次世代通信技術「6G」の開発が進んでいる中、その概要と技術革新がもたらすビジネス変革について、顧客とのつながりという観点からご説明します。6Gがもたらす新しいビジネスの可能性を探るために、ぜひご覧ください。
”5G を超える”ネットワークインフラの出現により変わること
現在、モバイルネットワークとして、世界中で5G が普及しつつあります。5Gとは「第5世代移動通信システム」の略称で、日本では2020年春から商用サービスがスタートしています。その特徴は「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」という3つがあげられます。そして今、2030年頃の実用化を目指して、Beyond 5Gとも呼ばれる 6G 技術の開発が進められています。6G では、5Gの10倍以上の超大容量通信と最大100 Gbpsを超える超高速通信が可能になります。
6G ネットワーク上では収集蓄積されたデータをリアルタイムでAIと組み合わせて利活用が可能となり、今よりも精度の高いサービス提供が可能になります。こうしたデータを基にした社会活動をデータ社会と呼ぶことができます。データ社会では、リアルタイムでのデータを活用が進められ、最良の顧客体験を提供する基盤が提供されます。
6Gは、5Gよりも高速で低遅延な通信が可能となり、これまで以上に大量のデバイス接続やと信頼性の向上、さらに接続デバイスのエネルギー効率化も実現されます。これらの特性を活用することで、新しいユースケースやビジネスモデルが生まれる可能性があります。小売業においては、店舗内に設置されたセンサーやカメラからのリアルタイムの情報や、顧客が店舗内で使用するスマートフォンからの情報をリアルタイムで収集し分析するだけでなく、顧客の購買履歴やコンタクトセンターへの問い合わせ履歴を把握した上で、接客することが可能になります。これにより、顧客に対して最適な商品の提供や、個別にカスタマイズされたサービスの提供が可能になります。こうして顧客体験を最良のものとし、顧客満足度の向上につなげられます。
顧客とつながるためには、顧客に関する様々なデータを活用すること
顧客は、最適化されたオンラインでの体験と人による対応の双方を求めています。オンラインでのセルフサービスやチャットサポートの導入が進んだとしても、顧客はその体験にもの足りなさを感じています。セールスフォースの調査レポート「コネクテッドカスタマーの最新事情」では、セルフサービスで手間をかけることなく問題が解決すると回答したのはわずか13%でしかありません。つまりオンラインと人による一貫性のあるハイブリッドサービスが求められています。顧客の情報を基にしたパーソナライズなサービスの提供をオンラインでも、人での対応でも出来ることが、競争上の優位性を獲得することになります。これを実現するには、顧客に関する様々な情報をひとつに集約して分析できることが欠かせません。顧客とつながるとは、顧客の情報を基にして、パーソナライズしたサービスを適切なタイミングで提供し続けることに他なりません。このことは、マーケティング、プリセールスの段階から、購入後のポストセールスまで一貫して行なうことが必要です。
6G技術がCRM(顧客関係管理)にもたらす変革の中で、ロイヤルティマネジメントにも大きなインパクトが見込まれます。顧客ロイヤルティの向上には一貫した顧客体験が重要であり、6G技術により、顧客ロイヤルティマネジメントも変革されるでしょう。リアルタイムデータ分析とパーソナライズが実現され、顧客の好みや行動をリアルタイムで把握し、それに応じた個別化されたサービスやプロモーションを提供することができます。顧客が自分に合った製品やサービスを受けることで、満足度が向上し、ロイヤルティが高まります。6G技術によって収集される大量のデータを活用し、ロイヤルティプログラムをさらにパーソナライズされたものにすることができます。顧客が実際に興味を持っている製品やサービスに関連した報酬や特典を提供することで、ロイヤルティプログラムの効果を高めることができ、顧客エンゲージメントも向上します。
技術革新をビジネス変革へとつなげる
6G技術により、通信業界では新たなビジネスモデルの創出が期待されています。B2B2Xとも表現されていますが、通信事業者がパートナーと一緒になって、法人向けやコンシューマー向けのサービスを提供するモデルです。特に法人向けのビジネスとして、IOT や機器の遠隔操作において付加価値サービスを提供したり、デジタルマーケットプレイスと呼ばれるパートナーエコシステムの構築などがあります。法人ビジネスにおいても、個社向けのパーソナライズ化されたサポートやデジタルと人とのオムニチャネルでの対応がより一層求められ、顧客とのつながりは重要な価値提供になってきます。
ネットワークスライシングという新たなサービスも生み出されています。これは、顧客の利用目的に応じてネットワークの利用帯域や料金を細かく制御し、パーソナライズして提供するサービスです。通信事業者は、顧客からの新たな要望を待つだけでなく、顧客の利用用途にあった提案を統合された顧客情報から分析し、先回りして提案することができるようにならなくてはなりません。調査によると、新しい技術に付随するメリットを提示された場合、顧客の67% が、さらに追加でお金を支払っても良いとも回答しています。一方で多くのグローバル企業のエグゼクティブに対する調査(New Global Survey of 10,000 business leaders (英語))では、3分の2以上のリーダーが、価格設定などの重要な意思決定にデータを活用できていないと回答しています。さらに新規市場の参入にあたり、データを戦略に反映できているのかという問いに対しては、出来ていると回答した割合は、3分の1以下という結果でした。
まとめ
今から数年後には、多種多様で膨大なデータを収集蓄積可能とする社会インフラが実現します。顧客に関するデータをリアルタイムで分析し、分析されたデータを基にした意思決定によって、ビジネス変革を進める力が全ての業界のビジネスリーダーに求められています。
カスタマーエンゲージメントの未来につながるトレンドが明らかに
全世界13,000名以上の消費者と、4,000名以上のビジネスバイヤーへの調査をまとめた「コネクテッドカスタマーの最新事情」から、最良の顧客体験と顧客との新たなつながり方が明らかになります。