戦略部門では、変化が激しい市場や顧客の動向をつかむ分析力が必要です。客観的データをもとに正しく動向を分析するためにも、フレームワークの活用が求められます。
本記事では、経営戦略の概要をおさらいし、経営戦略の策定に活用できるフレームワークを12個紹介します。
マーケティング戦略や営業戦略の立案時に使用するフレームワークと同じものもありますが、経営戦略の策定では環境分析に活用できるフレームワークを中心に活用するのが一般的です。フレームワークの基本的な知識と活用方法について理解を深め、経営戦略の策定に役立ててください。
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目次
経営戦略とは
経営戦略とは、企業や事業の目的を達成するために立案される戦略です。企業や事業は、市場競争で優位に立つことによって成長・維持できるため、競争優位性を確保するため経営戦略が必要とされます。
市場のなかで競争優位性を維持するためには、企業の限られた資源(資金や人材)をどのように配分するかを考えなくてはなりません。そのため、自社が競争優位性を維持できる事業に集中して経営資源を投下する「選択と集中」という考え方が重視されるのが一般的です。
ただし、「選択と集中」ではなく、複数の事業に平等に資源を投下し、同時に育てていく方法が適しているケースもあります。
経営戦略の3つのレベルとは
経営戦略には、以下の3つのレベルが存在します。
経営戦略の3つのレベル | 概要 |
---|---|
企業戦略 | ・経営ビジョンの策定、中期経営計画などのこと ・事業ドメインや基本構成の設定、リソース配分を決定する |
事業戦略 | ・各事業の戦略、企業戦略のなかの事業部分をより詳細にしたもの ・市場分析、顧客分析を行い、事業モデルを策定する ・サービス戦略とも呼ばれる |
機能戦略 | ・事業を詳細に分解した機能レベルの戦略のこと ・開発、生産、物流などの機能別に基本的な戦略を立てる ・現場以外の財務、人事、総務といった機能の方向づけも行う |
経営戦略は企業戦略を基盤としており、企業戦略から事業戦略、事業戦略から機能戦略へと落とし込んでいきます。大きな枠組みから小さな枠組みへと落とし込むことで、具体的な経営戦略の策定が可能です。
経営戦略の策定にフレームワークを活用する目的
経営戦略の策定にフレームワークを活用する目的は、以下の2つです。
- インプットとアウトプットの時間を最短化し、効率的に戦略を策定するため
- フレームワークの活用によって、客観的な分析結果を導くため
たとえば、経営戦略のうち企業戦略を策定する際は、事業ドメインを設定することになります。事業ドメインは、事業を誰にどのようなサービス・商品を、どうやって提供するのかを言語化したものです。限られたリソースの選択と集中の判断ができるようになるため、事業ドメインを明確に設定します。
事業ドメインの策定には、市場分析や自社分析が必要です。
市場分析や自社分析にフレームワークを活用すると、必要な情報だけを収集すればよいため、分析までのプロセスを最短化できます。また、フレームワークによる客観性の高い分析結果にもとづくことで、主観を排除した正確かつ信頼性の高い意思決定が可能です。
客観性のないデータに基づいた経営戦略は、間違っている可能性があるうえ、ステークホルダーからの信頼も得にくいでしょう。「なぜその経営戦略の策定に至ったか」を示すためには、客観的なデータが必要です。このように、客観性を担保するためにも、フレームワークを活用した分析が必要なのです。
経営戦略策定の流れと活用すべきフレームワーク
経営戦略の策定は、大まかに以下の流れで行います。
- 外部環境分析
- 内部環境分析
- 戦略ドメインの設定
- 企業戦略の策定
- 事業戦略(個別戦略)の策定
- 機能戦略の策定
ここでは、それぞれのフェーズについて簡単に解説し、フェーズごとに活用できるフレームワークを紹介します。経営戦略の策定について、あらためて確認してみてください。
1)外部環境分析
まずは、自社を取り巻く外部環境の分析です。外部環境とは、経済や社会情勢といったマクロな外部要因と市場や顧客、競合といったミクロな外部要因で構成されます。外部環境によって、市場のなかで自社がとるべきポジションや戦略が変わるため、現状を把握する必要があります。
外部環境を分析する際は、以下のフレームワークを活用可能です。
- SWOT分析
- PEST分析
2)内部環境分析
次に、内部環境分析です。内部環境分析は、自社の既存事業や技術、資源などさまざまなリソースを棚卸しすることです。強み・弱みを分析したのち、強みをどのように伸ばすか、弱みをどのように改善するかといった視点で戦略を立てることで、自社の成長へとつなげられます。
内部環境分析には、以下のフレームワークを活用できます。
- PEST分析
- VRIO分析
3)戦略ドメインの設定
戦略ドメインとは、自社が競合に対して優位性を確保できる事業領域のことです。経営戦略における企業戦略の策定では、戦略ドメインを設定します。このとき、外部環境と内部環境の分析結果を活用し、自社のポジショニングを決定します。
外部環境・内部環境分析を両方行うことで、正確な戦略ドメイン設定が可能です。
戦略ドメインの設定においては、以下のフレームワークを活用できます。
- 3C分析
- ファイブフォース分析
- STP分析
- ランチェスター戦略
- 競争戦略ポジショニング(ポーターの基本戦略)
4)企業戦略の策定
経営戦略の土台となる企業戦略を策定します。企業戦略では、以下の項目について具体的な方向づけを行い、明確化します。
- 経営理念・ビジョン
- 経営目標
- 手がける事業
- 提供する製品・サービス
- 進出する市場
- 資源配分
このあと、企業戦略をもとに事業戦略や機能戦略を策定するため、適切な方向性を定めることがポイントです。
5)事業戦略(個別戦略)の策定
事業戦略(個別戦略)は、企業戦略達成のために必要な要素を踏まえて策定します。顧客戦略や事業モデルなどの項目について、詳細に記載します。ただし、具体的な数値目標や行動は機能戦略で策定する点には留意が必要です。
6)機能戦略の策定
機能戦略では、企業戦略の達成につながる具体的な目標と行動などを詳細に記載します。機能戦略は、各部門がそれぞれ立案するマーケティング戦略や営業戦略といった戦略と同一視されることもあります。各戦略が事業戦略および企業戦略を達成できるかどうか、綿密な計画を立てなければなりません。
経営戦略の策定に活用できるフレームワーク12選
経営戦略の策定に活用できるフレームワークについて、代表的な12選を紹介します。
- 3C分析
- SWOT分析
- PEST分析
- 3M分析
- 7S
- VRIO分析
- ファイブフォース分析
- 4P分析
- STP分析
- PPM分析
- ランチェスター戦略
- 競争戦略ポジショニング(ポーターの基本戦略)
フレームワークの基礎知識と使いどころを理解し、経営戦略の策定に役立てましょう。
3C分析
3C分析は、3つの要素を洗い出すことで、内部環境と外部環境の両面から自社が目指す方向性や立ち位置を明らかにし、経営戦略の方向づけに活用できるフレームワークです。分析結果から競合との差別化ポイントを把握できるため、マーケティング戦略の立案にも用いられます。
3つの要素を分析する際にも、ほかのフレームワークを活用することで、要素の洗い出しを客観的な視点で進めることが可能です。
以下の記事では、3C分析の具体的なやり方を解説しているので、参考にしてみてください。
> 3C分析とは?目的や順番、やり方をテンプレートで具体的にわかりやすく解説
SWOT分析
SWOT分析は、内部環境と外聞環境それぞれを、プラスとマイナス面から分析し、現状を把握するためのフレームワークです。自社内外の状況を性格に把握することで、実態に即した経営戦略の立案が可能となります。
SWOT分析によって洗い出された内部環境と外部環境のデータは、3C分析の3つの要素にも活用できます。ただし、SWOT分析から計画の立案までに時間がかかりすぎると、外部環境が変わってしまい、実態に合わない計画となってしまう恐れがあるため、注意が必要です。スピード感を意識して分析から立案まで行いましょう。
以下の記事では、SWOT分析のやり方を詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
> 【図解】SWOT分析とは?やり方から具体例、注意点まで解説
PEST分析
PEST分析は、外部環境を政治・経済・社会・技術という4つの要素に分解し分析するフレームワークで、マクロな外部環境を把握するために活用します。分析結果から、どの市場に、どのように参入するか方向づけるとともに、将来起こりそうな事態を大まかに予測可能です。
PEST分析で把握した外部環境の要素は、3C分析の外部要因にも当てはめることが可能です。また、SWOT分析のO(機会)とT(脅威)をより詳細に分析したいときも役立ちます。
PEST分析を行う際は、チームで要素を洗い出しながらコンテキストマップ(※)に落とし込み、全体像を把握しながら要素同士の関連性を議論するのが適切です。マップを俯瞰しながら、リスクや影響の大きいトレンドを見極め、自社の戦い方を検討します。
※コンテキストマップとは、複数のコンテキスト(環境)の関係を図に表したもの
3M
3Mとは、経営資源の3つの要素、人(Men)・物(Materials)・金(Money)のことで、経営資源の配分を考えるうえで重視すべき資源を洗い出す際に活用する考え方です。3つの要素のうち、いずれかが欠けてしまうと、経営は成り立ちません。経営を成功させるためには、人・物・金のリソースを把握したうえで、効果的に活用できる方法を考えることが大切です。
ただし、時代の変化や業種の違いから、要素が増えることもあります。たとえば、物づくりでは、以下のように7つの要素(7M)が重視されます。
- 人(Men)
- 材料(Materials)
- 資金(Money)
- 市場(Market)
- 方法(Method)
- 計測(Mesurement)
- 機会(Machines)
ほかにも、情報や時間を資源として考えることもあるでしょう。大切なのは、自社が展開する事業において、重視すべき資源が何かを把握することです。3Mの考え方を基盤に重視すべき資源を洗い出せたら、どの事業にどれだけ投下するか、リソース配分を考えます。
7S
7Sは、7つの経営資源をもとに、組織力を分析できるフレームワークです。経営戦略を立案したうえで、実行までをスムーズに行える組織を構築するために活用します。
たとえば、7つの要素のうち戦略の部分を見直す場合、戦略だけでなく相互に関連し合うシステム・組織・価値観の見直しも必要です。このうち、システムと組織は比較的容易に変更可能ですが、長年培ってきた企業の価値観は簡単に変えられません。価値観を変えるためには、経営戦略でその旨を打ち出したうえで、社内に浸透させる取り組みが求められます。
以下の記事では、7Sを活用した組織改革の事例を紹介しているので、参考にしてみてください。
VRIO分析
VRIO分析は、経営資源を4つに分類し、各要素を洗い出すとともに、どこに活用できるかを分析するフレームワークです。各要素を分析するなかで、競合に対する優位性を把握できます。
たとえば、自社の技術が優位性を獲得できるかどうかを分析したいときは、以下のように考えます。
分析項目 | 内容 |
---|---|
経済価値(Value) | ・その技術でチャンスを得られるか・その技術で競合の脅威を打ち消せるか |
希少性(Rarity) | その技術をもっている企業はほかにいるか |
模倣困難性(Inimitability) | その技術をもっていない企業が技術を獲得するためには、多大なコスト負担が生じるか |
組織(Organization) | 技術力を活用できる組織体制が整っているか |
質問の主語を、「人材」や「資金」に変更しても、同様に分析可能です。
足りない要素がある場合は、自社の「弱み」と捉えることが可能であり、どこをどう伸ばしていくか考える材料にもなります。VRIO分析で優位性の確保につながる「強み」と改善が必要な「弱み」が把握できるわけです。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、市場や業界全体の構造を把握するために活用するフレームワークです。分析結果は、市場への新規参入の可否を決める、あるいは参入可能な市場を選択する材料にできます。また、既存事業の業界や市場を再分析することで、今後どれくらい投資すべきかを判断する際にも活用可能です。
以下の記事では、ファイブフォース分析の活用方法を詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
> ファイブフォース(5フォース)分析とは?方法と有効な活用法
4P分析
4P分析は、マーケティングの基本となる4つの要素を分析することで、自社の商品やサービスの売り方を考えるフレームワークです。マーケティング戦略の立案時に使用されるのが一般的ですが、経営戦略における事業戦略の事業モデルの構築時にも活用可能です。
取り扱う商品やサービスによっては、要素を加えた5Pや9P分析として活用されることもあります。
以下の記事では、マーケティング戦略の立案における4P分析の方法を詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
STP分析
STP分析は、市場における自社の位置取りを決める際に活用するフレームワークです。経営戦略においては、とくに事業戦略のフェーズで役立ちます。
STP分析は、顧客のニーズや特性などの切り口で市場を細分化することで、さまざまな角度から市場を把握します。すると、自社が戦える市場や競合と差別化できるポジショニングが見えてくるわけです。
STP分析の結果は、どのような切り口で市場を切りとるかによって変わります。市場の切り取り方によっては、誰も参入していない新たな市場が見えてくることもあるので、さまざまな切り口で分析することが大切です。
PPM分析
PPM分析は、どの事業にどの資源をどれだけ投下するか、リソース配分を決める際に活用するフレームワークです。市場の成熟度と競争優位性の2つの側面から事業の位置づけを明確にし、リソース配分を検討します。
たとえば、分析の結果、事業が「問題児」に位置することがわかったとしましょう。「問題児」は市場におけるシェアが小さいので、拡大を狙って資源を投下します。うまくいけば、花形に成長するためです。もし、資源を投下しても成長しなかった場合は、早い段階で撤退を決めるのです。
ただし、リソース配分はPPMだけで決めるわけではありません。ほかのフレームワークと併用しながら、リソース配分を検討しましょう。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略は、弱者と強者それぞれが市場で優位性を確保するための略を具体的に示しています。
たとえば、市場シェアが小さい弱者は、強者と真っ向から戦っても勝てません。そのため、自社が有利に戦えるニッチな市場を攻めるといった戦略をとるのです。
適切な戦略を選択することで、弱者でも事業を成功させることが可能です。
競争戦略ポジショニング(ポーターの基本戦略)
競争戦略ポジショニング(ポーターの基本戦略)は、事業が業界や市場でどの位置にあるかを踏まえて戦い方を選択するフレームワークです。競争優位性とターゲットの2軸における事業のポジションから、以下の3つの戦略を選択します。
3つの戦略 | 戦法 |
---|---|
コストリーダーシップ理論 | 価格で優位性を確保する |
差別化戦略 | 付加価値で優位性を確保する |
集中戦略 | 戦う市場を限定し、価格または付加価値で勝負する |
STP分析と併用すると、より実態に即した分析ができるはずです。
経営戦略の策定にフレームワークを活用する際の注意点
経営戦略の策定にフレームワークを活用する際は、以下の3点に注意してみてください。
- フレームワークの活用が目的にならないようにする
- 事業内容や規模にマッチしたフレームワークを選択する
- ツールを活用して経営戦略フレームワークによる分析を効率化できる
フレームワークの活用が目的にならないようにする
フレームワークの活用が目的になってしまうと、効果的な経営戦略の立案につながりません。あくまで、分析手段として活用しましょう。
フレームワークは、間違った使い方をすると適切な分析結果が得られなくなってしまうため、理論をよく理解したうえで活用することも大切です。
フレームワークを手段として、チームでよりよい議論を行いましょう。
事業内容や規模にマッチしたフレームワークを選択する
フレームワークを活用する際は、事業内容や規模に合ったものを選択する必要があります。
たとえば、すでに市場で優位性を確保している大企業が、わざわざランチェスター戦略理論に立ち返って戦略を選択する必要はありません。それよりも、外部環境・内部環境分析を再度行い、ブラッシュアップできる点がないかリサーチする方が有益です。
このように、自社の実態と目的に合わせてフレームワークを選択しましょう。特定のフレームワークだけでなく、複数を組み合わせることも大切です。
ツールを活用して経営戦略フレームワークによる分析を効率化できる
ツールを活用すると、フレームワークに使用する要素の洗い出しや分析が効率化できます。
たとえば、MA(マーケティングオートメーション)を活用すると、セグメントの分類(セグメンテーション)が容易にできます。MAで設計したセグメントをもとに、STP分析を行うことで、セグメンテーションのフェーズを簡略化できるわけです。その結果、事業戦略やマーケティング戦略の立案も効率化できるでしょう。
MAをはじめ、SFAやCRMといったツールは、経営戦略立案に必要な各種分析に役立ちます。以下の記事では、MA・SFAで行える分析について、それぞれ詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
> MAを使ってどのような分析が行える?分析時の注意点を解説
> SFAのデータ分析で営業部門を活性化しよう
いまから始めるマーケティングオートメーション
定番シナリオ20選
実際にMAツールを活用しているお客様のシナリオから厳選して20個をピックアップ!マーケティングだけでなく営業活動やABMなどビジネスにおける様々なケースを網羅しています。
まとめ:フレームワークを用いて効果的な経営戦略を立案しよう
効果的な経営戦略を立案するためには、フレームワークの活用が大切です。フレームワークによって、外部環境や内部環境の要因を客観的に分析し、戦略につなげられます。主観や経験をもとに経営戦略を立案すると、経営戦略を振り返ったとき、何が要因で成功・失敗したか分析しにくくなります。また、ステークホルダーにとっても、信用しにくい内容になるでしょう。
経営戦略の立案においてフレームワークの活用は重要ですが、すべてを手作業で行うと膨大な時間を消費します。そのため、フレームワークによる分析の効率化につながる、ツールの導入がおすすめです。
MA・SFA・CRMなどのツールは、使用しているうちに分析に必要な要素が蓄積されるため、いざというときにすぐ利用可能です。実際の取り組みを記録・分析を繰り返すことで、改善までのPDCAを回しやすくなります。
Salesforceでは、各種ツールを取り扱っており、お客様のニーズに合わせてご紹介できます。経営戦略の立案やフレームワークの活用に寄与するツールをお探しの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
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