顧客に商品やサービスを提供するビジネスにおいて、購入単価や頻度が高い優良顧客の獲得は重要な取り組みです。
優良顧客に対して特典を与えて、ロイヤルティ(愛着心)を高める施策のひとつにロイヤルティプログラムがあります。
本記事では、ロイヤルティプログラムの種類やメリット・デメリット、導入手順を解説します。成功事例も紹介するため、ぜひ自社での実施の参考にしてみてください。
ロイヤルティプログラムとのかかわりが深いカスタマーエンゲージメントについては、以下の調査レポートにまとめているので、最新事情を知りたい方はあわせてチェックしてみましょう。
コネクテッドカスタマーの最新事情レポート
Salesforceのレポート「コネクテッドカスタマーの最新事情」は、全世界17,000名以上の消費者とビジネスバイヤーへの調査から新しい時代のカスタマーエンゲージメントを明らかにします。
目次
ロイヤルティプログラムとは
ロイヤルティプログラムとは、購入単価や頻度の高い優良顧客に対して特典を付与し、長期的な関係を築くことを目的としたマーケティング施策です。
ロイヤルティとは、顧客からの信頼や忠誠心などを指し、企業を信頼しているロイヤルカスタマーを育てるためにプログラムを実施します。
顧客のロイヤルティを高める手段として、商品の購入やサービスの利用に対して報酬や特典を提供することが特徴です。ポイントやクーポンを付与したり、限定コミュニティに招待したりするなど、企業によって異なる方法で優良顧客へアプローチしています。
ロイヤルティプログラムの種類
ロイヤルティプログラムには、以下のような種類があります。
- 購入・利用促進型
- シンプルティア型
- パーパス拡張型
- 価値共創型
- 経済圏拡張型
- 経済圏連携型
- パーソナライズ型
特典の内容や目的などによって特徴が異なるため、どのような効果を生み出したいかを検討し、自社にあったロイヤルティプログラムを選びましょう。
ロイヤルティマネジメントについては以下の記事で解説しているため、消費者に響くプログラムづくりの参考にしてみてください。
> ポイントだけでは消費者に響かない。ロイヤルティマネジメントを顧客戦略の柱に
購入・利用促進型
購入・利用促進型のロイヤルティプログラムは、ポイントや特典によってさらに購入・利用してもらうことを目的にして実施します。
購入利用金額に応じたポイントや特典を付与するほか、先行販売権を特典とする場合もあります。顧客にとっては、好きなブランドや企業の商品をお得に購入・利用できる点にメリットを感じられるでしょう。
シンプルティア型
シンプルティア型はノーティア・ノーポイント型とも呼ばれ、会員ランクやグレードといった差を設けず、会員全員に共通した特典を提供するロイヤルティプログラムです。
上位ランクを目指すハードルがない分、気軽に参加してもらいやすく、幅広い顧客との関係を構築しやすくなります。
基本的には会員一律で特典を提供し、利用頻度や利用金額に応じて会員ランクを設けるといった柔軟な運用も可能です。
パーパス拡張型
パーパス拡張型とは、ロイヤルティプログラムを通して企業のビジョンや価値観を伝えることを目指します。
たとえば、ブランドの歴史やストーリーがわかる動画を配信したり、企業のパーパスに共感するユーザーが集まる限定コミュニティに招待したりして、自社に対する理解を促します。
価値共創型
価値共創型のロイヤルティプログラムの目的は、企業が掲げる社会問題の解決といった価値を顧客とともに実現することです。
たとえば、環境負荷の低減を実現したい場合には、取り組みにつながる商品の購入にポイントを付与することで、顧客はロイヤルティプログラムを通して環境や社会に貢献している感覚を得られます。
商品の購入やサービスの利用を通して、企業の取り組みへの理解も期待でき、愛着や信頼にもつながっていくでしょう。
経済圏拡張型
経済圏拡張型のロイヤルティプログラムは、商品の購入やサービスの利用だけではなく、さまざまな行動に対してポイントや特典を付与する形態です。
対象店舗での購入だけではなく、以下のようなさまざまな接点で特典を付与します。
- ECサイトでの購入
- 関連サービスの申し込み
- 公式サイトでのアンケート回答 など
特典を得られる場所や方法が顧客の身近に多くあることで、特典を目的に自社の商品・サービスを利用したい顧客が増えていくでしょう。
経済圏連携型
経済圏連携型は、他の企業・ブランドと連携し、互いの商品・サービスへの購買行動に対して特典を付与するロイヤルティプログラムです。
特典によって関連サービスの利便性を高めたり、特典をきっかけに連携企業の顧客を獲得できたりするなど、相互にロイヤルティ向上や顧客獲得を期待できます。
パーソナライズ型
パーソナライズ型のロイヤルティプログラムは、顧客一人ひとりに最適化した特典を付与する点が特徴です。
顧客にとってうれしい特典は異なるため、一人ひとりにあわせてカスタマイズすることで、自分だけのサービスを受けられるという印象を与えられます。
パーソナライズ型を運用するためには顧客を理解する必要があるため、顧客データの分析やアンケートなどを実施するのがおすすめです。
ロイヤルティプログラムを導入する4つのメリット
ロイヤルティプログラムを導入することによって、以下のようなメリットを期待できます。
- 顧客とのエンゲージメントを向上できる
- リピート購入を期待できる
- 集客のコストパフォーマンスを高められる
- プログラムへの口コミから集客を期待できる
顧客との関係構築やリピート購入による売上アップなどにつながるため、ぜひ導入を検討してみてください。
顧客とのエンゲージメントを向上できる
ロイヤルティプログラムを導入することで、特典をきっかけに顧客とのエンゲージメントを向上できます。
ポイントや特典を付与することで顧客の満足度が向上し、企業やサービスへの愛着や忠誠心が高まるのがメリットです。
エンゲージメントが高い状態の顧客は、プロモーションなど企業からの働きかけへの反応がよいといわれているため、商品の購入やサービスの利用につながりやすくなります。
リピート購入を期待できる
ロイヤルティプログラムのポイントや特典によってお得な購買体験を提供できると、「また利用したい」という気持ちを促しやすくなります。
ポイントや特典が再購入の後押しになり、リピート購入を期待できるのがメリットです。リピートが複数回あり、関係が長くなると、購入金額や頻度が増え、LTV(生涯顧客価値)の上昇にもつながっていくでしょう。
集客のコストパフォーマンスを高められる
集客において、新規顧客の獲得は既存顧客の維持に比べて5倍のコストがかかるといわれています。
ロイヤルティプログラムは既存の優良顧客を対象とした取り組みであり、効果的な活用によって集客コストを削減できるのが特徴です。
既存顧客との関係を長期的に維持できれば、集客コストを抑えつつLTVを高められ、コストパフォーマンスが大きく向上するでしょう。
プログラムへの口コミから集客を期待できる
満足度の高いロイヤルティプログラムは、顧客から周囲へ口コミが広まる場合があり、評判がきっかけで集客できるようになります。
魅力的な特典やきめ細やかなサービスによって、よいものを広めたいという気持ちを刺激できれば、口コミからの新規顧客獲得が可能です。
新規顧客をファン化し、優良な既存顧客に育てられれば、集客によい循環が生まれるでしょう。
ロイヤルティプログラムの実施で注意したい4つのデメリット
ロイヤルティプログラムを実施する際は、以下4つのデメリットに注意しましょう。
- ロイヤルティプログラムの内容次第では効果が出ない
- 参加のハードルが高いと効果的に活用できない
- 周知を徹底しなければならない
- やりっぱなしになると成果が出にくくなる
ロイヤルティプログラムを開始するだけではなく、内容や参加しやすさなどが重要です。デメリットを理解し、対策を講じたうえで質の高いプログラムを実施しましょう。
ロイヤルティプログラムの内容次第では効果が出ない
ロイヤルティプログラムは導入すればよいだけではなく、内容が伴わなければ顧客のエンゲージメントを高める効果は期待できません。
購入金額に対してポイント付与率が低かったり、特典の内容がブランドイメージにあっていなかったりすると、良質な顧客体験を提供できず、離脱されやすくなります。
また、特典自体は魅力的でも、利用する機会が少ない場合も離脱されやすくなります。たとえば、店舗で使える特典ばかりになると、ネット通販をメインで使う顧客にとってあまり意味のないプログラムになるでしょう。参加者全員が平等にメリットを得られる内容にするのがポイントです。
どのような特典が顧客にとって魅力的かを十分に検討し、魅力的なロイヤルティプログラムをつくりましょう。
参加のハードルが高いと効果的に活用できない
ロイヤルティプログラムは顧客が参加してはじめて成果を得られるため、参加しにくいと効果的に活用できません。
参加のハードルが高いほか、特典を受けとるための手続きや処理が面倒でも、継続的な利用を期待しにくくなります。
顧客にとって参加しやすく、誰にでも利用しやすいロイヤルティプログラムの仕組みを考えることが大切です。
周知を徹底しなければならない
ロイヤルティプログラムを効果的に運用するためには、まずプログラムの存在を知ってもらう必要があります。魅力的なロイヤルティプログラムを利用してもらえるように、周知を徹底しましょう。
店舗やECサイトで登録を促したり、SNSでプログラムに関するプロモーションをしたりするなど、多くの顧客にプログラムを知ってもらう取り組みが欠かせません。
やりっぱなしになるとブランドを棄損する恐れがある
ロイヤルティプログラムを開始して改善せずにやりっぱなしになると、ブランドを棄損する恐れがあります。
開始当初の内容が、顧客にとって継続的に魅力を提供できるとはかぎらず、定期的なプログラムの更新を行わなければ満足度の低いプログラムを提供し続けるという状態にもなりかねません。
こまめに効果測定を行い、必要に応じて改善することで、成果の出るロイヤルティプログラムを実現できます。
ロイヤルティプログラムの効果測定に役立つ指標
ロイヤルティプログラムを効果的に運用するためには、こまめに成果を測定し、課題に対して改善策を講じることが大切です。
ロイヤルティプログラムの効果測定において、計測指標としてNPS(Net Promoter Score)が役立ちます。NPSとは、顧客が自社製品・サービスを周囲に推薦する可能性をスコアにした指標です。スコアが高いほど、自社製品を他の人に薦める可能性が高く、顧客満足度や忠誠心が高いと判断できます。
NPSを計測する手段は、アンケートが一般的です。自社製品を周囲に薦めたいかを0~10段階で選択してもらい、スコアを算出します。0~6を批判者、9・10を推奨者とし、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたスコアがNPSです。スコアがマイナスであったり、目標よりも低かったりする場合は、改善策を検討しましょう。
NPSのメリットや課題、効果的に活用する方法は以下の記事で解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
ロイヤルティプログラムの導入方法・手順
ロイヤルティプログラムをはじめる際は、以下の手順で進めていきましょう。
- 目的を設定する
- 報酬を決める
- 種類を選ぶ
- 運営方法や体制を構築する
- 効果測定・改善を繰り返す
なぜはじめるかを明確にするステップにこだわることで、ターゲットや方向性が定まり、実現したい成果につながるロイヤルティプログラムを開始できます。
1. 目的を設定する
ロイヤルティプログラムをやみくもにはじめてしまうと、目的が曖昧になり、求めていた成果を得られない場合があります。
そのため、ロイヤルティプログラムをはじめる際は、目的設定から行いましょう。主な目的は、以下の通りです。
- リピート率の上昇
- LTV(生涯顧客価値)の上昇
- カスタマーレビューの獲得
- 口コミからの集客
- ビジョンや価値観の実現
自社の課題を洗い出したうえで、課題解決につながる目的を設定しましょう。
目的設定にはカスタマージャーニーが役立ちます。カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを知ってから購入後までの一連を整理したもので、顧客体験にあわせた目的設定が可能です。
カスタマージャーニーの価値や実現については、以下のウェビナーで解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
【10分で学ぶ】
顧客とつながるカスタマージャーニーの価値と実現方法
企業にとって顧客に一貫した体験を提供することが重要な課題になっています。
本動画ではチャネルを横断した顧客とつながるカスタマージャーニーの価値と実現方法について学ぶことができます。
2. 報酬を決める
次に、ロイヤルティプログラムで顧客に付与する報酬を選定します。ロイヤルティプログラムによって得られる報酬は顧客の参加意欲を直接的に左右するケースが多いため、魅力的なもの、かつ持続的に提供可能なものを慎重に検討しましょう。
主な報酬は、以下の通りです。
- ショッピングで利用できるポイント
- 商品やブランドに関連するギフト
- ショッピングに使えるクーポン・割引コード
- 新商品の先行購入権
- ブランドのビジョンや価値観を伝えるコンテンツ
あらかじめ設定した目的にあわせた報酬を設定し、付与率や内容などの詳細を検討しましょう。
3. 種類を選ぶ
決定した目的と報酬に応じて、ロイヤルティプログラムの種類を選択します。
たとえば、売上を高めるためにポイントを付与する場合には購入・利用促進型、自社で掲げる社会を実現したいならパーパス拡張型との相性がよいです。
目的を達成しつつ、顧客にとっても魅力的なロイヤルティプログラムの種類を選びましょう。
4. 運営方法や体制を構築する
ロイヤルティプログラムを継続的に運用するために、運営方法や体制を整えることも重要です。
人員やリソースなどを確保したうえで、システムの管理・メンテナンスのフローやオペレーションなどをあらかじめ決めておくことをおすすめします。
5. 効果測定・改善を繰り返す
ロイヤルティプログラムはやりっぱなしでは成果を期待できないため、効果測定と改善を繰り返し、よりよいプログラムをつくっていきましょう。
NPSをはじめとした指標に対する成果を分析し、ロイヤルティプログラムの課題を特定します。ときには、アンケートを実施したり、口コミをリサーチしたりすることも効果的です。
データ分析や口コミリサーチで明らかになった課題の解決に取り組み、より喜ばれるプログラムへとブラッシュアップしましょう。
ロイヤルティプログラムの成功事例
ロイヤルティプログラムの導入に向けて準備を開始する際は、他社の事例を参考にすることも重要です。すでにプログラムを実施している企業が多くあり、自社の取り組みに活かせるヒントを見つけられるでしょう。
ここで紹介する成功事例は、宅配ピザチェーン大手のピザハット株式会社です。国内でさらに認知度を高めるためにデジタルマーケティング施策に取り組んでおり、そのひとつとしてロイヤルティプログラムを開始しました。
セールスフォースが提供する「Loyalty Management」を導入し、会員向けロイヤルティプログラム「HUT REWARDS(ハットリワード)」を2022年9月から開始しています。購買頻度やリピート率アップを目的とし、アプリで「スライス」というポイントを顧客に付与するプログラムです。ロイヤルティプログラムをカスタマージャーニーに組み込むなど、新たな施策にも積極的に取り組んでいます。
ピザハット株式会社の事例を詳しく知りたい方は、以下のページもぜひ参考にしてみてください。
> 最小の負担で最大のマーケティング効果をデジタルの力で「カスタマージャーニー」を実現|株式会社ピザハット
ロイヤルティプログラムの導入ならセールスフォースの「ロイヤルティ管理ツール」
ロイヤルティプログラムを導入する際は、システムやツールの選定が重要です。ツールのひとつであるセールスフォースの「ロイヤルティ管理ツール」は、AIを活用することで、顧客ロイヤルティや収益力を効果的に高められます。
AIによって、立ち上げ前のプロモーション収益を予測し、ROIを最大化するためのターゲットや報酬を選ぶことが可能です。プログラムからの離脱のリスクもAIが分析し、再度関係を築くためのキャンペーンを開始できます。
また、顧客一人ひとりにあわせたロイヤルティプログラムを作成できるのも強みです。個人に最適化したプログラムによって、満足度を効果的に高められるでしょう。
ロイヤルティ管理ツールのデモ(英語)は、無料で視聴できます。以下のページから詳細を確認いただき、実際の画面や機能を知りたい方はぜひお問い合わせください。
▶ロイヤルティ管理ツール(Loyalty Management)の詳細はこちら
ロイヤルティプログラムでロイヤルティの高い顧客を生み出そう
ロイヤルティプログラムは、優良顧客との関係を維持するためのマーケティング施策であり、エンゲージメント向上やリピート購入の増加などの効果を期待できます。
内容や参加のハードルによっては効果が出にくくなるため、顧客にとって魅力的かつ気軽に参加できるプログラムを構築することが大切です。
よりよいプログラムを実現するためには効果測定と改善も欠かせないため、継続的に運用できる体制を整えてから、ロイヤルティプログラムを開始しましょう。
ロイヤルティプログラムを導入する際は、セールスフォースの「ロイヤルティ管理ツール」が便利です。AIを活用した運用の最適化や個別プログラムの作成などさまざまな機能が搭載されているので、詳細を知りたい方はぜひ以下のページをチェックしてみてください。
▶ロイヤルティ管理ツール(Loyalty Management)の詳細はこちら