BtoBマーケティングおよびインサイドセールス支援事業を展開するスマートキャンプが、SalesforceのAI「Einstein(アインシュタイン)」を活用して営業改革を加速させています。
顧客との商談情報の入力を自動化することで、1人あたり月に5時間以上の時間削減、営業チーム全体では最大100時間の削減に成功するなど成果が如実に表れています。本記事では、スマートキャンプが手掛けているAI活用術を、同社のマーケティングと営業の連携方法とともに紹介します。
*ご紹介する内容は、Salesforceが主催したウェビナー「今こそAIで強化する〜営業・マーケティング連携の新たな形〜」に、スマートキャンプの石黒有晟BOXILカンパニー執行役員BALES BPOカンパニー営業統括本部本部長が登壇したセッションの要約です。ウェビナーの全録画映像はこちらからご視聴できますので、合わせてご覧ください。
今こそAIで強化する
〜営業・マーケティング連携の新たな形〜
Salesforceで実現したマーケティングと営業の有機的連携
スマートキャンプは、SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」やインサイドセールスアウトソーシング「BALES」などを展開し、SaaS企業を中心にBtoBマーケティングとインサイドセールスを支援しています。
マーケティングやインサイドセールス、営業(フィールドセールス)の生産性向上や効率化、顧客満足度の向上のために、分業制で業務を推進。Salesforceのマーケティングオートメーション(MA)ツールの「Account Engagement(アカウントエンゲージメント)」と「Sales Cloud(セールスクラウド)」、「Slack」を活用し部門間連携を図っています。
お客様が問い合わせた一番ホットな瞬間を逃さないようにする。それを最も意識して仕組みを作っています。
具体的にお話すると、まずお客様から問い合わせがあると、Slackの専用チャンネルに自動通知し対応速度を早めているほか、メールのように情報が埋もれてしまわないようにしています。また、対応担当者や優先度合いをスタンプで反応するルールも設けており、円滑なコミュニケーションを図っています。
これによって、お問い合わせフォームにお客様から問い合わせや資料請求があった後5分以内にアプローチするようにしています。
インサイドセールスの仕事はメールが中心だと一人で抱えがちですが、Slackでは「このお客様なら、先週のイベントでお会いしたので連絡できますよ」「上席の役員と面識があるので、何かあれば言ってくださいね」といったフォローもしやすいため、お客様への対応力も上がるし、孤独も感じにくい効果を感じています。
また、Salesforceのソリューションで構築した仕組みで、直近のイベント参加状況やウェブサイトの閲覧履歴などを確認して架電するため、お客様との会話がスムーズです。
仮説やヒアリングの内容は、申し送り事項としてSales Cloudに登録して営業にトス。これなら営業も「一歩目」を踏み出しやすく、仮説通りに商談を一気に進めて受注につながるケースもあります。
バトンが営業に引き継がれると、マネージャーが営業担当者を細かく管理するのにもSales Cloudの情報を役立てています。マネージャーは詳細を見るべき商談をフェーズと優先度合いで選んだり、ネクストアクションやリスクに注視してフォローしたりします。
また、ダッシュボードを作ってデータを可視化し、効果測定も実施しています。
一例として、営業担当者がどれくらいお客様と商談し、それが有効商談なのかどうか、どれだけ案件化して具体検討段階に入ったのか、フェーズごとにチェックしています。
下図の3人は、一番上と一番下の担当者は有効商談からの案件化数が半数を超えていますが、真ん中は半数以下です。なぜ差が出ているのかを深掘りすると、2回目商談の実施率は影響しているものの、先方決裁者同席率では大差がないことがわかってきます。
なので、1回目の商談の進め方におそらく課題があるのだろうと仮説を立てて検証した上で、改善点を見つけたり、ハイパフォーマーの1回目商談の進め方を見てノウハウをプラスしてもらったりするのです。
かつてデータを活用していない営業組織にいたこともありますが、そういうチームは「とにかく案件が少ないから頑張って」といった意味も具体もないコミュニケーションやアドバイスになりがちです。
言われた側もデータがないので納得がいかない。ところがデータで出てくると、アドバイスをもらうメンバーにとっても、確かにここを直したら伸びそうだという納得感が得られます。
今こそAIで強化する
〜営業・マーケティング連携の新たな形〜
本記事は、ウェビナーの内容をもとに制作されています。ウェビナーの全内容を収録した映像もご用意しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください。詳細な情報や具体的な事例を映像で確認することで、より深い理解が得られます。
「やりたくてもできない」をEinsteinで解決
とはいえ、仮説検証のために商談を確認したくても、「すべての商談に同席できない」「仮説検証するために必要な情報量も時間もない」というのが現実。「そもそも議事録すら入力されていない」というケースもあります。
これらの解決に大きく貢献しているのが、SalesforceのAI機能の一つである「Einstein Conversation Insights(Einstein会話インサイト)」です。
現在、スマートキャンプではZoomでの商談をすべて録画しており、「Einstein会話インサイト」が文字起こしを行ったうえで、要約とネクストアクションをまとめてくれます。
これにはどの企業のどの参加者と商談したのかという情報が自動で紐付けられ、設定している重要なキーワードも抽出できます。当社では競合の社名や「お値引き」「決裁権」といったキーワードを登録しています。
こうして会話を可視化することで、「1回目商談から2回目商談に移行する率が高い人は、自分が喋る割合が少なくて相手の問題を引き出して合意を得られている」、「1回目商談で止まってしまう人は、自分が一方的に喋る時間が長くて、ヒアリングが浅いものにとどまってしまっていて2回目の提案につなげられていない」といった共通の課題が浮き彫りになりました。
導入から2か月で、主に3つの効果が得られています。
- 顧客接点情報の入力時間&工数削減 1人あたり約5時間以上/月
スマートキャンプ全体では50時間から100時間の削減で、50商談から100商談の時間に相当します。
- 入力してくれない問題を解消し、正しい情報をより多く蓄積
議事録に正しい情報を入れるのは難易度が高く、どうしても入力漏れが発生してしまいますが、AIなら自動で事実ベースの文字起こしと要約が作成できています。
- 複数事業部での会話情報を集約し、アップセル・クロスセルの実現へ
他の商材も提案できそうなのに提案しきれてないケースがありました。登録している重要キーワードを拾って、後追いで提案することでアップセル・クロスセルも実現できるようになりました。
ようやく簡単なところで生成AIを導入し、要約などから瞬時にネクストアクションを拾ったり、改善アクションのスピードを上げたりできるようになりました。ただ、事業部横断でのアップセル・クロスセルは、まだまだこれから。1人の営業が1社に対して複数商材を提案できることを目指して、文字起こしから得られるデータをいろいろなフィードバックや育成につなげたいと考えています。
今後Einsteinが進化していき、お客様ごとにどのタイミングでどんな提案をすれば刺さる可能性が高いのかが自動で上がってくるような仕組みを実現できれば、さらにアップセル・クロスセルにつながると期待しています。
ご清聴をありがとうございました。
生成AIで会話を分析して成約率をアップ!「Einstein会話インサイト」を解説
営業担当者のスキルアップやチームの商談成約率アップに役立つ「Einstein会話インサイト」について、デモを交えてわかりやすく解説します。
【Q&A】生成AIの活用を推進するための取り組みや工夫とは
本ウェビナーでは、視聴者から質問を受け付けるQ&Aセッションの時間も設けられました。その内容の一部を紹介します。
Q:現場の担当者のAIスキルをどのように育成しているのでしょうか。
A:主に3つあります。1つ目は、現場担当者に使わせる前にマネージャー以上がAIを使って「楽になっている感」を出すことが大切だと指摘します。いわゆる「背中を見せる」ことです。
2つ目は、現場が忙しい中で「AI」と言ってしまうと身構えてしまうため、簡単で身近なものだと感じられるようにすることです。商談の録画を文字起こしして要約してくれる様子を見せるのもその一つです。
SFA(営業支援システム)に入力するのに比べると、かなりポジティブな反応が多かったですね。みんなを集めて要約を出して見せると、精度の高さに驚いたり、もう自分で議事録を登録しなくていいのだと実感したりして、とても盛り上がりました。
3つ目は会社全体としての取り組みで、生成AI事業と絡めて活用するのか、そのためにどのような開発体制を敷いているのか、メッセージと体制で打ち出して浸透させたといいます。
Q:セッションでご紹介いただいた以外のEinstein会話インサイトのメリットは何でしょうか。スマートキャンプの実例を交えてご紹介ください。
A:いつもチェックするSalesforceの画面上に録画や要約が入っているので、自分以外の売れている営業担当者の商談を確認して違いや要点をつかみやすくなりました。また、自分の録画を見直したときにも、意外と使えていなかったキーワードがあるなど、改善点がわかりやすくなりました。
これ以外にも、「代理店」「パートナー」「アライアンス」など相手が用いる言葉に注目し、次回の商談からは同じ言葉を使えるようになったことも良い点だと思います。
Q:商談時に録画の許可をどのようにして取っているのでしょうか。
A:「録画させていただきますね」と伝えると、特に拒否されることなく「わかりました」と応じてもらえることばかりです。心配なら「今日の商談の議事録として、録画して後からお送りしますね」と、商談の相手にとってもメリットがあるように伝えるのも有効です。
最後に石黒氏は「当社もまだまだAI活用し始めたところではありますが、今日のお話が皆さんのためになればとてもうれしいです」と締めくくりました。
本記事はウェビナーをもとに制作しております。ウェビナーの内容を全て収録した映像を用意しておりますので、合わせてご覧ください。
映像には、石黒氏の全セッションをご覧になることができるほか、石黒氏のセッション前にはSalesforceのマーケターによる「マーケティングチームと営業チーム間で生まれる溝やその打開法」、後半にはマーケティングと営業それぞれで活用できる最新のEinsteinの複数の機能を紹介しています。ぜひともご覧ください。