オペレーショナルエクセレンスとは、企業で業務の遂行や管理(オペレーション)における卓越性(エクセレンス)を追求することで、簡単にいうと卓越したオペレーションを通じて利益を生み出すことを指します。
企業が競合他社よりも市場の優位性を獲得するためには、他社よりもよい製品を生み、多くの顧客に利用してもらうことが大切です。しかし、他社に負けない製品をより多くの顧客に売っても、他社と営業利益に差がないこともあります。
他社との差別化を図るためには、オペレーショナルエクセレンスの追求が必要です。
本記事では、オペレーショナルエクセレンスの概要と重要性、メリット、実践の流れを解説します。オペレーションに着目することで新たな差別化ポイントが見つかる可能性があるので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
オペレーショナルエクセレンス(OPE・OPEX)とは
オペレーショナルエクセレンス(OPE・OPEX)とは、オペレーションの効率や生産性の向上を追求して競争優位性を確保することや、その状態を指します。
たとえば、短期間で製品を製造して顧客に届けられるオペレーションを確立し、競合他社が真似できないレベルの競争優位性を確保できたのであれば、オペレーショナルエクセレンスを実現できたといえます。
オペレーショナルエクセレンスの概念は、1995年にマイケル・トレーシーとフレッド・ウィアセーマが発表した著書『ナンバーワン企業の法則』のなかではじめて登場しました。同著では、優良企業を見極める価値基準のひとつとして、オペレーショナルエクセレンスの重要性を解説しています。
いずれも、企業が競争優位性を確保するためには、欠かせない概念です。
オペレーションとは
オペレーションとは、企業活動における業務プロセスやフローに沿って進行する作業です。
企業の製品開発や顧客獲得は、すべてオペレーションによって支えられています。
たとえば、オペレーションの品質や効率性を向上させると、不要なコストが削減されれ、利益の最大化を狙えます。その結果、競合優位性を確保できるのです。
このように、オペレーショナルエクセレンスでは、オペレーションの品質や効率性向上を目指します。
BPRとの違い
オペレーショナルエクセレンスは、オペレーションの品質や効率性を向上させる点がBPR(Business Process Re-engineering:業務改革)に似ていますが、目的やアプローチ方法が異なります。
BPRは、オペレーションだけではなく、組織構成や社内制度などあらゆる要素を抜本的に見直したうえで、再構築を図ることで利益の最大化を狙います。一方、オペレーショナルエクセレンスでは、オペレーションにのみフォーカスされているため、BPRと比較して手を加える範囲が狭いのです。
また、BPRは企業目標を達成するために行う改革であるのに対し、オペレーショナルエクセレンスのゴールは競合優位性の確保であり、目的が異なります。
オペレーショナルエクセレンスの実現に必要な3つの柱
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オペレーショナルエクセレンスを実現するためには、次の3つの要素をバランスよく最適化しながら、顧客に最大の価値を提供することを目指します。
- Q:Quality(品質)
- C:Cost(費用)
- D:Delivery(時間)
たとえば、顧客の要望に合わせてITシステムを開発する際、高品質にこだわるあまりコストの増大や納期の遅延が発生することもあるでしょう。この場合、QCDのバランスを以下のように整えることが大切です。
- Q:必要な機能が安定して動作する
- C:予算内に収まる
- D:スケジュールどおり稼働を開始できる
オペレーショナルエクセレンスでは、QCDのバランスをとりつつ高水準を追求することで、競合優位性を確保できます。
オペレーショナルエクセレンスの重要性
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オペレーショナルエクセレンスは、競合との差別化ポイントになるため重要です。
以下は、CRMを提供する架空の会社の業績を比較した表です。
項目 | A社 | B社 | ||
金額 | 売上に対する比率 | 金額 | 売上に対する比率 | |
売上高 | 500,000円 | – | 300,000円 | – |
売上原価 | 250,000円 | 50% | 150,000円 | 50% |
販管費・その他 | 150,000円 | 30% | 120,000円 | 40% |
営業利益 | 100,000円 | 20% | 30,000円 | 10% |
A社とB社は、CRMを提供するBtoB企業で、製品品質や顧客層には大きな差がありません。業績を比較すると、原価率は同じであるにもかかわらず、A社が2倍の利益をあげています。
差が生じた要因は、販管費・その他の違いです。A社は効率的なオペレーションを実現し、販管費などにかかるコストを最適化しているため、差が生じているのです。
このように、製品の品質や顧客層に差がない場合、オペレーションの質が競合他社との差別化要素になり得ます。
また、オペレーショナルエクセレンスの追求は、優位性の確保だけではなく、他社との差につながるリソースを生み出します。たとえば、新規市場への展開や新製品の開発に充てる時間やコストの確保にもつながるため、企業成長の基盤となるのです。
オペレーショナルエクセレンスがもたらすメリット
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オペレーショナルエクセレンスを追求するなかで、業務プロセスの効率化・最適化が進むと、標準化につながります。その結果、従業員が一貫したオペレーションを行えるようになり、属人化を防ぐとともに、安定した成果を出すことが可能です。
また、効率的なオペレーションによってコストやリソースの最適化を実現できるため、製品開発や新規顧客の獲得などにリソースを集中投下できるようになり、さらなる企業の成長を促進します。
このように、オペレーショナルエクセレンスは、競争優位性の確保と持続可能な成長を支えるのです。
オペレーショナルエクセレンスを実践する流れ
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オペレーショナルエクセレンスを実現するためには、次の5つのステップでオペレーションを改善する必要があります。
- 現状を分析する
- 戦略を策定する
- 戦略を実行する
- 評価を行う
ここでは、大まかな流れを解説しますので、オペレーショナルエクセレンスを実践する際に参考にしてみてください。
現状を分析する
オペレーションの効率性を向上させるためには、まず現状の業務プロセスを分析したうえで、具体的な課題を明らかにする必要があります。各種KPIをチェックするだけではなく、現場の声をもとにオペレーションの工程や工数に関する課題感をキャッチしましょう。
たとえば、プロセスマッピングを活用して業務フローを可視化すると、不要な業務や効率化できそうなポイントを特定しやすくなります。各部門の業務フローを可視化し、丁寧に分析を行いましょう。
戦略を策定する
自社の業務フローにおける課題が明確化されたら、それをもとにオペレーショナルエクセレンスの戦略を策定します。
目標やKPIを設定して、オペレーショナルエクセレンスが実現された状態に導くためのプロセスを明らかにしましょう。
たとえば、営業部門の業務フローで「顧客への提案資料の作成時間が長い」という課題がある場合、資料作成時間の30%削減を目標として設定します。これを実現するためには、日頃から作成時間の観測が必要であるため、平均時間や月間作成数などをKPIとして設定し、定期的にチェックするのです。
その後、目標を達成できるように、具体的な戦術を考えます。本例では、AI搭載のSFA(営業支援システム)を導入すれば、資料作成の一部をAIに任せて効率化ができそうです。また、過去の提案資料やテンプレートの活用も有効でしょう。
戦術を決定する際は、各部門の現場の声を取り入れることで、実態に応じた戦術を選択できます。また、最終的に実践する戦術の選定では、費用対効果や期間、コストの比較検討も必要です。
業務フローの改善に活用できるフレームワーク「ECRS(イクルス)の法則」
オペレーショナルエクセレンスにおける、業務フロー改善の戦略策定では、ECRS(イクルス)の法則を活用すると効率的に進められます。
ECRSの法則とは、以下の4つを順序どおりに進めて改善を図る手法です。
- Eliminate(排除):不要な業務を削減する
- Combine(統合):関連・重複する業務を統合する
- Rearrange(再配置):業務の順序を最適化する
- Simplify(簡素化):複雑な業務を効率化する
もともとは、業務改善の手法として活用されていましたが、現在は幅広い分野に応用されています。オペレーショナルエクセレンスでも、業務フローを最適化する際に活用が可能です。
以下の記事では、業務改善に活用できるその他のフレームワークを紹介しているので、あわせてご覧ください。
戦略を実行する
策定した戦略・戦術を実行する際は、まず組織全体に戦略の目的やプロセスを共有することが大切です。
営業部門で資料作成時間の削減を目指すのはなぜか、実現することでどのようなメリットを得られるのかなどを示し、メンバーの同意と協力を仰ぎます。
新たなツールを導入する場合は、いきなり部門全体で取り組むのではなく、一部で取り入れて実践するのも効果的です。導入効果を実感できれば、その後の全体化もスムーズに進められるでしょう。
戦略・戦術の実行では、KPIの観測も欠かせません。定期的にチームで集まってKPIをチェックし、進捗や課題について議論する必要があります。
評価を行う
当初予定していた期間に達したら、戦略・戦術の取り組みを評価するために、KPIの進捗や目標の達成度を明確化しましょう。課題があれば改善を行い、さらなる最適化を目指します。
改善を繰り返し、最適化が完了した業務フローは、マニュアルに落とし込みトレーニングを行うことて定着を図ります。一連の流れを仕組みとして構築しておけば、オペレーショナルエクセレンスの実現に向けた改善活動の持続が可能です。
オペレーショナルエクセレンスを実現するポイント
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オペレーショナルエクセレンスを実現するためには、次の4つのポイントを意識した実践が求められます。
- バックエンド業務にも注目する
- オペレーション指標を設定・管理する
- 人材を有効活用する
- 適切なITツールを導入する
効率的にオペレーショナルエクセレンスを実現するためにも、参考にしてみてください。
バックエンド業務にも注目する
オペレーショナルエクセレンスを実現するために、業務フローを改善する際は、バックエンド業務にも注目する必要があります。
バックエンド業務とは、営業資料の作成などの顧客から見えない事務的な業務です。一方、顧客対応のように顧客の目に触れる業務をフロントエンド業務といいます。
フロントエンド業務は、顧客に対して直接的に価値を生み出せるため、注目しやすいでしょう。しかし、オペレーショナルエクセレンスの実現には、バックエンド業務の効率化や最適化も重要であり、オペレーションの全体効率を高める基盤となるのです。
オペレーション指標を設定・管理する
オペレーショナルエクセレンスを実現するためには、最適化が完了するまでPDCAを回す仕組みが求められます。仕組みに沿って適切な改善を実施するためには、オペレーション指標(Operational Indicators: OI)の設定と管理が重要です。
オペレーション指標とは、オペレーションにおけるKPIであり、正しく運用することで、進捗・成果の客観的な評価が可能となります。
たとえば、営業部門では「商談数」や「成約率」といった指標を用い、進捗状況をリアルタイムで把握しながら改善策を立てます。
人材を有効活用する
オペレーショナルエクセレンスの実現には、業務を遂行する人材の有効活用が欠かせません。
人材を有効活用するためには、適所適材が重要です。新規人材であれば、強みやスキルを棚卸ししたうえで、各部門や業務に応じた育成トレーニングを実施します。その後、強みを活かせる場所に配置するイメージです。
既存人材を配置し直す場合は、本人の希望も聞きながら、公平・公正に進めましょう。
適切なITツールを導入する
業務フローを可視化し、効率的に管理するためには、ITツールの活用が必要です。
たとえば、SFAを導入することで、担当者の業務や進捗状況をリアルタイムで把握でき、営業活動全体を最適化できます。製造業なら、製造業用の管理システムによって、製品設計から出荷までのプロセスを一元管理し、業務全体を可視化できます。
自社に合ったITツールを活用して、業務フローを可視化し、課題発見と適切な改善につなげましょう。
オペレーショナルエクセレンスの実現を支えるAIツール
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『Sales Cloud』は、営業部門の業務プロセスを可視化し、AIで効率化を促進するSFAです。
『Sales Cloud』なら、営業活動のスケジュールから進捗管理、顧客とのコミュニケーションなどあらゆる営業活動をツール上で実行できます。ツールを使うなかで蓄積された顧客情報をもとに、AIが担当者をガイドしてくれるため、スキルにかかわらず業務を標準化できる点が魅力です。
各種機能によって業務プロセスの可視化と効率化を進められることから、オペレーショナルエクセレンスの実現に寄与します。
30日間の無料トライアルで各種機能をご利用いただけますので、ぜひお試しください。
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オペレーショナルエクセレンスの成功を目指す事例
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株式会社博報堂DYホールディングスは、AIを活用した業務変革に取り組んでいます。AI活用を内部で促進し、従業員にとってもっとも働きやすい形に業務プロセスを作り替えようとしているのです。
同社は、1~2年を目途に、着実に取り組みの成果を出していきたいと考えています。そのために、既存の技術とAIをかけ合わせることで、AIの活用の幅を広げています。
参考:【後編】博報堂DYグループ初のChief AI Officer。「AI×ビジネス」のプロが描く青写真
まとめ:オペレーショナルエクセレンスを実現して強い営業組織を作ろう
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オペレーショナルエクセレンスの実現を目指して業務プロセスの効率化・最適化を進めると、コストやリソースに余裕が生まれます。利益の最大化につながる業務プロセスのなかで、リソースを最適に配分できれば、競合優位性の確保と持続的な成長が可能です。
業務プロセスの効率化・最適化のためには、たとえば営業活動を可視化・自動化できるツール『Sales Cloud』の活用をおすすめします。営業部門でオペレーショナルエクセレンスを追求していけば、強い営業組織の構築が可能です。
以下のガイドでは、他社に負けない営業組織を作るためのポイントを解説しているので、あわせてご覧ください。
いまから始めるSales Enablement
勝てる営業組織を仕組みで作る
5 つのステップ
営業力強化や営業改革といった法人営業の変革に関して話題に上がる「セールス・イネーブルメント」について、導入パターンや実践例を紹介します。
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