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【生成AIで約8割工数削減】富士通のSalesforceサポートデスクが挑む顧客体験と生産性の向上

コンタクトセンター 生成AI活用の最前線

富士通は、Salesforceのカスタマーサービス向け生成AI「Einstein for Service」の採用を決定しました。北米環境で先行検証し、その検証結果を経て今回日本で採用に至りました。机上での試算ではなく、実利用を経た上での採用。事前検証の中身と導入の背景を、紹介します。

さらなる進化にAIは欠かせない

多くのコンタクトセンターでは、オペレーターやスーパーバイザーの採用と迅速な育成、サービス品質向上、呼量の削減、オペレーター1人あたりの生産性の向上に力を尽くしています。

富士通もその1社で、同社のグローバルビジネスアプリケーション事業本部は、SalesforceのリセールパートナーとしてSalesforceサービスに関する質問やトラブルなどの問い合わせ対応のためのサポートデスク(コンタクトセンター)を設置・運営。そのなかでサービス品質の強化と業務の効率化に取り組んでいます。

そこではSLA(顧客と約束している一次回答までの時間)の遵守率、自己解決率(一次窓口での解決率)、CSAT(お客様満足度の指標)といった様々なKPIを定め、日々その達成に向けて力を尽くしています。

富士通はさらなる進化のためにAI、特に生成AIに着眼。日本に先立って2023年8月にリリースされていた「Einstein for Service」を北米で実証実験のために導入。日本での運用を想定した機能検証を行いました。

コンタクトセンター 生成AI活用の最前線

富士通の富士通Salesforceサポートデスクは、生成AIを活用してサポート業務を80%以上短縮。
導入過程で行った検証内容や、活用したテクノロジー、コンタクトセンターの生成AI活用術を紹介したガイドをご用意しています。併せてぜひご覧ください。

コンタクトセンター 生成AI活用の最前線

検証した機能は、以下の2つです。

・サービス返信(Service Replies):顧客からのチャットでの問い合わせに関する返信内容の推奨案をデータやナレッジベースに基づきAIが自動生成。

・会話サマリー(Conversation Summaries):カスタマーサービスにおける、オペレーターと顧客の会話内容の要約をAIが生成。

期待値を大幅に上回る検証結果を確認

検証は、2023年8月より年間受付件数が約1700件の日本国内のSalesforceサポートデスクに蓄積されたデータやプロセスを翻訳、利用し、Fujitsu North America, Inc.の環境で行われました。普段運用しているコンタクトセンターでのチャット対応に適用した場合を想定した内容でした。

結果は、サービス返信(Service Replies)によりオペレーターの平均処理時間(AHT:Average Handling Time)は、20分36秒から、事前の想定期待値12分を大幅に上回る2分18秒を記録。実に89%の削減効果でした。

一方、会話サマリー(Conversation Summaries)では、対応の要旨を記録するなどの平均後処理時間(ACW:After Call Work)が、3分36秒から、事前の想定期待値2分を上回って終わる30秒。86%の削減効果を得られました。

会話サマリー (Conversation Summaries)にはいつ、誰が、何に困って、どう解決させたのが簡潔に第三者でも分かりやすく要約されます。そのためオペレーターは、重要なポイントが漏れていないかチェックして、保存ボタンを押すだけで作業が完了します。

サービス返信の能力を引き出すにはナレッジの準備が重要

このような成果は、検証の開始直後から確認できたわけではなかったといいます。Einstein for Serviceの能力を引き出すには、各機能の特徴を理解した上で活用することが重要です。富士通はそのポイントを、検証を通して明らかにしていきました。

生成AIの精度向上には、公開情報だけではなく社内に蓄積した情報を学習させる「グラウンディング」が欠かせません。サービス返信(Service Replies)も例外ではなく、過去の質問や回答をナレッジとして残してグラウンディングに活用することで、回答精度が格段に向上します。

このとき、Einsteinが学習しやすい形でナレッジを用意できるかが重要で、ナレッジ(お客様の想定QA)を未利用の場合は、まずナレッジの利用を開始します。また、すでにナレッジを運用している場合でも、グラウンディングのためにナレッジの修正・加筆を行います。Service Replies の利用に向けて、こうした事前準備が不可欠です。

AIの活用に合わせた運用が必要

また、AIの活用には運用の工夫も必要で、オペレーターは機能の特徴を理解した上で利用することが求められます。

サービス返信(Service Replies)は複数の質問が混ざると、うまく推奨回答が出力されないことがあるため、一問一答になるように顧客とのチャットを展開する工夫がポイントです。

加えて、推奨回答へのフィードバックによって、AIを育てることも大切です。例えば同じ内容の質問でも、お客様によって質問のしかたや言葉のチョイスが違うため、合致するナレッジがあってもうまく回答に結び付かないことがあります。

推奨回答の近くにはボタンが配置されおり、正しい回答の場合は[投稿]を押してそのままチャットに返信し、回答が役に立たなかった場合は[👎(役に立たない)]を押します。このボタンの押下がフィードバックとなり、Einsteinの回答精度は向上していきます。

一方で会話サマリー(Conversation Summaries)はお客様との会話が長く続く場合や、途中から別の話題に代わる場合には、重要な会話ポイントが要約から漏れる可能性があります。会話が長くなった場合は、必ず全体を見直し、要約を修正する必要があります。

生成AI活用はもはや選択肢ではなく必須

検証によってEinstein for Serviceの活用による成果や利用のポイントを得ていた富士通は、英語環境での検証を終えた後も、日本語環境での導入に向けた取り組みを推進していました。2023年12月にEinstein for Serviceが国内で一般提供開始されると、即座に導入を決定し、日本語環境での検証を開始。そして英語での検証結果に近い導入効果を目指し、このたびの導入に踏み切ったのです。

富士通株式会社 Salesforce事業部 マネージャー 田口智也氏
富士通株式会社
Salesforce事業部 マネージャー 田口智也氏
「今回得られた生成AI活用ナレッジは、多くのユーザー企業様にとっても有益だと感じています。今後も続々とリリースされるAI機能も積極的に先行して取り組み、お客様にとってSalesforce活用のベストパートナーとなれるよう、ご支援していきたいと思います」
富士通株式会社 Salesforce事業部 マネージャー 福井麻里奈氏
富士通株式会社
Salesforce事業部 マネージャー 福井麻里奈氏
「生成AIを利用した生産性向上は重要ですが、効率化により得た工数の余裕をどう活用するかがカギと考えています。顧客ニーズが多様化する中、我々は得た成果を活かし、より満足度の高いCXを提供できるようサービスを改善し続けます」

富士通は自社内でEinstein for Serviceの活用を本格化させる一方、それによって得た知見を、Salesforceのパートナー企業として顧客企業にも提供し、コンタクトセンターの課題解決を支援していくPoCサービスを用意しています。今後の先進的な取り組みは、引き続き注目です。

コンタクトセンター 生成AI活用の最前線

富士通の富士通Salesforceサポートデスクは、生成AIを活用してサポート業務を80%以上短縮。
導入過程で行った検証内容や、活用したテクノロジー、コンタクトセンターの生成AI活用術を紹介したガイドをご用意しています。併せてぜひご覧ください。

【関連イベント開催】

本記事で紹介した富士通の事例解説も含めたコンタクトセンターの最先端活用法を紹介するセミナーを5月15日(水) 10:00-11:40に開催します。無料ですので、ぜひご参加ください。お申し込みはこちらです。

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