5月30日、欧州最大規模の展示会「HANNOVER MESSE 2022」がドイツのハノーバー国際見本市会場で開幕しました。欧州はすでにアフターコロナに入っていて、開場にマスクをしている人たちは少数派。今年はセッション会場の席数を減らしてオンラインにも力を入れるハイブリッドイベントとして開催されていますが、それでも60か国から2500の出展者を集める世界的な産業展示会として、会場は熱気に包まれています。
今年の主要テーマは、サステナビリティとデジタル化です。サステナビリティでは、ロシアのウクライナ侵攻で、「レジリエンス」(弾性、直面する危機にしなやかに対応して回復する力)が求められることになり、ロシア産に依存しないエネルギー問題にも注目が集まりました。今回、イベントのパートナーカントリーに選ばれたポルトガルは、アントニオ・ルイス・サントス・ダ・コスタ首相がオープニングセレモニーでスピーチし、石炭火力発電を2021年に終了し、すでに消費電力における再生可能エネルギーの割合が約60%に達していることを紹介しました。
同じくオープニングセレモニーにおいて、ドイツのシュルツ首相は、エネルギー分野に投資を加速させることを明言。行政の計画や承認に必要な期間を半分程度に短縮させる目標を明らかにし、2030年までに消費電力の80%を再生可能エネルギーでまかなうという計画を明らかにしました。
企業のサステナビリティ戦略を強化するソリューションプラットフォーム
このように、国家のトップからは、エネルギー分野で大きな目標と現状が語られましたが、産業イベントとして「サステナビリティ経営」を実現するソリューションや環境負荷の少ない製品など、多数の出展があります。私がこのイベントを訪れているのは、Salesforceとして主要な製品を出展するためです。Salesforceはサステナビリティ経営をサポートするCustomer360のプラットフォームを提供します。
企業の環境データの収集・分析・報告を支援するNet Zero Cloudは、先ごろ日本市場で新バージョン2.0の提供開始を発表したばかりのソリューションです。対応業界や企業規模を拡大できるよう対応を進めています。
サステナビリティ戦略の強化には多角的なアプローチが求められますが、SalesforceのCustomer 360プラットフォームは企業とマルチステークホルダーとの繋がりを深め、サステナビリティ戦略を通した企業価値向上に寄与します。ESGデータをAPI主導でシームレスに連携・活用するためのMulesoft、ステークホルダーとのエンゲージメントを高め、信頼性の高いコミュニケーションを実現するSlack、従業員やエコシステム全体の知識の底上げ・行動変容の促進にはSales Enablementを活用いただけます。
Manufacturing Cloudの需給調整機能
もうひとつは、Manufacturing Cloud。こちらはSales CloudやService Cloudなど、Salesforceのソリューションを製造業向けに最適化したものです。今回はデジタル化が主要なテーマの1つで、2011年のこのイベントで大々的に発表されたIndustry 4.0のコンセプトにおいてもデジタルは主要な位置を占めています。
今回の目玉は、バリューチェーン全体の需要を可視化するソリューションです。AIを使った需要予測は現在のトレンドかもしれませんが、最も肌感覚で需要を知っているのは担当者です。「調達を見込んでいた部品工場が気象の影響で止まってしまう」といった突発的な変更も頻繁に発生します。これらのリスク要素を取り入れ、もちろんAIを使ったおおよその予測も参考にしながら、担当者間で需要と共有を調整しながら全体の計画を立てていくというソリューションになります。強力な可視化と調整、コンセンサスに基づく需給計画という新しい視点を提供できるソリューションで、こちらも反応が楽しみです。
日本企業の海外グループ会社がエルメス賞を獲得
初日に最も注目を集めた日本企業は、住友重機械工業でした。海外のグループ企業、Sumitomo Drive Technologies社(Sumitomo Cyclo Drive Germany)が、HERMES AWARD(エルメス賞)を獲得したのです。エルメス賞は、ハノーバーメッセの開会式で毎年授与される権威ある国際産業技術賞で、革新的な技術を備えた優れた製品・ソリューションが表彰されます。今年は3社のノミネートの中から、同社のアクチュエーター「TUAKA」が選ばれました。日本企業の海外グループ会社としては初受賞です。
アクチュエーターは、動力源と構成部品を組み合わせて、機械的な動作を行う装置です。動作の際に加える力や速度、角度などを自由に制御できます。受賞理由は、高精度かつ高感度であることはもちろん、ロボットアプリケーションと自動化技術を完全に統合していることで、TUAKAを利用するロボットメーカーやOEMが開発期間を1年短縮することが期待できるというものでした。
今年はハイブリッド開催……これが最適解かも
冒頭でも触れましたが、今年はリアル会場とオンラインのハイブリッド開催でした。私は初日と2日目のスケジュールをセッション中心に組んでいるため、オンラインの方が時間のロスが少なく、楽だなという印象でした。ライブストリームで質問もリアルタイムチャットを使えば簡単にできますから、会場に居るような雰囲気も味わえます。またセッション後に気になったことは、メールでセッション担当受付係に問い合わせることも可能です。
ただ、セッションが終わってから登壇者と会話したり、その後にすぐブースを訪れたくなったりする場合は、ライブの良さが出てくるはずです。明日もセッション中心ですが、3日目からブースを回っていろいろと見てくる予定ですので、最後のレポートでそのあたりの感想もお伝えしたいと考えています。次のブログでは、日独経済フォーラムの模様と感想をお伝えします。
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