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Salesforce生誕25年。創業者マーク・ベニオフから学ぶ「イノベーション創出術」

【Salesforce生誕25年】、創業者マーク・ベニオフから学ぶ「イノベーションの生み出し方」

Salesforceは今年、創業25年を迎えました。創業者のマーク・ベニオフはどんなイノベーションを生み、CRMの世界でNo.1に辿り着いたのか。マークが生んだイノベーションを振り返るとともに、それを生み出すための思考のヒントを解説します。

常識を“ディスラプト”とした3つのイノベーション

マーク・ベニオフの手で今から25年前の1999年3月に誕生したSalesforce。幾多のユーザー企業やパートナー企業に支えられ、CRM(顧客情報管理)の領域でリーディングカンパニーの地位を得ることができました。

Salesforceはなぜ成長することができたのかーー。それを紐解くために、マークが手がけた3つのイノベーションを解説する映像を制作・公開。本記事では、その一部を紹介します。

マークが手がけた3つのイノベーション。それは、

  • 新しいテクノロジーモデル
  • サブスクリプションモデル
  • 社会貢献モデル

一つひとつ解説します。

1つ目の「新しいテクノロジーモデル」とは、「クラウド」です。今でこそ一般的な言葉になりましたが、Salesforceが創業した1999年に、クラウドという言葉は存在していませんでした(クラウドを最初に提唱したのは、2006年に当時のGoogle CEOだったエリック・シュミット氏だといいますが、諸説あります)。

Salesforce創業時のオフィス。マンションの一室からスタートした
Salesforce創業時のオフィス。アパートの一室からスタートした

25年前のソフトウェアの一般的な提供方法は、ソフトウェアの利用権(ライセンス)を販売する形でした。ユーザーはソフトウェアが格納されているCD-ROMを購入して自前で用意したサーバーにインストール。複雑な設定を行って初めて利用できるものでした。

そんな状況の中、マークはインターネット経由でソフトウェアを提供するクラウドモデル、具体的に今の言葉でいえばSaaSを考案。この提供方法でソフトウェアを提供し始めたのです。

Salesforce(セールスフォース)とは? 

Salesforceは「何ができるのか?」。顧客情報管理を中心に、Salesforceが持つソリューションをご紹介します。 

クラウドの利点はすでにご承知かもしれませんが、上記で示した従来型ソフトウェアの利用形式(=オンプレミス型システム)に比べて、

  • 導入コストが抑えられる
  • 利用までの時間を削減できる
  • インストールとメンテナンス作業が不要
  • 特別な設定をしなくても常に最新版を利用できる

という利点があります。

このモデルを考案していたのは、何もマークだけではなかったでしょう。名だたるテックカンパニーも思いついていたはずですが、従来のライセンス形式のビジネスモデルを手がけていた中では、既存の販売チャネルや“既得権益”を守る観点もあり、なかなか舵を切れなかった事情があったと思います。

Salesforceはそうしたことを配慮する必要もなく、なにより「電気や水道のように何の手間もなくテクノロジーを提供したい」という思いを具現化することに邁進。最もユーザーが快適にソフトウェアを利用できるクラウドでの提供にこだわりました。これが1つ目のイノベーションです。

「売ったら終わり」ではないビジネスモデル

2つ目のサブスクリプションモデルに話を移します。

前述の1つ目のイノベーションで、ソフトウェアの提供(利用)方法を変えたことをお伝えしましたが、それにあわせてソフトウェアの利用料の形を変えたことが2つ目のイノベーションです。

25年前、ユーザーはソフトウェアのライセンスを買い取るモデルでした。ユーザーの数やライセンスの種類に合わせて金額が決まり、ユーザーはそのライセンス費とサポート費をソフトウェアメーカーに支払う。新しいバージョンがリリースされ、それを使いたい場合は、アップグレード費を別途支払うという形です。

一方、サブスクリプションモデルは、ユーザー数とライセンスの種類、期間に応じて金額が決まる方式。最低利用期間が設定されている場合がありますが、ユーザーはクラウドの利点を活かしていつでも始められるし、いつでもやめられる。

かつてのオンプレミス形式では膨大な初期費用がかかりましたが、サブスクリプションモデルの場合は、少ない投資で企業規模関係なく使うことができる。

また、不満がある場合は、いつでもやめて、他社に乗り換えることが可能になり、ソフトウェアの利用の敷居を大幅に下げ、ユーザーに柔軟性を提供したのです。

これによってそれまでは投資力のある一部の大企業しかソフトウェアを使うことができなかった状況を一変させ、中小企業でも少ない投資で大企業と同じようなテクノロジー環境をできるようにしました。これが2つ目のイノベーションです。

「社会貢献」の考え方を根底から変える

最後、3つ目のイノベーションは前述の2つとは少し異なる観点で、「社会貢献モデル」です。Salesforceには「1-1-1モデル」という独自の社会貢献モデルがあります。これは、「株式の1%、就業時間の1%、製品の1%」を社会に還元するという活動です。これをSalesforceは創業時からスタートしていました。

日本の社会貢献の取り組み

私たちは、誰もが平等に質の高い教育にアクセスでき、将来の選択肢を広げられるような、豊かで平等な社会の実現を目指しています。

1-1-1モデルを具体的に説明すると、株式の1%では、非営利組織やNGOへのこれまで7億ドルを寄付。就業時間の1%では、社員によるボランティア活動の累計時間は900万時間に。製品の1%では、5万6000の非営利組織にSalesforceの製品を無償提供してきました。

一般的な社会貢献活動は、企業が成長した時にその利益に応じて寄付するものでしたが、Salesforceは社会への貢献、社会の発展の支援を創業時から企業の責任として考え、最初にこれを組み込んでいたのです。

これによって社会への影響力を成長すればするほど高められ、社員に一人ひとりに社会への貢献を意識させるようにしたのです。

新しい社会貢献モデル

イノベーション思考に役立つ「問いの立て方」

以上が、マークが生み出した3つのイノベーションの解説ですが、マークはこうしたイノベーションをどういう思考のもとに生み出していたのか。そのヒントになるのが「問い」です。常識を疑い、固定観点を取り払って常に「なぜ?」「どうして?」と疑問を持つことが大事と言います。

本記事の最後に、その「問い」を立てるためのヒントをご紹介したいと思います。

ストラテジストのビル・オコナーがカリフォルニア大学バークレー校との共同研究で開発した「イノベーションに欠かせない7つの本質的な質問」(The Seven Essential Innovation Questions)」と、それを深掘りする42の質問をご紹介します。ぜひ、読者のみなさんのイノベーションのヒントにしていただければ幸いです。

【7つの質問】

  • 新たな視点・新たな方法で製品やサービスを見ることができるか?
  • 新しい方法で使うことはできるか?
  • 利用時間や場所を変えることはできるか?
  • 新たな形で結びつけることができるか?
  • デザインや性能を変えることができるか?
  • 新しい要素を加えられるか?
  • 素晴らしい体験を想像した時、何が必要か?

【42の質問】

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