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生成AIで市場はどれほど伸びるのか
生成AIは、金融業界に大きな経済的インパクトを与えます。McKinseyのレポートによれば、銀行業界では生成AIの導入で年間2,000億ドルから3,400億ドルの収益増加が見込めると示されています。
特に大きなインパクトをもたらすのが、レガシーコードコンバージョンのようです。例えば、銀行が古いメインフレームシステムを使用している場合、生成AIはそのシステムのCOBOLコードを解析し、現代の分散型システム(クラウドベースのシステムなど)に移行するために必要なPythonコードを生成することができるというわけです。
つまり、COBOLをPythonにコンバージョンするということですね。これにより、移行プロセスが大幅に簡素化され、エラーリスクも減少すると。注目すべきポイントです。
このデータからもわかる通り、生成AIは企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するための重要な要素です。金融業界の生成AI担当者の86%が、今後2年間のビジネス成功に生成AIは非常に重要だと回答していることからもわかります。
信頼できる生成AIを実現するために準備すべき6つの戦略
・生成AIがもたらす機会と影響
・生成AIに関する懸念
・生成AIに備えたデータのセキュリティ戦略 など
資料をダウンロードして、ぜひ今後の業務にお役立てください。
金融業界におけるAIインパクトの具体例
生成AIは、顧客向けサービスの質と効率を劇的に向上させます。例えば、AI Co-pilot(対話型AIアシスタント)を活用することで、顧客からの問い合わせに迅速かつ的確に対応できます。レポートでは、カスタマーサービスに係るコストを25%削減できると示しています。
セールスとマーケティング領域でも大きな効果が期待されており、セールスプロフェッショナルの61%は、サービスの向上に生成AIが役立つと述べています。また、Salesforceの対話型AIアシスタント「Einstein(アインシュタイン) Copilot」を活用することでエンゲージメントが3〜4倍に増加した事例が報告されています。
さらに、自動化されたコールサマリや内容のチェック、監査に生成AIを活用することで、コンプライアンスコストを6〜10%削減できるとしています。
生成AI導入のステップ
レポートでは、金融業界における生成AI導入の3つのステップも紹介しています。
1. 刷新(Renovate)
現行の業務プロセスに生成AIを組み込み、業務効率を向上させるステップです。
短期間で価値を創出するための具体的な方法として、AI Co-pilotの導入が推奨されています。要約やコンテンツ生成、レガシーシステムからのデータ抽出、生成AIからの提案を活用することによる意思決定の効率を向上させることができます。
このステップは他業界や日本の企業においても成功事例がすでに生まれています。例えば富士通。同社
グローバルビジネスアプリケーション事業本部のサポートデスクは、生成AIを活用することでオペレーターの業務工数を約8割削減することに成功しています。
2. 進化(Evolve)
生成AIを「デジタル従業員」として活用し、新しい働き方を創出するステップです。
生成AIの役割を「従業員の業務効率を高めるもの」から押し広げます。具体的には、組織としてカスタマーエンゲージメントとアジリティを高めるために、生成AIをデジタル従業員として活用します。「生成AIを活用して従業員がアクションする」のではなく、「デジタル従業員のアクションを、従業員がデータを用いて検証する」プロセスが生まれます。
例えば、Salesforceが新しく発表した自律型AIエージェントは、手前味噌ながらデジタル従業員の先駆けと自負しています。オペレーターの業務効率を高める役割ではなく、自律して顧客からの問い合わせに対応する生成AIです。
近い将来、オペレーターは自ら顧客対応をする以上に、複数のデジタル従業員が顧客と直接やり取りをしている状況を管理するスーパーバイザーの役割にシフトしていくことが考えられます。
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3. 超越(Transcend)
生成AIを「カスタマーエージェント」として位置づけ、顧客の生活に新しい価値を提供するステップです。
新しいビジネスモデルを構築し、顧客が生成AIと直接コミュニケーションする未来を想定しています。生成AIが顧客のデータを活用してプロアクティブな関係を構築し、金融サービスを超えて顧客の生活全体を支援する役割を果たします。この実現のためには、生成AIに対する高度な信頼が求められます。
例えば保険商品は、万が一の際に保障/補償といった形で顧客を支援します。「マイナスをいかにゼロにするか」と言えるでしょう。近年ではそれらの事態を未然に防ぐ取り組みが強化されています。「そもそもマイナスを作らない」という考え方です。
そして次の未来では、(特定の分野の問い合わせに応える役割を)超越した生成AIがカスタマーエージェントとして保険契約者の生活に組み込まれることで、マイナスを作らないだけでなく、毎日の暮らしを豊かにする「プラスを創り出して行く」ことが可能になるでしょう。本当の意味でのカスタマーサクセスにもつながると言えるのではないでしょうか。
リスク管理とセキュリティの強化
生成AIは、リスク管理とセキュリティの向上にも大きく貢献します。
例えば、生成AIはセキュリティチームがより少ないリソースで多くの作業をこなすことを可能にします。
1人のセキュリティ担当者が生成AIを活用することで、大規模なチームと同等の業務をこなすことができるようになります。
これには、潜在的なサイバー攻撃をシミュレートするためのデータ生成(合成データ / synthetic data)も含まれます。現実世界のサイバー攻撃データを収集して学習させる必要なく、生成AIがシミュレートのためのデータを生成し、活用するということです。
生成AIを活用することで、企業は効果的・効率的にリスク対策を講じることができるようになります。
生成AIに対する不安と懸念
大きなインパクトを与える生成AIですが、その一方で顧客の視点から見ると課題もあります。それが生成AIに対する信頼です。生成AIと顧客の距離が近くなるほど、求められる信頼は高度なものになります。
レポートによると、79%の金融サービスの顧客が生成AIに対する信頼性に不安を抱いており、半数近くの経営者と59%の顧客が生成AIのセキュリティに懸念を抱いています。
こうした懸念を払拭するために、Salesforceは「Einstein Trust Layer」を開発し、生成AIの透明性と説明責任を担保し、顧客データのセキュリティとプライバシーを強化しています。
SalesforceのEinstein 1 Platform
生成AIは、経営者にとっても大きな影響を及ぼします。一方で、金融業界の経営者の70%が、顧客中心の生成AIソリューションを開発するための時間と予算に制約を感じていることが調査でわかりました。
Salesforceの「Einstein 1 Platform」は、この制約から生成AIを解放します。
Salesforceは、顧客データを管理する中心的なシステムとして多くの金融機関で採用されています。「Einstein 1 Platform」を利用することで、信頼できる生成AIを簡単に既存のシステムに組み込むことができます。金融業界固有の機能も順次アップデート予定です。業界固有の規制基準を遵守しながら、各金融機関のニーズに合わせてカスタマイズする柔軟性も備えています。
これまで解説してきたように、生成AIは金融業界に革新的な変化をもたらす力を持っています。
より詳細な情報は、本記事のもとになっているSalesforceグローバルチームの最新レポート「A Guide To Generative AI in Financial Services」(英語版のみ)を是非ご覧ください。このレポートでは、生成AI導入の具体的な方法や効果の紹介とともに、金融業界の未来を切り開くための洞察がまとめられています。
金融業界における生成AI導入ガイド
生成AI導入の具体的な方法や効果の紹介と、金融業界の未来を切り開くための洞察がまとめられています。