デジタル、グリーン、コネクティブを変革のドライバーとして多様な業種で社会イノベーション事業を拡大する日立製作所は、デジタルトランスフォーメーション(DX)人財の育成を強化しています。営業領域においてはDXツールを自分自身の手で使いこなしたいと考える人達が増えており、そういったニーズに応えるために「Tableau Creatorトレーニングプログラム」を実施しました。
今回はこのプログラムやSalesforceが提供する認定資格、無料学習プラットフォーム「Trailhead」をフル活用し、自身のスキルを着実に向上させながら、同時にTableauの社内普及に奮闘する担当者に話を伺いました。
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松尾 拓明 氏
株式会社日立製作所 エネルギー営業統括本部
営業企画国際本部 エネルギーマーケティング部
主任
Tableauダッシュボードの可視化力に衝撃
―― 松尾さんは、日立製作所におけるSalesforce導入プロジェクトの推進役だと伺っています。現在どのようなお仕事をされているのですか。
松尾:私の主な業務は、グリーンエナジー営業部門のフロントDX推進です。現在は、CRM改革プロジェクトのプロジェクトマネージャーとしてSalesforce導入プロジェクトを推進し、その活用を社内に定着させる活動をしています。
―― Tableauの普及にも取り組んでいらっしゃいますよね。これまでBIツール活用の経験はありましたか。
松尾:実は現在の部門に異動する2023年まで、BIツールを活用したことはほとんどありませんでした。
―― それは驚きです。
松尾:少し言い訳のようになってしまいますが(笑)、これまで社内で「BIを活用して業務効率化を図っている」と胸を張れるほど、BIツールを活用しているとは言いがたい状況だったんですね。
ですが、数年前からBIツールやRPAの活用を指摘する声が上がっていました。実際、昨年実施したアンケートの集計に、あるツールを試用して、その有効性を実感しました。その効果を実感し、「これからはBIツールを活用して業務を効率化することが、製品やサービスの”質”を向上させることにつながる」と考えたのです。
―― なるほど。そうした経緯でTableauと出会ったのですね。最初はどのような印象を持ちましたか。
松尾:今回のTableauトレーニングを企画した中前さん(中前氏へのインタビューはこちら*Link)が作成したTableauのダッシュボードを見た時、その即時的なデータ可視化力に驚きました。
これまでのExcelでは見えなかったものが見えてくる感覚は新鮮で、画期的だと感じましたね。とくに、時系列で過去データを閲覧しながら比較検討できるのは、課題の洗い出しや改善の方向性を決定するといった観点からも非常に役立つと思い、自分でもTableauを活用したいと考えました。
―― 松尾さんは「Tableauトレーニングプログラム」に参加していますよね。
松尾:順を追って説明すると、2023年度下期に標準KPI活動の一環で、中前さんからTableauを紹介されたことが始まりでした。
それまではSales Cloudのレポート・ダッシュボードを利用していたのですが、グラフやチャート、表などを含められる数や表現できる範囲に限界を感じていました。もっと柔軟なダッシュボードツールの必要性を実感していて、「Tableauならできそうだ」と思ったんですね。
ちょうど社内で2023年度末からTableauのCreatorライセンスを試験的に導入することになったのをきっかけに、参加を決意したのです。
実環境での実践的な学習で理解度が向上
―― トレーニングプログラムではどのようなメニューが役に立ちましたか。
松尾:もっとも魅力的だったのは、実際の社内環境を用いてTableauを学べることです。
これまではSalesforceから提供されたe-ラーニングやTrailheadを活用していました。それはそれでありがたかったのですが、実践的な感覚が得られずに味気なかったんですね。また、Salesforceの教材ではできると記載されているものも、社内環境ではシステム制限があって実現できないといった課題もありました。
―― 社内にある実際のデータでトレーニングできる利点は大きいですね。
松尾:はい。トレーニング中にさらに有効だと感じたのは、「Tableau Doctor(Tableauエンジニア)」との相談会と、Slackでの質疑応答です。
Tableauの関連情報は、インターネット上に多数公開されているTipsがありますが、自分が欲しい粒度での情報に対して迅速にアクセスするのは難しかったのです。その点、詳しい人に直接質問できる環境は、時間短縮にもつながりました。分からないことを時間や場所を問わず質問できると理解度が全然違いますから。
―― モチベーションも上がりますよね。
松尾:もともとモチベーションは高いですよ(笑)。私たちのプロジェクト施策の1つがTableauの有用性を検証し、現場の業務に適用して業務効率化を図ることですからね。トレーニング中にモチベーションが向上した仕掛けといえば、トレーニングプログラム内の賞レースや表彰制度も良い「着火剤」で、「さらに良いダッシュボードを作成しよう」という意欲につながりました。また、プログラムの途中で開催された中間報告会は、ほかの参加者の進捗を見ることで刺激を受け、自身のスキル向上にも役立つ良い機会でした。
―― トレーニングの効果を教えてください。
松尾:最大の成果は、データフローやワークフロー、ダッシュボードといったTableauの基本的な構成や機能を理解した上で、Tableauダッシュボードをゼロから作成できるようになったことです。さらに、各種機能の利用シーンや使い方、計算フィールドでの集計方法、外部サイトへのリンク機能など、実務に直結する知識も得られました。
各部門でデータ分析軸や指標は異なりますから、「自分たちが見たいようにカスタマイズできる」ようになったことは大きな成果です。また、Tableauダッシュボードを業務適用し、プロジェクトで推進しているSalesforceの利用定着度をモニタリングできるようになり、プロジェクト施策効果の適切な管理と迅速な対策立案が可能になりました。
一方で、高度なダッシュボードを作成するには、さらなる技術力向上が必要だと実感しました。データ整形や関数の活用など、より深い理解が求められる分野があることが分かったので、今後の学習計画に活かせそうです。
また、このプログラムと並行して、Salesforceの資格である認定アドミニストレーターを取得したり、無料学習プラットフォーム「Trailhead」で「Triple Star Ranger」になったりと、自学自習も進めてきました。今後もこういったリソースを活用して学び続けながら、さらなるレベルアップをしていきたいと思っています。
「ファーストペンギン」としてユーザー部門自立へ奮闘
―― 松尾さんご自身のキャリアについて教えてください。トレーニングプログラムへの参加は、今後のステップアップに影響を与えそうですか。
松尾:そうですね、一番の影響は「これから必要とされるスキルと知識が取得できた」ことです。個人的にも汎用的なスキルセット獲得をめざしていたため、この機会は魅力的でした。DX人財が様々な場面で必要とされる中で、BIツールのスキルは非常に重要で、現場における自分自身の価値を高める要素となっています。
一方で、専門的なツールのスキルを持った人財は組織の「便利屋」になり、負荷が集中するケースも少なくありません。実はトレーニングプログラムへの参加を決めた理由の1つに「ユーザー部門の自立をめざすうえで、自分が“ファーストペンギン”になってほかの人たちの道筋を作りたい」という思いがあったんです。
―― 格好いいですね。
松尾:いやいや(笑)。私が「Tableau未経験者でもトレーニングプログラムでスキルを身に付ければ組織に貢献できるし、自分もステップアップできる」という前例になれれば良いですが、「スキルがあるから仕事が増えた」になってしまうと、トレーニングプログラムの受講に対して消極的な人が出てくる懸念もあります。ですから「スキルを習得すれば組織にも自分のキャリアにもメリットがある」ことを示していきたいです。
―― 最後にトレーニングプログラム後の課題と、将来的なTableauの活用ビジョンを聞かせてください。
松尾:トレーニングプログラム後の課題は、履修者間の横のつながりが少ないことです。今後は社内コミュニティを立ち上げ、定期的な情報交換の場を設ける予定と聞いています。自分の部門でのTableauの活用ビジョンとしては、現在のユーザーログイン頻度や機能使用状況のビジュアル化から始めて、今後2~3年でCRMや営業戦略の分析立案にも拡大する方針です。顧客セグメントごとの効果分析や、商談の進捗状況を可視化するなど、より戦略的な営業活動につなげていきたいと考えています。
―― ありがとうございました。