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【連載:Salesforce営業組織の今を知る】オンライン時代での社員オンボーディング秘話~トップパフォーマーを育てる育成方法とは?~

シリーズ: Salesforce営業組織の今を知る #1-4 オンライン時代での社員オンボーディング秘話~トップパフォーマーを育てる育成方法とは?~

Salesforceのインサイドセールスがなぜハイパフォーマンスなのか。今回は人材育成プログラムの設計、運用を担当するSales Enablement Productivity Managerの田ノ上 絹江が、トップパフォーマー育成のヒントを紹介します。

シリーズ: Salesforce営業組織の今を知る
#1-4 オンライン時代での社員オンボーディング秘話~トップパフォーマーを育てる育成方法とは?~

こんにちは、田ノ上絹江と申します。セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)のSales Enablement Productivity Managerとして、セールスパーソンの育成に携わっています。私からは、社員教育・研修の効果を高めるためのヒントとして、当社におけるセールスパーソンの育成方法についてお話します。

Salesforceって何がすごいの?

営業、サービス、マーケティングやITにSalesforceはさまざまな効果を発揮します。あなたの業務にも。

人材育成を巡る日本企業の課題

私の所属している部門名でもある「Sales Enablement(セールスイネーブルメント)」を直訳すると「営業ができるようになること」という意味になります。私たちはこの言葉を「成果を出す営業社員を継続的に輩出するための人材育成の仕組み」と定義します。

私はその仕組みづくりと運用に携わっていることから、営業社員の教育・研修をテーマにお客さまとディスカッションする機会が多くあります。それを通じてよく耳にする、お客さまの悩みごとは以下の3点です。

  1. 人材育成にかける時間や人的リソースが足りない
  2. 営業プロセスが属人化し、各人の営業力に大きなバラツキがある
  3. 営業に関するナレッジの共有ができていない

これらの問題はいまに始まったものではありませんが、企業を取り巻く今日の状況が問題をさらに大きくしていると言えるでしょう。

例えば、今日ではビジネス環境が目まぐるしく変化し、企業のニーズや購買プロセス、購買行動が多様化、複雑化しています。

結果として、営業プロセスの属人化が以前より進み、各自のナレッジが共有されないまま、セールスパーソンのスキルのバラツキが大きくなる、あるいは、人の離職とともに貴重なナレッジまで失われてしまうリスクも増大します。また、顧客ニーズの変化と多様化によって過去の成功体験が通用しなくなり、少し前までトップパフォーマーだったセールスパーソンがなかなか成果を上げられなくなるケースも増えています。

そこで、個々のセールスパーソンのスキルアップを会社として恒常的にサポートしていくことが大切なのです。ただし、日本の企業では、新人の入社時に1カ月程度の社員研修を行い、のちは配属先のOJT(オンジョブトレーニング)に人材育成のすべてを委ねるのが一般的です。この方式は効率的に思えますが、マネジャーごとに新人の教育や指導方法が異なるのが通常です。そのため、現場に混乱が生じることもありますし、組織全体の営業スキルを高いレベルで一定に保つことが難しくなります。

Salesforceの社員教育・研修のスキーム

Salesforceにおける人材育成の基本的な考え方は、当社の4つのコアバリュー「Trust(信頼)」、「Customer Success(カスタマーサクセス)」、「Innovation(イノベーション)」、「Equality(平等)」(2022年より「Sustainability」が新たに加わりました)に則って行動できる人材を育てることと、社員一人一人の成功のために恒常的な学びをサポートすることです。

コアバリューに関しては、日々の業務の中で常に意識して行動するよう促されます。そのため、社員の誰もがコアバリューにもとづく行動を自然にとれるようになります。

一方、社員による“恒常的な学び”をサポートするために、当社では、集合研修などを通じて新人に「基本スキル」「応用スキル」を身につけてもらった後も、さらなる成長に向けた自己学習を支援する仕組みを提供しています(図1)。

図1:Salesforceにおける社員教育・研修の全体スキーム

こうした社員教育・研修の設計と運用を用いてセールスパーソンの育成を担っているのがSales Enablement部門です。

この部門は総勢36名のメンバーから構成され、社員教育・研修などを設計・運用する「Field Enablementチーム」と、セールスパーソンの優れたナレッジを汎用的な方法論に変えていく「CoEチーム(Center of Excellenceの略:報酬整備や人材育成などを専門に行う)の2チームに分かれて活動しています。

このうち、私が所属するのはField Enablementチームで、このチームも「インサイドセールス向け」「中小企業を担当する営業担当者向け」「大手企業を担当する営業担当者向け」と分かれています。

私たちが設計した集合研修のプログラムでは、入社後1年をかけて担当業務の知識やスキル、当社のビジネスモデル、そしてテクノロジーに対する理解を身につけ、深めてもらうための様々な学習コンテンツを用意しています。中でもインサイドセールスでは、入社初年度に1人当たり130時間分もの研修プログラムを提供しています。

これらの集合研修で新人に学んでもらう知識は、その8割が現場で活躍する社員のナレッジを体系的にまとめたものです。新人研修で使う教育用コンテンツについては「汎用的すぎて現場での実践には役に立たない」といったことも起こりがちです。そこで私たちは、現場で成果を上げている社員のナレッジを教育用コンテンツに落とし込み、研修と現場との差異を無くすことに力を注いでいます。

学びと実践、フィードバックによる人材育成のサイクル

当社の場合、集合研修で概念的な知識を学ぶ(インプットする)だけではなく、インプットしたことを実践(アウトプット)して他者からフィードバックをもらうことも、人材育成のプロセスに組み込んでいます(図2)。

図2:知識のインプットとアウトプット、フィードバックのプロセス

他者からのフィードバックは、研修を受けたのちに本人の行動がどう変化したかに着目して行います。例えば、製品に対する知識はあるものの、その魅力をお客さまにうまく伝えられなかった新人が、研修後にうまく伝えられるようになったとすれば、フィードバックによる評価は高くなります。

このように知識のインプットとアウトプット、そしてフィードバックから学ぶというプロセスを繰り返しながら、学ぶ内容とスキルをステップアップさせ、定着させていくのが当社における人材育成の特徴的なスタイルとなります。

フルリモートでも充実した新人研修を提供

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響により、私たちは2020年2月から、あらゆる社員教育・研修をフルリモートで行わざるをえなくなり、研修プログラムの内容をオンラインコンテンツによる自己学習(セルフラーニング)と、ビデオ会議システムを使ったリモート集合研修を組み合わせたものへと変更しました(図3)。

図3:フルリモートでの研修用コンテンツの構成

フルリモートでの研修を始めた当初は、新人の学びがなかなか深まりませんでした。その要因の1つは、リモートワークの環境では、ちょっとした疑問をすぐに聞ける先輩社員やマネジャー、あるいは同僚が自分の近くにいないためです。

また、コロナ以前の職場では先輩社員とお客さまとの対話や、マネジャーによる他者へのアドバイスが自然と耳に入り、そこから多くを学ぶことができましたが、リモートワークの環境ではそれもできません。

そこで、私たちは、コロナ以前の職場のように、新入社員が自分の欲しい情報、知りたい情報を簡単に得られるような環境を整備しました。

例えば、新人の入社後1カ月間は、毎日業務終了前の30分間、ビデオ会議で集まり、新人からのさまざまな疑問にField Enablement担当者が答えるという機会を設けています。

また、入社2カ月目以降も、コミュニケーションツールの「Slack」上にEnablement専門チャンネルを設置し、新人がいつでも気軽にField Enablement担当者に質問できる環境を整えています。

当社では、社員の自己成長に役立つあらゆる情報が、すべてSalesforce上に集約されており、誰でも自分の知りたい情報や欲しい情報に簡単にアクセスすることができます。例えば、数あるトップパフォーマーによる勉強会の録画データから、必要に応じて仕事に関するナレッジを効率的に吸収できます。

こうした学習用コンテンツが蓄積されている場所を、私たちは「ラーニングフォース」と呼んでいます。そこには2022年1月時点ですでに700件近いナレッジがコンテンツとして集められていて、その数はいまも増え続けています。

もう1つ、新人教育という点では、当社には「バディ制度」があり、先輩社員が新人のバディとなって仕事のことを手取り足取り教えるという取り組みも展開しています。この制度はリモートワーク体制下でも有効に機能しています。当社には「仕事の仕方がわからないときには人の真似をする」という教えがあるので、バディ制度でぐんと実力が伸びる新人も相当数います。

人材育成に欠かせない情報の共有と有効活用

2021年からは「DDI(データドリブンインサイドセールス)」と呼ばれる取り組みも始めています。これは、優れたパフォーマンスを発揮するインサイドセールスの特徴をAI(人工知能)で割り出し、そこから「勝ちパターン」を作成して新人にインプットして、その効果を検証する試みです(図4)。

図4:Salesforceで展開している「DDI(データドリブンインサイドセールス)」の試み

ここで言う“勝ちパターン”とは、どのような業界の、どういった課題を持ったお客さまにどうアプローチし、いかなる提案を行うと案件獲得につながるかというポイントを、お客さまの特性ごとにパターン化したものです。この勝ちパターンを新人たちにインプットした後、ロールプレイングを行い、その結果をマネジャーが採点します。その評価スコアとインサイドセールス全員分のロールプレイの平均スコアとを比較し、平均スコアに至らなかった場合には、どこに問題があったのかを明らかにし、新人と勝ちパターンの双方の改善を図るといったサイクルを回しています。

このDDIの取り組みは、トップパフォーマーの営業ノウハウを“暗黙知”から“形式知”へと変換して共有し、新人のスキル向上に活かす試みです。

業務のノウハウやナレッジの共有化を推し進めることは、業務の属人化を防ぎ、社員の業務スキルを高いレベルで一定に保つうえでとても大切です。また、業務ノウハウとナレッジの共有化は、業務の引継ぎに多くの時間と手間をかける必要がなくなるという効果も生みます。

そうした共有化を図るうえで、最も効果的な手法と言えるのが、「業務にかかわるあらゆる情報を1カ所にまとめておくこと」です。

当社が活用するSalesforce上には膨大な数の業務ノウハウとナレッジが蓄積され、更新され続けています。そのため、そのデータベースには、自分が直面している仕事上の課題を解決するためのヒントがたくさんあります。

顧客ニーズやビジネス環境の変化が激しい今日、セールスパーソンは常に学び続けなければなりません。人材育成に力を注ぐ人的リソースに限りがあるなか、そうした学びをしっかりとサポートしていくためにも、Salesforceのようなツールを使い、情報を1カ所に集中させることは必須の施策であると感じています。お客さまにも、こうした施策を実践されることをお勧めいたします。

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