Skip to Content

各業界のインフルエンサーが語る!生成AIの影響と未来

さまざまな業界に大きな影響を与えている生成AI。本記事では、生成AIで未来がどのように変わるのかを探るため、各業界のインフルエンサーたちに5つの質問を投げかけました。生成AIがもたらす革新的な変化とその可能性について、具体的な事例を交えてご紹介します。

生成AIの導入で、私たちの働き方はどのように変わるのでしょうか。この新しいテクノロジーは単なる自動化ツールの枠を超えて、ビジネスのあり方を大きく変える可能性を秘めています。

今回は、さまざまな業界のインフルエンサーへのインタビューを通じて、生成AIが業界に与えている影響を深掘りしていきます。ビジネスの多様な側面で、生成AIがどのようなインパクトを与えているのか、一緒に見ていきましょう。

目次

医師兼コラムニストとして「医師と患者の橋渡し」をする大塚篤司さんのAI活用法(医療業界)

大塚篤司(@otsukaman
医師/コラムニスト

近畿大学医学部皮膚科主任教授。皮膚科専門医・がん治療認定医・アレルギー専門医。AERA dot.、日経新聞、京都新聞にてコラムを寄稿。著書に「アトピーの治し方」(ダイヤモンド社)、「医師による医師のためのChatGPT入門」(医学書院)など多数。

1.生成AIをどのように仕事で活用していますか?

私は英語論文を読む際、また論文や教科書原稿の執筆などで使用しています。具体的には、ChatGPTは同意書の下書き作成や、メール文面を自然な表現に修正する際に利用しています。

Geminiは、特に文献の解説に役立っています。専門文献の内容を分かりやすく解説してもらうことで、効率よく情報を理解できるようになりました。最後に、Claudeは教科書の原稿作成時に使用しています。特に、初期の下書き作成に非常に便利で、内容の構成をスムーズに進めることができます。生成AIを取り入れたことで、作業効率が格段に向上しました。

2.生成AIの進化は医療業界に変化をもたらしていますか?

私が生成AIを診療行為で活用する主な場面は、鑑別診断のリストアップです。見逃しがないように生成AIに幅広い診断を提示してもらうことで、診断の精度が向上します。また、検査項目の抜けもれや薬の飲み合わせなども確認できるため、患者さんの安全をより確保でき、医療の質がさらに高まります。

電子カルテシステムに生成AIが統合され、AIが診断や治療方針の提案を行う未来はそう遠くないでしょう。生成AIによってカルテ作成や紹介状作成などの事務作業が自動化されれば、医師はより多くの時間を患者さんの診療に充てられるようになるはずです。

3.将来、生成AIにやってもらいたいことはなんですか?

医師の指示に基づいて、AIが診療に関わるタスクを自動的に実行してくれるようになることを期待しています。つい先日、Claude 3.5のアップデートで、クリックやカーソル移動といったパソコン操作機能が追加されたと聞き、早速試してみました。まだ発展途上の技術ではありますが、パソコン上でAIに指示を出すだけでさまざまなタスクをこなしてくれる未来に、大きな可能性を感じています。

4.これからAIは、どこまで人間を代替することができるのでしょうか?

最近の研究では、人間の医師よりもAIによるカウンセリングのほうが、患者さんの満足度や共感性が高いという結果も報告されています。その理由の一つに、生成AIは疲れないのでいつでも一定の質で説明を行い、患者さんに合わせた共感的な言葉を使うように設計されていることが挙げられます。

AIに代替できない人間の役割とは、「人間らしさ」の提供ではないでしょうか。患者さんは、医師の個性、経験、共感性といった人間的な側面に価値を見出し、医師との直接的なコミュニケーションを求めています。医師としての「パーソナルブランディング」が、AI時代において医師の価値を高める鍵となるかもしれません。

5.生成AIが普及した今後、業界はどのようになっていくべきだと思いますか? 

電子カルテシステムへのAI統合によって、カルテ作成支援、診断補助、治療方針提案が可能になり、医師の負担軽減、医療ミスの削減、医療サービスの質向上を期待しています。生成AIの理想的な活用方法は、医療資源が不足する地域への導入です。AIの活用で、一人でも多くの患者さんに適切な医療を提供できるようになるでしょう。

今後はAI技術の進化を冷静に見極め、使い方を慎重に検討しながらツールとして積極的に活用することで、より良い医療を実現していくことができると考えています。

Agentforce

人とAIエージェントの力でビジネスを成功に導きます。従業員とお客様を24時間365日サポートするために、自律型AIエージェントを構築・カスタマイズしましょう。

QuizKnockの一員で事業開発も手掛ける哲学研究者、田村正資さんのAI活用法(哲学業界)

田村正資(@kaiseitamura
哲学研究者

東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。YouTubeチャンネル「QuizKnockと学ぼう」やECサイト「QurioStore」の企画・立ち上げに携わる。QuizKnockの運営会社にて新規事業開発を手掛ける哲学研究者。著書に「問いが世界をつくりだす」(青土社)。

1. 生成AIをどのように仕事で活用していますか?

生成AIはECサイトで扱う商品開発のリサーチで使っています。ChatGPTやClaudeのような対話型生成AIは単なる検索とは違い、「こんな雰囲気のアイデアを挙げてほしい」という聞き方ができるので、最初のブレストとして使うにはとても有効だと思います。

また、事業開発の市場リサーチでも活用しています。特に「どんな優位性が必要か」「どのようにアプローチすべきか」といった思考の枠組みについては、自分で時間をかけて調べて出てくる内容が一瞬で出てくるので、それを僕らがブラッシュアップしたり、会社の方針に合わせてマイナーチェンジしたりしていけばいい。このように「思考の叩き台」を作る場面で重宝しています。

2.生成AIの進化についてどう感じていますか?

哲学やクイズの世界では、AIの進歩が話題になるたびにAIは哲学のように「原理的に突きつめて考える」とか、クイズのように「正確な知識を問う」ことがどれくらいできるのかという話になります。

「筋の通った思考」と「正確な知識の運用」は人間の知性の優れた部分ですが、今後は自分で目的を設定して、その達成のために動けるAIが登場するかどうかに注目しています。僕たちが知性だと思っていたものがAIに攻略されていく中で、自分の目指すものを見つけ、「これがやりたい!」と感情的なバイアスをかけていくことも人間の知性の働きの一つなんじゃないかと意識するようになりました。

3.将来、生成AIにどんなことをやってもらいたいですか?

実は、あんまりないんです。なんでも生成AIがやってしまったら自分のやることがなくなってつまらなくなってしまうので、今後生成AIのできることが増える過程で、「これは効率やクオリティに関係なく自分でやりたい」と再認識することがたくさん出てくると思います。その視点から、生きることや幸せとは何かについて、新しい考え方が生まれてくるかもしれないですね。

4.これからAIは、どこまで人間を代替することができるのでしょうか?

能力的な意味では、絶対に代替できないものはあまりないと思っています。ただ、能力とは別の視点で、「これはAIがやっています」と言った瞬間に意味がなくなるものはある。例えば、「謝ること」ですかね。「これはAIが人間の行動パターンを学習して謝罪しています」と言われた途端、そこから何か本質が抜け落ちてしまう気がしませんか。このような例が他にもあると思っています。

5.未来の生成AIによって、どのような世界になってほしいですか?

ChatGPTのように質問を投げかけると答えてくれる対話型AIは、これからも人々を惹きつけると思います。

哲学の業界では、古代ギリシアの文献を学習したAIが話題になりました。たとえば、ソクラテスが考えていたことについて質問すると回答だけでなく、根拠になった文献も教えてくれる。こういった機能がもし普及したら、哲学の研究方法もスピード感も変わってくると思います。

これまで、過去の哲学者と対峙するにはその人の本を読んで解釈するしかありませんでした。それがインターフェース上ではあっても、質問を投げかけて対話する形に変化したときに、「哲学をする」ことが特殊な営みではなく、多くの人に馴染みのある体験になるはず。そういう景色は見てみたいし、何かできることがあれば協力したいですね。

20年以上の編集者経験とマーケティング・広報の知見で、コンテンツ制作を究める澤山モッツァレラさんのAI活用法(マーケティング業界)

澤山モッツァレラ(@diceK_sawayama
株式会社unname

編集者としてキャリアを開始。コンテンツマーケティング、マーケティング戦略策定、オウンドメディア編集、BtoBマーケティングを経て、現在はPR兼コンサルタントとして活躍。AI×編集者コミュニティの運営や生成AIコンサルティングにも携わる。

1.生成AIをどのように仕事で活用していますか?

社内では事例記事、対談記事、SNS投稿など原稿の執筆、アイデアフラッシュ、メール文面の初稿、議事録の生成、文字起こしの整形、企画書のたたき台などの作成において生成AIを活用しています。対外的には、2024年11月に生成AIコンテンツ制作サービスをリリースする予定で、現在は生成AIなしに仕事することは考えられないレベルで使っています。

2.生成AIの進化によって、どのような変化があると考えますか?コンテンツにおいて、「質の高さ」が求められるのは変わりませんが、要求水準が変わっていくと思います。具体的には生成AIの活用によって、「ボリューム」や「スピード」が大きく変わるため、短納期で多くの納品が求められるようになるかもしれません。

しかし、粗製乱造では意味がないため、そこに対応できるのは「質」における審美眼を持つ編集者/ライターだと考えます。「結局は質が大事」ということですが、同ジャンルにおけるアウトプットと比較して少なくとも劣っていない、他にない一次情報が盛り込まれている、独自のデータが入っている、という点が求められそうです。審美眼を鍛えるには究極、「優れたアウトプットをたくさん見る」しかないでしょう。美術と同じで、質の高いものを見て初めて相対評価のものさしが生まれるのかなと思います。

3.将来生成AIにやってもらいたいことはなんですか?

これまでの自分のインプット/アウトプット傾向を踏まえ、課題を入力すると「あなたは以前こう答えました」といった模範解答を用意してくれるような、自分専用にカスタマイズされたAIがほしいです。「今までの自分はこう解答したのか」ということを知りつつ、「今はこう変えていく」という差分を取れるようになることが理想です。

4.今後もAIに代替できないことはなんだと思いますか?

生物/人間としての役目です。例えば、子どもにとってよき父親、妻にとってよき夫であること。仕事で「何が代替されないか」を予想するのはそれほど意味がなく、基本的には全て代替される前提でポジションを取り直し続けるほかないと考えています。

AIの進化過程の中で、人の心を掴む編集力を鍛えるためには「人間理解」を深めることが重要です。アウトプットを見て評価して態度変容する主体は人間なので、「人がどんな文脈で、どのようなクリエイティブに心を動かされるのか」を、さまざまな角度から学ぶこと。行動経済学や社会心理学、文化人類学などを学ぶことも有効だと思います。AIが出力した「それっぽいもの」ではなく、質の高いアウトプットに導くには深い人間理解が欠かせませんし、常に勉強するしかないと思います。

5.未来の生成AIによって、業界の5年後はどのようになっていてほしいですか?

優秀な個人が、個人として戦えるケースが増えていてほしいです。「遠くへ行きたければみんなで行け」という考え方は正論ですが、組織では存在を発揮できない才能を持つ人も多くいるので、AIを活用することで、個として戦える領域が増えていくと働き方や生き方の選択肢もより広がっていくのではないかと思います。

たった1人でECサイトを運営し、年商1億円!三浦卓也さんのAI活用法(EC業界)

三浦卓也(@miuratakuya_hac
ミウラタクヤ商店

立ち上げから商品開発、受注処理、カスタマー対応、物流、広告、アプリ研究など、すべてを1人で行うミウラタクヤ商店を運営。Shopifyで売上400%の成長を達成した経験を活かし「EC家庭教師」をスタート。日本初の元Shopify教育パートナー。著書に『ひとりEC』(インプレス)。

1. 三浦さんは生成AIをどのように仕事で活用していますか?

主に3つあります。1つは「エビデンスなどの情報収集」です。ネットショップで発信している健康や栄養に関する文章の信頼性を担保するためにChatGPTに論文などの情報を探してもらっていますが、早ければ5分程度で見つけられるようになりました。

2つ目が「アイデア出し」。ショップで販売する健康食品の広告の切り口を生成AIに相談しながら考えています。

最後が「単純作業」で、Excelのデータ整理やブログ記事における栄養素の説明文などの執筆をやってもらっています。

2.生成AIの進化についてどう感じていますか?

進化が早すぎて追いつけていないのが実情ですが、これからもそのスピードは上がっていくと思います。大切なのは、「AIが今できないことも来年にはできるようになる」という意識。その前提でサービスや事業を展開するようにしています。

例えば当社は今後、動画での発信にも力を入れますが、生成AIの進化で「音声から字幕をつける」「無音部分を自動で削除する」などの作業は大きく簡略化が進むと思うので有効活用したいです。

3.将来、生成AIにどんなことをやってもらいたいですか?

一人ひとりのお客様に最適なクリエイティブで商品を提案できるようにしたいです。ShopifyというECシステムでは、簡易的なAIによって商品の紹介文や商品タイトルの自動作成が可能です。今後AIの分析力が上がり、人間が考えるべきクリエイティブをAIが代わりに考えてくれることで、人間の創作活動のレベルがより高くなってEC全体の顧客体験の向上にもつながると考えています。

4.これからAIは、どこまで人間を代替することができるのでしょうか?

私は、人間の精神や感情などをAIが再現することも可能だと思います。ただし、アーティストが有するクリエイティビティや細部に宿る熱意など、よりパーソナルな部分は時間がかかるでしょう。

また、AIは人生の苦労話や人が感動するような物語を作ることはできません。ひとりの事業主として、またクリエイターとして「いかに属人性を持つか?」というAIが真似できないことを常に意識するようにしています。

5.今後、生成AIによって業界のどのような点が変わってほしいですか? 

難しいですが、物販や健康食品という業界視点では「悪質なネット広告の駆逐」に期待したいですね。現在のインターネットではいまだに悪質な広告がはびこっています。「飲むだけで10キロ痩せるサプリがある」など、事実に反する広告で莫大な収益を得ている事業者もたくさんいます。

倫理的な観点からもこうした行為で消費者から搾取することは絶対にあってはなりません。AIの力で、悪質なクリエイティブや広告をインターネットから除外できれば良いなと思っています。

信頼できる生成AIを実現するために準備すべき6つの戦略

このガイドでは以下の内容を詳しく解説します。
● 生成 AI がもたらす機会と影響
● 生成 AI に関する懸念
● 生成 AI に備えたデータのセキュリティ戦略

日本初となる退職代行サービス「EXIT」創業者、新野俊幸さんのAI活用法(転職業界)

新野俊幸(@getdrunkeasily
退職代行「EXIT」代表

新卒でソフトバンクに入社し1年で退職。2017年に日本初の退職代行サービス「EXIT」を創業。フジテレビのリアリティショー「テラスハウス」への出演や、リップバーム「NiiLip」のプロデュースなど多方面で活躍する。Xのフォロワーは約3万人。

1.会社での生成AIの扱いはどのようなものですか?

有料の職業紹介事業で、求職者の履歴書や職務経歴書の添削スピードを上げるために活用していますね。事業づくりやマーケティング領域では、例えばGoogle広告のキャンペーン作成やSNS投稿の見出し作成などに活用しています。生成AIのサポートで統一感のあるコンテンツを量産して、その中から取捨選択をしています。

2.生成AIの登場によって業界にどのような変化がありましたか?

応募書類のクオリティが全体的に高まっている一方、こうした書類からはオリジナリティの欠落も感じます。生成AIが作成する文章は、感情や情熱が感じられない機械的な説明になりがちで、こうした「AIっぽさ」が逆にマイナスの印象を与えるデメリットもあると思います。完全にAI任せにすることは、まだ難しいと感じます。

3.将来的に、生成AIにやってもらいたいことはなんですか?

司法書士に依頼すると数万円かかるような書類作成業務や、社労士に頼むと数万円かかる保険料の計算など、こうしたバックオフィス業務をすべてAIに代替したいですね。

主要業務では、退職手続きの自動化もやりたいですが、行政との接続が必要になるのでハードルは高そうです。個人的には大量のAIクローンにそれぞれ異なる役割を与えて、AIクローンだけで事業を回してみたいです(笑)。

4.新野さんが、今後もAIに代替できないと考えることはなんですか?

「経営」ではないでしょうか。例えばマネジメントひとつ取っても完璧な正解は存在せず、個々の従業員に対する適切な接し方も異なります。事業の構築でも「MBA」を取れば必ず新規事業で成功するわけではなく、ロジックだけではどうにもならない部分が存在します。経営における感覚的な意思決定は、AIでは代替できないと思います。

5.生成AIが普及した今後、業界はどのようになっていくべきだと思いますか? 

AIで作れてしまう志望動機で人を判断するのではなく、その人が本来持っている主体性にフォーカスして採用するような仕組みがあるべきですね。その未来に向けて、採用基準を作り直すことや個人が自分の人生に主体性を持って取り組むような教育が必要です。
一方で、未来の人事担当者には、生成AIの特性を理解するリテラシーが重要になってきます。パターン化された表現を見抜き、欠けている独自性や具体性を評価する能力、そして応募者の個性や動機を深掘りしていくような面接手法などが求められるのではないでしょうか。

SNSフォロワー約1.8万人のデザインインフルエンサー、ムラマツヒデキさんのAI活用法(デザイン業界)

ムラマツヒデキ(@muuuuu_chang
株式会社クオートワークス 代表取締役

デザイン会社の社長のほか、WEBデザインポータルサイトMUUUUU.ORGやYouTubeチャンネルMUUUUU.TVも運営し、役立つデザイン情報を積極的に発信しているインフルエンサー。世界的なWebデザインアワード「Awwwards」の審査員も務める。

1.仕事ではどのように生成AIを活用しているのでしょうか?

効率化や創造性の向上のために、セキュリティに配慮しながら生成AIを活用しています。クリエイティブの領域では、高品質な視覚データを作るために、ビジュアル高解像度化、映像のフレームレートの追加などで使うことが多いですね。

それ以外にも、条件を入れた上で概算見積もりの作成や要件定義書の確認、スケジュールの作成調整、デザイン表現の言語化などさまざまなシーンで活用しています。社員全員が有償のClaudeを利用しており、創造的な作業に多くの時間を回すことができています。

2. AIの台頭によって、デザイン業界はどのように変化しましたか?

単なる制作者から、クライアントの真のニーズを理解し戦略的な提案ができるクリエイティブディレクターへと、デザイナーの役割がシフトしています。また、デザインの迅速な試作やパターン化された作業の自動化など、AIによって作業プロセスが変わることで、より多くの時間を戦略立案や顧客との対話に費やせるようになっています。

3.ムラマツさんは、将来的に生成AIにどんなことを期待していますか?

デザイン会社として言えば、出力される内容の根拠の取得や精度の高いWebブラウジングなどでしょうか。これらの機能はまだ精度が低く、大規模データの処理にも課題があるからです。

私はAIにまったく新しいことをやってもらうよりも、既存の機能の確実性や信頼性を向上してほしいと思っていて、それによってより創造的で戦略的な業務に注力したいと考えています。ブラウジングと連動したPerplexityなどもありますが、まだまだ自分で検索したほうが早いと思ってしまっています。

4.今後もAIに代替できないことは何だと思いますか?

AIは、デザインなどの”製造”は得意ですが、それがクライアントのブランドやターゲットに合致しているかを評価するのは人間です。特にユーザーの感情に寄り添う力、今までにない創造的な問題解決、倫理的判断といった、人間の経験に基づく判断が必要な仕事はAIには代替できません。

また、最近はコンサルティングのような分野にもAIが進出しており、それに似たものは簡単に作ることができるので、「それが良いか悪いか」と多角的に評価する力、洞察やクリエティカルシンキング(物事に対して疑いの目を持って考えることで、本質を見極める思考法)の重要性が増すと思っています。私たちデザイン会社は、こうした背景を今のうちに理解して次なるサービスの提供が求められると思います。

5.生成AIによって、業界の5年後はどのように変わってほしいですか?

デザイン業界の5年後は、人間とAIが高度に協調し、お互いの強みを活かす環境になっていることが理想です。AIによって定型的な作業が効率化されても、デザイン会社の真価は深い洞察力と創造性に基づいた「有用性」と「美しさ」の融合にあると思っています。

そのため今後は、人間ならではの共感力を活かしたデザインを創造しつつ、生成AIが作り出したものを見極める能力を養うことが重要です。

そのために、クリティカルシンキングや深い洞察力、広い視野を磨き、多様な分野のプロフェッショナルとのコラボレーションをさらに推進していく必要があります。新しい技術やトレンドを積極的に学び、人間に対する理解を深める姿勢も欠かせません。これからも「人間らしさ」を磨きながら、クライアントに真の価値を提供し続けることを目指したいです。

10代で起業し多分野で活躍中のインフルエンサー、ハヤカワ五味さんのAI活用法(EC業界)

ハヤカワ五味(@hayakawagomi
株式会社ウツワ 代表取締役

大学入学後に起業してランジェリーブランド「feast」を設立するなど、多数の事業を展開。現在は大手IT企業において生成AIの社内活用を推進する業務に従事している。インフルエンサーとして、SNSなどのメディアでも生成AIの活用方法を積極的に発信中。

1. ハヤカワさんは仕事で生成AIを使うことはありますか?

超使っています!もちろん社内で生成AIを推進する現在の立場とも関係がありますが、自分の思考の整理やアイデアの拡張などに使っていますね。会議の議事録を皆にわかりやすい形式にサマリーしたり、営業のロールプレイなどにも活用しています。また個人でも、現在の会社に入社する以前からさまざまな場面で生成AIを使っていて、TikTokにアップする動画の台本をつくってもらったり、音声や動画を生成してもらったりしています。

2. AIにまつわるここ数年の変化について、どのように感じていますか?

私は1年ほど前から生成AIに興味を持ち始めました。そのため必ずしも活用が早かったわけではないのですが、そこからの変化だけに注目しても、ものすごいスピードと変化量だと感じます。さまざまな面でアップデートが進むので、私のように専業でやっていてもキャッチアップは簡単ではありません。ページ数の多いPDFや大きなデータを渡したときなどに顕著ですが、ここ最近は仕事での利用にも耐えうる機能や精度が出てきました。今後ますます多くの人に広がっていくのではないでしょうか。

3. 今後、生成AIにどんなことを期待しているでしょうか?

「面倒なことを、すべてやってもらう」ですね(笑)。ほかには、現在はまだそれほど多くないですが、クリエイティブな生成AIのアウトプットをもっと見てみたい思いがあります。ゲームとか、漫画とか、これまでにまったく存在しなかったような表現手段とか、「そう来たか!」と思わせるようなものを目撃したいです。

4. AIが普及しても、人間にしかできないことはなんだと思いますか?

最近思っているのは、応援してもらうことですね。世の中は、合理的に回っているように見せかけて、意外と感情が占める割合が少なくありません。起業についても同様で、「一緒に夢を見たい」とか「この人と働きたい」とか、そういう感情が後押しして実現している部分があります。だから合理的に考えて結論が出るものはAIに任せ、相手の心を動かすような行為はまだ人間に任せたほうがよいと思います。

5. 生成AIによってこれからの業界はどのように変わってほしいですか? 

EC業界では、冷蔵・冷凍便を使う際に配送時間の指定が求められることや、越境ECの利用において言語面で不安があることなど、購買の妨げになるさまざまな要素が存在しています。AIの進歩でそうしたハードルが取り払われて、感動的な体験が得られやすくなってほしいですね。また社会全体の話になりますが、AIが普及することで時間をかけずに仕事の内容を向上できるようになると思うので、特に女性にとっては、妊娠・出産時に生じる時間的な制約をなくせるのではないかと期待しています。

中堅・中小企業向け
AI活用ガイド

自社にぴったりなAI活用シーンを見極める方法や、AI戦略を成功させるために必要な要素など、AI活用に向けたヒントが詰まっています。ぜひご覧ください。

「ゆる言語学ラジオ」などの教養コンテンツが大人気!堀元見さんのAI活用法(YouTube業界)

堀元見(@kenhori2
作家/YouTuber

慶應義塾大学理工学部卒。専攻は情報工学。理屈っぽいコンテンツを作り散らかすことで生計を立てている。約30万人の登録者数を誇るYouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」の出演やプロデュースも行う。著書に『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(バリューブックス・パブリッシング)などがある。

1. お仕事で生成AIを活用していますか?

いろいろなサービスを使っていますが、最近は読書メモの横断検索にNotionAIをよく使います。たとえば「フォードがベルトコンベア組み立て式を思いついたのは、豚の解体業者を見て”この逆をやればいい”と思ったから」というエピソードについて、メモした記憶はあるけれどもその書名が思い出せないといったとき、NotionAIに聞けば自然言語で返ってくるので便利です。

2. 業界においてAIによってどのような変化がありましたか?

言語学の研究者と話す機会が多いですが、一様に生成AIに興味津々です。またYouTube業界としては、生成AIで遊ぶ企画が大幅に増えています。「生成AIが作ったメチャクチャなクイズを解く」とか「生成AIが作った台本に沿って動画を作る」など、大喜利的な使い方が目立ちますね。動画の編集作業にAIを使う話も聞きますが、膨大な手直しが必要になるなど実用面に難があり、現状では編集の質にこだわる人ほど使っていないと思います。

3. 堀元さんは、将来生成AIにどんなことを期待しているでしょうか?

前述した「動画の編集作業」こそ、将来すべて生成AIに代替できたら嬉しいですね。編集関連だけで毎月数百万円かかっているので、AIが過去の動画を学習したうえでトーン等を合わせて編集してくれたら最高です。ほかには、インタビューや打ち合わせなどで何度も同じことを聞かれるので、AIを活用して自動で返答できたらいいなと思います(笑)

4. AIが作るものと人間が作るものには、どんな違いがあると思いますか?

仮に人間が書いたものと生成AIが書いたものが同じ内容になったとしても、そのプロセスに「試行錯誤したアイデア」や「熟考した機会」などがあるかどうかは大きな差です。文筆にこだわりを持つ作家として、僕は「書くことは考える作業」だと思っています。手を動かす過程からしか得られない感覚やインスピレーションがあると信じているので、本気で作りたいものは生成AIに代替させるべきではありません。近年、生成AIを活用した小説が文学賞を獲得しましたが、これも作家が生成AIの文章を手直ししていますし、文筆という作業が完全にAIに代替されることはないと思います。

5. 未来の生成AIによって、業界の5年後はどのようになっていてほしいですか?

クリエイター視点で言えば、生成AIが得意とするアイデア出しの作業はクリエイティブ全体の2%くらいでしかありません。大部分は作品として成立するクオリティまで作り込んでいく作業で、これこそがクリエイティブの本質だと思います。だから、それ以外の打ち合わせやメールのやり取りや日程調整や経費精算などをすべて生成AIに代替したいですね。そこで生成AIをフル活用する際の最大の敵が「読み込めない紙の書類」になるので、デジタルのみで完結するように紙の書類を撤廃してほしいと思います。

こどもたちが自ら学ぶ力「けテぶれ学習法」の提唱者!葛原祥太さんのAI活用法(教育業界)

葛原祥太氏の写真

葛原祥太(@barikii
葛原学習研究所代表

公立小学校に11年間勤務した後に独立。子どもが自ら学びを進められる「けテぶれ学習法」を提唱し、SNSなどを通じて全国的な話題となる。著書『「けテぶれ!」宿題革命』(学陽書房)は、教育書として異例のヒットを記録。

1. 現在のお仕事では、どのように生成AIを使っているのでしょうか?

音声メディア「Voicy」の情報発信で、発信内容の文字起こしや文章の校正などに生成AIを活用していますね。その際には、専門用語などを誤認識しないよう誤変換を置換するプログラムをAIに作成させたりしています。ほかにはInstagramやYouTubeで紹介する素材作成やデータ処理などでも頻繁にAIを活用していますし、調査作業にはPerplexityやGensparkなどのサービスを使用しています。

2. 生成AIの登場が、教育業界に与えた影響について教えてください。

最近、生徒の評価コメントを生成AIに任せられるかどうかという議論がありました。教育は人と人が向き合う活動なので、教師から人生を見据えた深い言葉を子どもに伝えることに意味があります。AIが用いる情報は、教師が日々の学校生活から得る情報量には到底及びません。しかし将来的に子ども生活情報や生体情報をすべて把握できるAIが登場すれば、世界が変わるかもしれません。

現在の義務教育の制限では、児童・生徒が直接生成AIを使うことは困難です。教育活動に生成AIをどう位置づけるかは議論が必要ですが、教師が試験的に活用する例も増えています。例えばAIに歴史上の人物になりきってもらって子どもたちの議論に参加してもらうといった試みは面白いと感じます。

3. 将来、生成AIにどのようなことをやってもらいたいでしょうか?

自身の分身になってもらうことです。私はAIの手を借りながら「note」で毎日10,000〜20,000字の文章を書いていますが、この活動でAIに私の考え方を理解させたいと思っています。今でも、自分の文章を学習させたClaudeのプロジェクトを使って簡単な原稿を執筆することもあります。将来的にはAIが私の言語や思考を分析して、教育論や思考の構築における心強い味方となってほしいです。

4. 今後も「AIに代替できないこと」は何だと考えていますか?

自ら考え、行動することです。もしそれすらAIに委ねてしまうと、思考や体験が希薄化する危険があります。AIによる大量の情報によって自分の内面が見えなくなってしまうのです。だから、もし子どもたちにAIを使わせる場合、最初に「自分の答え」を用意した上でAIに尋ねることが不可欠になると思います。

AIはプログラミングなど初期段階の実装にも有用ですが、実践などの最終判断は人間が行うべきです。個人の人生は、自ら考え、そして実践することで進展します。何でもAIに任せればよいという安易な思考に陥らず、自身の人生観を大切にし続けることが必要ではないでしょうか。

5. 教育業界の未来に向けてAIには何ができると思いますか?

教育という営みは、文化的で豊かな生き方の創造に必要です。しかし近代化以降、教育を含む社会のあらゆる側面が自然のあり方から逸脱していきました。あらためて教育の原点と向き合い、それを実現するための環境を整えていくことが重要だと考えています。その意味で、国家や金銭や労働など、私たちの暮らしを窮屈にしているものをAIがうまく代替できれば、「学ぶ」「生きる」「考える」という、より自然な形への教育の回帰が実現するように思います。

「Figmaのきほん」著者で普遍的に使えるデザインテクニック解説が人気のデザイナー!もちさんのAI活用法(デザイン業界)

もち氏の写真

もち(@makiko_sakamoto
UIデザイナー/CDO/起業家

専門学校でグラフィックデザインを学んだ後に複数のスタートアップでUIデザインを経験し、現在はCDO(Chief Design Officer)として社内のすべてのクリエイティブを担当。メンターや制作活動など、幅広く活躍中。

1. もちさんは、現在どのように生成AIを使っているのでしょうか?

ChatGPTやClaudeをメインに使用していて、アイデア出しや情報設計、メールの返信、文章のリライトに役立てています。デザイン面では、ClaudeのArtifacts機能を活用してプロトタイプを素早く作成できないかを模索しているところですね。また、MidjourneyのDescribe機能で画像からプロンプトを生成して新しいインスピレーションを得たり、ChatGPTに私の好みに合ったアーティストを紹介してもらったりして刺激を得るような使い方もしています。

2. デザイン業界は、AIの登場によってどんな変化があったのでしょうか。

以前はキャッチコピーや情報設計、リサーチなどを他職種に依頼することが多かったのですが、AIを活用すればデザイナー1人でこなせるようになりました。プロジェクト全体をデザイナーが担当することで制作効率が向上したのは歓迎すべきことだと思います。その反面、新人デザイナーが雑務的な経験を積む機会が減少しているとの指摘もあります。デザイナーに求められる、デザインの良し悪しを判断する力の習得にはこうした経験が重要なので、そこは懸念材料です。

3. デザイナーとして今後の生成AIに期待することは何でしょうか?

頭で思い描くイメージを高精度で具現化することですね。デザイナーは画像生成AIをよく使うと思われがちですが、まだ精度が低くほとんど仕事では使えません。もちろんプロンプトの研究は行っているものの、Midjourneyはもちろん微調整が可能なAdobe Fireflyですら自分のイメージを正確に再現するのは難しいです。まだ生成に運任せの要素が多い現状から、今後コストのかかるような写真を安定してAIで生成できるようになれば、デザイナーは無限大の創造力を発揮できるようになりそうです。

4. もちさんが考える、AIに代替できないこととは何でしょうか?

例えば、「あの人は地元のためにデザインで貢献してきたから今回もお願いしたい」というような文脈まで含めた仕事は、AIでは置き換えられません。デザインは1人で完結する仕事が少なく、クライアントやチームとのコミュニケーションが重要です。相手の思いを汲み取るような感情のやりとりはAIには難しいため、人間同士のやり取り自体は今後も残るでしょう。将来、人間のデザイナーに依頼することが「贅沢」とされる未来になるかもしれません(笑)

5. 生成AIによって、デザイン業界の未来に何を期待しますか?

デザイナーの働き方がより多様化することを期待しています。クライアントなどの要望を形にするだけでなく、デザイナー自身が作りたいものを作り、事業を起こしたりするなどの働き方が生成AIの支援によって増えると良いと思います。一方で、中堅やシニアデザイナーがAIの恩恵を受けやすいのに対し、新人は生成AIとの競争に直面してしまう点は課題です。次世代の育成は大切なので、生成AIのほうが早い仕事をあえて若手に任せることも必要になると思います。業界の未来を守るために、私たちの世代がしっかりと襷を繋ぐことが重要だと感じています。

生成AIで営業の何が変わる?

・生成AIが営業活動にもたらすメリットとは
・なぜ現場はセキュリティ懸念とスキル不足を感じるのか
・懸念を解消し生成AIをうまく活用する方法
資料をダウンロードして、ぜひ今後の業務にお役立てください。

現役の薬剤師としてSNSでわかりやすく業界情報を発信するぺんぎん薬剤師さんのAI活用法(調剤薬局業界)

ぺんぎん薬剤師氏の写真

ぺんぎん薬剤師(@penguin_pharm
薬剤師ライター

調剤薬局で薬剤師として勤務する傍ら、メディカルライターとしてブログ「薬剤師の脳みそ」やSNSなどの場で薬や業界の情報を発信中。薬の働きや薬剤師の仕事を一般の人にわかりやすく伝えることを心がけている。

1. 調剤薬局のお仕事では、生成AIは使われているのでしょうか?

調剤薬局でのAIの活用は、大きく進んでいるわけではありません。処方箋調剤業務が個人情報に直結していて、生成AIの使用による情報漏洩が懸念されるからです。しかしセキュリティに配慮して特定の機能にのみ生成AI技術を用いた製品も登場していて、薬剤師と患者さんの会話を録音して自動で薬歴を提案するシステムなどがあります。私自身は、直接の薬局業務とは異なりますが、資料作成などの作業に生成AIを活用しています。

2. AIによって業界で見られるようになった変化を教えてください。

複雑な在庫管理を含む調剤薬局の業務を支援するAIシステムが登場していて、従来のやり方に匹敵する効率が期待されています。また、製薬企業が提供する医薬品や疾患の勉強会で講師役をAIが支援することもあります。情報整理に優れるAIを活用することで、近い将来、個々の薬剤師のニーズに応じた最適な研修がいつでも受けられるようになると期待しています。

歴史的に日本の医療は、個々の患者さんと向き合うことを重視してきました。そこが一元的なシステム化が浸透しにくい要因ですが、日本の医療の良い面でもあるため、AIの普及にあたっては個々の薬局に合わせた特性を覚えさせることも必要になると思います。

3. 薬剤師の業務のうち、どんなことを今後AIに任せたいですか?

調剤薬局の業務はアナログ的な要素が多く、例えば患者さんの数や医師の用いる薬は、季節や感染症の流行、新薬の登場、医薬品の供給状況などで変化します。また、医薬品は医師の個性や処方内容ごとにさまざまな数量で調剤されます。つまり在庫管理やスタッフのシフト管理が非常に複雑ですが、これらの管理業務をAIに任せられれば薬剤師は患者対応に専念できるようになりますし、情報収集や治療方針の決定にもAIを活用できると、薬剤師の負担が大きく減ると思います。

4. AIへの代替が難しいと思う業務や作業はなんだと思いますか?

今後、AIは多くの業務を担えるようになっていくと思いますが、薬剤師と患者さんの会話には簡単に代替できない部分があると感じます。もちろん単純な指導なら生成AIでも対応可能です。しかし患者さんの個性や家族構成、住環境などまで考慮した服薬指導は、その患者さんを深く理解している薬剤師でなければ務まりません。生成AIがこのレベルに達するには、まだ時間がかかるように思います。

5. 生成AIを活用する未来に向けて、どんな取り組みが必要だと思いますか?   

医療にはまだ多くの非効率な部分があり、薬局業務でも生成AIを用いた効率化が必要です。薬局は薬を渡すだけの場ではなく患者さんの健康を支える場所。生成AIのサポートがあれば患者さんと接する時間や質を向上できますが、さらに今後、ライフログや服用薬などから生成AIが新しい相談内容を引き出せるような時代になったら面白いですね。患者さんやその家族の心身の健康のために、薬剤師は今後も専門性を高めていく必要があり、そこにAIが貢献する余地は大きいと思います。

ベストセラー作家「さる先生」こと坂本良晶さんのAI活用法(教育業界)

坂本良晶氏の写真

坂本良晶(@saruesteacher
Canva Japan/Canva Educationアジア太平洋地域マーケティング統括マネージャー

大手飲食チェーン店長として売上全国1位を記録した経歴を持つ公立小学校教師「さる先生」としてSNSで有名に。『ChatGPTの教科書』『さる先生の「全部やろうはバカやろう」』(いずれも学陽書房)など著書多数。

1. 仕事で生成AIをどう使っていますか?

業務においては、2つの目的で生成AIを使っていますね。ひとつは生産性向上。例えば自治体の生徒数や児童数の表がほしいと言われた時、これまでは資料を調べてまとめていました。

それが生成AIに「こんなシートを作って」と入れると表が出てきます。もちろん、自分でも作成できますが、時間が圧倒的に早いです。もうひとつがアイデア出しです。例えば、小学6年生を想定して「画像生成AIを活用した授業のアイデア」などを出させたりしています。

2. AIによる業界の変化をどんなところに感じていますか?

教育業界では、子どもが生成AIを使えていないのが課題です。生成AIは創造性の拡張に便利なのに、現状は教員の生産性を上げるために使われています。「リーディングDXスクール」という、学校のICT化を進めるモデル校で使われている程度で、一般の学校ではほぼ使われていません。

私は、AIがヒトの仕事を奪っていく時代にあって、子どもたちにはAIに代替されない創造力を伸ばすことが不可欠だと思います。決められたことを正確にこなすという従来の学校教育で培われる力は、まさにAIが得意とする能力。

それに対して創造力は新たな価値を見出し、伝えていく力です。これからの教育現場では、子どもの創造性をふくらませる文脈で生成AIのようなツールを使えるようにアップデートされることを強く願っています。

3. 将来、生成AIにやってもらいたいことは何ですか?

「評価」でしょうか。学校での評価には少なからず教員の主観が入ります。もちろん賛否はあると思いますが、客観性を担保するために、生成AIが評価を行うのは解決法の一つかもしれません。また、生成AIのサポートがあれば、学力や適性が一人ひとり異なる子どもがそれぞれのレベルに合った学びを行う「個別最適な学び」の実現が近づくと思います。

4.  今後もAIに代替できないことは何だと思いますか?

「熱量」だと思っています。もっといい学校にしていこう!とか、クラスみんなでやっていこうぜ!みたいな、感情を揺さぶる領域に、生成AIは踏み込めません。こうした情熱や熱意は人間にしか持てないと思います。生成AIは知識や技能を伝えるには便利ですが、教育は子どもたちに寄り添うことが必要な場面も多く、そういうことができる先生たちの価値は今後も変わらないと思います。

5. 生成AIで業界の5年後はどうなってほしいですか? そのために業界は何をすべきですか?

教員目線では、生成AIで業務を効率化して労働環境の改善につなげ、教員という職業の魅力がより高まってほしいと思います。一方、子ども目線では、現状では学校リソースの問題もあり「個別最適な学び」の実現は困難です。生成AIを活用することで、子どもに合った学びが可能になり、結果的に不登校や勉強が苦手な子が減ったりするといいなと願っています。

19歳でホテル経営を始めた起業家龍崎翔子さんのAI活用法(ホテル業界)

龍崎翔子氏の写真

龍崎翔子(@shokoryuzaki
ホテルプロデューサー

株式会社水星 代表取締役CEO。これまでに「HOTEL SHE, KYOTO」「HOTEL SHE, OSAKA」「香林居」などを開業したほか、ホテルの自社予約サービスの開発や、観光事業者や自治体のためのコンサルティングも行う。

1. 仕事で生成AIをどう使っていますか?

新規施設の開業依頼に対して生成AIを使用しています。具体的には、詳細な建築パースを作成する手前の段階でイメージをふくらませるためのビジュアルや、思い描いている風景をスタッフに伝えるためのイメージ作りなどです。

ホテル現場でも、マーケティングデータの分析、お客様のレビューに対する返信文の添削、英語での接客練習相手などに用いられています。また、社内業務においても企画会議のブレストをはじめ活用が広がっており、今後はAI勉強会などの必要性も感じています。

2. AIによる業界の変化をどう感じていますか?

他の業界と同様、カスタマーサービスにAIチャットボットなどが活用され、24時間対応ができるようになっています。

さまざまな客層が往来するホテル業界では、国籍・年齢・属性などの顧客分析にAIによるマーケティングが活用され、個々の嗜好に合わせたサービスの提供や傾向の分析などが容易に行えるようになっています。データ収集や細かな業務のためのコーディングも生成AIを使えば可能となり、実際に請求書の発行もAIによるコーディングで自動化しています。

3. 将来生成AIにやってもらいたいことは何ですか?

生成AIの検索スピードや膨大な解析量は、さまざまな判断や意思決定の材料集めをする際に非常に有用だと思います。上手に使いこなすことで、より良い決断に役立てられたらと思います。

4. 今後もAIに代替できないことは何ですか?

やはり、人間ならではの対応ではないでしょうか。例えば、お客様に寄り添った温かいおもてなしや細かな気配り、そして予期せぬトラブルへの柔軟な対応などは、まだAIに代替できるものではないと思います。

5. 生成AIで、業界の5年後はどうなってほしいですか? そのために業界は何をすべきですか?

AIを活用したシームレスなチェックイン/チェックアウトや、一人ひとりのニーズに合わせた高度なパーソナライズドサービスの提供が一般化していくと思います。それにより、枕の硬さや客室温度の設定も過去の滞在履歴をもとに最適化されるでしょうし、結果的に顧客満足度が向上してリピーターのさらなる増加につながるでしょう。

そんな時代に求められるのは、従業員全員が生成AIのメリットとリスクを十分に理解しながら活用することです。ホスピタリティ精神のような人間だけが発揮できる価値をはじめ、人間らしさにフォーカスしたサービスがますます注目されると思います。

生成AIでマーケティングの何が変わる?

生成AIがマーケティングにもたらすメリット、セキュリティ懸念やスキル不足の理由、効果的な生成AI活用方法について、世界各国1,000人のマーケターを対象にした調査結果をもとに解説します。

Youtubeチャンネル登録者数22万人超!イチゴテック代表 宮崎大輔さんのAI活用法(農業業界)

宮崎大輔氏の写真

宮崎大輔(@JIBURl
イチゴテック代表

イチゴビジネスの新規参入と経営改善をサポートする農業コンサルティング会社、株式会社イチゴテックを設立。イチゴの研究で農学修士号を持ち、「趣味の園芸からガチ農業まで」をテーマにSNS等で情報発信中。

1. 仕事で生成AIをどう使っていますか?

ChatGPTやNotion AIを使っていますね。弊社はイチゴビジネスに特化したコンサルティング企業ですので、イチゴ農園の栽培・経営改善の支援に役立てています。

具体的には、コンサルタントがイチゴ農園の事業計画書を作成した後にChatGPTでも事業計画書の項目を出力して、必要な項目や着眼点に不足がないかを確認するような使い方です。これにより他社との差別化や、スタッフのスキル向上などにもつながっています。

2. AIによる業界の変化をどんなところに感じていますか?

イチゴ業界では、AIを活用して水やりを制御する商品があります。AIによる収量予測やロボットを使った収穫作業、そしてロボットによるパック詰めなども実用化が近く、今後はAI制御が当たり前の時代が来るでしょう。背景には、経験や勘などに頼っていた属人的な作業が、異常気象など未知の変化に対応できなくなっている点があります。

3. 将来、生成AIにやってもらいたいことは何ですか?

イチゴの観光農園の広告宣伝の役割を担ってもらいたいですね。いちご狩りは観光業のひとつなので、チラシやポスター、ダイレクトメールなどの広告宣伝活動が重要になります。生成AIは文章やキャッチコピー、画像作成が得意で、活用次第で時間とコストを抑えることが可能です。費用対効果も出やすいと思うので、いちご狩りの集客に役立てたいです。

4. 今後もAIに代替できないことは何ですか?

イチゴ栽培では、イチゴの余分な花を摘んだり、葉の陰に隠れている実を収穫しやすい位置に動かしたりする細かな作業がたくさんあります。これらはAIで代替することが難しく、今後も人間が行うだろうと思います。逆に、収穫やパック詰めなどの、労働時間が長く同じ作業を繰り返すような肉体労働は、AIが制御するロボットで代替されると思います。

5. 生成AIで、業界の5年後はどうなってほしいですか? そのために業界は何をすべきですか?

例えばイチゴ農園の事業計画書や財務諸表分析、栽培計画の作成を生成AIが行うことで、新規就農や既存の農園の経営改善などをサポートしてほしいですね。現在はこうした資料の作成に長くて数ヶ月かかるので、それが短縮できるのは大きいです。農業業界は高齢化が深刻で、生産者の平均年齢は約70歳です。どちらかといえば若い世代の方がデジタルツールの活用に慣れているので、若い世代によるAIを活用した新しい取り組みを業界全体として応援してほしいと思います。

予約倍率25倍のサロン&ギフトサービスを運営!三輪詩織さんのAI活用法(美容業界)

三輪詩織氏の写真

三輪詩織(@style_works0705
株式会社Style Works代表

大手人材広告会社での営業、IT企業での広報を経て、一部上場PR会社の子会社で取締役に就任。その後トータルビューティサロンStyle Worksを設立し、東京・名古屋・大阪・福岡にパーソナル診断&メイクサロンを展開。

1. 仕事で生成AIをどう使っていますか?

私たちの事業では、各地のサロンにおいて資格を持った担当者が、お客様のパーソナルカラーや骨格タイプなどを診断しておすすめのコスメや服を提案します。

その中で、新しいサービスを考案する際のヒントが欲しい時や、広告掲載文のアウトラインを作りたい時などにGhatGPTを使用することがありますね。専門用語をお客様に伝わりやすい表現に直したい時にも役立っています。

2. AIによる業界の変化をどう感じていますか?

美容業界でも、AIによるパーソナライズ化が進んでいます。メーカーではユーザーに合う商品をレコメンドしたり作ったりするAIサービスも登場。

弊社では2018年にユーザーの写真からAIがパーソナルカラータイプを判定して最適な商品を提案するサービス「irofit」をIT企業と共同開発しました。革新的な手軽さが大きく評価され多岐に渡る企業に採用されています。 

また、AR(拡張現実)を組み込んだメイクシミュレーターも定番化していて、海外からのゲストが多い売り場で特に活用されています。こうした変化は、メイクだけでなく美容医療など他業種にまたがったトータル美容カウンセリングの実現にもつながると考えています。

3. 将来生成AIにやってもらいたいことは何ですか?

実際にサロンを訪れるお客様の声をまとめると、「自分に似合うコスメやメイク方法は何か」「トレンドをどうやって自分に合わせるか」の2点に集約されると思います。そこで今後は、例えば生成AIが作成した「トレンド顔」と自分の顔を照らし合わせて、どのコスメを使用して、どんな風にメイクをしたら自分にとっての最適バランスになるか、などを解説してくれるようになったら便利になると思います。

4. 今後もAIに代替できないことは何ですか?

肯定感や満足感を高めることや、細かなニュアンスが求められるような仕事は、今後もAIによる代替はできないのではないでしょうか。特に女性ユーザーは、メイクの結果(仕上がり)だけでなくその過程にも価値を見出す人が多い印象があります。

そのためメイクアップアーティストのような、一人ひとりが持つ感性や言葉のやり取りでお客様との時間を作り上げていく仕事は人間ならではのものだと思いますし、大きな価値があると感じます。

5. 生成AIで、業界の5年後はどうなってほしいですか? そのために業界は何をすべきですか?

忘れてはならないのが、美容業界のサービスを利用されるユーザーにはAIに馴染みのない方もまだ多いということ。AIには何ができてどんな意義があるのか、一方の人間が行うからこその意義とは何か、こうした基本に目を向けた上で新しい技術を採用することが重要だと思います。個人的には、サイト上で購入に迷った時に、あらゆる美容分野の情報をもとに回答してくれるような対話型AIが出てきたら面白いなと思いますね。

信頼できる生成AIを実現するために準備すべき6つの戦略

・生成 AI がもたらす機会と影響
・生成 AI に関する懸念
・生成 AI に備えたデータのセキュリティ戦略 など
資料をダウンロードして、ぜひ今後の業務にお役立てください。

まとめ

すでに生成AIは、技術面で大きく進歩しているだけでなく、あらゆる業界においてさまざまな影響を与えています。今回、各業界のインフルエンサーのインタビューを通じて見えてきたのは、生成AIの導入がもたらす効率性や可能性と、逆に人間にしかできないことへの再認識です。

これからの時代は、AI技術の進展によって、ますます多くの業界で新たなビジネスチャンスが生まれると考えられます。生成AIが活躍できる領域と生成AIには代替できない領域を見極めた上で効果的に活用すれば、未来のビジネス環境がよりダイナミックで柔軟性に富んだものへ変わっていくでしょう。

本記事は、今後も各業界のインフルエンサーの皆さんの回答を追加していく予定です。どうぞお楽しみに。

オススメ記事

今、知るべきビジネスのヒントをわかりやすく。厳選情報を配信します