オープニングと自己紹介
オープニング
- 企業がDXを進める中で、特に課題と位置付けられているのがデジタル人材の獲得・育成だ。総務省が発行する「令和4年版情報通信白書」によると、日本ではDXを進める上での課題や障壁として人材不足が課題だと挙げられており、諸外国と比較してもこの課題は深刻にとらえられている。
- 本ブログでは、事業会社側でDXのプロジェクト(PJ)経験のある弊社社員2名がDX推進での体験談を座談会形式でお届けする。特に、DX人材でなかった未経験者がどのようにデジタル知識を学びながらPJを進めていったかについて解説する。
自己紹介
事業会社側でデジタルトランスフォーメーションのPJに携わった2人。まずは自己紹介。
五味 信子
現在はセールフォースで既存のお客様のDX運用についてご支援をさせて頂いております。前職では国内の総合電機メーカーで半導体事業のPSI管理や社内横断のCRM基盤の構築・運用のPJリーダーをしていました。
國村 太亮
現在は製造・通信・メディア業界のDXトレンドを調査したりインダストリ特化型のセールスフォース製品であるIndustry Cloudの販売推進をしています。前職ではスポーツメーカーでデジマやECを中心にDX推進に携わっていました。今回は聞き役として、五味さんの経験を聞いていきます。
自分ひとりで頑張らない
業務側の人間がITプロジェクトリーダになるために
國村:そもそも、ITやデジタルにはお詳しかったのですか?
五味:いえいえ、全く。ずっと事業運営側にいましたので。
國村:ではどういったきっかけで、DXプロジェクトに携わるようになったのですか?
五味:CRM構築PJのリーダにと、突然上からアサインされたのです。ITはおろか、事業部横断プロジェクトのマネージメントなんてやったこともないので、何から手をつけていっていいか全くわからなかったです。
國村:そのような状態からよくグローバルでの一気展開のCRMプロジェクトを2年でやり遂げましたね。どのように進められたのですか?
五味:結論を先に言えば、経営トップや上司、そしてDXをサポートしてくれたコンサルティング会社の力はとても大きかったです。もちろん、一緒に進めてくれた社内のPJメンバーの力無くしてはできなかったのは言うまでもありません。
PJ発足時に、情シス部門側からコンサルを入れてシステム構築していくので、ITベンダー選定も業務観点で入って欲しいと言われました。
複数のコンサル会社の中で、単なるシステム構築ではなく、ビジネスでの効果創出に重きを置くコンサル会社がありました。業務側の巻き込みを重視しており、業務側のPL支援やPJマネジメントスキルの移築・フォローアップも提案してくれたのですが、結局その会社を採用することになったのです。彼ら・彼女らからは、CRMはどんなものなのか。またその目的や使い方だけでなく、ITプロジェクトの進め方のノウハウもゼロから教わりました。
國村:そうだったのですね。とかく、DX人材育成というとデジタル技術やリテラシー不足が課題として挙げられます。ただ、このようなPJを進める能力・経験も大事だと感じましたが、そこはどのように考えていますか?
五味:はい、PJの進め方で、正しい目的で始まったとしても、正しくないやり方をすれば、望んだ成果には辿り着けないと感じました。社内に反対派のステークホルダーがいると、そういった人とのコミュニケーションを避けがちですが、最終的にはそういった人たちにも主体性を持って改革を進めてもらわないといけません。製造業の場合、M&Aも進み複数事業を抱え、それらの事業責任者の経営優先事項は様々です。各々考えが違うステークホルダーと密な対話をしてGapを埋めていく地道な作業が必要です。そのためには、常にPJが目指す効果を反芻し経営戦略に直結しているかどうかをプロジェクトリーダーは考え続けなければいけません。ついつい、簡単な解決策(手段)に飛びついてしまうのですが、PJの始まりから終わりまで、なぜこのPJは必要なのか?何をすることが正しいのか?を考え行動していくことが大事だと思います。
國村:全社での経営戦略との適合性まで考える必要があるということでしょうか?
五味:はい。そう思います。だからこそ社内横断での業務改革系のPJは、経営トップの関与が不可欠なのです。元来、そのPJは経営課題を解決するために行なっているわけですよね。ですので、わたし自身もPJの進捗で迷いがあった場合には、すぐ経営トップに相談に行ってましたね。
経営トップも、自分の経営戦略の遂行を手助けしてくれるPJであることを公式な場でもよく伝えてくれてましたし、日常でも自身の相談の時間は最優先にスケジュールを空けてくれてました。
國村の感想
自分に無ければ他者から学びを得れば良い。ただ、DX人材育成は一朝一夕にはならず。多くの時間や失敗もあるわけで、経営トップがその時間や多少の損失を受け入れて社内の「非DX人材」を新たに育てる覚悟やそういった企業文化を作り出していくことも重要だ。失敗を許容する企業文化が次のDX人材を輩出し続けていくと感じた。
企業にありがちな社内での「部分最適」ではなく、「顧客ニーズ」でプロジェクトを考える
自社目線から顧客目線でDXプロジェクトを進める
國村:多くのことを学んでこられ順調に数々のDXプロジェクトを進めてこられたように感じていますが、他の成功したPJのお話も聞かせてもらってもいいですか?
五味:とんでもないです。たくさん失敗もしています。別のPJの話なのですが、グローバル横断のDXプロジェクトを自分から起案した時のことです。最初のきっかけは、自組織での困り事(=作業効率と社内関連部門連携の非効率さ)から、ITやデジタルを活用して業務改革をしようと思ったわけです。でも、そのPJの上申は通らなかったのです。
國村:それは社内から反対されたということですか?
五味:はい、おっしゃる通りです。当然IT導入によるコストもかかり、社内関連部門の協力も仰がないといけないようなPJを意図していたのですが、他の組織を動かすほどの納得感は得られなかったわけです。
國村:原因は何だと思いますか?
五味:自組織の困り事の解決しか見ておらず、結局、部分最適に終わり、投資の割に効果が薄いと思われたのだと思います。今思えば、当然だなと思います。
國村:ではそのままそのPJはお蔵入りですか?
五味:諦めが悪くて(笑)。組織側の人間としてではなく、お客様の立場で見た時に、本当にこのようなオペレーションのままでいいのか?と思いまして。実際に、いろいろなお客様にアポをとって、お客様の困りごとを聞き回ったんですよね。そうしたら、お客様が様々な示唆を提供してくれました。
國村:というと?
五味:我々が相手にしているお客様自身が、グローバルに拠点を持ちオペレーションを行なっています。お客様は、どこの拠点でも共通かつ高いサービスレベルを期待していました。自組織、自拠点だけ、製品サービス、オペレーションの質を上げればいいという話ではなかったわけです。
そこで、PJの目的や目指す効果を顧客視点で再度考え直したら、自然とグローバルでのPJに一気に範囲が広がってしまったのです。最終的には、このPJでお客様への提供する製品サービスレベルを向上させることがゴールとなり、社内の承認も頂けました。
國村:顧客中心の業務変革PJに生まれ変わったということですね?
五味:はい、そうです。実は、これには他にも思わぬ効果がありました。顧客中心、言い換えれば、「顧客視点に立った効果」にこだわることで、自組織の利害関係も多少はそれは残りはしますが、それ以上に顧客の困り事解消のために組織が繋がっていく感じを強烈に覚えています。
製造業の場合、根強くプロダクトアウト発想があり、自社の製品サービス、ビジネスオペレーションありきのPJになりががちです。そうなると、従来のやり方での自社目線での現場改善、自組織の利害が第一に優先されるのは当然のことですよね。
目的が単なる業務効率化ではなく、顧客への価値提供すなわち競争優位性を作り出す方に舵を切り直したわけです。いわゆる、「マーケットイン」や「Voice Of Customer」の視点が入ってきたわけですね。そうなると、自ずと経営戦略の重要な要素として注目されてくるわけで、当時の経営陣の方々の強いサポートを頂戴でき、何とかやり切れました。
國村の感想
社内の上司や仲間、外部パートナー企業はもちろん、目の前のお客様からの学びが多くあることがわかった。お客様は、取引企業からモノやサービスを購入し、様々な体験をしており、自身では思いつかなかったようなことに気付かされたと五味さんが語っていた。顧客からDXのヒントをもらうということ。当時の五味さんの上司や経営層はそんなことはきっとお見通しだったのかもしれないが、五味さん自身が気づくまでぐっと堪えていたのかもしれない。
最後に
コンサルティングサービスを含めたSalesforceのソリューション
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國村:SalesforceはSaaS製品の販売だけでなくコンサル的な導入支援やDXの全体設計もしていますよね?
五味:Salesforceは製品販売だけでなく、Professional Serviceと呼ばれるコンサルサービスも提供しています。製品導入だけでなくDXの全体設計を含めたトータルソリューションをNidec様やPanasonic様、最近の事例では三和ホールディングス様がご利用されています。わたしのような事業会社側でDX経験のあるSalesforceのメンバーがDXを支援した事例なのでぜひ参考にしてほしいです。
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