人材サービス業などの株式会社サンレディース(1986年創業、大阪府)は、わずか3週間でSalesforceのAI「Einstein(アインシュタイン)」を導入し、アポイント獲得数が30%増えるなど、業務効率を劇的に上げています。
従業員150人ほどでIT部門のメンバーは数人。このような中規模の企業が、なぜ先進技術の導入に成功したのでしょうか。そこには、Salesforceに興味を示し、AIの可能性を信じ、独学でAIを学んでいた一人の社員がいました。その一人、導入をリードしたITソリューションチームマネージャー石井良馬氏に話を聞きました。
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最初は嫌だったSalesforce
──まず、Salesforceを導入したきっかけを教えてください。
石井:サンレディースがSalesforceを導入したのは約4年前です。当時、情報システム部門を統括するマネージャーが代わり、経営改革に向けてSalesforceを入れようと号令をかけたのがきっかけでした。ほぼ同じ時期に、私は金融系システムの開発会社からサンレディースに入社しました。
──石井さんは入社後、基幹系システムの開発・運用を担当していました。それが2年前にSalesforceを担当することに。率直にどう感じましたか。
きついな、と思いました(笑)。正直、Salesforceは名前こそ知っているものの利点も特徴も全く理解していない。興味もありませんでした。
なので、最初に聞いた時は嫌だな、と(笑)。ただ、これまで私が経験したことがない領域ですし、成長分野のクラウドを今後学ばないわけにはいかないという気持ちもありましたから、チャレンジしようと前向きな気持ちで取り組みました。
──今でこそ、業務に欠かせない経営基盤としてSalesforceを活用いただいているとお聞きしていますが、浸透させるためにどのような手を打ってきたのですか。
実は契約を結んでから約2年、Salesforceはほぼ動いていなかったんです(苦笑)。
──2年、もですか?
はい、導入したのはいいけれど、現場がメリットを感じることができずデータを入力してくれない。現場でプロジェクトをリードする人もいない。結果、動いていないシステムだったんです。経営陣もさすがにしびれを切らして、解約寸前でした。
──そんな状態で担当することになって相当苦労されましたよね。どう軌道に乗せたのですか
はい、心が折れそうになることが何度もありました(笑)。ただ、コロナ禍で変化を余儀なくされ、成長のためにはテクノロジーの活用は欠かせないという思いがありましたから、なんとか巻き返そうと。
サンレディースのケースではありますが、軌道に乗せるポイントは2つです。
一つ目は「三位一体」。経営陣、現場、IT部門が一丸となることです。なぜ必要なのか? 導入後にどのようなメリットがあるのか? データを活用するとどれだけビジネスを伸ばす可能性が高められ、仕事が楽になるのか? それらを共有して目線を合わせ、協力し合える体制をつくることだと思います。
ここはトップの力がとても大切で、社長自ら発破をかけてくれ、社内に良い意味で緊張感を与えてくれました。
二つ目は「強制力」。Salesforceを使わないと業務が回らないようにすることです。勤怠管理でも発注業務でもなんでもいいんですけど、日頃の業務に欠かせないプロセスをSalesforceに組み込んで、Salesforceを使わないと仕事にならない環境を構築することでした。
──そうした効果はどのようなかたちで表れたのでしょうか。
わかりやすい成果で言うと、受注件数は約2倍になりました。それだけでなく、こうした成果を感じて現場のみんな経営陣も協力的になり、今では新しいテクノロジーやツールを導入する時も協力的で、現場から「これがやりたい」「あれがやりたい」と声があがるようになりました。
もしマーケティングとカスタマーサービス業務にSalesforceのAIを組み込んだら
B2BとB2C事業者向け Salesforce 製品デモ
SalesforceのAI、Einsteinを活用し、マーケティングとカスタマーサービスの最適化を実現。顧客データ分析からアクション自動化までのデモを紹介。
独学で蓄積したEinsteinの知識
──大きな変化ですね。そのプロセスの中で、AIはどのように取り込んできたのですか。
AIはビジネスを大きく変えるポテンシャルを持っていると感じ、私がSalesforceを担当する時から、Einsteinには注目していました。Salesforceが提供する学習プログラム「Trailhead」などを活用し、この頃から独学でAIを学んでいました。
AIはいろいろな企業が提供していますが、Einsteinはすでに導入しているSalesforceに組み込まれているから、きっと導入スピードが速い。ゼロからAIを自社オリジナルで構築したり、そのためのデータを一から蓄積したりするよりも、時間と費用が抑えられますし、浸透のしやすさを感じてEinsteinしかないと思っていました。
なので、まだうまくSalesforceが浸透していない時ではありましたが、将来を見越してAIがデータを活用しやすいようなかたちでデータを蓄積していました。
──具体的にどのような業務でつかっているのですか。
今は、請け負っているホテルの客室清掃業務で、現場スタッフからの問い合わせ内容にEinsteinが回答する仕組みを取り入れていますが、それによって回答速度は8倍になりました。
また、若手の育成にも活用しています。見積もり作成の手順などわからないことがあれば、Einsteinに聞いたり、商談のアドバイスをEinsteinからもらったりしています。この仕組みを導入した結果、アポイントの獲得率が5.1%から6.5%に増えました。
今後はもっと活用範囲を広めて、どのような部門、どんな人の問い合わせにもEinsteinがアドバイス、サポートしてくれる一人の社員のような存在に育てていければと思っています。
──2年前とは大違いですね(笑)。
ですね。2年前の私は、今の状況をきっと想像できていないでしょうね(笑)。今はAIを中心とした新しいテクノロジーを導入するための敷居が非常に低くて、チャレンジしやすい環境になりました。社内でいろいろなトライ&エラーを繰り返し、AI導入に対するノウハウを蓄積していきたいと思います。
また、それだけに終わらず、その導入ノウハウを武器にして、Salesforceの導入支援をスタートしました。最近パートナー契約を結んだばかりなので、これからですが、企業規模に関わらずCRMに組み込まれたAIであるEinsteinは気軽に利用できます。
そうした企業に対して、私たちが経験したことを少しでもお伝えできればと思っています。Einsteinをもっと世の中に広めていきたいですから。
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