ビジネスフレームワークのひとつであるPDCAサイクルは、目標達成や営業力の強化に役立つため、営業活動においても効果的です。
PDCAサイクルを取り入れることで、改善点を発見できたり市場の変化にも対応しやすくなるため、営業に課題を感じている方がプロセス改善の一手法として活用しています。
本記事では、PDCAの概要から営業活動におけるPDCAの具体例、導入する目的、成功事例などを解説します。効果的な営業活動を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
営業におけるPDCAの各項目の考え方
PDCAは、以下の4項目から成り立っています。
PDCAのプロセスは一般的にPlanから始まりますが、既存商品の見直しや収集したデータの解析など、別の項目からスタートするケースもあります。
営業における各項目の考え方を解説するので、まずはPDCAの基本として押さえていきましょう。
以下の記事では、PDCAサイクルを事例に用いて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Plan(計画)
Planは、営業活動の基盤となる計画段階を指します。
明確な目標設定が不可欠であり、数値目標だけではなく、各自の担当テリトリーや担当顧客の「誰に(ターゲット)」「どのような方法で(アプローチ)」営業活動をおこなうのか、具体的な計画を立てましょう。
具体的な計画を立てることで、プロセスごとの達成率を確認できます。
営業で設定されることの多い目標は、以下の通りです。
- アカウントプラン(顧客攻略シナリオ)の作成件数
- テレアポの件数
- 訪問営業の件数
- 次回アポの獲得割合
- 成約数
- 売上
- 利益 など
Planは、PDCAサイクルにおいての最初のステップであり、明確に定まっていないとPDCAサイクルを回せないため、具体的な計画を立てるよう心がけましょう。
Do(実行)
Doは、計画にもとづいて実際に行動する内容を細分化し、営業活動を行うことを指します。
営業活動を行うたびに、先方の興味や提案に向けたニーズなど知り得た情報を記録することが大切です。
具体的には、以下のような内容について記載するのがおすすめです。
- 先方の担当者
- 打ち合わせ回数
- 見込み顧客の要望
- 意思決定者
- 受注確度
- 予算 など
日々の活動記録をつけることで、次のステップである評価に欠かせないデータ分析が容易になります。チーム内での情報共有や定期的なヘルスチェックを行い、全体の進捗状況を把握しながら進めることが重要です。
Check (評価)
Checkは、実行段階の結果を達成要因や未達成の原因に分けて客観的に分析する評価フェーズです。
分析する際は、結果にだけ注目するのではなく、根本的な要因・原因を把握して次につなげるためにプロセスにも着目しましょう。また、顧客満足度や顧客からのフィードバックなどの定性的な要素も含めて評価することが大切です。
もし目標との乖離がある場合は、乖離している原因を深く掘り下げる必要があります。Checkの段階で得られた洞察は、次のアクション策定において非常に有益な情報となります。客観的な視点を保ちつつ、建設的な評価を心がけることが重要です。
Action(改善)
改善策を打ち出す際は、大きく変えるのではなく、小さな改善策からはじめ、小さな成功体験を積み重ねていくことがおすすめです。
Actionでは、評価結果を踏まえて、次のPlanにつなげるための具体的な対策立案が求められます。
Actionで大切なのは、一つひとつの改善・変更を大きくしすぎないことです。
たとえば、結果が出なかったからといって営業のやり方をガラッと変えてしまうと、今まで上手くいっていた施策にも影響をあたえかねません。
まずは、小さく変えていき、徐々に改善目標の達成を目指すのがおすすめです。
営業でPDCAを活用するメリット
営業でPDCAを活用するメリットは、以下の3つです。
- 営業活動の成果を最大化できる
- 各営業パーソンがやるべき行動を明確にできる
- 顧客や市場の変化に合わせた営業戦略を立てられる
メリットを把握することで、成果につながる営業活動に取り組みやすくなるため、ぜひ確認してみてください。
営業活動の成果を最大化できる
PDCAサイクルを営業に導入することで、営業活動を客観的に見直せて改善策を実行できるため、業績向上が期待できます。
営業の仕事内容は、顧客リストの作成やテレアポ、訪問営業、既存顧客のアフターフォローなど多岐にわたります。がむしゃらに毎日行動しているだけでは、成功の要因や失敗の原因を把握できません。
PDCAサイクルを継続的に回すことで、行動に対する結果に向き合う機会になり、改善策の立案もできるため、成果の最大化につながります。
各営業パーソンがやるべき行動を明確にできる
PDCAを活用すると、営業活動を振り返り、目標に向けたアクションを決定できるため、各営業担当がやるべきことが明確になります。
やるべき行動が明確になると、設定された指標にもとづいて日々の活動を進められ、優先順位の判断が容易になります。
一方で、営業としてやるべきことが不明確な場合は、得意な業務を優先したり、行きやすいお客様に訪問するなど、目標達成に向けた行動に対する課題点の発見や効果検証が困難になるでしょう。
適切に目標達成に向かうためにも、PDCAサイクルを活用することが大切です。
顧客や市場の変化に合わせた営業戦略を立てられる
PDCAサイクルを導入することで、外部環境の変化に柔軟に対応しながら営業活動を行えます。
顧客や市場の変化に合わせて柔軟に対応することが大切です。顧客や市場に向き合わないと、顧客ニーズを捉えないまま主観で営業を行うことになり、結果には結びつきません。
顧客や市場の変化に応じた適切なアプローチを見つけられると、営業の成果が期待できます。
営業でPDCAを活用する際のコツ
営業でPDCAを活用する際のコツは、以下の5つです。
- 1サイクルを短期スパンで回す
- 成果や結果は長期スパンで考える
- PlanやActionは定量数値を用いて明確に設定する
- DoやCheckはなるべく細分化する
- よくなった点の要因にも目を向ける
それぞれ解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
1サイクルを短期スパンで回す
PDCAサイクルを効果的に活用するには、できるだけ短期間で1サイクルを回すようにしましょう。
早いスピードでPDCAサイクルを回しトライ・アンド・エラーを重ねることで、改善点に気がつくスピードが上がります。
たとえば、「月に1回」のサイクルよりも「週に1回」のサイクル、といったように1サイクルを短くすることで、改善策の立案と次のアクションを迅速に実行できるようになるのです。
PDCAサイクルのスパンが長くなると、問題発見が遅れてしまいます。実際の営業活動から期間が空いてしまうため、原因を究明しにくく効果的な改善策の立案ができません。
成果や結果は長期スパンで考える
短期サイクルでPDCAを回す一方で、成果や結果は長期的な視点で考えましょう。
営業活動の効果が表れるまでには時間がかかるため、PDCAサイクルを回してもすぐに効果が出るとは限りません。
売上目標とあわせて成約率の向上を掲げた場合、成約率の向上は長期的な視点で改善を繰り返すことで、少しずつ結果にあらわれます。
また、目標を達成するには、顧客との信頼関係や市場での地位確立など、数値化しにくい要素も考慮する必要があります。
PlanやActionは定量数値を用いて明確に設定する
PlanやActionでは、具体的な数値目標を設定することが重要です。
定量的な目標設定をすることにより、行動が明確になり達成度の測定も容易になります。
具体的な目標としては、「売上高を10%増加させる」「新規顧客獲得数を月20件にする」など、明確な指標を用いましょう。
数値化することで、各メンバーの責任範囲が明確になり、モチベーションの向上も期待できます。ただし、数字に縛られすぎないよう、質的な目標とのバランスも考慮すべきです。
定期的に目標の妥当性を再検討し、必要に応じて柔軟に調整しましょう。
DoやCheckはなるべく細分化する
DoやCheckでは、できるだけ詳細な分析を心がけましょう。
正確な分析を行うことで効果的な改善策を打ち立てられ、最終的な目標達成に向けて行動できます。
たとえば、営業活動を「アポイント取得」「提案資料作成」「商談」など、細かいステップに分けて管理します。各プロセスの所要時間や成功率を測定することで、ボトルネックの特定が容易になるでしょう。
評価時には、全体の結果だけではなく、各要素の分析を行うのも大切です。具体的な改善ポイントが明らかになり、次のアクションへの反映がスムーズになるでしょう。
ただし、過度な細分化は煩雑さを招く恐れがあるため、重要度に応じてメリハリをつけることが大切です。
よくなった点の要因にも目を向ける
PDCAサイクルを回す際、改善すべき点に注目しがちですが、成功要因の分析も同様に重要です。
成功パターンを見出すことで、ほかの領域への応用や横展開を可能にするための引き出しを増やせます。
よい結果をもたらした行動やアプローチを特定し、結果につながった理由を深く掘り下げましょう。
また、チーム内で成果があらわれた事例を共有することで、全体のスキルアップにもつながるでしょう。ポジティブな側面に着目することは、モチベーション維持にも効果的です。
営業におけるPDCA導入の成功事例
営業におけるPDCA導入の成功事例として、以下の2社を紹介します。
- キユーピー株式会社
- 河西工業
両社とも、PDCAサイクルを回すことで、業務効率の改善や製品の問題解消を実現しています。
事例1:キユーピー株式会社
ドレッシングの製造・販売を日本で初めて行なったキユーピー株式会社は、創業から1世紀以上にわたり、世界の食と健康に貢献し続けてきました。
同社は当時、2021~2024年度の第10次中期経営計画において、「持続的成長を実現できる体質への転換」をテーマに掲げていました。会社全体での「転換」を実現するにあたって、同社の営業部門には課題があったそうです。
そのうちの1つは、付加価値を生まない内勤時間が増えていたことです。社内には部分最適で作られたたくさんのシステムがあり、お客様に対する営業活動の情報などが散在していました。
そのため情報を人力でまとめるなどの内勤作業が多く発生し、営業がお客様への提案という本来の業務に集中できない環境が見受けられたそうです。
また、得意先からの依頼に対してPDCAを回すことが中心の営業スタイルになってしまい、ゴールを見定めて自分の目標を立てて行動する意識が足りてなかったとのことでした。
このような状況に危機感を覚え、キユーピー株式会社はSalesforceの導入を決断しています。
Salesforceの導入後は、現場の声を反映しながら、「本当に活用できるダッシュボードの構築」と「導入につながるフェーズマネジメントの構築」を実施し、Salesforceの利用定着化を促進しています。多くの社員がSalesforceの利用を前向きに捉えるようになり、ゴールを見据えてPDCAを回す姿勢に変化したのです。
社内全体でSalesforceの活用が進んだことで、変革前にはひとりあたり月間1.5回であった商談化数は、ひとりあたり月間1.9回の前年比126%の向上を実現しています。
事例2:河西工業株式会社
河西工業株式会社は、自動車の内装部品の製造や販売を手がける企業です。同社は、品質情報管理において効率的な進捗管理やグローバルでの情報共有を実現し、問題の「予防」を行う目的でSalesforceを導入しています。
Salesforceのシステムは、品質改善依頼書が発行されると、ワークフローに沿って自動的に関係者にメールが届き、回答期限が近づくとアラートが出ます。
そのため、今までの半分以下の時間で、多くの情報をより高いレベルでの管理を実現しています。
また、LLR(Lessons Learned Report)もデータベース化することで、予防活動に役立てられるようになったのです。
その結果、過去に直して学習した情報に、開発エンジニアが簡単にアクセスして次の製品に生かす、という改善のPDCAサイクルを回せるようになりました。これにより、不具合の発生件数の大幅な削減に成功しています。
PDCAを営業に取り入れるのは古いのか
最近では、「営業活動にPDCAサイクルを組み込むのは古い」と言われることがあります。
PDCAサイクルを営業に適用することが時代遅れだと指摘される背景には、ビジネス環境の急速な変化があります。
市場のニーズや競合状況が日々刻々と変わる現代において、計画から評価までのサイクルを回している間に状況が一変するケースは少なくありません。
また、デジタル技術の進歩により、リアルタイムでのデータ分析や予測が可能になったことも、PDCAサイクルの有効性に疑問を投げかける要因となっていると考えられます。
さらに、OODAループやDDDD (Do Do Do Do) など、時代に変化に合わせて、新たなビジネスフレームワークが誕生してきたことも、「PDCAが古い」といわれる要因でしょう。
しかしながら、PDCAサイクルの基本的な考え方は、ビジネスにおいて依然として有効です。
計画を立て、実行し、結果を評価し、改善するという循環は、ビジネスの根幹をなす重要なプロセスです。PDCAサイクルの本質を理解し柔軟に活用することで、急速に変化する市場においても、持続的な成長と競争力の維持を実現できるでしょう。
以下の記事では、OODAループについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
営業においてPDCAを効率的に運用するなら「SFAツール」がおすすめ
SFAツールとは、「Sales Force Automation」の略で、営業支援システムのことです。
SFAツールを導入することで、具体的に以下のような使い方ができます。
- 顧客情報や商談ステータスの一元管理
- 営業メンバーの行動管理
- 売上の管理・予測
- 営業データの蓄積・分析
- 顧客へのメール配信・効果的なアプローチ
顧客情報の一元管理や営業パーソンの行動データを蓄積することで、情報共有や報告にかける時間や手間を削減でき、より効率的にPDCAサイクルを回せます。
従来、情報の管理や共有は、営業パーソンごとに異なる独自のスタイルやクオリティに差が出る部分でもあるため、チーム内で情報の粒度やルールを統一するためにもSFAツールは有効でしょう。
なお、Salesforceでは、「Sales Cloud」というSFAツールを提供しています。
Sales Cloudには、以下のような特徴があります。
- 見込み客からファン化まで顧客情報を一気通貫で管理するCRM機能を搭載
- 操作画面のレイアウトや管理・入力項目をお客様ごとでカスタマイズ可能
- AIにより商談機会の予測、メール文章の生成、WEB会議の議事録作成などのアシストを受けることが可能
お客様のニーズやビジネスに応じてサポートもしているので、デジタルのツールが初めての方や、パソコンでの複雑な作業が苦手な方でも安心です。
以下の記事では、SFAについて解説しています。SFAの基本について知りたい方はぜひ参考にしてください。
いまから始める営業支援システム
SFAを決める前に知っておくべき10の基礎知識
そもそもなぜSFAが必要なのかから、販売プロセスの見直し、SFAで実現すべき3大機能、定着化のための体制とステップに至るまで、この分野の専門家二人が解説します。ぜひダウンロードしていただき、今後の導入計画にお役立てください。
営業のPDCAを効率よく回すためのAIを使ったツールもある
営業のPDCAサイクルの効果を高めたり、効率的に業務を進める方法として、AIを使ったツールもおすすめです。
たとえば、Planの段階では、事前にAIを活用してデータの収集と分析を行い、分析結果をもとに目標を立てることが可能です。さらに、AIを活用することで、売上予測の立案や成約見込みの高い顧客をリストアップするなど、営業活動全体の効率化につながります。
Salesforceでは、CRMデータの分析をアシストしてくれるAI「Einstein」を提供しています。
予測AIと生成AIの両方を活用し、営業サイクル全体で CRM に蓄積された情報を有効的に使うことが可能です。
また、顧客との会話を分析して成約率アップにつなげたり、営業プロセスを自動化したりすることで、営業担当者を幅広く支援しています。
以下の記事では、Einsteinについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
営業にPDCAを導入し営業力の強化を図ろう
営業活動にPDCAサイクルを導入することで、目標達成までの道のりを明確にしたり営業力の強化につなげたりすることが可能です。
PDCAの各項目を理解して、短期的なスパンでサイクルを回していくことが大切です。
ただし、多忙な営業パーソンにとって、顧客情報の管理や共有は大きな手間になるでしょう。効率的に営業活動にPDCAを取り入れるには、SFAツールやAIツールの検討をおすすめします。
顧客のニーズの変化や市場の移り変わりの激しい現代だからこそ、営業活動に専念しつつより効率的に成果につなげてみてはいかがでしょうか。
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