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【SFUG CUP 2024 ファイナリスト】活用スピードUPのカギは「内製化」。IT未経験・新人管理者の4年半の事業改善ストーリー

【SFUG CUP 2024 ファイナリスト】活用スピードUPのカギは「内製化」

「SFUG CUP 2024」のファイナリストを紹介する連載シリーズ。今回は、内製化によって変革をもたらしたイノチオアグリ株式会社の取り組みをプレゼンテーターのインタビューで解説します。

イノチオアグリ株式会社の成功事例:内製化がもたらした変革

Salesforceを導入したものの、「入力されない」「活用されない」といった課題に直面している企業は少なくありません。このような問題に対して、内製化のアプローチが有効であることをご存じでしょうか?内製化により、開発や改善のスピードを早め、ユーザーのニーズに合った柔軟な対応が可能になります。

愛知県に拠点を置き、長年農業を支援してきたイノチオアグリ株式会社は、Salesforce開発の内製化にシフトすることで、活用定着を実現しました。IT未経験のシステム管理者たちが、どのようにしてこの挑戦を乗り越え、結果的に事業全体へ貢献できたのか。その道のりを経営本部 企画部 マーケティング課長 河村 拓真さんに伺いました。

Salesforce 4年半の道のり 〜データの収集と利用〜

「使う機能がない」トップセールスの厳しい声

──プレゼン動画の取り組み成果を聞く限りでは想像できませんが、当初はなかなか利用が進まなかったそうですね。使い始めの状況を教えてください。

河村:現在、当社では活用が定着して、事業貢献のフェーズに移っていますが、導入当初からうまくいっていたわけではありません。2019年にSalesforceを導入し、まずは日報のデジタル化に着手。

稼働時のオブジェクトは「取引先」、「活動・ToDo」、「Chatter」、「受注」と「売上」の5つで、12の営業課に展開したのですが、ログイン率やデータ数は日に日に落ち込み、トップセールスたちからは「使う機能がない」「年間でChatterは1投稿しかしたことない」といった厳しい声が寄せられました。

──使い始めの頃を振り返って、こうしておけばよかったと思うことはありますか。

営業プロセスや現場の生産性に貢献するようなアウトプットが少なかったために、ユーザーから「何のために必要なの?」と思われてしまいました。そうならないためにも、初めからユーザー目線でのヒットコンテンツを用意しておくべきだったなと思います。

また、営業の帳票をもっと理解しておけば、初期段階での成功は得られたはずです。拠点によってルールが違い帳票も違うので、短期間で全12拠点分を把握できませんでした。全部集約して「やめる、実装する、検討する」のどれかに当てはめて整理し、全体最適化してからSalesforceをカットオーバーすればよかったと思います。


河村 拓真氏
イノチオアグリ株式会社
経営本部 企画部 マーケティング課長

新卒でイノチオホールディングス株式会社に入社。Salesforce導入初期から携わり、運用定着・開発に従事。2021年から事業会社のイノチオアグリ株式会社にて、マーケティング、インサイドセールスの設立を経験。今では経営戦略支援、新卒採用×Salesforce、マーケティング、インサイドセールス、Salesforce開発・運用・定着に従事。SFUG CUP 2024のファイナリスト。World Tour Nagoyaに登壇。

ターニングポイントは成功企業の取り組み事例

──そもそも河村さんが内製化の必要性を強く感じるようになったきっかけも、SFUG CUP 2020でしたね。

はい、当時の決勝大会ファイナリストのプレゼンに影響を受けて内製化を決意し、自身のスキルアップとその後の管理者を育成していきました。

──まず河村さんはどのように管理者スキルを身に着けたのですか。

私自身、IT未経験、かつ、はじめはまったくわからなかったので、苦手意識はありました。

そんな状態から主にやったことは、Trailheadでインプットし、Sandbox環境でアウトプットすることをひたすら繰り返していきました。

──IT未経験者からのシステム管理者育成。どのような育成プログラムを実施していますか。また、適性を見いだされた人、あるいは志願者が配属されるのでしょうか。

現在は講習を月2回程度実施し、操作手順などシステム面だけではなく、管理者として何をすべきか、どういう目的で仕事をすべきかといったマインドセット面もレクチャーしています。

プレゼンで紹介した現在のシステム管理者は第2世代なのですが、このメンバーに関しては、私から名前を挙げたわけではありません。話をしてみると苦手意識がある人もいますし、思いがけないことだったようです。

そこで配属当初、個々のキャリア形成とSalesforceで得られる経験を紐づけられるように面談を実施。将来的なキャリアでやりたいこと(Will)を明確化した上で、今マストでやらなければいけないこと、できること(Skill)とSalesforceを結びつけたのです。

彼らに言ったことは、インプット3割とアウトプット7割を心がけよう、できることがあるはずだから、まずやってみようということ。システム管理者といっても役割は多岐にわたりますので、強みや興味を踏まえてアサインしています。

それから、「社内外問わず、市場価値の高い人財を目指そう!」と言い続けていますね。

「河村さん、わかってるね」社内カスタマーサクセスで軌道修正

──そこから社内カスタマーサクセスの強化と、開発の内製化によって軌道修正していかれたのですね。

社内カスタマーサクセスの礎ができたのは、Salesforceを12拠点に3人で入れるという話になったときです。予定の期限内に完了させるために、私が各拠点に赴いてしっかり説明して伴走することを提案して、実際にそれがうまく機能しました。

ところが運用に入ると、ヒットコンテンツがなくて苦労しました。そこで私だけでなく組織として社内カスタマーサクセス活動を続けて、なにげない課題にも親身に対応するようにしました。

そうしながら取り組んだ商談管理の改修が終わった段階で、ようやく軌道に乗ったことを実感。通期の着地予測をもとにアクションを起こしたい経営陣が見る機能だけに、大きな変化だったと思います。

──社内カスタマーサクセスは各拠点に味方がいると推進しやすいように思いますが、キーパーソンを見極めて働きかけたりしたのでしょうか。

組織は改革者(2割)、否定者(2割)、追随する傍観者(6割)で構成されます。改革者の事例を傍観者に伝えれば過半数になり、さらに社長の一押しをもらうことで否定者もやらざるを得なくなります。社員の努力で攻めた上で、最後に社長で一気にひっくり返すオセロ戦略ですね。

ただ、当時は大半が否定的でしたね。そこで例えば、トップセールスの「そもそも使う機能がないよね」という声に応えるために、隔週土曜の出勤日に行われる営業課内の会議に出席して、営業活動を楽にする方法を提案しました。

まずは身近な存在であるExcelから。ワンクリックでデータベースのAccessからデータを取り出して活用できるマクロを作るなどしながら、最終的にSalesforceのダッシュボードに置き換えました。

──いきなりダッシュボードではなくて、「河村さん、わかってるね」と思ってもらえるような関係性を築いていったわけですね。

そうですね、最初は泥臭く。業務量は増えて大変でしたが、できる限り要望をかなえていくと否定的だった社員が目に見えて変わっていきました。

内製化で意識したシンプル&スモールスタート

──内製化では、どんなことが重要だと思いますか。

機能面ではトップマネジメント層のニーズに寄りすぎず、基本的にはデータを入力する立場のユーザーにとって、いかに使いやすいものを作るかを考えることが大切です。

我々の場合、営業のみなさんに寄り添ったシンプルな仕様を、スモールスタートで実装。商談管理は日付、フェーズ、金額、粗利の4項目を中心に、必ず活用する項目のみで実装しました。

「あればいいな」の機能があれもこれもになってしまうと、ユーザーにとって工数がかかってしまいます。ツールを使いこなせても、複雑化する必要がないのでシンプルに。複雑に作り込むほど、運用で失敗するケースが多いかなと思います。

──経験が乏しい中で、なぜシンプルにする方針を固められたのでしょうか。

チームで積極的に情報収集して方向性を見いだしましたが、イノチオアグリの本社や工場がある愛知県東部にはSalesforceを導入した企業が少なくて苦労しました。導入事例が比較的多い名古屋あるいは製造業と比べると、大都市圏ではなく、農業、小規模、グループの創業100年超えという属性の我々は異質です。

その経験をもとにアドバイスするならば、まずはSalesforceの営業担当を頼って、自分たちの課題を相談してみてください。Salesforceの営業担当とビジネスパートナーとして課題解決を行うことも解決策の1つだと思います。

また、イベントに出て行って情報を得たり、そこで他の企業とつながったりする活動が重要です。

セミナーに参加するのもいいと思いますが、出掛ける労力や旅費交通費を気にして自分たちに合ったセミナーかどうか見極めようとせず、まずは回数を重ねることです。今は事例もかなり豊富ですから、近しい属性や理想とするような企業とぜひコミュニケーションを取りましょう。

先行事例を教えてもらえばシステムをゼロから描く必要がなく、イチをもらってカスタマイズするだけで済みます。

システム管理者は経営参謀。自分たちだけで始められることが必ずある

──他の企業の事例を見てそのうちの1つでもトライしてもらいたいのですが、社内事情などもあってなかなか一歩踏み出すのが大変な管理者もいると思います。背中を押すアドバイスやメッセージをお願いします。

自分たちができることが必ずあるはずです。例えば、私のプレゼンで紹介しているようなホーム画面の改修もその一つ。

それから、気になった企業にコンタクトして詳しく聞いてみる。イノチオアグリはSFUG CUPを視聴してから内製化を目指し、育成に注力した結果、4年間でかなりスケールしたと自負しています。参考になった方は私たちの経験や知見をうまく活用していただきたいと思っています。

一方で、うまく推進できていないのなら、立ち止まってその理由を探しましょう。例えば、ユーザーに親身に寄り添うことでプロジェクトメンバーとして関わってもらえるようなコミュニケーションが第一歩かもしれません。これにはSalesforceの技術はいらない。

そして自分自身を勇気づけてあげてください。「システム管理者は経営参謀」だと私は思っており、今、市場価値の高い人財になれる経験をしているんだ、と。

──今日は河村さんが関係者の心情も察しながら解決のストーリーを描き、コツコツと結果を残してきたことがよくわかりました。ありがとうございました。

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IT技術で日々の業務を支えるSalesforceシステム管理者(アドミニストレーター)。その役割と必要なスキルについて紹介します。

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