営業改革は業種・業界、企業規模を問わず、すべての企業で求められる重要な課題です。
社会やお客様のニーズが変化する中で、それに適した戦略を実行するためには、商品だけでなく売り方も変える必要があります。しかし、これまで企業の最前線で実績を積み上げてきたと自負している営業チームの変革は、決して容易ではありません。
本記事では、営業改革のヒントを提供するために、「歴史」に焦点を当てました。偉人たちがどのような考え方やメソッドを編み出してきたのか、Salesforceのセールスイネーブルメント、シニアディレクター田崎純一郎が5分で解説します。詳説した映像も用意していますので、合わせてご覧になっていただき、ぜひみなさまの営業戦略のヒントにしていただければ幸いです。
【10分でわかる】
歴史に学ぶ営業DX改革の重要性
〜 カギは「営業仕組み力」と「データ」にあり 〜
近代セールスの父が産んだ営業マニュアルの中身
田崎:営業改革は本当に難しいものです。会社の上層部から「こう変わってください」と言われても、そう簡単に変われるものではありません。しかし、営業改革がうまくいっている企業も存在しています。そんな企業はどのように変わってきたのでしょうか。それを紐解くために、今回は「歴史」という切り口でその答えを探っていきましょう。
まず、一つ目に紹介するのが「パターソンの営業法則」です。
この法則は、「近代セールスの父」とも呼ばれるナッショナルキャッシュレジスター社、NCRの創業者であるジョン・ヘンリー・パターソンさんが考案しました。パターソンさんは、この法則で示した内容を1887年に史上初の営業マニュアル「N.C.R.Primer」に落とし込み、発表しました。
「N.C.R.Primer」には、大きく4つのアジェンダがあります。それが「有望客へのアプローチ」「レジスターの実物の説明」「有望客の反論や疑問への対応」「クロージング」です。この4項目に対して、具体的な手法を紹介しています。
「N.C.R.Primer」を出した後、現場からのフィードバックを反映して、1923年に上下巻の完全版が完成。その後も、現場からのフィードバックでどんどん改善したということです。
ここから学ぶべきことは3つあります。
1.営業活動には正しいプロセス・手順がある
営業活動は運やセンスに頼るものではなく、正しいプロセス・手順が存在する。
2.マニュアルにすることで、ノウハウを広めることができる
正しいプロセスや手順をマニュアルにすることで、会社全体の営業活動を効率化できる。
3.現場のフィードバックで改善できる
現場で実行し、その結果やフィードバックで改善を重ねることで、営業プロセスをより良くできる。
100年前、第一次世界大戦を経て民主主義と資本主義が大きく広がりつつあった時代、営業活動もまた大きな発展を遂げようとしていたのです。
100年の間に生まれた4つの営業改革
今度は、行動心理学者で効果的な営業手法であるSPIN Sellingを開発したニール・ラッカムさんのお話をしましょう。
ラッカムさんは、「チャレンジャー・セールス・モデル」の序文で、営業の歴史の中で4つの「革命(大躍進)」について語っています。まず1910年頃、第一の革命が起きました。
それは、「ハンター・ファーマー・モデル」と呼ばれるもので、営業担当を「ハンター(獲得役)」と「ファーマー(育成役)」の2種類に区分けしたことを指しています。
当時の保険販売員は保険契約の獲得とともに、お客様からの料金徴収も同時に行っていました。
優秀な営業担当者はどんどんお客様を増やしますから、その分料金の徴収をする時間も増えていきます。そうすると料金徴収活動に時間を奪われ、新規のお客様を獲得するための時間が減ってしまうという問題に直面していました。
その解決策として産まれたのが、分業です。新規のお客様を獲得する営業担当者を「ハンター」とし、料金を徴収する担当者を「ファーマー」と定めたのです。営業チームを業務内容別に細分化して分業体制を築き生産性を上げようとする考えは今でこそ一般的ですが、今から100年以上も前にその考え方が生まれてました。
そして1925年頃、第一世界大戦の後、世界恐慌の前に起きたのが「第二の革命」です。
ちょうどN.C.R.Primerの完成と同じ頃ですが、これは「営業の心理学(The Psychology of Selling and Advertising)」という書籍で解説されている内容です。それまでは、「営業はセンス」だという非科学的な考えが蔓延っていました。
しかし、調査・研究を重ねてみると、優秀な営業担当者には特徴があり、その特徴を細分化して可視化すると、再現性がある。つまり他の人にそのノウハウやスキルが移植できることがわかったのです。
そうなれば「教育」ができる。それまで営業担当者の教育は現場任せで組織的に取り組まれてなかったのが大半でしたが、優秀な営業担当者のノウハウやスキルをチームに広めるという、今でいうセールスイネーブルメントの礎がこの頃に築かれたと言ってもいいでしょう。
いま注目の「セールス・イネーブルメント」とは何か?
本動画ではSalesforceの人材育成 責任者が「セールス・イネーブルメント」とは何なのか?何をするべきなのか?を、具体的にわかりやすく解説します。
そして1970年代に起きたのが「第3の革命」です。第二次世界大戦から数十年。この頃になると、金融市場の成長、世界貿易の拡大で経済は大きくなり、企業規模もどんどん大きくなってきました。そして企業が大きくなると、小さな商談だけではなくこれまでに無かった金額が動く大きな商談も生まれるようになっていました。
そこで提唱されたのが、「SPIN」です。
SPINとは、「Situation(状況質問)」「Problem(問題質問)」「Implication(示唆質問)」「Need payoff(解決質問)」の頭文字をとった言葉で、営業においてお客様に聞くべき質問を提示したものです。この4つの質問を投げかけ、的確にヒアリングすることで、複雑な大型商談を前に進めることができる手法がこの時代に生まれました。
最後の「第4の革命」は2010年頃です。
時代はリーマン・ショック後の不況下。多くの企業が苦しんでいましたが、それでも難解で複雑な商談を前に進めて、大型商談を獲得する営業担当者がいました。なぜ、それができたのか?
それを書いたのが「チャレンジャー・セールス・モデル」です。
ここまで、営業改革の歴史について簡単にご紹介してきました。「分業」「教育」「大型案件」「複雑な商談」といった4つの革命が100年ほどの歴史の中で生まれてきました。
4つの営業改革を自社に取り込むために
これらの革命は時代の変化に対応するために現場から生まれたものです。
現場で行われたたくさんの工夫が体系化され、新たなプロセスやメソッドとなりました。
では、みなさんはいま、営業改革をどのように進めればいいのでしょうか?
みなさんの会社はこれまで、長年培ってきたブランド力(企業力)と製品力、そして現場の営業力でビジネスを伸ばしてきたと思います。しかし、世の中は変わりました。今はそれらだけでは安定した売上は難しくなりました。
企業力、製品力、営業力に加えて、先ほど紹介した「分業」や「教育」、さらに21世紀のテクノロジー、教育を継続することで生まれる新しい企業文化。いわば、これらを合わせた「営業の仕組み力」をつくることが今後の成長にとって重要なポイントです。
具体的には、分業でいえばBtoBマーケティング手法の活用やインサイドセールスの導入。教育では優秀な営業担当者のノウハウ共有やマネージャー育成法の伝授。DXの現代では先進テクノロジーの活用も欠かせません。こうした営業力の向上を個人任せにせずに、組織で強くする仕組みの力が今後必要になってくるのです。
いかがでしたでしょうか。Salesforceを使えば今日紹介した内容を具体的かつスピーディに進めることができます。ご紹介した内容は、映像でも紹介しているので、ぜひ合わせてご覧ください。
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歴史に学ぶ営業DX改革の重要性
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