小売業においてDXが必要だと理解しているものの、何から手をつければいいのかわからないと、悩んでいる経営者の方もいるのではないでしょうか?
近年、EC市場の拡大や消費者ニーズの多様化など、小売業界においてもDXへの関心が高まっています。
DX推進によって、業務を効率化しながら顧客ニーズを満たし、厳しい状況下にある小売ビジネスを好転させる可能性を秘めています。
本記事では、小売業界におけるDXの課題や企業の成功事例について解説しますので、DXを導入する際の参考にしてみてください。
コネクテッドショッパー最新動向
2,400人の買い物客と1,125人の小売業界の意思決定者を対象に調査を実施し、業界を形成する消費者のショッピングトレンドを明らかにしました。
目次
小売業界におけるDXと現状
小売業界におけるDXとは、デジタル技術を活用した顧客中心のアプローチを通して、新たなビジネスモデルや顧客体験を創出する取り組みのことです。
近年の小売業界では、EC市場の拡大やコロナ禍での生活様式の変化に伴って消費者の購買行動が変化してきており、その状況に対応すべくDXの推進が求められています。
一方で、人手不足や物価上昇が企業経営に深刻な影響をもたらしています。
東京商工リサーチの調査によれば、2023年に小売業で倒産した企業の件数は939件と、2022年の718件から約31%増えていることがわかりました。
このような現状から脱却するためにも、DXによる業務効率化を図っていく必要があります。
引用元:2023年(令和5年)の全国企業倒産8,690件|東京商工リサーチ
【関連コンテンツ】
> DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や導入のメリット・デメリットを解説
小売業界のDX推進を妨げる3つの課題
小売業界のDX推進を妨げる主な課題には、以下の3点が挙げられます。
- 各部署で使用しているシステムの連携が困難
- DX人材の人手不足
- 経営判断に必要なデータの不足
以下より各課題を解説していきますので、自社の現状と照らし合わせながら、必要な対策を検討していきましょう。
各部署で使用しているシステムの連携が困難
小売業界における一部の企業では各部署で独立したシステムを使用しており、連携が困難になっていることが、DX推進の足かせとなっています。
新しいシステムに移行しようとしても、老朽化した既存システムのフレームワークでは、技術的な面で対応できない場合があります。
システムの更新には多くの時間とコストがかかるものの、DX推進には欠かせないプロセスであるため、経営層を含めた十分な検討が必要です。
DX人材の人手不足
DXを推進するためには、デジタル技術に関する専門的な知識を持った人材や、プロジェクトを統括して推進していいく人材の確保が必要ですが、日本ではこういった所謂DX人材はまだまだ不足しており、確保が難しい点が課題となっています。
IPA(情報処理推進機構)のDX白書によれば、2022年度の調査で「DX人材が大幅に不足している」と回答した企業は、全体の49.6%にのぼります。
「やや不足している」と回答した企業は33.9%となっており、上記の回答と合わせると83.5%の企業がDX人材の不足を感じています。
企業は社内のDX人材の育成はもちろん、他社や異業種から積極的に人材を確保する取り組みも求められます。
引用元:DX白書2023(P21)|独立行政法人情報処理推進機構
経営判断に必要なデータの不足
DXが進んでいる企業では、目的に合わせて自社のデータベースから必要なものを抽出し、分析や検討を行う環境を構築しています。
しかし、DXを進める人材が不足していたり、データ活用の仕組みが構築できていなかったりと、対応が遅れているケースもあります。
必要な情報が収集できず、データ不足になってしまっている状態では、正確な意思決定もできません。
新しい商品・サービスの開発における経営判断を行うときも、顧客情報や売上予測などのデータ活用が不可欠です。
【関連コンテンツ】
> データ活用で成功するには?メリットやデメリット、手順、事例を紹介
小売業界のDX成功事例10選
小売業界のDXでは、店舗とマーケティング部門、あるいは店舗とECサイトの連携の難しさが大きな課題と考えられています。
ここでは、課題を抱えながらもDXに成功した企業の事例を10社ご紹介します。
三越伊勢丹
老舗百貨店「三越伊勢丹」が行っているDXの取り組みを2つご紹介します。
1つ目は、リモートショッピングアプリによるオンライン接客の導入です。
ユーザーはビデオチャットを介して商品を映像で確認したり、スタッフの説明を聞いたりでき、その場に自分がいるかのような接客を受けられます。
さらに、店舗にしか在庫がないアイテムもオンライン上から決済可能で、店舗とECサイトの連携をうまく果たした事例といえます。
2つ目の取り組みは、ギフト特化型のECサイト「MOO:D MARK(ムードマーク)」の開設です。
カジュアルギフトの市場拡大に伴って、SNSや名刺交換で知り合った人に贈れる「ソーシャルギフト」の分野への参入が、ECサイトを開設したきっかけです。
ECサイトでは、日付にちなんだギフト「TODAY IS A GIFT」を顧客に提案し、シナリオに沿ったメールマガジンの配信も行っています。
【関連コンテンツ】
> 株式会社三越伊勢丹の事例はこちら
ローソン
コンビニエンスストア「ローソン」も率先してDXを進める企業です。
AI技術を用いた半自動の発注システムを導入し、個別店舗の判断によらない他店との連携の取れた品揃えを実現しています。
また、スマホレジや自動釣銭機付きPOSレジ、セルフレジの導入も進めており、レジ対応の時間や労働力の削減に成功しています。
カインズ
ホームセンターの「カインズ」は、店舗での商品販売とオンラインショッピングを融合させ、よりよい顧客体験を届けるべくDXを推進しています。
そのひとつの取り組みが「カインズアプリ」の導入です。
アプリでは、広い店舗内にある商品の位置・在庫の確認ができ、商品を駐車場に停めた車まで届けてくれるサービスも利用できます。
カインズが目指す戦略は、オンラインだけで完結するのではなく、店舗で実際に商品に触れて購入してもらうことです。
この戦略が多くのファンを呼び込み、オンラインでも店舗でも楽しい買い物体験ができると評判になっています。
【関連コンテンツ】
> 小売DXを実現する、デジタル組織構築とリスキリング
無印良品
「無印良品」は、自社アプリ「MUJI passport」の活用でDXを成功させました。
無印良品の店舗を訪れたり商品を購入したりすると、ポイントが付与される機能を搭載しており、店舗に立ち寄りたくなるよう工夫されています。
また、アプリから店舗の在庫情報を確認できるため「せっかく店舗を訪れたのに品切れだった」という顧客の不満解消にも役立っています。
「MUJI passport」は2013年のリリース以降わずか4年間で1,000万ダウンロードを記録しました。
無印良品は2017年には「デジタルマーケティング成功企業(日経デジタルマーケティングの調査)」で第1位にも輝いています。
ビックカメラ
大手家電量販店の「ビックカメラ」では、2022年6月にDX宣言を発表し「お客様喜ばせ業」の実現を目指しています。
DXの取り組みのひとつが、コンタクトセンターの効率化です。
従来は電子メールの着信があれば、専任の担当者がオペレーターのスキルに合わせて振り分けしていましたが、AIにメールを学習させて振り分けを自動化しました。
また電話対応では、音声データと自動でテキスト化したデータの両方を残すように改善し、手入力の作業量を軽減させています。
コンタクトセンターの効率化によって、20%以上のコスト削減にもつながり、数字としてもDXの効果が現れました。
【関連コンテンツ】
> 株式会社ビックカメラの事例はこちら
イオンモール
「イオンモール」では、DXのビジョンに「ヒトの想いを中心としたDXの実現」を掲げています。
DXの取り組みのひとつが「イオンモールアプリ」の導入です。
イオンモールアプリでは次のような機能を実装し、リアルとオンラインを融合させて利便性の向上を図っています。
- セールやイベントの最新情報をプッシュ通知
- アプリ限定のお得なクーポンを配信
- WAONポイントとの連携
イオンモールの取り組みは国にも認められ、2022年には経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定も受けています。
IKEA
世界的な規模を誇る家具の小売企業「IKEA」は都心型のスモール店舗においてDXを実現しています。
集客が見込める地域に小さな店舗を出して顧客に商品を体験してもらい、実際の注文は主にオンラインから行ってもらう試みです。
在庫をその場に用意しないため、店舗内の保管スペースが必要なく、店舗運営の固定費削減に成功しています。
ユニクロ
「ユニクロ」のスーツ注文サービスは、オンラインと店舗のバランスを上手に取っている事例です。
店舗で試着用のサンプルを使い採寸を済ませたうえで、オンラインストアやアプリから注文すると、自分にぴったりのサイズのスーツが自宅へ届きます。
専用の倉庫に豊富な在庫を準備しているため、シャツであれば最短翌日、ジャケットなら最短3日で素早く手元に届くのも特徴です。
手軽にオーダーメイド風のスーツが手に入るサービスとして人気を集めています。
アリババ
中国を本拠地とする「アリババグループ」は、生鮮スーパー「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」を運営しています。
同社はオンラインと店舗の在庫を連動させ、以下のような魅力のあるサービスを実現しました。
- 顧客は店舗で実際に品物(生鮮食品)を見て、その場からスマートフォンで注文
- 品物はスタッフが梱包して自宅へ配送するためレジ待ち・運搬の手間がかからない
- 店舗から半径3km以内の場所には30分以内に無料配送するなど非常にスピーディー
「商品を確認したうえで注文自体はオンラインからする」という、IKEAの事例とよく似たケースです。
ウォルマート
米国の大手スーパー「ウォルマート」は、オンラインで注文した商品を実店舗で受け取れるサービスを提供しています。
注文後にメールで届くバーコードをスマートフォンに表示させ、店頭の機器に読み取らせるだけで商品を受け取れます。
そのため、店員の対応を待つ時間がかからないほか、店舗側ではレジに要する労働力の軽減が可能です。
商品受け取りのついでに「せっかくなので何かを買っていく」という購買機会の提供にもつながっています。
小売業界向け従業員エンゲージメント向上ソリューション
小売業界の人材確保のため、Employee ServiceとSlackを活用してオンボーディングから定着化までのサイクルを改善し、従業員エンゲージメントを向上させる方法をご紹介します。
小売業がDXを推進する4つのメリット
小売業の企業がDXを推進することで、次の4つのメリットを得られます。
- 作業時間と人件費を削減できる
- 顧客視点に立ったマーケティングができる
- 顧客満足度が向上する
- データドリブン経営により意思決定の精度が向上する
DXのデジタル技術を活用することで、アナログな方法ではできなかった高度な分析も可能となり、新たな企業戦略の検討にも役立ちます。
作業時間と人件費を削減できる
DXを推進することで作業時間と人件費の削減につなげられます。
近年の物価や光熱費の高騰によって、人件費を含めた全体的なコスト削減が急務であり、その解決のカギとなるのがDXです。
たとえば、受発注システムを導入することで、受注書や請求書、伝票などの書類作成を自動化でき、作業時間を減らせます。作業時間が短縮されることで、担当者の残業時間も減り、人件費を削減できるでしょう。
また、人が行う作業を減らせればヒューマンエラーの防止にもなり、トラブル対応によるムダな工数発生も抑えられます。
顧客視点に立ったマーケティングができる
DXの活用によって顧客一人ひとりの嗜好や行動パターンの分析が可能となり、顧客の心を動かすマーケティングができます。
たとえば、ECサイトで商品を購入した顧客情報を収集し、年齢・性別・居住地などの顧客の傾向を分析・把握します。
その情報をもとにまだ商品を購入していない属性の近い顧客に対して、ECサイト内でのおすすめ表示や関連商品の提供が可能です。
マーケティングを自動化させるMAツールを活用すれば、見込み客の管理やキャンペーン配信などの施策も打てます。
【関連コンテンツ】
> マーケティングオートメーション(MA)とは?機能・できること
はじめる前に読んでおきたいマーケティングオートメーション
これからMA(マーケティングオートメーション)の導入を検討される方、必見。
導入前に知っておくべき5つのポイントをまとめました。
顧客満足度が向上する
DXの取り組みは、業務効率化や人件費削減など企業側のメリットだけではなく、顧客側においても利点があります。
たとえば、ネットで商品検索や在庫確認ができるようにすることで、顧客は欲しい商品を効率的に探せて、店舗へ行かなくても在庫があるかの確認も可能です。
店舗においても、商品をバーコードリーダーに通すことなく会計できる仕組みにすれば、顧客のレジ待ちによるストレスも軽減できます。
顧客の利便性を考えたDXによって満足度が高まり、リピート客の増加も期待できます。
【関連コンテンツ】
> 顧客満足度とは?評価指標や調査方法、向上させる施策と2つの成功事例を解説
データドリブン経営により意思決定の精度が向上する
あらゆるデータを収集・分析して戦略が立てられれば、その情報をもとに経営判断する「データドリブン経営」の基盤にもなります。
小売業のDXでは、サプライチェーンの構築やマーケティング、人材育成など多岐にわたってデータ活用が必須です。
これまでの経験と勘に頼っていた経営手法ではなく、データに基づいて予測することで、意思決定の精度が高まります。
【関連コンテンツ】
> データドリブン経営で経営戦略を効率的に。必要な知識や組織づくりを紹介
小売業におけるDXの取り組み例
小売業におけるDXの具体的な取り組み事例として、次の2つの方法をご紹介します。
- OMOを実践する(オンラインとオフラインの融合)
- 店舗の課題解決につながるシステムを導入する
競争の激しい小売業界でいち早くDXを実現するために、事前に具体的な取り組みを把握しておきましょう。
OMOを実践する(オンラインとオフラインの融合)
小売業のDXにおいて、オンライン(EC)とオフライン(店舗)の融合を図る、OMO(Online Merges with Offline)の実践が重要な取り組みの1つです。
たとえば、ECサイトで商品を検索した顧客に対して、実店舗にある商品の在庫情報に加え、お得なキャンペーンも通知するといったアプローチができます。
「どのようにしてOMOを実現するか」を検討するうえでは、後述の4つの条件についても確認してみてください。
▶ 「デジタルトランスフォーメーション(DX)のはじめかた」の資料をダウンロードする
店舗の課題解決につながるシステムを導入する
店舗運営では、顧客ニーズを適切に把握できていないことやや、人手不足で労働時間が増えてしまっていることなど、さまざまな課題があります。
次のようなシステムを導入することで、店舗が抱える課題の解決につながります。
システムの例 | 導入による効果 |
---|---|
顧客管理システム(CRM) | ・顧客情報の一元化 ・顧客が求める商品の提供 |
マーケティングオートメーション(MA) | ・顧客行動のデータ管理 ・分析・会員向けのメール配信の自動化および最適化 |
販売管理システム | ・売上・購買データの一元化 ・注文書や請求書作成の効率化 |
現在の小売市場では、商売から得た経験や勘など、感覚だけに頼った経営で生き残っていくのは困難です。
精度の高い販売戦略を立てるためにも、社内のあらゆるデータを集約・分析するシステムの導入が、店舗経営の課題を解決するカギといえます。
【関連コンテンツ】
> ERPとCRMの違いとは?それぞれの役割や導入するメリットを解説
小売業のDX成功のカギはOMO戦略
OMO(オンラインとオフラインの融合)の実践が、小売業のDX成功のカギといえる戦略です。
OMOは、2017年頃にGoogleチャイナの元CEOである李開復氏が提唱した概念です。李氏によれば、OMOの実現には以下の4つの条件が必要だと述べています。
- スマートフォンおよびモバイルネットワークの普及
いつでもどこでもデータを取得でき、我々に遍在的な接続性をもたらす。 - モバイル決済浸透率の上昇
モバイル決済は少額でもどんな場所でも利用が可能になる。 - 幅広い種類のセンサーが高品質で安価に手に入り遍在する
現実世界の動作をリアルタイムでデジタル化し、活用が可能になる。 - 自動化されたロボット、人工知能の普及
最終的には物流(サプライチェーンプロセス)も自動化することが可能になる。
いずれもここ数年で急激に普及が進んだ分野です。今では十分にOMOの実現が可能な時代となったといえるでしょう。
小売業のDX「OMO」の具体例
小売業界の企業が取り入れたいOMOの手法として、参考となる具体例も見てみましょう。
SNS集客
すぐに取り入れられる手法が「SNS集客」です。
X(旧Twitter)やInstagram、LINEなどのSNSを使って、オンライン上で自店舗のキャンペーンを告知して集客します。
Xの場合はリポスト(リツイート)機能があり、拡散性が高く認知向上につながりやすいのが特徴です。
Instagramの場合は画像にECショップやホームぺージのリンクを貼り付けられるため、コンバージョンまでの導線を短くでき、購入促進にも活用できます。統一感のある画像を投稿することで、ブランディングも可能です。
LINEの場合は、友だち登録をしたユーザーに向けてクーポンを送ったり、最新情報を届けてたりでき、リピーターの獲得に向いています。
SNSの場合アカウントを無料で作成できるため、導入コストを最小限に抑えてはじめられるのがメリットです。
オンライン接客
三越伊勢丹の事例のように「オンライン接客」を導入するのもおすすめです。
主なオンライン接客の形態としては、次の3つが挙げられます。
- チャットボットによる自動応答
- ビデオチャットを活用したスタッフによる接客
- SNSやECサイトでのライブ配信
導入にはWebカメラやビデオチャットツールが必要ですが、個人店であっても十分に対応できます。
オンライン接客は、顧客接点を増やせるうえに、人員コストの削減にもつながります。
ECサイトとの連動、データ統合
IKEAやウォルマートの事例で見られたように、ECサイトと店舗を連動させる方法も有効です。
- ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れる
- 店舗で確認した商品をECサイトで買える
上記のように、どちらからでも購入できる仕組みを構築しておきましょう。
また、ECと店舗のデータを統合することでどのような顧客が、どのような商品を、店舗とECサイトのどちらを好んで購入しているのか」といった傾向を明らかにできます。
オンラインと店舗データの連動により、顧客のことをより正確に理解することができるようになるため、接客も最適化でき、顧客満足度の上昇にもつながります。
決済の多様化へ対応
QRコードの利用に代表されるスマートフォン決済など、現金やクレジットカード以外の決済手段への対応も重要です。
2023年12月に株式会社インフキュリオンが実施した調査によると、QRコード決済の利用率が68%となっており、クレジットカードの79%に次ぐ高水準となりました。(※16~69歳男女5,000人が調査対象)
また、スマートフォン決済への対応は単にユーザーの利便性を向上させるだけではなく、決済データの分析を通じた顧客ニーズの割り出しにもつながります。
引用元:決済動向2023年下期調査|株式会社インフキュリオン
人事制度(評価制度)の整理
OMOを進めていくうえで忘れてはならないのが、人事制度(評価制度)の整理です。
店頭接客後にユーザーがオンラインから購入した場合、店舗スタッフに何も還元されないような状況ではスタッフのモチベーション維持が難しくなります。
店舗とオンラインのどちらで購入したとしても、貢献したスタッフが正しく評価される仕組みを目指しましょう。
▶「【2023年版】小売業界のための年末商戦 傾向と対策」の資料をダウンロードする
小売業界でDXを推進する際のポイント
小売業界でDXを推進する際は、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- DXを牽引する人材の育成に取り組む
- 経営戦略に基づいた施策を行う
- コストや時間がかかる点を考慮する
DXを本格的に推進するには、経営層のリーダーシップと全社で取り組む姿勢が重要であるため、社内の意識改革も進めていく必要があります。
DXを牽引する人材の育成に取り組む
小売業界においてDX人材の育成は重要な課題であり、適切な人材戦略なくしてDXの実現は叶いません。
DX人材を育成するには、主に次のような方法があります。
- DX案件によるOJTプログラムの構築
- DX推進のリーダー研修
- 検定や資格取得の支援
- 外部の専門講師による勉強会
- DX実践のコミュニティへの参加
人材育成では、単に研修だけで終わらせるのではなく、デジタル技術の進歩とともに継続的にスキルアップしていく環境づくりが必要です。
DXを牽引していく人材や、ツール・アプリを作る人材を育成するために、DXに取り組んだあとの未来を従業員に想像させる働きかけをしていきましょう。
【関連コンテンツ】
> シリーズ DX人材 〜第1回 DXで本当に必要な組織・人材づくりとは〜
> シリーズ DX人材 〜第2回 デジタル人材のOSバージョンアップとは?
経営戦略に基づいた施策を行う
DXの効果を得るためは、経営理念やビジョンに基づいた明確な戦略を立て、デジタル技術を積極的に活用していく姿勢が不可欠です。
「DXに取り組む」ことが目的ではなく、あくまで経営戦略を実現するための手段に過ぎません。
デジタル技術を駆使して「自社の強みをいかに最大化するか」をよく検討し、DXを進める必要があります。
単に「使いやすくて便利なシステムを導入しよう」と設備投資を考えるのではなく、明確な目的を持って戦略的に投資していくことが大切です。
コストや時間がかかる点を考慮する
DXを本格的に推進するには、コストと時間がかかる点を認識しておく必要があります。
経営の根幹となるシステムの更新やクラウド化、アプリ開発などを行うには、多くの設備投資が必要です。
さらには、DX推進による人材の確保や、従業員への教育・研修にかかる費用も考慮しなければなりません。
DXを進めるには従業員の働き方や意識の改革も必要なため、組織全体に浸透するのにも時間がかります。
短期的な効率化や収益改善を求めるのではなく、長期的な視点でDXに取り組む姿勢が大切です。
まとめ:DXは小売業界の発展に欠かせない施策
小売業においてもDXの推進は必要不可欠であり、すでに多くの企業が結果を残し始めています。
しかし、DXには多大なコストと時間がかかることも事実であるため、長期的かつ継続的に取り組んでいくことが重要です。
まだDXが進んでいない状況であれば、まずはOMOの実現に向けた着手からはじめてみてはいかがでしょうか。
店舗運営DX推進デモンストレーション
Salesforce、Tableau、Slackを使用し、効率よく店舗運営するイメージを、分析、店舗管理、店舗向けポータル、コミュニケーションの観点からデモンストレーションでご紹介します。