Salesforceは「ビジネスは社会を変える最良のプラットフォームである」という信念のもと、ビジネスの力で社会や環境にポジティブなインパクトを与え、全てのステークホルダーに還元する取り組みを創業当初から継続してきました。
本記事は、ビジネスと社会的インパクトの創出を両立するために活動するSalesforceの環境と社会貢献の専門チーム「ESGインパクトチーム」がその具体的な内容をシリーズでご紹介します(全4回)。
私たちは、持続可能な社会の実現に向けて、大きく「社会貢献」と「環境サステナビリティ」の2つの領域で、世界各地で社会的に意義のあるインパクトの創出に取り組んでおります。
第1回となる今回は、創業時から取り組む社会貢献「1-1-1モデル」、サステナビリティ戦略とその主要な取り組み、AI需要に伴うサステナブルなAIの利用と開発に関する取り組みの概要をSalesforceの企業理念とともにご紹介いたします。
第2回以降の記事では、上記3つに関して詳細に解説します。
思い切った気候変動対策が未来をひらく
私たちは、Salesforceの総力を結集して、世界のネットゼロへの道筋を加速します。
目次
25年間の社会的インパクト – Salesforceを動かす原動力-
ビジネスは社会を変える最良のプラットフォームーー。 Salesforceはグローバルでこの言葉を信念にしています。ビジネスの本質とは世の中をより良い場所にすることであり、企業の存在意義はあらゆるステークホルダー(株主、顧客、パートナー、コミュニティ、従業員、地球)への貢献だと考えているからです。
マーク・ベニオフを中心とした創業メンバーは、経営が軌道に乗り利益が出てからではなく、設立直後からこの信念を具現化しようと、創業以来25年間、社会貢献を続けてきています。その代表例が、「1-1-1モデル」と呼ぶ社会貢献モデルです。これは、「株式の1%、製品の1%、社員の就業時間の1%」を社会貢献に充てる取り組みです。
世界は数多くの課題に直面しており、私たちは総力を結集して、より公平で、持続可能で、平等な社会の実現に取り組む必要があると考えています。だからこそ、創業直後から始めた社会貢献活動だけでなく、世界規模で包括的な気候変動対策を推進し、さらにAIの急速な拡大に伴う持続可能な利用と開発にも注力しています。
今、これらの取り組みは25年の時を経てインパクトが拡大し、Salesforceはステークホルダーの皆さまと共にビジネスというプラットフォームを通じて社会に変革を起こしています。それでは、まず社会貢献チームの中核を担う活動「1-1-1モデル」を通じた取り組みをご紹介します。
創業直後から始めた社会貢献活動「1-1-1モデル」
Salesforceは創業当初から、これまでの企業とは違うあり方を目指してきました。社会貢献をビジネスと分けて考えるのではなく、ビジネスの力を通じて社会に還元できる、ともに成長する方法はないかを模索し生まれたのが「1-1-1モデル」です。株式の1%、製品の1%、従業員の就業時間の1%を通じて、より公平で持続可能な世界を築くための仕組みです。
この1-1-1モデルを通じた活動によって、累計7億2800万ドル以上の助成金を非営利団体や教育機関に提供。 Salesforceのテクノロジーを5万9000を超える非営利団体と教育機関に無料または割引価格で届けています。従業員が世界各地で行うボランティア活動は890万時間以上に達しました。
また、公平な未来は健全な地球環境があってこそ築かれるものだと考え、社会貢献を通して、自然災害によって危機的な状況にあるコミュニティへの支援もしています。
たとえば、トルコ・シリア地震やマウイ島の山火事などの災害で救援活動を行う支援団体に200万ドル以上の寄付金を集め、日本では令和6年能登半島地震の際には、能登周辺地域の緊急人道支援に取り組む非営利団体の活動を支援するために2億円を寄付しました。
25年間継続してきたことで、私たちが想像していた以上の社会的インパクトを築くことができましたが、Salesforceでは、一社の力でできることが限られていることも認識してます。
だからこそ、自社だけでなく、 1-1-1モデルのような取り組みをあらゆる業種・規模の企業が手掛けられるようにするため、「Pledge 1%」というプログラムを創設・主導しました。
これは各社が、利潤を追求しながらも社会に還元する仕組みを事業戦略に組み込みやすくしており、ビジネスと社会貢献の両立が世界的なムーブメントとなることを目指しています。現在、2万社ほどの企業が参画しており、Pledge 1%を通じて、各社が独自のインパクトを創出しビジネスと社会貢献の両立の輪を拡大しています(第二章では日本での社会貢献活動を含むより詳細な1-1-1モデルを通じた活動をご紹介します)。
Salesforceの総力を結集して、ネットゼロ社会への移行を加速
次に、環境サステナビリティチームがどのような戦略をもとに、各プログラムを推進しているのかを紹介します。
まず、Salesforceでは「地球という最大のステークホルダー」を守るため、サステナブルで公平な未来という世界共通の目標を実現するために、事業全体を通して気候変動対策を大規模に推進することを使命としています。
環境サステナビリティチームでは大きく4つの注力領域に分けて、あらゆるリソースを駆使して、包括的な取り組みをグローバルで実践しています。
1 . ネットゼロ (1.5℃目標の達成に向けた、 6 つの優先事項とテクノロジーの活用)
世界が気候危機に直面する中、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑えることは、人類の存亡に関わる喫緊の課題であり、この危機を回避するためには、温室効果ガスの排出を大幅に削減し、今世紀半ばまでにネットゼロ(*)を実現する必要があります。
*ネットゼロ:温室効果ガスの排出量を、吸収量や除去量と合わせて、全体で正味ゼロにすること
私たちは、2021年にネットゼロをバリューチェーン全体で実現し、この活動をさらに強化すべく、科学的根拠にもとづく目標設定と並行して、総排出量をさらに削減する挑戦を続けています。
目標の達成に向けて、Salesforceでは気候変動アクションプランを軸に 6 つの優先事項を戦略的に定め、重点的に取り組んでいます。それらは、「排出削減」「炭素除去」「1兆本の森林保全・生態系の回復」「教育・動員」「イノベーション」「規制・政策」であり、後続の第3回で各優先項目における詳細をご紹介します。
Salesforceで推進するサステナビリティ業務は私たちのテクノロジーで支えられています。例えばSalesforceの包括的なESG管理プラットフォームである「Net Zero Cloud」で事業全体の排出量を可視化し、リアルタイムで収集・分析した結果でレポートを生成し、Slackを通じて関係部署と共有することで、迅速な意思決定を可能にしています。
Salesforceの様々なソリューションや機能をフルに活かして、毎年作成する100ページに及ぶ「ステークホルダーインパクトレポート」の作成など、サステナビリティに関する正確で効率的な情報開示を可能にしています。
Net Zero Cloudを用いた組織横断ESGデータ管理
この動画ではマテリアリティ評価、気候変動ダッシュボード、DEIダッシュボードなどについて解説します。
2. ネイチャーポジティブな未来をはぐくむ
ネイチャーポジティブとは、地球上の生命を持続させる強固なサイクルを確立させ、健全な生態系と、コミュニティの繁栄が共存する世界のことです。
Salesforceでは、気候と自然は相互に依存しており、統合的アプローチが重要だと考え、ネイチャーポジティブな未来を実現するためのビジョンとアクションを表明しました。
この実現に向け、Salesforceは1兆本の樹木を保全、再生、育成することを目指し組織された「1t.org」の創設メンバーとして2030年までに世界で1億本の樹木を保全、再生、育成することを目標に掲げています。すでに、この目標の半分の樹木の保全を終え、現在、この森林保全の取り組みはお客様へと広がっており、お客様とともにネイチャーポジティブのムーブメントを加速しています。
3. 環境起業家による変革を後押し
気候と自然に対する目標を達成するには、環境起業家による変革が必要です。環境起業家とは、気候変動などの環境問題に対応すべく、新たなビジネス、テクノロジー、研究、インフラストラクチャーを立ち上げる、目的志向の起業家のことであり、Salesforceは毎年、助成プログラムと並行して、Salesforce Ventures Impact Fundを通じた投資によって、環境と社会にインパクトをもたらす環境起業家の資金調達を支援しています。
そして、イノベーションを大規模に加速するには、グローバルなコミュニティの動員が必要だと考え、Dreamforceやダボス会議などのイベントで、環境起業家の存在や活動を積極的に紹介しています。
4. クリーンエネルギーの推進
ネットゼロの未来を実現するには、公平なクリーンエネルギーへの移行を急ピッチで進めなければなりません。
Salesforceは2022年度には、世界全体の事業活動で再生可能エネルギー100%を達成しましたが、クリーンエネルギーが経済、社会、人々、生態系にもたらす恩恵を最大化することが何よりも重要だと考え、今年は革新的でインパクトのある調達に重点を置きました。
たとえば、新興市場でのクリーンエネルギー利用を推進し、特に支援が行き届いていないコミュニティでのエネルギーアクセスの解消による生活の改善にも寄与すべく、業界に先駆けて、分散型再生可能エネルギー証書(D-REC)を長期契約しました。
この記事では、大きく4つの注力領域の概要をご紹介しましたが、より詳細な取り組みは第3回で紹介しますので、合わせてお読みください。
サステナブルで公平なAIの道を開く
最後に、持続可能で公平な社会の実現に向けて、Salesforceでは今後テクノロジー業界をリードするAIの利用と開発も、対策を推進し注力すべき領域だと認識しています。
次世代のAI(人工知能)が新たな可能性を切り開く未来において、AIは、その開発や利用時に大量のエネルギーと水資源を消費することで気候変動を加速させる懸念があり、天然資源に対する脅威ともいえます。
だからこそ、公平性と持続可能性を両立させたテクノロジーの開発・促進が求められており、Salesforceは一足早くAIの開発と利用に伴う環境負荷を最小限に抑え、革新的な気候変動対策を促進するために AI 関連の規制をリードすることを目的としたフレームワーク「サステナブルなAIポリシー原則」を公開しました。
より詳細な内容は第4回で解説しますが、簡潔にまとめると「AI利用に伴うGHG排出量の開示の義務付け」と「ハイリスクに分類される汎用目的AIモデルのエネルギー効率基準の策定」における政策支援、そして、環境負荷を最小限に抑えるための4つの取り組みとその過程で得た学びを公開し、業界全体で取り組みを加速できるようにしています。
さらに、より公平で、平等な社会の実現には、生成AIのような最新テクノロジーの利用や習得に十分なリソースを投入できず、利活用が遅れてしまいやすい非営利団体や教育現場に焦点を当てたAIへのアクセスギャップの解消にも取り組んでいます。
日本では、全国の小中高を対象とした教育支援に取り組む非営利団体に対する支援も開始し、最新テクノロジーへの学びの格差解消を支援し、誰もが平等に質の高い教育にアクセスでき、将来の選択肢を広げられる豊かな社会の実現を目指します。
こうした活動はすべてSalesforceは5つのコアバリュー(信頼・カスタマーサクセス・イノベーション・平等・サステナビリティ)のもと、透明性を確保しステークホルダーの皆さまに、「ステークホルダーインパクトレポート」として公開しています。
この記事では、 「ビジネスは社会を変える最良のプラットフォームである」という信念のもと、ESG インパクトチームがどのように、社会や環境にポジティブなインパクトを創出しているのか、「社会貢献活動の中核を担う1-1-1モデル」、「環境サステナビリティの4つ重点戦略と概要」、そして持続可能で公平な社会の実現に向けて新たな注力領域となった「サステナブルなAIの推進」に関して焦点を絞って解説してきました。
次回は、日本での社会貢献活動を含むより詳細な1-1-1モデルを通じた活動をご紹介します。
Salesforceを利用しつつサステナビリティに貢献する方法
デザインとUX、アーキテクチャ、開発、運用管理の4つのステップに分けて、具体的にサステナビリティに貢献するために何ができるのかを紹介します。