今からはじめるカスタマージャーニーの取り組み
お客様に選ばれ続けるための仕組みとして、「顧客体験」や「カスタマージャーニー」という言葉をよく聞くようになりました。
「何故、企業はカスタマージャーニーの取り組みを行うべき」なんでしょうか。セールスフォース・ジャパン カスタマーサクセス統括本部にてお客様の「顧客体験向上」や「カスタマージャーニー改善」をご支援しているサクセスマネージャーの冨士川さんにお話を伺いながら、考えます。
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どうして取り組む「顧客体験」「カスタマージャーニー」?
—— 企業が商品やサービスを提供するにあたって、何故「顧客体験」や「カスタマージャーニー」を考慮しなければならないのでしょうか?
冨士川 こちらの記事で説明している通り、昨今ではインターネットの普及によって顧客の選択肢は大きく増加し、企業はそれに対応する必要が出てきました。
過去を振り返ってみると、百貨店など実店舗のみが主な顧客接点だった時代では、売り場や販売員単位で接客の型など、一種の「カスタマージャーニー」を描けていたんです。
しかし、オンラインビジネスが当たり前になった現代では、企業規模に関係なく多くの競合企業が存在し、顧客の選択肢が増え購買行動も段々と変わってきました。更には、コロナによってオンラインコミュニケーションの重要性が増したといえます。
それぞれのペルソナに合わせた「カスタマージャーニー」を描き適切なオンラインのコミュニケーションを行わなければ、顧客から選ばれずに負けてしまうというわけです。
カスタマージャーニーの理想と現実
—— では、実際にカスタマージャーニーを施策の中に取り込み、有効に活用できている企業はどれほどあるのでしょうか?
冨士川 体感ですが、20%程度ではないでしょうか。
というのも、多くの日本企業ではオンラインビジネスにおいて、直ぐに売上に繋がる施策には目が行き届いているのですが、カスタマージャーニー全体を捉えた施策の検討までは出来ていない企業が多いのが実情ではないでしょうか。
—— 具体的にカスタマージャーニーを施策の中に取り込み、成長している企業はありますか?
冨士川 身近な例で言えば、ZOZOTOWNかなと思っています。サービス開始時には、カタログ通販や実店舗での購入が世間ではメインチャネルとなっており、ECモール自体が追い上げていくような構図だったため、既存チャネルであるカタログ通販や実店舗との差別化ポイントとして「デジタルを活用し顧客体験を向上」させることが重要だったのだろうと考えています。
また、カスタマージャーニーは一度作って終わりというものではなく、常に最新のデータを基に改善していく必要があるため、そういった面でも自社の顧客についてのデータが取得しやすいECモールのようなサービスだと、カスタマージャーニーを洗練させるサイクルが早いのだと思います。
それじゃどうする、カスタマージャーニー
—— なかなかカスタマージャーニーについての施策までリソースが回らないという会社が多くあることは分かったのですが、ではそういった企業がまず取り組むべきことについて教えてください。
冨士川 カスタマージャーニーを考えるとなると、本来は顧客の行動や分析から実施することが理想のため、手を付けることが億劫になってしまいがちですが、まずは自社内部から目を向けて見ると着手しやすいと考えています。大きな流れとしては以下の3点です。
- 隣の部署を含めた会社全体で何を行っているのか、まずは自社内の担当者レベルで整理する
- 自社が掲げる目標とそれに対する各部署の施策の穴を見つける
- ロイヤルティの高い顧客(ファン)を分析する
1.隣の部署を含めた会社全体で何を行っているのか、まずは自社内の担当者レベルで整理する
「縦割りな組織構造のせいで、よその部署が何を行っているか分からない」という課題、多くの企業で抱えられているのではないでしょうか。こうした事態が結果として、同じユーザーに対して各部署それぞれが異なる内容のメッセージをタイミング前後して送ってしまい、ユーザーの離反に繋がるということも珍しくはありません。
まずは顧客に関わる部署・子会社の担当者で顔をつきあわせて、
購入前・購入・購入後・リピート購入の各段階でどのような施策を行っているのかを洗い出してみましょう。
2.自社が掲げる目標とそれに対する各部署の施策の穴を見つける
1のステップにて各段階における部署の施策の洗い出しが終わったら、次は本来、会社として注力すべき領域に十分な質・量の施策が行えているのかを確認しましょう。実際の売上データなどを踏まえて、各段階で行っている施策がどのような層の顧客に刺さっているのかをマッピングし、そのギャップを見つけることが重要です。
恐らく、ここまでの段階で施策の抜け漏れなどが見えてくると思います。
3.ロイヤルティの高い顧客(ファン)を分析する
自社施策の洗い出しとマッピングが終わったら、それらの結果を踏まえて改めて次は顧客に目を向けて見ましょう。これまでの抜け漏れある施策の中でも、継続的に購入いただいているファンの顧客に目を向け、「彼らが何故、ファンになってくれたのか」を考えてみます。自分たちでも考えていなかったような要因が隠れているかもしれません。
ファンになってくれた理由が分かれば、後はそれを各段階での施策に反映して、都度その結果を元に改善を行っていきましょう。
まとめ
ここまで現在の「カスタマージャーニー」施策に対する取り組み状況とこれから「カスタマージャーニー」施策を検討する企業がまず取り組むべき具体策を紹介しました。
顧客の選択肢と競合がますます増加している、戦国時代のような現代において、「顧客に選ばれ続ける」ためには商品・サービスの質が高いだけではなく「顧客がどのタイミングで、どのようなチャネルで」情報や商品・サービスを入手したいのかを理解する必要があります。逆に言えば、「顧客に選ばれ続ける」仕組みをきちんと行うことで、今の状況を一変させることもできるかもしれません。目の前の売上向上だけではなく、真の顧客体験向上とは何なのか検討してみてはいかがでしょうか。
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今からはじめるカスタマージャーニー 記事一覧
- Vol.1 お客様に選んでもらうための仕組みってなに?
- Vol.2 お客様に繰り返し選んでもらうための仕組みってどうやる?
監修
冨士川 義明
株式会社セールスフォース・ジャパン
カスタマーサクセス統括本部 サクセスマネジメント第4本部
Principal Success Manager
Marketing CloudやLoyalty Mangementなどのマーケティング関連製品のサクセスマネージャーとして、3年半前にSalesforceにジョイン。日々、各クライアント様のCX向上のための製品活用向上とROI最大化に向けて寄り添った支援を心懸ける。過去は、広告代理店ではデジタル広告運用、外資デジタル広告管理プラットフォーム企業ではサイト内行動データを利用した広告運用などに従事。