況にあわせた手法の選択が重要です。
ディープラーニングの仕組み:ニューラルネットワークと学習プロセス

ディープラーニングは、人間の脳神経細胞(ニューロン)の仕組みにヒントを得た「ニューラルネットワーク」という数学的なモデルを基礎としています。
ニューラルネットワークは、データを受け取る「入力層」、複雑な処理を行う複数の「中間層(隠れ層)」、そして最終的な結果を出す「出力層」という階層構造を持っています。データは入力層から入り、各層を通過するごとに情報が加工・変換され、より複雑な特徴が捉えられていきます。
ニューラルネットワークとは、データの特徴を学習して複雑なパターン認識や予測を行う数学モデルで、以下の3つの階層をもちます。
入力層(Input Layer) | 外部からデータ(例えば、画像データならピクセル値、テキストデータなら単語のベクトル表現など)を受け取る最初の層です。 |
中間層(Iintermediate layer, Hidden Layer) | 入力層と出力層の間に位置し、入力された情報から複雑な特徴を抽出・変換する役割を担います。この層が1層だけでなく複数層あるのがディープラーニングの大きな特徴です。「隠れ層」とも呼ばれます。 |
出力層(Output Layer) | ネットワークの最終的な予測結果(例えば、画像が「猫」である確率、翻訳された文章など)を出力する層です。 |
ディープラーニングが「ディープ(深層)」と呼ばれる所以は、この中間層が多数(深く)重ねられている点にあります。層を深くすることで、より高度で抽象的な特徴を捉えることが可能となり、人間が特徴を細かく指定しなくても、データから自動的に重要なパターンを見つけ出すことができます。
では、ニューラルネットワークはどのようにしてデータから学習するのでしょうか。その一般的なプロセスは以下のとおりです。
(イメージしやすいよう、一部の表現を簡略化しています)
1. 予測と誤差の計算
まず、ネットワークは入力データに対して何らかの予測(出力)を行います。そして、その予測結果と実際の正解データとを比較し、「誤差(どれだけ間違っているか)」を計算します。この誤差を測るための指標が「損失関数(Loss Function)」です。学習の目標は、この誤差(損失)をできるだけ小さくすることです。
2. パラメータの調整(最適化)
ネットワークの各接続には重みとバイアスのパラメータがあり、この値を調整することで予測結果が変わります。誤差を小さくするために、どの重みをどれだけ調整すれば良いかを決定する必要があります。この調整プロセスを「最適化」と呼び、「勾配降下法(Gradient Descent)」などの数学的な手法がよく用いられます。
3. 誤差逆伝播法(Backpropagation)
誤差を出力層から入力層方向へと逆向きに伝えながら、各層の重みが最終的な誤差にどれだけ影響を与えたかを効率的に計算し、重みを更新していく手法が「誤差逆伝播法」です。このプロセスを大量のデータで繰り返すことで、ネットワークは徐々に誤差の少ない、精度の高い予測ができるように学習していきます。
ディープラーニングの代表的なアルゴリズム

ディープラーニングの代表的なアルゴリズムは、以下のとおりです。
- CNN(Convolutional Neural Network)
- RNN(Recurrent Neural Network)
- GAN(Generative Adversarial Network)
- Diffusion model
- Transformer
それぞれの特徴や得意分野が把握できるように、詳しく見ていきましょう。
CNN
CNNは、人工知能(AI)が画像を理解するために有効なアルゴリズムです。人間が目で見て物を認識するように、CNNは画像の特徴を段階的に学習します。
たとえば、猫の写真を見せると、まず輪郭や色を捉え、次に目や耳の形を認識し、最終的に「これは猫だ」と判断する仕組みです。何千、何万回と繰り返すことで、CNNは高い精度で識別できるようになります。
スマートフォンの顔認証や自動運転の障害物検知など、身近な場所で幅広く活用されています。
RNN
RNNは、時系列データの処理に特化したディープラーニングのアルゴリズムです。人間が会話の流れを理解するように、RNNは前後の文脈を考慮して情報を処理します。
たとえば、「私は彼を見た」という文章を入力すると、RNNは「私」「彼」「見た」という単語の関係性を学習し、文全体の意味を把握する仕組みです。
スマートスピーカーの音声アシスタントや、スマートフォンの予測変換機能など、日常生活のさまざまな場面でRNNの技術が使われています。
なお、従来RNNが主流だった音声認識や機械翻訳の分野では、より高性能なTransformerと呼ばれるモデルへの置き換えが進められている傾向です。
GAN
GANは、画像生成を得意とするディープラーニングのアルゴリズムです。生成器と識別器という2つのネットワークが競い合うように学習を進めます。
生成器は偽物の画像を作り出し、識別器は見破ろうとします。攻防を繰り返すことで、生成器はより本物らしい画像を生み出せるようになる仕組みです。
また、GANは、テキストデータから画像を生成できます。たとえば「青い空を飛ぶ赤い風船」という文章から、対応する画像を作り出すことが可能です。
加えて、写真の解像度向上やスタイル変換など、画像生成以外の用途にも幅広く活用されています。
Diffusion model
Diffusion modelは、Stable DiffusionやMidjourneyなど、最新のAI画像生成技術のベースとなっているアルゴリズムです。
画像データを段階的にノイズで劣化させるForward Processを行い、Reverse Processでノイズ化したデータから元の画像を再構築することで学習を進める仕組みです。元の画像データを復元したり、新たな画像データを生成できます。
元の画像情報から学習を進めるため、従来の画像生成の技術にあたるGANと比べて、高品質で幅広い表現を生み出せる技術です。
今後は、高解像度化のようなさらなる技術の進歩や応用に期待が高まっています。
Transformer
Transformerは、人工知能(AI)が、人間の言葉を理解して処理するために有効なアルゴリズムです。従来の技術では、文章を順番に読んでいく必要がありましたが、Transformerは文章全体を一度に見渡せる特徴があります。
データの並列処理が可能であるため、従来では扱えなかった大規模なデータも活用できます。
たとえば、長い物語を要約する際、人間が重要な部分に注目するように、Transformerも文章の重要な箇所を瞬時に把握する仕組みです。
「ChatGPT」のような最新の生成AI技術の基礎となり、自然言語処理タスク全体の精度を飛躍的に向上させ、日常生活で使うスマートスピーカーや翻訳アプリの性能向上に貢献しています。
ディープラーニングのやり方・始め方

ディープラーニングの始め方は、以下のとおりです。
- ディープラーニングの知識を身につける
- ディープラーニングを導入する目的を明確にする
- ディープラーニングに必要なデータを準備する
押さえるべきポイントについて、順番に詳しく解説します。
ディープラーニングの知識を身につける
ディープラーニングを効果的に活用するためには、情報システムの担当や経営層にかかわらず、基本的な知識を身につけておくことが重要です。
ディープラーニングの概要や運用方法を理解していないと、以下のような場面で適切な判断ができません。
- ディープラーニングの活用によって業務を改善する具体策
- 自社の業務にディープラーニングを活かすために収集するデータの選定
- 自社の業務に適した分析方法や条件設定の選択
ディープラーニングについて基本的な知識を身につけるには、専門書やオンラインの学習プラットフォームに加えて、一般社団法人ディープラーニング協会が提供するG検定やE検定の受験が効果的です。
検定の種類 | 詳細 |
---|---|
G検定 | ・ビジネス職に向いている検定 ・定義や具体的な手法について学習できる |
E検定 | ・エンジニア職に向いている検定 ・応用数学や深層学習、開発・運用について学べる |
組織全体でディープラーニングに関する理解を深めることで、より効果的な導入と運用が可能になります。
ディープラーニングを導入する目的を明確にする
ディープラーニングを導入する際は、自社の課題解決にどう活用するかを具体的に考え、導入する目的を明確にすることが大切です。
たとえば、画像認識による品質管理の自動化や、自然言語処理を用いた顧客対応の効率化のような明確な目標を設定しましょう。
目的が定まれば、必要なデータやアルゴリズムの選択がしやすくなり、導入後の効果測定も容易です。
チーム全体で目的を共有することで、一貫したプロジェクト推進が可能になり、導入後の運用もスムーズに行えます。
ディープラーニングに必要なデータを準備する
ディープラーニングを活用するためには、目的に応じた質の高いデータを大量に収集する必要があります。データの多様性も考慮し、偏りのないサンプルを集めることが重要です。
収集したデータは、ノイズの除去や正規化といった前処理を行います。さまざまなソースから集めたデータは、ファイル形式が異なっていたり、データに破損が見られたりするからです。
また、データの管理と保存にはクラウドサービスが適しています。大容量のデータを安全に保管し、必要に応じて柔軟なアクセスが可能です。
日常生活でディープラーンニングが導入されている実用例

ディープラーニングは、日常生活においても幅広い分野で活用されています。
代表的な事例は、以下のとおりです。
ディープラーニングを応用した技術 | 日常生活で活用されている事例 |
---|---|
画像認識 | ・居眠り運転の自動検知 ・購入品を自動判定する無人レジ |
自然言語処理 | ・文章の自動翻訳 ・書類の自動作成(例:見積書) |
異常検知 | ・工場における機械の故障を検知 ・金融取引の不正検知 |
予測 | ・株価の市場動向を予測 ・駅や空港の混雑度を予測 |
ディープラーニングの発展により、さらに多くのサービスやツールが登場し、社会のさまざまな課題解決に貢献することが期待されています。
Salesforceの「Einstein」ならディープラーニングをビジネスに応用できる

Salesforceの「Einstein」は、蓄積した顧客情報や売上データを学習し、データ入力や売上予測など、繰り返し行う単純作業や日々の定型業務の負担を軽減します。
「Einstein」によってディープラーニングをビジネスに活用する具体例は、以下のとおりです。
- 営業の通話記録からすぐに使える要約を自動作成
- 過去の売上データの分析による精度の高い売上予測
- 顧客との会話にもとづいた分析による顧客インサイトの特定
また、データにもとづいた意思決定を行う支援が得られるため、営業活動の標準化に貢献します。
Salesforceの「Einstein」については、以下の記事で詳しく紹介しています。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
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ディープラーニングをビジネスに活用した事例

事業内容:人材派遣、業務請負
株式会社サンレディースは、人材派遣・業務請負業界での競争力強化と業務効率化を目指し、SalesforceのAI搭載型CRM「Einstein 1 Platform」を導入しています。
文章の脈絡や設定したナレッジ記事にもとづいてAIが返信を生成する「Einsteinサービス返信」機能により、スタッフからの質問への返答時間を8分から1分以内に短縮し、スーパーバイザーの負担軽減と現場スタッフの生産性向上を実現しました。
また、予測AIを活用した営業活動では、契約可能性の予測精度が向上し、契約案件数も156%増加しました。
現場の意見を積極的に取り入れながらAIの活用を進めることによって、独自の生産性指数を0.11から2.5へと大幅に改善しています。
ディープラーニングのメリット・デメリットと今後の展望
ディープラーニングは多くの可能性を秘めた強力な技術ですが、その特性を理解し、メリットとデメリット、そして将来性を把握しておくことが重要です。
ディープラーニングを活用するメリット
これまで見てきたように、ディープラーニングには以下のような大きなメリットがあります。
- 高い精度と性能:特に画像認識、音声認識、自然言語処理などの複雑なタスクにおいて、従来の機械学習手法を上回る高い精度を実現できます。
- 特徴量の自動抽出:人間が特徴量を設計・指定しなくても、データの中から自動的に有効な特徴を見つけ出し、学習を進めることができます。これにより、人間では気づかなかったパターンを発見できる可能性があります。
- 大量データの活用:ビッグデータを扱うことに長けており、データ量が増えるほど性能が向上する傾向があります。
ディープラーニングの注意点と課題(デメリット)
一方で、ディープラーニングには以下のような注意点や課題も存在します。
- 大量の学習データが必要:高い性能を発揮するためには、多くの場合、質の高いラベル付きデータが大量に必要となります。データの収集やアノテーション(ラベル付け)にコストがかかることがあります。
- 高い計算コスト:モデルの学習には、高性能なGPUなどの計算資源と長い時間が必要になる場合があります。導入・運用コストが高くなる可能性があります。
- ブラックボックス問題:モデルがなぜそのような予測や判断をしたのか、その根拠を人間が理解・説明することが難しい場合があります。特に、医療や金融など、説明責任が求められる分野では課題となります。
- 専門知識の必要性:モデルの設計、学習、チューニングには、高度な数学的知識やプログラミングスキル、ドメイン知識を持つ専門人材が必要となることが多いです。
- 倫理的な課題:学習データに含まれるバイアスをモデルが増幅してしまう可能性や、プライバシー侵害、悪用のリスクなど、社会的な影響を考慮した慎重な運用が求められます。
今後の技術トレンドと将来性
ディープラーニングは現在も急速に進化しており、今後以下のような方向での発展が期待されています。
- 説明可能なAI(XAI):ブラックボックス問題を解消し、モデルの判断根拠を説明可能にする技術の研究が進んでいます。
- より効率的なモデル:スマートフォンやセンサーなどのエッジデバイスでも動作可能な、軽量で計算コストの低いモデル(TinyMLなど)の開発が進んでいます。
- データ効率の向上:より少ないデータでも学習できる技術(転移学習、自己教師あり学習など)や、プライバシーを保護しながら学習する技術(連合学習など)が注目されています。
- 他のAI技術との融合:強化学習やシンボリックAIなど、他のアプローチと組み合わせることで、より高度で汎用的な知能の実現が目指されています。
- 生成AIの進化:ChatGPTや画像生成AIに代表される生成AIは、今後も性能向上と応用範囲の拡大が続くと予想されます。
- AI倫理とガバナンス:技術の発展とともに、公平性、透明性、説明責任などを担保するためのルール作りや社会的な議論がますます重要になります。
ディープラーニングは、これらの課題を克服し、さらなる技術革新を通じて、私たちの社会やビジネスに、より大きな変革をもたらしていくと考えられます。
Salesforceの「Einstein」でディープラーニングをビジネスに応用しよう

ディープラーニングは、機械学習の一種で、膨大なデータから自ら特徴を抽出して学習する能力をもつ技術です。車の自動運転や売上の予測など、日常生活からビジネスまで幅広い分野で活用されています。
しかし、活用できる場面が多いからこそ、仕組みや活用方法を理解していないと、自社の業務に活かして成果を得ることは難しいでしょう。
また、ディープラーニングを業務に取り入れる場合は、単純作業の自動化や労働力不足の補填など、自社で解決したい課題を明確にして適切なツールを選ぶことが重要です。
Salesforceでは、ディープラーニングを活用した製品を多数取り揃えており、お客様の課題やニーズにあわせたカスタマイズに対応しています。また、無料トライアルを実施しているため、導入後の運用をイメージしながら検討可能です。
ディープラーニングを活用した業務改善や生産性の向上に興味がある方は、お気軽にご相談ください。
今すぐ、AIをビジネスに活用しましょう
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