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不動産大手4社、集結。ハード+サービスの融合はどこまで進んでいる?

2024年10月に開催された「Dreamforce Recap in Tokyo 2024」。複数のセッションがある中、不動産業界向けのラウンドテーブルが行われました。登壇者は東急不動産、三井不動産、三菱地所、森ビル。日本の不動産業界を牽引する大手4社が何を語ったのか。内容の一部をレポートします。

2024年10月22日に開催された「Dreamforce Recap in Tokyo 2024」。複数のセッションがある中、不動産業界向けのラウンドテーブルが行われました。

本セッションでは「オフィスリーシング事業の未来 ~大家業を超えたソフトサービスの現在地と可能性~」をテーマに不動産大手4社が登壇。東急不動産、三井不動産、三菱地所、森ビルに登場いただき、オフィス事業におけるサービスビジネスの現在地とデジタルテクノロジーへの期待を語っていただきました。

セッションでは、パネルディスカッション以外に、オフィス事業における SalesforceのAI活用のデモンストレーションも実施。本記事ではそのポイントを紹介しますが、以下のリンクからデモの映像をご覧いただけますので、記事と合わせてぜひご覧ください。

不動産業界 x 生成AIのミライ

Agentforce と作る「新しい働き方」
最新のAIを活用してオフィスリーシングがどのように変わるか見てみませんか?AIと人が協力し、ビジネスを加速させる新しい働き方の可能性を、ぜひこの動画でご体感ください。

既存のオフィス事業とサービスの関係性

パネルディスカッションに入る前に、 SalesforceのIndustry Advisor、依田健が登壇。「ソフトサービスがリーシングへ与える影響」と題した講演を行いました。依田は冒頭、オフィスビル事業における4つのトレンドを提言しました。

株式会社セールスフォース・ジャパン
Industry Advisor 依田健
  1. オフィス入居企業やワーカー向けにサービスを提供する企業は増加している。
  2. サービス単体で売り上げ・利益を得る「独立採算型」と、自社オフィスの魅力を高める要素としてサービスを提供する「既存事業強化型」が存在する。
  3. 既存事業強化型を展開する不動産会社は、リーシングに好影響を与えている感覚は得ながらも、賃料や稼働率などビジネスにどの程度影響を与えているかを具体的に計測できている企業は少ない。
  4. サービス単体での収益に加えて既存事業にも収益貢献していることを計測できれば、サービス分野に投資しやすくなる。

「サービスがもたらす価値を正しく評価できるようになれば、投資はより加速し日本のオフィスはさらに世界をリードすることができます」(依田)。

なぜSalesforceはこのテーマを取り上げるのか

Salesforceは、不動産デベロッパー各社のビジネスの成功を通して、日本の企業やワーカーに価値をお届けしたいと考えています。

従来のオフィスビル事業は立地や建物性能など、いわゆる「ハード」が重要と考えられ、その分野でSalesforceが提供できる価値は限定的でした。

しかし、先述した通りサービスという「ソフト」の分野では、生成AIなどのテクノロジーで支援できる範囲が広がります。

ハードは重要であるものの、ソフト分野の重要性に目を向けるお客様が増加し、Salesforceが貢献できることも多いと考えています。

大手4社が展開する「サービス」とは

メインセッションのパネルディスカッションでは下記の4人が登壇。各社が提供するオフィス関連サービスをBtoBとBtoC(BtoBtoC)に分けてご紹介します。

東急不動産株式会社

東急不動産株式会社
財務部 DX推進部 CX・イノベーション推進部執行役員 青木貴弘氏
1994年4月入社、都市事業本部に配属。オフィス、ホテル、住宅など幅広いジャンルの不動産開発業務を中心にリーシング、中期戦略や計数企画など幅広く従事。主な開発物件は恵比寿ビジネスタワー、代官山Forestgate、渋谷ソラスタ、東急プラザ原宿(ハラカド)、東急プラザ銀座など。2020年よりDX部門にシフトし、ホールディング全体のDX戦略策定、インフラ基盤更新や人材育成、獲得等を進め、ホールディングス各社各事業でのDX実装による新たな価値創造を推進。2024年より現職。執行役員CX・イノベーション推進部、DX推進部、財務部担当。部、財務部担当。

BtoBテナント企業・ワーカー向けトータルソリューションサービス「GREEN WORK STYLE」

「オフィスの百貨店」として、渋谷エリアを中心に多様なワークプレイスを提供。企業やワーカーのニーズに応じて、さまざまな形態・出展場所・規模で展開する。特に渋谷エリアは高い人気を誇り、さらなる出展拡大を計画している。

BtoC/BtoBtoC:マッチングアプリ「MABLs」

テナント従業員に限らず、渋谷エリアをよく訪れる、働く・遊ぶ・学ぶ人々が繋がるための渋谷特化型マッチング・コミュニティアプリ。渋谷にチェックインするだけでポイントが付与され、東急不動産が厳選した約200店舗で提供されるMABLs限定価格のメニューと交換が可能。

さらに、MABLsユーザー限定のサウナや交流イベントも展開される。MABLs自体で大きな収益を目指すのではなく、街全体の求心力を高めることが目的。8月末から本格リリースした後、現在のDL数は8,000を超える。「Shibuya Sakura Stage」の街開きに伴いユーザー数は急拡大している。

リアルとデジタルの施策が連動することで、初めてお客様に価値を提供することができます

三井不動産株式会社

三井不動産株式会社
DX本部 DX二部部長 塩谷義氏

1994年4月入社。住宅事業、情報システム部、個人営業、人事部のキャリアを経て、2016年に情報システム部に着任しDXの取り組みを開始。情報システム部→ITイノベーション部→DX本部と組織改正を経て、2021年DX本部DX二部長に就任。DXは9年目。

ライフサイエンス分野におけるオープンイノベーションを推進するプラットフォーム。現在、特別会員854社(2024年8月末時点)、年間1000回以上のイベントを開催し、業界内の交流とイノベーションを促進している。

BtoC/BtoBtoC:シェアオフィス「WORK STYLING」

2017年にスタートしたシェアオフィスで、拠点は全国。現在、運営中の131拠点に加え、JR東日本との協業により、さらに追加で約450拠点が利用可能となっている。法人契約者は1200社、会員数は31万人(2024年10月時点)。また、オープン席/会議室/カンファレンススペースを提供する「WORK STYLING SHARE」では全拠点にクルーを常駐させ、ホスピタリティを強みとして他社との差別化を図っている。

私たちはデベロッパーなので、リアルアセットである不動産を起点に勝負していかなければならない。デジタルはリアルを支える手段として期待しています

三菱地所株式会社

三菱地所株式会社
DX推進部部長 国久望氏

1996年4月新卒入社。不動産証券化ビジネス等に従事したのち、名古屋や大丸有で大規模複合開発に企画・開発・運営の全てのフェーズで携わる。丸の内開発部、経営企画部のユニットリーダーを経て、2023年4月DX推進部長に就任。

BtoB:インキュベーション施設「GLobal Business Hub Tokyo, FINOLAB, EGG, TMIP, Inspired Lab」

ITバブル期の2000年頃、丸の内にベンチャー企業を誘致する目的で開始したインキュベーション施設。ベンチャーキャピタルや弁護士、会計事務所などのプロフェッショナルサービスとの連携だけでは差別化が難しいため、「海外」「フィンテック」などのテーマを設定し、その業界を支援する関係者との連携を強化している。

BtoC/BtoBtoC:ショッピングアプリ「丸の内ポイントアプリ」の「Machi Workers」

エリアショッピングアプリである丸の内ポイントアプリのテナント従業員向けに提供しているステータスで、丸の内の商業施設を利用すると一般ショッパーよりも多くポイントが付与される仕組み。このステータスの目的は、自社商業施設内での購買促進と、「三菱地所のオフィスに入居すると特典がある」というロイヤリティの醸成にある。現在、丸の内ポイントアプリの利用者数は約30万人で、そのうち月間アクティブユーザーは約10万人。

toCのお客様と直接つながる接点を持つことができたのが大きな成果。丸の内エリアに対するロイヤリティを高めていきたいと思っています

森ビル株式会社

森ビル株式会社
営業本部 オフィス事業部営業推進部部長兼企画推進部部長兼新領域事業部アカデミーヒルズ運営部兼経営企画部 竹田真二氏

2000 年、森ビル株式会社に入社。財務部、都市開発事業本部などを経て、現在は営業本部オフィス事業部営業推進部部長兼企画推進部部長として、マーケット調査、営業戦略立案、商品企画、新規事業創出などに従事。都市機能、都市生活のアップデートに寄与する新しいテクノロジー、サービスをもつ国内外のスタートアップや大企業との協業を推進する。

BtoB:コミュニティ「ARCH」

国内大企業の新規事業創出を目的としたコミュニティ。開始から4年が経ち、法人会員はウェイティングもおり常に約120社がいる。このコミュニティでは、自社の新規事業創出に限らず、1社単独では解決が難しいグローバルアジェンダに対して、参加企業間のパートナーシップを促進し、共同で取り組める環境を整備している。

BtoC/BtoBtoC:クラブハウス「Hills House」

会員制のワーカー向けクラブハウス。街全体をワークプレイスとして活用できるようにすることを目的に運営されている。本施設は、仕事に限らず、食・ウェルネス・医療といった街のさまざまな機能の結節点となる役割を担い、幅広いサポートを提供している。

人口が縮小する中で、限られたパイを奪い合うのではなく、新たな需要を作りだす必要があります

各社ともに、それぞれ目的やマネタイズポイントは異なりながらも、自社の持つ「街」や「ワーカー」を起点にさまざまなさまざまなサービスを展開。「デジタルはあくまで手段。リアルの空間での体験価値向上を重視する」という点も共通していました。

デジタルの時代における人間の役割

パネルディスカッションの後半パートでは、デジタルの時代でも変わらず人間が果たすべき役割についてディスカッションしました。

重要な役割として挙げられたのは、人間の持つホスピタリティ。登壇いただいた日本トップクラスの不動産デベロッパーからしても、自社の持つアセットや提供するサービスはあくまで「点」でしかないと捉えられており、それらを一貫したホスピタリティを持って顧客へ提供することは、人間が得意な分野。

また、高額取引が多い不動産業においては、必ずしも合理的な判断で商取引が行われるわけではなく、感情的な要素も多分に作用することも指摘されました。

Salesforceは、ホスピタリティ業界でも多くご採用いただいており、顧客との感情的な繋がりの形成を支援しています。世界有数のホテル企業であるIHGホテルズ&リゾーツ様での活用事例はこちらからご覧ください。

自律型AI「Agentforce」をデモンストレーション

パネルディスカッションの後は、ソリューション統括本部 B2Cソリューション本部 プリンシパル ソリューションエンジニアの柚口智史より、自律型のAI エージェント「Agentforce」を中心に、生成AIがオフィス事業をどのように変革するのかについてデモンストレーションを行いました。

株式会社セールスフォース・ジャパン
ソリューション統括本部 B2Cソリューション本部 プリンシパル ソリューションエンジニア
柚口智史

詳しくは、実際のデモンストレーション映像をご覧いただければと思いますが、ここではポイントをご紹介します。

オフィスリーシング事業

  • 空室区画に対して、Agentforceがこれまで入居していた企業や直近で入居が決まっている企業の特徴を抽出し、営業をかけるべきターゲットリストを生成。
  • 商談が発生した際、Agentforceに自然言語で指示することでSalesforce内に商談情報を入力。
  • Agentforceが商談情報をチーム内で共有するように提案し、ボタンひとつでSlack上のチームチャネルに自分の活動を共有

Agentforceとは

Agentforceの自律型AIエージェントが、常時稼働しながら専門的なサポートを提供し、ビジネスの成功を支援します。標準搭載のエージェントをローコードでカスタマイズし、ビジネスに必要なあらゆるタスクを実行させることができます。

サービス分野

  • 生成AI機能「Tableau Pulse」を用いて、ソフトサービスの利用率とオフィス平均入居期間の相関分析。
  • 分析履歴に基づき、関連して分析すべき内容を生成AIがサジェスト、実行。

実際のデモンストレーションはこちらからご覧いただけます。

人とAIエージェントが協業する「新しい働き方」を実現することで、Salesforceは不動産業界のパートナーとして、更なるビジネスの更なる発展に貢献します。

不動産業界 x 生成AIのミライ

Agentforce と作る「新しい働き方」
最新のAIを活用してオフィスリーシングがどのように変わるか見てみませんか?AIと人が協力し、ビジネスを加速させる新しい働き方の可能性を、ぜひこの動画でご体感ください。

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