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【ユーザー会】地域密着の不動産会社が実践したSalesforce導入のカギ

Salesforce導入初期の課題を乗り越えた株式会社中央住宅の取り組みをユーザーグループイベントでお話いただきました。

Salesforce利用1年目の企業を対象にした「ユーザーグループ オンボーディングユーザー分科会」では、毎回Salesforce導入初期の利用の壁を乗り越えた先行企業の担当者を招き、社内で推進するための実践的なヒントを紹介しています。

今回登場してもらったのは、ポラスグループ 株式会社中央住宅でSalesforce導入を担当した西澤 真理 氏です。同社は2021年のSalesforce導入からわずか2年で、「第11回Salesforce全国活用チャンピオン大会(SFUG CUP 2023)大企業部門」で準優勝という快挙を成し遂げています。

中央住宅ではどのようにSalesforceの導入に取り組み、社内に浸透させていったのでしょうか。SalesforceのエバンジェリストであるNTTテクノクロス株式会社の鈴木 貞弘 氏が西澤氏に伺いました。

【動画】オンボーディングユーザー会

Salesforce使い始め1年以内の方が集まる「オンボーディングユーザー会」の収録動画です。
Salesforceの導入期を経験した先輩ユーザーの話から明日から使える取り組みのヒントをご紹介します。

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「脱・アナログな営業管理 ~働き方改革」へのチャレンジ

鈴木:本題に入る前に、まずは会社の紹介をお願いします。ポラスグループ 株式会社中央住宅とはどのような会社ですか。

西澤:ポラスグループ 株式会社中央住宅は、1969年創業の総合不動産企業です。ポラスグループは27社からなり、主に埼玉県を中心に、東京都・千葉県で分譲住宅の販売、注文住宅、不動産売買仲介、リフォーム、飲食など幅広く事業を展開しています。浦和レッズのトップパートナーとしての協賛や越谷市の南越谷阿波踊りなどの支援などを行っています。

私が所属する中央住宅 不動産ソリューション事業部は不動産仲介業務を行う部署で、32拠点に約300名の社員がいます。

鈴木:Salesforce導入前は、どのように営業管理をしていたのですか?

西澤:以前は、昭和の時代から変わっていないような営業管理の仕方をしていました。月末に各営業所からExcelで集計したデータが上がってきて、「先月は何件の成約でしたね」といった具合です。当然、日々何名のお客様が来店されているかなどをリアルタイムには把握できていませんでした。

また、営業担当者が個別に顧客情報を管理し、それぞれのスタイルで仕事をしており、情報共有の文化がほとんどありませんでした。そのため、一旦追客を中断した顧客へ再アプローチする際に、これまでにすでに別の営業担当者が接触し、「もう連絡しないでほしい」と言われたお客様に連絡を入れてしまったこともありました。

このほかにも、営業担当者に引き継いだあとのお客様の状況がわからなくなってしまうことも少なくありませんでした。

こうした課題を解決し、すべての拠点と社員が同じデータを見て営業に活用できる体制を整えるべく、2021年にSalesforceを導入しました。

現在は主に、「Sales Cloud」「Marketing Cloud Account Engagement」「Sales Emails and Alerts」「Premiere Success Plan」を活用しています。

「既存システムの完全廃止」と「成功事例の共有」で浸透させる

鈴木:32拠点、300人の社員という規模でSalesforceを導入するのは大変だったのではないでしょうか。どのように進めていったのですか。

西澤:まず、Salesforce導入にあたり、現場の所長4名とDXを手がける業務のリーダーを含めた推進チームを発足させました。

Salesforceは導入しただけでは効果を発揮するのが難しく、自分たちの業務に合わせてカスタマイズしなければなりません。それによって便利になる一方でひと手間がかかる分、現状の業務プロセスに問題を感じていない方にはなかなか使ってもらえません。

推進チームが行った施策の骨子は「既存システムの完全廃止」です。Excelや既存システムでの集計をやめ、顧客管理、業績報告、物件登録などの基幹業務をすべてSalesforceに一気に移行しました。

強制的にSalesforceを使わざるをえない状況にしたたわけですが、正直に申し上げると、推進チームでもまだSalesforceをどのように活用できるかを探っている状態で一斉導入を決めたので、現場には大きな混乱がありました。

鈴木:必要だったとはいえ、既存システムの完全廃止とはかなり思い切った決断ですね。導入初期はトラブルが起きませんでしたか。

西澤:当初はシステムの作り込みがうまくできておらず、現場の業務と合っていなかったため、エラーが多発してしまいました。

そのため、現場からは「入力が大変」「Excelのほうがいい」といった不満が……。従来とは異なる方法で入力に手間がかかることに加え、データを活用することで得られるメリットや将来像が見えづらい状況だったのです。

鈴木:今まで勘や経験で実績を積み上げてきた人も多いと思いますが、年齢層による反応の違いはありましたか。

西澤:特にベテラン営業からの反発は強かったです。長年、自分のやり方で成果を上げてきた人にとって、「データを入力してマネージャーがチェックする」というプロセスに慣れるのは大変だったと思います。

それに加えて、「商談」や「リード」といったSalesforce特有の用語を理解してもらうのに苦労しました。特に英語のエラーメッセージに対する拒否反応は予想以上でした。

また、データの入力方法がわからないために入力漏れや間違ったデータが入力されてしまうこともあり、正確な業績集計ができませんでした。

導入当初は、「完了予定日を過ぎている商談が全体の9割」という信じられない状況も発生しました。これは適切にデータが入力されていないことが原因でした。不動産仲介の商談は3、4か月という短いサイクルで回しているため、「完了予定日」という概念自体が現場に浸透していなかったのです。

鈴木:期日が過ぎたらアラートが出る設定にしていたら、アラートの嵐ですね。社内で不満や要望がたくさん出ている状況をどのように改善し、社内展開していったのですか。

西澤:社内にSalesforceの活用を定着させるために採用したのが、「イノベーター理論」に基づいたアプローチです。「イノベーター理論」とは新しい商品やサービスが社会に普及していく過程を表したもので、私たちのSalesforce定着化の道のりとぴったり重なりました。

まず、Salesforce上のデータを確認し、積極的に活用している「イノベーター」「アーリーアダプター」にあたる社員を探してアプローチ。そして、活用事例や便利な使い方を社内でどんどん発信してもらいました。

この取り組みは、Salesforceの担当の方から、「ユースケースなどを共有できる仕組みをつくったほうがいい」というアドバイスをもらってスタートしました。

成功事例を可視化した結果、「自分も使ってみよう」「こうやって使うと便利かも」という気づきが社内に少しずつ浸透していったと思います。

また、新入社員教育では、最初からSalesforceを前提とした研修を行っています。デジタルネイティブ世代の吸収の早さは本当に素晴らしく、彼らが職場での良い影響を与えてくれています。

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情報共有でチーム力向上。お客様ごとに最適な営業が実現

鈴木:Salesforceの活用が定着したことで、社内にどんな変化が生まれましたか。

西澤:もっとも大きな変化は、情報共有の文化が根づいたことです。お客様への対応履歴がリアルタイムで確認できるようになり、チームでの連携が格段に向上しました。

また、これまで1日1回だった業績報告がリアルタイムで確認できるようになり、より機動的な営業マネジメントが可能になりました。社員で同じデータを見ながら業務ができるようになったことで、営業改革にもつながっています。定量的な成果では、顧客登録の業務だけで年間約3,000時間の削減を実現できました。

最初の頃はみんなSalesforceに入力するのを面倒くさがっていたのに、今では社員から「Salesforceに活動登録をしないと気持ち悪い」という声が上がるなど、今ではすっかり社内の習慣として定着しているのを実感します。

鈴木:具体的に、業務プロセスにはどんな変化がありましたか。

西澤:たとえば、Salesforce上に「リサイクルボード(*)」というダッシュボードをつくり、過去の商談履歴を活用した営業活動が可能になりました。お客様ごとにいつコンタクトを取り、どんな物件をご案内したかという履歴が残っているため、誰でも過去の対応履歴を参考にしてお客様ごとに最適な営業アプローチができるようになりました。

*リサイクルボード:一旦失注にした顧客のうち、再アプローチが可能な顧客を集めたダッシュボード。主に顧客の割り当てが少ない若手社員が利用して成果を出している。

また、商談管理の仕方も変わりました。不動産仲介ではお客様との最初の接触から、物件のご紹介、購入申し込み、契約まで通常1~3か月程度かかります。この流れを7、8段階のフェーズに分け、「成功へのガイダンス」として可視化しました。

各フェーズで必要な活動や次のステップに進むための条件を明確にすることで、若手営業でも標準的なプロセスに沿って営業活動を行うことができます。営業プロセスが可視化され、マネージャーの脳内管理からプロセス管理が可能になりました。

ちなみに、契約が決まったときには画面に花吹雪が舞う演出を入れているんです。最初は「そんな機能いらない」という声もありましたが、今では「おめでとう」の演出が営業メンバーのモチベーション向上にも一役買っています。

現場の改善要望にこたえながら実践的にスキルを習得

鈴木:中央住宅は、「SFUG CUP」で準優勝していますよね。Salesforceを導入してわずか2年で受賞するケースは私もあまり聞いたことがなくて驚いたのですが、推進を担当した西澤さんご自身はどのようにSalesforceのスキルを習得したのですか。

西澤:初期開発はベンダーさんに依頼したのですが、その後の管理や業務に合わせたカスタマイズは内製しました。

私自身はSalesforceが何かよく知らない状態で担当になったのですが、現場から「こういうことがしたい」「これが面倒だから何とかして」といった要望に一つひとつ対応するなかで、実践的にスキルを習得していきました。

鈴木:社内から要望がたくさん寄せられると大変ですが、それだけ使っている人がいることの裏返しなので、モチベーションになったのでは?

西澤:そうですね。社員から寄せられる要望にはポジティブな意見もあれば、ときにはネガティブなコメントもありましたが、それらを解決することがユーザービリティの向上につながりましたし、いろいろな要望が出たことがすごくありがたいと感じています。

鈴木:学習するにあたって、便利だったコンテンツやサポートはありましたか。

西澤:スキルの習得で特に助けになったのは、「Premier Success Plan」のサポートでした。わからないことを問い合わせすると、具体的な実装方法まで丁寧に解説してくれます。たとえば、関数がうまく動作しないときには、正しいコードの書き方を具体的に示してくれるなど、すぐに実装に活かせる回答が得られました。

私の場合、わからないことは1時間ほど自分で調べ、解決できない場合はすぐにサポートに問い合わせするようにしています。調べても出てこないことは、その後調べても多分出てこないという考えのもと、効率的な問題解決を心がけました。「Premier Success Plan」のサポートがなければ、ここまでの改善はできなかったと思います。

はじめようPremier

Premier Success
Planとは?

お客様が目標を早く達成し、「今すぐ成功」を実現するためのご支援を提供するサクセスプランです。

また、ユーザー会への参加も大きな転機となりました。同じような悩みを持つ管理者の方々と出会い、「みなさん同じように苦労されているんだ」と心強く感じました。そこでの学びや気づきが、日々の業務改善にも活きています。

内製でやっている以上、自分が新機能について知らないというだけでSalesforceの力を活かしきれないのはもったいないと思うので、常にアンテナを向けてスキルアップを目指していきたいと考えています。

鈴木:ユーザー会では実際に導入した企業の生の声を聞けますし、情報交換ができるコミュニティグループもあるので、自社でSalesforceをより良く活用するヒントを見つけられると思います。

Trailblazer Community

ビジネスユーザーから管理者、開発者まで全てのTrailblazerが集まるコミュニティ。
リアルな活用事例、最新機能の活用方法、社内だけでは解決できない課題の相談など、活用に役立つコンテンツが盛りだくさん。

Trailblazerから学ぶ Salesforce Service Cloud事例集

Salesforceは「営業改革」

鈴木:今後はSalesforceをどのように活用していくお考えですか?

西澤:現在、第2フェーズの開発を計画しています。これまで内製化を進めてきましたが、次のステップでは再びベンダーさんの力もお借りしながら、さらなる進化を目指したいと考えています。

また、蓄積されたデータを人材育成に活用することも大きな課題です。現在セールスイネーブルメントチームとして新入社員教育に携わっているのですが、Salesforceのデータを新入社員教育にも活かせるのではと可能性を感じています。

将来的には、内製と外製のバランスを取りながら発展させていきたいですね。社内業務に精通したメンバーがSalesforceのスキルを身につけ、必要に応じてベンダーの力を借りる。そんなハイブリッドな体制が理想だと考えています。

鈴木:最後に、Salesforceの活用推進に取り組んでいる企業へメッセージをお願いします。

西澤:Salesforceは単なるシステムではありません。当社にとってSalesforceの導入はまさに「営業改革」そのものでした。

導入すれば自動的に成果が出るわけではありませんが、現場の声に耳を傾け、地道に改善を重ねることで、必ず成果は表れてきます。

ぜひ長期的な視点を持って取り組んでいただければと思います。最初は苦労の連続かもしれませんが、それを乗り越えた先には、必ず組織の進化が待っているはずです。

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執筆:村上佳代、野垣映二(ベリーマン株式会社)
撮影:遥南 碧
編集:木村剛士

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