「なかなか売上が伸びない…」「マーケティング戦略を立てたいけれど、何から手をつければ良いか分からない…」このようなお悩みを抱えていませんか?
もしそうであれば、その解決の鍵を握るのが「マーケティングミックス」かもしれません。マーケティングミックスとは、マーケティング戦略において市場や顧客に有効なアプローチを行なうために、マーケティングの分析フレームワークやツールを組み合わせる手法のことを指します。
本記事では、マーケティングミックスの基本的な意味から、代表的なフレームワークである4P・4C・7P、具体的な企業の成功事例、さらにマーケティング施策で着実に成果を出すための注意点まで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
この記事を読めば、自社の製品やサービスに適したマーケティング戦略を見つけ出し、ビジネスを成長させるための具体的な一歩を踏み出せるでしょう。
本文の要約
マーケティングミックスとは、顧客に商品やサービスを届け、理想的な購買行動を促すために、フレームワークやツールを組み合わせるマーケティング手法のことです。マーケティング戦略における実行戦略に位置づけられており、顧客に対して具体的にどのような戦略を実行するか検討する段階で使われます。
マーケティングミックスの手順は、環境分析を開始する→STP分析し基本戦略を策定する→マーケティングミックスを検討する→戦略の実行し評価するの4ステップです。
Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(プロモーション)の頭文字をとった4Pや、Customer value(顧客価値)・Customer Cost(顧客コスト)・Convenience(利便性)・Communication(コミュニケーション)の頭文字をとった4Cというフレームワークがあります。
最新のマーケティング事情をご覧ください
世界各国約5,000人のマーケターから得たインサイトから、AI、データ、パーソナライズのトレンドを探ります。

関連記事:USPとは?自社の価値を最大化するマーケティング施策と6つの事例
目次
マーケティングミックスとは

マーケティングミックスとは、顧客に商品やサービスを届け、理想的な購買行動を促すために、フレームワークやツールを組み合わせるマーケティング手法のことです。マーケティング戦略における実行戦略に位置づけられており、顧客に対して具体的にどのような戦略を実行するか検討する段階で使われます。
マーケティングミックスでは4P(Product・Price・Place・Promotion)や4C(Customer Value・Cost・Convenience・Communication)のようなフレームワークを活用します。マーケティング戦略を成功させるには、マーケティングミックスの手順やフレームワークの理解が必要です。
マーケティングミックスが重要な理由

マーケティングミックスは、単に個別の要素を組み合わせるだけでなく、それらが相互に作用し、一貫性のある戦略を構築するために不可欠です。
市場環境や顧客ニーズが複雑化する現代において、企業が競争優位性を確立し、持続的な成長を遂げるためには、マーケティングミックスを羅針盤として効果的に活用することが求められます。
戦略の全体像を明確にし、施策の方向性を定める羅針盤となる
マーケティングミックスは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)といった要素を統合的に捉えることで、マーケティング戦略の全体像を明確にします。
これにより、各施策が目指すべき方向性が定まり、一貫したメッセージを顧客に届けられるようになります。
限られたリソースを最適に配分するための判断基準となる
「予算も人員も限られている中で、どこに力を入れるべきか迷う…」という状況は多くの企業が直面します。
マーケティングミックスは、ヒト・モノ・カネ・情報などの限られた経営資源を、どの要素に重点的に配分すれば最も効果的か、戦略的な判断を下す際の明確な指針となります。
無駄な投資を避け、費用対効果の高い施策を選択する手助けとなるでしょう。
複雑な市場の変化に対応し、戦略を最適化する柔軟性を与える
顧客のニーズは日々変化し、競合の動きも活発です。
マーケティングミックスのフレームワークを用いることで、顧客ニーズの変化や競合の新しい動きに対して、自社の4Pのどの部分をどう調整すべきか、具体的な打ち手が見えてきます。
これにより、戦略を柔軟に最適化し、常に市場に適合した状態を保つことができます。
部門間の連携を強化し、組織全体の力を引き出す共通言語となる
「マーケティング部門と営業部門の連携がうまくいかない…」「製品開発の意図がプロモーションに反映されていない…」といった組織内の課題も、マーケティングミックスが解決の糸口となることがあります。
マーケティングミックスという共通のフレームワークと言語を持つことで、製品開発や営業、広報など、関連部門間のコミュニケーションがスムーズになります。
マーケティングミックスを進める手順7ステップ

マーケティングミックスは、以下4つの手順で進めます。
- 環境分析を開始する
- ターゲット顧客の明確化
- STP分析し基本戦略を策定する
- マーケティングミックスを検討する
- 各要素の整合性と一貫性をチェックする
- 競合との比較分析を深める
- 戦略を実行し評価する
マーケティング戦略の効果を高めるには、手順を守ってマーケティングミックスを検討する必要があります。どのような手順で進めていくのか理解し、マーケティング戦略を成功させていきましょう。
▶ 無料お役立ちeBookダウンロード 「顧客との関係性を深めるマーケティング施策40選」
環境分析を開始する

環境分析とは、自社を取り巻く内部・外部の経営環境の分析です。
自社の経営環境を内部と外部に分けて分析するため、それぞれ「内部分析」と「外部分析」と呼びます。内部分析・外部分析の項目は、それぞれ以下のとおりです。
- 内部分析:自社の強み(Strength)・自社の弱み(Weakness)
- 外部分析:機会(Opportunity)・脅威(Threat)
それぞれの頭文字をとって「SWOT分析」とも呼びます。環境分析を用いて自社の立ち位置を分析し、どのようなマーケティングの機会が得られるのか発見していきましょう。
SWOT分析については、以下の記事で図解を用いて解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
▶ 【図解】SWOT分析とは?やり方から具体例、注意点まで解説
ターゲット顧客の明確化
次に、これらの分析を踏まえ、誰に(ターゲット顧客)、製品やサービスを届けたいのかを明確にします。
ペルソナ設定 | ターゲット顧客の年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観、抱えている課題などを具体的に設定します。 |
これにより、以降のステップで顧客視点の戦略を立てやすくなります。
STP分析し基本戦略を策定する

環境分析が終わったら、STP分析を開始します。
STP分析とは、Segmentation(細分化された市場)・Targeting(目標の市場)・Positioning(自社の立ち位置)の3つの要素の分析です。
3つの要素では、以下のような分析をします。
分析する要素 | 分析する内容 |
---|---|
細分化された市場(Segmentation) | 事業の対象である市場の顧客をさまざまな視点で自社のブランドと相関しているか分析する |
目標の市場(Targeting) | セグメントしたグループから、自社ブランドと相関性の高い市場をターゲットとするためにおこなう分析 |
自社の立ち位置(Positioning) | ターゲットから見て、自社との立ち位置と競合企業の立ち位置のどちらが優位性をもっているか分析する |
STP分析の結果をもとに、基本戦略を立てていきます。事前におこなった環境分析やSTP分析にミスがあると、適切な基本戦略が立てられません。環境分析やSTP分析はマーケティングミックス検討の基礎となるため、しっかり分析をおこないましょう。
▶ マーケティング分析の10種類のフレームワークのやり方や手順を解説
▶ 無料お役立ちガイドダウンロード「B2Bマーケターのリード創出ガイド」
マーケティングミックスを検討する
これまで明確にしたターゲット顧客に対して、自社のマーケティングミックスの各要素が現在どうなっているか、そしてどうあるべきかを具体的に書き出していきます。
実際にマーケティングミックスの各要素を洗い出す際には、以下の項目をリストアップし、それぞれを評価すると良いでしょう。
項目 | 観点 |
---|---|
Product(製品・サービス) / Customer Value (顧客価値) | ・ターゲット顧客のニーズや課題に対して、どのような価値を提供できていますか? ・製品・サービスの品質、機能、デザイン、ブランドイメージ、アフターサービスは適切ですか? ・顧客にとっての独自の価値(ベネフィット)は何ですか? |
Price(価格) / Cost (顧客コスト) | ・ターゲット顧客が納得できる価格設定になっていますか? ・製品・サービスの価値に見合った価格ですか?競合製品との価格差はどうですか? ・顧客が製品やサービスを入手するために支払う総コスト(金銭的コストだけでなく、時間的・心理的コスト含む)は考慮されていますか? |
Place(流通・チャネル) / Convenience (利便性) | ・ターゲット顧客が製品やサービスを購入しやすい場所や方法で提供できていますか? ・販売チャネル(オンラインストア、実店舗、代理店、アプリなど)はターゲット顧客の購買行動に合わせて最適化されていますか? ・在庫管理や物流体制に問題はなく、スムーズな提供が可能ですか? ・顧客にとっての入手のしやすさ、利用のしやすさはどうですか? |
Promotion(販促・プロモーション) / Communication (コミュニケーション) | ・ターゲット顧客に製品やサービスの存在や魅力を効果的に伝えられていますか? ・オンライン広告、マス広告などの広告、PR活動、SNS活用、コンテンツマーケティング、人的販売など、どのような手法がターゲット顧客に最も響きますか? ・顧客との継続的な関係構築のための双方向コミュニケーションは取れていますか?(例:メールマガジン、コミュニティ運営、カスタマーサポート) |
これらの項目をExcelなどのシートで管理し、チームで共有しながら活用することをおすすめします。各項目について、現状の評価だけでなく、理想の状態や改善点も書き出すと、より具体的な戦略立案に繋がります。
各要素の整合性と一貫性をチェックする
洗い出した4P・4Cの各要素が互いに矛盾なく、顧客に対して一貫したメッセージや価値を提供できているかを確認します。
たとえば、高品質・高価格帯の製品(Product, Price)にもかかわらず、誰でも手軽に購入できる安価なチャネル(Place)で大量販売し、派手で一時的な割引キャンペーン(Promotion)を多用すると、ブランドイメージが毀損され、長期的な信頼を失う可能性があります。
各要素がターゲット顧客のニーズと期待に応え、かつブランド全体のイメージやポジショニングを強化するように調整されているか、多角的に見直しましょう。
競合との比較分析を深める
競合分析をさらに深め、マーケティングミックスの各要素において、競合他社と自社がどのように異なっているのか、どこに優位性があり、どこが劣っているのかを明確にします。
- 競合他社の4P/4Cはどのような組み合わせになっているか
- その戦略の意図は何か
- 自社が差別化できる独自の強みや提供価値は何で、それをどう打ち出すべきか
- 競合の弱点を突き、自社の強みを最大限に活かせる戦略は何か
戦略を実行し評価する
ここまでの分析結果を踏まえ、具体的なマーケティング戦略を策定し、実行計画に落とし込みます。
目標設定 (KPI) | マーケティング活動を通じて何を達成したいのか、具体的で測定可能な目標(例:売上〇〇%向上、新規顧客獲得数〇〇人、Webサイトからの問い合わせ〇〇件など)を設定します。 |
アクションプランの策定 | 設定した目標を達成するために、いつ、誰が、どのような予算で、具体的に何を行なうのかを詳細な計画に落とし込みます。 |
実行とモニタリング | 計画にもとづいて戦略を実行し、定期的に進捗状況や市場の反応をモニタリングします。 |
効果測定と改善 (PDCAサイクル) | 設定したKPIにもとづいて戦略の効果を客観的に測定し、結果を分析します。期待通りの成果が出ていない場合は、その原因を特定し、マーケティングミックスの各要素を見直して改善策を講じます。この「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のPDCAサイクルを継続的に回し続けることが、マーケティング戦略を成功に導く鍵となります。 |
マーケティングミックスにおける4Pと4Cの関係

マーケティングミックスを検討する際には、4Pと4Cのようなマーケティング戦略立案のフレームワークが利用できます。
4Pは「企業視点」、4Cは「顧客視点」でおこなうフレームワークであり、相反する視点です。両方の視点から分析すれば、顧客に対して適切なマーケティング戦略の検討が行えます。
ここからは、4Pと4Cの内容や関係性を解説します。
▶ 無料お役立ちeBookダウンロード「多くのマーケターが見逃しているBtoBデジタルマーケティングの『勝ちパターン』」
4Pとは

4Pとは、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(プロモーション)の頭文字をとったものです。すべての項目が企業側の内容であり、製品やサービスを顧客に提供するまでを検討します。
たとえば、「20代〜30代に提供するシャツ」を4Pにあてはめてみます。
- 製品(Product):機能性とデザインを重視する
- 価格(Price):競合製品よりも抑える
- 流通(Place):実店舗よりも配送をメインにする
- プロモーション(Promotion):若手の俳優を起用し動画配信サイトに広告を掲載する
あくまで一例ですが、すべて「企業視点」なのがわかります。4Pはマーケティングミックスで重要となるフレームワークのひとつで、顧客に商品を届ける前からの分析に活用するのが効果的です。
▶ 4P分析とは?目的やマーケティングに活用できる分析フレームワークを解説
7Tとは

4Pは重要なフレームワークであり、より詳細に分析しなければならないと考えられています。その結果、生まれたのが「7T」と「7P」です。
7Tは、7つの戦術という意味をもつ「7 tactics」の略称で、製品(Product)・サービス(Service)・ブランド(Brand)・価格(Price)・流通(Place)・コミュニケーション(Communication)・報酬(Incentive)の7つの要素を指します。
これらの項目は、上図のように4Pを分解したフレームワークです。4Pでは製品の中にサービスが含まれており、実態にあわないとされていました。実態にあわせるため製品の中からサービスとブランドを独立させ、さらにプロモーションをインセンティブとコミュニケーションに分類したのが7Tです。
7Tで追加された項目と、その内容は以下のとおりです。
要素 | 内容 |
---|---|
サービス(Service) | 顧客のニーズに対して実施すべきサービスを検討する |
ブランド(Brand) | 競合他社の製品やサービスとの差別化できているか分析する |
インセンティブ(Incentive) | クーポンやポイントなど顧客に対して有用な制度を創設するか検討する |
コミュニケーション(Communication) | どのような媒体で情報提供してどのようなメッセージ伝えるのか検討する |
7Tを利用して各種分析と組みあわせれば、4Pよりも詳細なマーケティングミックスによって的確な戦略が策定できます。
7Pとは

7Pは製品ではなく、サービスに特化したマーケティング戦略に必要なフレームワークです。
4PにPeople(人)・Process(プロセス)・Physical Evidence(フィジカルエビデンス)を加えており、サービスマーケティングとも呼ばれます。
追加された項目と、その内容は以下のとおりです。
要素 | 内容 |
---|---|
人(People) | どのような人サービスを提供すればいいのか、サービスを受ける顧客を考えて検討する |
プロセス(Process) | 業務や販売のプロセスを検討する |
フィジカルエビデンス(Physical Evidence) | 製品やサービスを提供する環境、商品に必要なすべての形あるものを検証する |
自社の企業が提供する商品が製品なのかサービスなのかによって、検討すべき分析内容が異なります。まずはマーケティングミックスのフレームワークを理解し、自社にあった分析をおこなっていきましょう。
4Cとは

4Cとは、以下4つの頭文字をとったフレームワークです。
- Customer value(顧客価値)
- Customer Cost(顧客コスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーション)
4Pとは違ってすべて顧客の視点に立った内容であり、企業側の視点が考慮されていません。
たとえば、「20代〜30代に提供するシャツ」を4Cにあてはめてみます。
- 顧客価値(Customer value):デザインをもっとも重視する
- 顧客コスト(Customer Cost):衝動買いできるレベルに抑えたい
- 利便性(Convenience):実店舗にいくのは面倒であり配送ですませたい
- コミュニケーション(Communication):テレビやチラシを見ずほぼ動画ばかり見ている
4Tと同じく4Pでも例題を挙げてみましたが、視点の違いによって結果が変わります。企業の視点だけに立っても、顧客の視点だけに立っても適切なマーケティングミックスを検討できません。的確なマーケティング戦略を立てるには、さまざまな視点で分析していくことが大切です。
4Pと4Cの関係とは

マーケティングミックスの検討を進めるには、4Pと4Cの関連性を理解することが不可欠です。4Pと4Cの関連性は、下表のとおりです。
関連する要素 | 内容 |
---|---|
製品(Product)と顧客価値(Customer Value) | 企業が良質な製品を製造しても、顧客が価値を感じない限り、製品の差別化にはつながらない |
価格(Price)と顧客コスト(Customer Cost) | 商品の販売価格の安さだけでなく、顧客には商品を買うまでにかかる時間や使うまでかかる時間など金銭的コストが影響する |
流通(Place)と利便性(Convenience) | 商品の販売先の多さが、顧客の買いやすさに直結しているかは別であり、調査や分析が必要になる |
プロモーション(Promotion)とコミュニケーション(Communication) | 企業の広告宣伝が顧客に効率よく伝わるかは、伝達方法でコミュニケーションをとれるかどうかによる |
企業側の視点だけに立っていると、顧客には製品やサービスのよさが伝わりません。上表のように、企業側で満足いく製品やサービスを創出したうえで、顧客の視点に立ってマーケティングする必要があります。4Pと4Cの関連する項目がつながった戦略を実行すれば、マーケティングミックスをうまく進めていけるはずです。
マーケティングミックス活用のポイント

マーケティングミックスを事業に活用するには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 環境分析やSTP分析から外れた戦略を立てない
- ビジネスモデルは簡単に変更できない
- プロモーションばかりに偏らない
ポイントを理解しておかないと、マーケティングミックスに失敗するおそれもあります。失敗しないために必要な知識を得て、効果的なマーケティング戦略を実行していきましょう。
環境分析やSTP分析から外れた戦略を立てない
環境分析やSTP分析はマーケティングミックスに不可欠な分析であり、分析を無視した基本戦略を立ててしまうと、顧客のニーズとかけ離れてしまいます。
また、分析を無視した戦略は改善点が多すぎたり、そもそも改善点すらなかったりして立て直しできません。マーケティングミックスにかかわる分析を実行するには、時間や労力などのコストがかかるため、分析を活かしてコストを削減しましょう。
ビジネスモデルは簡単に変更できない
マーケティングミックスにもとづいたビジネスモデルは、事業の基盤を改善しなければならないため簡単に変えられません。
ビジネスモデルを変更するには、製品・価格・流通の要素を改善する必要があります。しかし、改善するには設備投資や従業員の配置など、多くの金銭や手間がかかってしまいます。
ビジネスモデルの変更リスクを抑えるには、テストマーケティングが効果的です。マーケティング戦略の規模を小さくし、短期間で本番に近い環境で実行すれば課題が見つかります。テストマーケティングで見つかった課題が改善できるか検証し、ビジネスモデルを変更せずとも進められる道を探していくとよいでしょう。
プロモーションばかりに偏らない
マーケティングをプロモーションと思っている人もいるかもしれませんが、プロモーションに偏ってしまうと失敗します。良質な商品のプロモーションを大々的におこなったとしても、顧客のニーズにあわない広告内容や媒体だと売上は増えません。
そもそもマーケティングとは、潜在的なニーズを突き止めて適切な市場に最適な商品を提供するための手法です。分析せずにプロモーションをおこなうのは、マーケティングと呼べません。
分析をもとにした戦略を立てて、戦略に沿ったプロモーションをおこなえば、費用対効果が高くなります。
BtoBマーケティングにおけるマーケティングミックスの特徴

これまで解説してきた4P、4C、7PはBtoCだけでなく、BtoBマーケティングにおいても有効なフレームワークです。
しかし、BtoBマーケティングには特有の性質があるため、各要素を検討する際には以下のポイントを意識することが重要です。
購買プロセスの複雑性と合理性
BtoBの購買決定は、複数の意思決定者が関与し、比較検討に時間をかけることが一般的です。
また、感情的な側面よりも製品・サービスの機能、費用対効果、信頼性といった合理的な判断基準が重視される傾向があります。
ソリューションとしての価値提供
単なる製品の機能だけでなく、顧客企業の課題を解決する「ソリューション」としての価値を明確に打ち出すことが重要です。
顧客ごとのニーズに合わせたカスタマイズ性や拡張性、導入後の手厚いサポート体制も重要な要素となります。
価値にもとづいた価格設定と柔軟性
提供するソリューションの価値にもとづいた価格設定が求められます。
価格交渉や見積もりプロセスが一般的であり、契約期間やボリュームに応じた柔軟な価格体系も考慮に入れる必要があります。
専門性と信頼性のあるチャネル選択の必要性
直接販売(ダイレクトセールス)の重要性が高いほか、特定の業界やソリューションに強みを持つパートナー企業との連携も有効です。
オンラインでの情報提供やデモンストレーション、コンサルティング機能もチャネルの一部と捉えられます。
信頼構築を重視したコミュニケーション
BtoBでは、潜在顧客の課題を啓発し、自社ソリューションへの理解を深めてもらうための情報提供が重要です。
具体的には、自社ウェブサイトでの詳細な製品情報や導入事例の掲載、課題解決に役立つホワイトペーパーの提供、ウェビナーの開催、業界展示会への出展、そして専門知識を持った営業担当者による提案活動などが中心となります。
長期的な信頼関係の構築を目指したコミュニケーションが求められます。
マーケティングミックスの検討に活用できるフレームワーク

マーケティングミックスの検討をスムーズに進めるには、以下のフレームワークの活用も必要です。
- 3C分析
- ポショニングマップ
- バリュープロポジション
4Pや4C以外にも活用できる手法を使い、より効果的なマーケティング戦略を立てていきましょう。
3C分析

3CはCustomer(顧客)・Competition(競合)・Company(自社)の頭文字をとったものです。3C分析を利用すれば、顧客・競業他社・自社の立ち位置が明確となって、市場や顧客のニーズの変化がわかります。
また、3C分析は環境分析と同じく、マーケティングミックスに必要な初期段階の分析にあたります。マーケティング戦略の基礎であり、今後の戦略方針を決める重要な部分です。環境分析する際には、同時に3C分析もおこなってマーケティングミックスを進めていきましょう。
3C分析の手順ややり方などは、以下の記事でテンプレートを用いて解説しているので、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
▶ 3C分析とは?目的や順番、やり方をテンプレートで具体的にわかりやすく解説
ポショニングマップ
ポジショニングマップとは、ターゲットとなる市場において、自社の商品と競業他社の商品がどの位置にあるのか示した図面です。
マーケティング戦略を立てる際には、環境分析で自社と競業他社の立ち位置を確認します。文章だけでなくポジショニングマップを利用して環境分析すれば、視覚的にわかりやすく分析が容易になります。
自社の商品と競業他社の商品の位置が明確になっていると、商品の差別化をアピールしやすく、自社の優位性を伝えたいときにも活用が可能です。たとえば、投資家や社内に向けたプレゼンテーションに利用できます。
ポジショニングマップを作成しておけば、さまざまな場面で役立つことでしょう。
バリュープロポジション
バリュープロポジションとは、競合他社には提供できない自社独自の価値です。顧客に対してバリュープロポジションを提示できれば、他社との差別化が図れます。
競合他社との差別化は、自社の商品のブランド力向上に大きな影響を与えます。ブランド力が向上すれば、ターゲットとする市場での優位性が確保できて売上が増加することでしょう。
また、バリュープロポジションはポジショニングマップと同様に、投資家や社内に向けたプレゼンテーションにも有用です。投資を促すための資料、新商品開発の承諾を取得する資料としても使えます。
▶ バリュープロポジションとは?作り方や成功例をわかりやすく紹介
マーケティングミックスの成功例

さまざまな分析をおこなってマーケティングミックスの検討を進めている企業は多く、取り組みの結果、マーケティング戦略に成功した企業も数多く存在します。
ここからは、マーケティングミックスによって立てたマーケティング戦略に成功した以下の企業を紹介します。
- スターバックスコーヒージャパン株式会社
- 株式会社ニトリ
- 株式会社ファーストリテイリング
各企業の取り組み内容を、マーケティングミックスの4Pになぞらえて解説しますので、マーケティング戦略の参考にしてください。
スターバックスコーヒージャパン株式会社
スターバックスコーヒージャパン株式会社は、広告を使わずにマーケティングを成功させた企業として有名です。
なぜ広告を利用せずにマーケティングに成功したのか、4Pを用いて紹介します。
- Product(製品):地域ごとに商品を変えて提供している
- Price(価格):コーヒーチェーンの中では高めの価格に設定している
- Promotion(プロモーション):広告は使わず口コミで販路を拡大している
- Place(流通):立地のよい場所・ブランドのある地域に出店している
スターバックスは価格の安さを重視する顧客はターゲット外とし、比較的お金が出せる層をターゲットとしています。ターゲットに商品を購入してもらうため、地域にあった細やかなメニュー設定や、高級感を出すために立地のよいブランド力のある地域のみに出店しているのが特徴です。
たとえば、ショートサイズは日本にしかなく、抹茶やさくらをイメージした商品を開発し、第1号の出店になったのは東京の銀座でした。
ターゲットを明確に絞ってマーケティング戦略を実行し、広告に頼らず、規模の拡大に成功している企業です。
株式会社ニトリ
株式会社ニトリは価格設定を抑えつつも、一定以上の品質を確保した家具や雑貨を販売している企業です。
もともとは札幌から始まった小さな家具店が、どのようにして成長したのか4Pをもとに見ていきましょう。
- Product(製品):顧客ニーズにこたえた多種多様な製品を開発している
- Price(価格):高い品質の商品が低価格で購入できる
- Promotion(プロモーション):大型店に多くの商品を配置しECサイト並みの数を実際に手に取って確認できる
- Place(流通):大型店だけでなくECサイトでの販売も充実している
ニトリといえば「お、ねだん以上。」の自社フレーズがあらわすとおり、品質のよい商品を低価格で購入可能です。今までは家具をなかなか購入できなかった層をターゲットとし、マーケティング戦略を実行しています。
そして、安い商品とともに高額な商品もあり、大型店舗にならべて品質を確認しやすいようにしました。実際に確認できれば品質の高さが伝わるため、購入する人も安心してニトリを利用できる、よいサイクルが生み出されたといえます。
結果、ニトリは全国に出店する日本を代表する家具・雑貨販売企業へと成長しました。
株式会社ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロを展開する世界的に有名な企業です。
ユニクロがどのようにして世界的な企業へと成長したのか、4Pにあてはめてチェックしていきましょう。
- Product(製品):シンプルかつ機能的な衣類を提供している
- Price(価格):低価格の分類に入るが最低価格帯ではない
- Promotion(プロモーション):幅広い広告をおこなって老若男女問わず視認されるようにしている
- Place(流通):世界各地に出店しECサイトも充実している
ユニクロは比較的安価な価格設定で、機能性が高くシンプルな衣類を提供しています。機能性が高いシンプルな衣類は若者や年配者、男女問わず使える便利な商品です。
全世代にわたって認知されるようなマーケティング広告を実施しており、店舗数も多く、ECサイトも充実させています。ターゲット層を限定せず、すべての人を顧客として考えたマーケティング戦略を実行しているのがわかります。
あえてすべての人をターゲットとし、商品を開発して事業を拡大していった事例といえるでしょう。
マーケティングミックス戦略で陥りがちな失敗パターンとその対策

成功事例から学ぶことは多いものの、同様によくある失敗や間違いから学ぶことも、自社の戦略をより堅固なものにするためには重要です。
ここでは、マーケティングミックスを構築・実行する際によく見られる失敗パターンと、その対策について解説します。
失敗パターン1:各要素(4P)の不整合・一貫性の欠如
たとえば、製品は高品質で高級志向なのに、価格は極端に安く設定されていたり、販売チャネルはディスカウントストア中心だったり、プロモーションは安っぽさを感じさせるものだったりするケースです。
4Pの各要素がバラバラの方向を向いていると、ブランドイメージが曖昧になり、ターゲット顧客に製品の価値が正しく伝わりません。顧客に混乱を与え、結果として購買意欲を削いでしまう可能性があります。
この場合の対策としては、マーケティングミックスを策定する際に、まず明確なターゲット顧客像とブランドのポジショニングを定義することが不可欠です。そのうえで、4Pの各要素が互いに矛盾せず、一貫したメッセージを発するように慎重に調整しましょう。
全ての要素が同じ目標に向かって機能することで、相乗効果が生まれます。
失敗パターン2:ターゲット顧客のニーズやインサイトの誤認・無視
企業側の「きっとこれが売れるはずだ」「顧客はこう考えているに違いない」といった思い込みだけで製品開発やプロモーションを行ない、実際の顧客ニーズや市場の声と大きくズレてしまうケースです。
顧客が求めていない製品やサービスを提供しても、当然ながら受け入れられません。どんなに優れた製品やプロモーションでも、顧客のインサイトを捉えられていなければ成果には繋がりません。
思い込みを排除し、徹底した市場調査や顧客インタビュー、アンケート調査などを通じて、ターゲット顧客の真のニーズ、課題、購買行動を深く理解することが全ての基本です。
顧客データを分析し、顧客の声に真摯に耳を傾ける姿勢を持ち続けましょう。
失敗パターン3:市場環境や競合の変化への対応の遅れ
数年前に成功したマーケティングミックスを、市場環境や競合の状況、顧客の嗜好が変化しているにもかかわらず、見直すことなく継続してしまうケースです。
ビジネス環境は常に変化しています。過去の成功体験に固執し、変化への対応が遅れると、徐々に競争力を失い、市場から取り残されてしまいます。
マーケティングミックスは一度作ったら終わりではありません。定期的に市場動向や競合の戦略、技術の進展、法規制の変更などをモニタリングし、自社の戦略が現状に適しているかを見直す必要があります。
変化を恐れず、柔軟に戦略をアップデートしていく俊敏性が求められます。
失敗パターン4:社内部門間の連携不足
マーケティング部門だけで戦略を決定し、製品開発部門、営業部門、カスタマーサポート部門など、関連する他部門との情報共有や連携が不十分なケースです。
各部門がバラバラに動いてしまうと、顧客に一貫した価値提供ができなくなります。たとえば、マーケティングが訴求する製品特徴と実際の製品仕様が異なっていたり、営業が顧客に伝えるメッセージと広告内容が矛盾していたりすると、顧客の不信感を招きます。
マーケティングミックスの策定・実行は、全社的な取り組みとして捉えることが重要です。関係各部署と密に連携を取り、情報を共有し、共通の目標に向かって協力し合う体制を構築しましょう。
失敗パターン5:効果測定の欠如とデータに基づかない意思決定
マーケティング施策を実行するだけで、その効果を具体的に測定・分析せず、感覚や経験則だけで次の意思決定を行なってしまうケースです。
何が成功要因で何が失敗要因だったのかを客観的に把握できなければ、効果的な改善策を打つことはできません。結果として、非効率な施策を続けてしまったり、貴重な機会を逃したりすることに繋がります。
この場合の対策としては、施策を実行する前に、必ずKPI(重要業績評価指標)を設定することです。そして、施策実行後はデータを収集・分析し、KPIの達成度合いを評価しましょう。
データにもとづいて戦略の有効性を判断し、継続的な改善(PDCAサイクル)を行なっていくことが、成果を最大化する上で不可欠です。
マーケティングミックスの知識を押さえ新たなビジネスモデルを構築しよう

本記事では、マーケティングミックスの基本的な考え方から具体的な分析ステップ、成功事例、そして陥りがちな失敗パターンまでを解説しました。
マーケティングミックスは、企業が自社の製品やサービスを効果的に市場に届け、顧客に選ばれるための強力なフレームワークです。4Pや4C、そして7Pといった視点から自社の戦略を多角的に見直し、各要素間の整合性を高めることで、より一貫性があり、競争力のあるマーケティングを展開できます。
知識をインプットするだけでなく、実際に行動に移すことが重要です。まずは、以下の小さなステップから始めてみてはいかがでしょうか。
アクション1:自社の「4P」を書き出してみる | 現在、自社の製品・サービス(Product)、価格(Price)、流通チャネル(Place)、販促活動(Promotion)がどのようになっているか、具体的に紙やドキュメントに書き出してみましょう。それらがターゲット顧客に対して最適化されているか自問してみてください。 |
アクション2:ターゲット顧客についてチームで話し合う | 「私たちの本当の顧客は誰か?」「顧客は何を求めているのか?」ということについて、マーケティングチームだけでなく、営業や開発など関連部署のメンバーも交えて議論してみましょう。ペルソナ設定を見直す良い機会になります。 |
アクション3:主要な競合他社のマーケティングミックスを分析する | 競合他社がどのような製品を、いくらで、どこで、どのように販売しているか、Webサイトや広告などから情報を集めて分析してみましょう。自社の戦略との違いや、学ぶべき点が見えてくるはずです。 |
しかし、マーケティングミックスを進めるには、膨大な情報の管理や詳細な分析をしなければなりません。手動ですべておこなうのは困難であり、効率的なマーケティング戦略を立てるにはAI搭載型CRMの利用が不可欠です。
AI搭載型CRMの導入を検討するなら「Sales Cloud」がおすすめです。Sales CloudはCRM・AI・データを組み合わせて、スピーディーに効果的なマーケティング戦略を立案するための分析ができます。事業の生産効率を上げたい、新規の見込み顧客を増やしたいとお考えの方は、ぜひ導入をご検討ください。
Sales Cloud デモ動画
世界シェアNo.1のCRM Sales Cloudを活用することで、時間や場所にとらわれず、売上の最大化と新しい働き方を実現します。
ぜひ動画をご覧ください。
